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今週の、小野伸二、中村俊輔、稲本潤一、中田英寿・・(2002年11月6日、水曜日)

連休明けの火曜日にアップしようと思っていたのですが、アクセス数が多くてサーバーのキャパが一杯。ここでアップしても白紙のページになってしまいます。ということで、一日のアクセスカウントが終了する水曜日の午前5時以降にコラムをアップすることにしました。悪しからず・・。

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 さて、シリーズ化してしまった「今週の・・」。とにかく彼らの発展プロセスの証人になることほど楽しい作業はありませんからね。もちろん、どんなカタチであれ、成長をつづけてくれたらのハナシですが・・。

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 では、まず小野伸二から・・。

 先週のチャンピオンズリーグ、ユーヴェントス戦でのレポートの最後に、『全体的なパフォーマンスは高みで安定しているのですが、それでも、もっと、もっと、攻守にわたって彼自身が主役になるシーンをと要求したい・・仕掛けシーンでは、パス&ムーブで突っかけていくなど、自分が中心になったワンツーを決めるとか、マークする相手を身体でブロックしながらタメを演出するとか、迫る相手をハンドオフしながらドリブル突破にチャレンジするとか、逆に守備では、トラップの瞬間を狙ったアタックやインターセプト狙いばかりではなく、ボールがないところでの忠実マークから競り合に持ち込み、そこで相手の身体を押さえながらボールを奪い返す等々・・とにかく、(プレー発想として)明確な発展プロセスに入った彼には、妥協せず、自分の能力の限界を突き詰めて欲しいと願って止まない湯浅なのです・・』なんてことを書きました。

 そのなかで、どうも、接触プレーへのチャレンジが消極的?!・・なんてことも書きました。ロジックでシンプルなプレーはいいのですが、最終勝負シーンへの絡み方が「使われるタイプ」ばかりになっているような・・。もちろん、エマートンからのクロスをダイレクトで叩き込んだ二点目のゴールは見事だったのですが・・。

 後半は、監督の指示もあったようで、どんどんと前線へ絡んでいくようになりました。それでも、どうも安全な中継プレーばかりが目立ちすぎる・・。もっと、最後の仕掛けのコアになってやるという強い意志を前面に押し出して欲しいのに。今回の相手フローニンゲンは、明らかにチーム力は格下ですからね。リスキープレーにチャレンジするには格好の状況だったと思うのですよ。

 とにかく、ここまでパフォーマンスが安定してきているのですから、次の段階に進むためのチャレンジプレーに対する強い意志を期待したい湯浅なのです。守備においても、攻撃においても・・。

 ここまでくれば、あとはちょっとしたキッカケで、必ず大きくブレイクするに違いない・・。小野伸二に対する期待が高まりつづける湯浅なのです。

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 さて中村俊輔ですが、前半22分に味方の一人(守備的ハーフ)が退場になってしまったことで、ディフェンダーと交代させられてしまいました。

 ベンチとしてはディフェンダーを補充せざるを得ない状況に陥ってしまったというわけです。まあ、相手がミランということで、しっかりと守り、素早く直線的なカウンターを仕掛けていこうという監督の意図だったのでしょう。でも、そんな一人足りなくなったときのゲーム展開イメージからはじき出されたのが中村俊輔だった・・。

 厳しい現実。とにかく、まだまだ中村の実効レベルが十分に信頼されていないことの証だと考えなければいけません。交代するまでの中村のプレーからは、ボールを待つだけではなく、徐々にではありますが、攻守にわたって、より積極的にプロセスシーンにも絡んでいこうとするポジティブな意志を感じていましたから、ちょっと残念だったのですがね。まあ仕方ない・・。

 とにかく彼には、イタリアへわたる直前のマリノスで魅せつづけた、攻守にわたる積極プレーのイメージを明確に思い出して欲しいと思っている湯浅なのです。

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 さて次は稲本潤一。

 今節のアーセナル戦では後半9分からの途中出場でした。そして彼のプレーからもまた、攻守にわたってより積極的にプロセスシーンに絡んでいこうとする強い意志を感じるようになりました。

 特に、全力でディフェンスに入ったときの迫力と、相手からボールを奪い返すテクニックには本格感があふれています。競り合いにも負けないし、何といっても、競り合いのなかで実際に相手からボールを奪い返せますからネ。やはり彼は、もっともっとディフェンスからプレーに入っていくべきだ・・なんて思っていた次第。

 実効のある積極ディフェンスを通して、自信と確信のレベルを高めれば、「次の攻撃プレー」がワンランクアップするものです。この試合での彼のプレーが、そんな、サッカーの歴史が証明する普遍的な「事実」を如実に証明していると思っていた湯浅でした。

 とにかく彼は、攻守にわたって、もっともっとボール絡みのプレーを心がけなければなりません。まだまだ、様子見プレーが多すぎると感じるのですよ。もちろんその様子見状態が、次の爆発アクションイメージを描くための「イメージ的なタメ」だったらよいのですが、どうも、次につながらない傍観シーンが多すぎると感じます。要は、攻守にわたるゲームの流れに、まだしっかりと乗り切れていないということです。

 もう何度も書きましたが、彼の場合も、自分のプレーシーンをまとめたビデオや、ビエラなど、世界一流のプレーを何度も何度も見返すことでイメージトレーニングを積むのが肝心です。

 この頃、彼の実効パフォーマンスに対する現場評価(ティガナ監督をはじめとした現場スタッフの評価のことですよ!)が厳しい方向へ振れていると感じます。よいことです。それこそが「正しいサッカー環境」。環境こそが才能を開花させるのです。

 シーズン当初は「何だ、この傍観プレーは・・」と、ちょっと観戦モティベーションが殺がれ気味だったのですが、この試合でのプレー姿勢を観て、再び今後の発展が楽しみになってきた湯浅でした。

 あっと・・、試合ですが、立派なゲームを展開したフラムでしたが、最後のところで攻めきれず、自殺点で献上した一点をアーセナルに守りきられるという惜敗に終わりました。

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 そして最後に中田英寿。

 それにしても、まさにイタリア的なゲーム展開でしたね。全体的にはパルマにペースを握られていたキエーボ。必死に守り、パルマの攻めを最後のところでくい止めつづけます。そして最後の最後に(後半ロスタイムに入ってから!)ワンチャンスを決めて勝利をモノにしてしまう・・。

 パルマの選手たちは、さぞかしガックリきたことでしょう。まあそれでも、そんなドラマチックな結末には慣れているでしょうから、ネガティブに尾を引くことはないでしょうがネ。

 それにしてもキエーボの決勝ゴールは見事の一言でしたよ。

 タテパスを受けた最前線のビアホフ。マーカーを背負いながらキープします。その時点で、既に、左サイドハーフのフランチェスキーニが、左サイド前方のスペースへ全力ダッシュをスタートしています。この状況でビアホフは、後方のコリーニへバックパスを戻し、そして間髪を入れずに、コリーニからのダイレクトのタテパスが、フランチェスキーニが狙うタテのスペースへ出されたというわけです。

 このシーンで、もう一つ特筆だったのは、ゴールを決めたベリッシエールの動き。一度ファーポストゾーンへ抜け出す動きを仕掛けてから急激にターンし、マークするフェラーリの「背後」から、今度はニアポストスペースへと全力ダッシュで抜け出したのです。そしてそこへ、これまたダイレクトで、フランチェスキーニからのラスト横パスが通された・・。そのラストパスのバウンドは難しかったのですが、ベリッシエールの集中力が、そのバウンドを上回った・・。スーパーGKフレイの右を抜く、素晴らしい決勝ゴールでした。

 決勝ゴールがあまりにも素晴らしかったから、まずそこから入りました。

 さて中田英寿。相変わらず、実効あるシンプルプレーと、素晴らしいリスキープレーがハイレベルにバランスしています。

 彼の場合は、稲本のところで書いた様子見シーン(=次のプレーイメージの構築段階)が、例外なく「次」につながっていると感じます。攻撃においても、守備においても。

 5-6回ですかネ、自らの惜しいシュートも含め、シュートシーンに直接絡んだのは。もちろん最終勝負のキッカケになるような実効プレーという視点では、もっと頻度は高い・・。

 ドリブルやタメなど、ボールを持ってからのリスクチャレンジを駆使し、仲間とのハイレベルなコンビネーションプレーのコアになる。とにかく彼がボールを持てば、何かがはじまるという雰囲気が充満してくるのです。素晴らしい。

 とはいっても、彼の全体的なプレーゾーンにちょっと違和感が・・。右サイドの高い位置に貼り付きすぎだと感じていたのですよ。もちろん互いのポジショニングバランスを重視するイタリアサッカーだし、そのイメージを基盤に攻撃を組み立てていくのが基本だから仕方ないわけですが、私は、もう少し自由にポジションを移動してもいいのかな・・なんて思っていたというわけです。そう、前半の素晴らしいチャンスメイクで魅せた、中央ゾーンへ切れ込んでいくプレーとかね。

 たまには左サイドに張るムトゥーとポジションを入れ替わったり、後方のラムーシを前へ送り込んだり(例によってのタテのポジションチェンジの演出家!)。彼ほど実効あるディフェンスができる選手なのですから、ラムーシにしても、(次のディフェンスについて)中田を信頼して上がり切るに違いありません。そしてそこへ、中田から正確なタテパスが供給される。それこそ、最終的には自由にプレーせざるを得ないサッカーにおける、本物のクリエイティブプレー。彼には、もっともっと「攻撃での変化」の演出家になってもらいたいと思っている湯浅なのです。

 また、自分が主体になった仕掛けにチャレンジし過ぎるアドリアーノが戻ってきたら・・という心配事もあります。さてどうなるか・・注目しましょう。




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