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今週の、中村俊輔・・中田英寿・・(2002年10月29日、火曜日)

「よし、行った〜!!」。

 レッジーナ対トリノ。2-1と、ホームのレッジーナがリードした後半の終了間際。左サイドで、中村俊輔が、全力でディフェンスに入ったのです。そして見事にタックルを決める。そして私は、「それだ!」と、つづけて声を上げていました。

 そのシーンだけではなく、後半最後の時間帯、何かに目覚めたように、中村俊輔がディフェンスで魅せつづけます。もちろん全力ダッシュを繰り返しながら。全力の「チェイシング」からのタックル等だけではなく、中盤でボールを奪い返したところから、相手GKのポジションを正確に測ったロングシュートまで放ったりします(僅かにゴールを外れてしまう・・)。

 そのたびに、「それだ、それだ!」と、私。何が「それ」かって?! 明確な「意志」に満ちあふれた自分主体のアクションのことですよ。それを見たかったんですよ。

 とはいっても全体的には、まだ、ボールのないところでの「緩慢」なアクションが目立っていました。レッジーナのチームメイトたちは上手くはありません。ボールを持っても、あまり周りが見えないし、ボールをしっかりと動かすこともできない。だから、あまり動かずに足許パスを要求しても、(タイトにマークされていることもあって)タイミングとコースがピタリと合うパスは無理というものです。とにかく、パスを要求する激しいアクションが必要です。それがなければ、彼らには中村が「見えにくい」のです。

 この試合での中村俊輔には、常にタイトなマークが付いていました。私は、「だからこそ」チャンスなのに・・と思ったものです。

 迫力あるダッシュで「戻って」パスを要求すれば、その戻りの動きの「軌跡」には必ずスペースができているもの。最初から「そこでリターンパスを受ける」というイメージをもつのです。一度下がってパスを足許に出させ、それをダイレクトなどでシンプルにつないで反転し、「パス&ムーブ」でウラへダッシュすれば、仕掛けの「起点(フリーでパスを持つ選手)」になり易いものです。

 とにかく中村のパスをもらう動き(パスを出させる動き)が緩慢に過ぎることは誰の目にも明らかな事実ですからね。いくら、チームメイトたちの、クリエイティブなパスをつなぐ能力が低かったとしても、とにかくまず動いてパスを要求しなければ、この試合のように、タテへ、タテへ・・という勝負パスの応酬「だけ」になってしまいます。そして、ガチャ、ガチャという「ぶつかり合い」だけのサッカーになってしまう・・。

 とにかく中村は、自分がボールの動きの「中心になる」という強い意志をもってプレーしなければならないのです。

 そんな問題点が明確に見えるとはいっても、この試合での中村のパフォーマンスが、時間を追って、良くなる方向へ変化していったのも確かなことです。チャンスメイクという視点では、ノーパフォーマンスと言われても仕方ありませんでしたがネ・・。

 さて、冒頭で書いた「それだよ!」が意味するところの、「明確な意志」に満ちあふれた自分主体のアクションですが、私は、様々な意味で迷っている中村が「ブレイク」するキッカケになるのは、何といっても「積極ディフェンス」しかないと思っているのです。サッカーの基本はディフェンス・・なんていう原則論ではなく、中村俊輔にとっての実効ある発展プロセスのバックボーンとしてね。特に、自分の「近く」でのボール奪取を意図した「前方からのディフェンス」。それに、積極的に、そして「全力」でトライしつづけるのです。もちろん彼自身がボールを奪い返せるかもしれません。そのことが、彼がもっと頻繁にボールに触れるようになることのキーポイント(発想のスタートライン)だと思っているのです。守備での積極的なアクションは、次の攻撃における(特にボールがないところでの)自分主体アクションへ、イメージ的に連鎖していくものですからね。

 2-1とリードしてからの積極ディフェンス。それが出はじめてから、攻守にわたって「実効ある絡み」が見られるようになったと感じました。しっかり動いて味方からのパスを「呼び込み」、そこからシンプルにパスを出して再び「ムーブ!」。だからこそ、良いカタチでボールを持つことができるようになった。

 ボールさえ良いカタチで持てれば、彼本来の「ボール絡みの天賦の才」が光り輝きます。ボールさえ「良いカタチ」で持てれば・・。そんなことを思ったものです。だからこそ、もっと積極的なディフェンス参加を・・と思うのです。

 この試合で「体感」したに違いない良いプレーコンテンツが、彼の「プレー発想のブレイク」のキッカケになることを願って止まない湯浅でした。ガンバレ、中村俊輔!

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 さて、中田英寿。

 もう、パルマ中盤の王様になりつつあります。彼を中心にした仕掛けのボールの動きも、どんどん発展していると感じられるようになっています。まあ、プランデッリ監督も、そこのところ(素早く、広いボールの動き)に対する指示を出しているということですし、これからの彼らの発展が楽しみになってきました。

 それにしても、実効ある守備、ボールがないところでの活発なアクションをベースにした、シンプルプレーと仕掛けプレーの優れたメリハリなど、やはり中田英寿は「本物」です。まあそのことについては、グラウンド上で一緒にプレーしているチームメイトたちが、一番感じていることでしょう。彼らが中田を「探す」のが明確に感じられます。

 短いですが、本日はこれにて・・。




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