パルマ自体のチーム力は発展していますよ。もちろんそのベースは守備の安定。中田やムトゥーも、最前線から積極的にディフェンス参加しますしね。とにかく、最終ラインの前に三人の守備的ハーフを置くという基本的なポジションバランスがうまく機能していると感じます。両サイドハーフとサイドバック、はたまた中田やムトゥーも積極的に絡んでくるタテのポジションチェンジも含めてネ。
さてホームでのローマ戦。立ち上がりのパルマは、攻守にわたってアクティブ。誰一人として「寝ている」選手はいない。それでも、開始5分に、右サイドからのパヌッチのクロスが、まったくフリーになったモンテッラに、ピタリと合ってしまいます。GKフレイの正面に飛んだからラッキー・・だったのですが、それにしてもネ。まあ、チームにとっては良い刺激になったことでしょう。
その後、ローマがペースを握ります。中田とムトゥーも、自軍のペナルティーエリア付近まで戻って守備参加です。そんな展開がつづいていた前半11分、やりましたよ、パルマが。左サイドのジュニオールが、起点のドリブルを仕掛け、ムトゥーとのワンツーで抜け出そうとします。でも、そこでリターンパスがズレてしまったんですよ。そしてそのこぼれ球に反応したのが、この試合でワントップを務めるボナッツォーリ。左足を一閃。見事な先制ゴールでした。
そしてその後、今度はパルマがゲームをコントロールしはじめる。ボナッツォーリはいいですね。パスを受けても簡単にプレーし、すぐに「次の動き」をスタートするのです。ワントップがそのようなダイナミックな動きをつづければ、ボールは「タテにも」活発に動きますからネ。まあ、全体的には、パルマの組織プレーが、どんどんと発展しているということです。以前は、メンバーが固定された守備ブロックが忠実に守り、中田が中継ポイントとして絡んで、ムトゥーとアドリアーノが「個の勝負」を仕掛けていく・・ってなイメージしかありませんでしたからネ。
キーになっているのは、両サイドのコンビネーション。サイドハーフのバローネと中田、フィリッピーニとムトゥーのコンビですかネ。そこへ、たまには両サイドバックも絡んでいく・・それでも、サイドプレーヤーたちの守備意識が高いから「タテのポジショニングバランス」も崩れない。ムトゥーも、以前のような無理なドリブル突破トライではなく、シンプルにパスを回すようになっています。まあアドリアーノがいるときは、前線でボールの動きが停滞するというシーンも多々見えたのですが、この試合で先発したボナッツォーリは、前述したように、シンプルパスを回す起点としてうまく機能しています。
そのボナッツォーリの決定的フリーランニングが、パルマの追加ゴールを生み出します。前半の22分。スローインをムトゥーが受けようとした瞬間、彼がスタートを切ったんですよ。そこへムトゥーから、ダイレクトでのラストパスが通されたことは言うまでもありません。この状況で、ボナッツォーリをマークしていたローマのアウダイールが、半身分、置いかれてしまって・・。そして、ボナッツォーリのユニフォームを引っ張ってしまってPK! 笛を吹いたのは「あの」コッリーナさんですからね。もう誰も文句は言いませんでした。そして、ムトゥーの見事なPK。これでパルマの「2-0」です。また後半の三点目もボナッツォーリ。コーナーキックから、ローマ選手のヘディングしたボールがピタリと彼のアタマに合った「ゴッツァン・ゴール」でした。
もちろんローマも攻め上がりますが、どうもボールの動きが緩慢だし、一発ラストパスやクロスボールも合いません。もちろんそれは、ボールがないところでの動きに強い意図が込められていないからなのですが(二人目、三人目の動きもないからコンビプレーも決まらない!)、それぞれのボールホルダーも、ちょっとボールをこねくり回し過ぎだと感じます。チーム内でのプレーイメージが噛み合っていない。いくら怪我人が多いとはいっても、これほどまでに、組み立てや仕掛けのリズムが崩れてしまうのでは、監督の戦術的な意識付けにも問題があると言われても仕方ない・・。
それにしても、中田英寿は、例によって、攻守にわたってアクティブです。一度などは、左サイドのタッチライン際でドリブル勝負を仕掛けるカンデラを最後までマークし、ボールを奪い返して(ベナリーボへ)タテパスを通してしまいましたよ。素晴らしい。
とはいっても、全体的なパフォーマンスでは、前節のミラン戦には及ばなかったという印象はぬぐえませんでした。それには、彼のサイドをカンデラたちが攻め上がってくることで、守備にもかなりのエネルギーを割かなければならなかったことや、早い段階でパルマがゴールを挙げたことで、チームとして、攻めでのリスクチャレンジがペースダウンしていったこともあります。まあとはいっても、様子見状態が、次の爆発(守備での勝負や、攻撃での決定的フリーランニング等々)を強烈に意識したタメだと明確に感じられるなど、彼のパフォーマンスが高みで安定していることには変わりありませんので・・。
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さて次は、中村俊輔。
数日前のアルゼンチン戦では、セリエでの全体的なパフォーマンスアップ傾向が継続していると感じさせてくれました。
守備でも、実効プレーがみられるようになっています。自分自身がボールを奪い返すシーンはほとんどありませんでしたが、それでも、守備参加に、「アリバイプレー」とは明確に一線を画すような「積極的な意志」も込められていましたからネ。また攻撃でも、ボールを持てば、高質なエスプリプレーや展開プレーに才能を感じさせてくれました。それでも、ボールがないところでのアクションを活性化させれば、もっと多くボールに触ることができる・・、またボール絡みのプレーでは、タメのキープや、アタックを誘ってからの相手を外すドリブルなど、もっとリスキープレーにトライしなければ・・なんて思っていました。
さて今節のセリエでのアタランタ戦。この試合でも、印象は同じ。全力ダッシュを織り交ぜた、攻守にわたるボールがないところでのアクションの活性化。それです。そして攻撃では、足許パスばかりではなく(チーム内でも彼にボールを集めるという意識が高まっているけれど・・)、スペースへ走り込むなど、動きのなかでパスを受けることをもっと意識する。そうすれば、より高い頻度でボールに触れるだけではなく、そのまま動きのなかで最終勝負(リスクチャレンジ)を仕掛けていける。才能を発展させるための唯一のベースは、もちろん、リスキープレーへのチャレンジしかないのです。
セットプレーだけではなく、前半に魅せた5人抜き(5人はずしのドリブル)からの決定的シュートや、後半の、左サイドのドリブルからの見事なアシスト(同点ゴール!)など、見応え十分でした。あれほどのプレーができるからこそ、もっと、もっと・・と思うのです。もっと、攻守にわたる意図が満載された全力ダッシュを・・、もっと、動きのなかでのパスレシーブを(コンビプレーのコアになる!)・・、もっと、相手との競り合いのなかでのリスクチャレンジプレーを・・、もっと、もっと・・。
とにかく、レッジーナが、チームとして、徐々にパフォーマンスをアップさせていること、それに伴って、中村俊輔の「実効レベル」も大きく増大しはじめていることを感じ、期待が高まりつづけている湯浅でした。
もう月曜日の早朝。アタマが回りません。ということで、本日はこのあたりで・・。