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今週は、まず稲本潤一と中村俊輔から・・(2002年12月1日、日曜日)

まず稲本。

 彼が交代で出場してきたのは後半15分あたり。そしてすぐに、「良いポジショニング」でバックパスを受け、そのままダイレクトで最前線へタテパスを通します。結局そこから、ポン、ポ〜ンというダイレクトパス(パス&ムーブ)がつながって同点ゴールが決まりました。稲本のタテパスは、タイミングといい、コースといい、強さといい、完璧な仕掛けのファウンデーションパスになったのです。

 その後も、うまい「ポジショニング」からのタイミング良い全力ダッシュでボールを奪い返したり(ボール奪取のテクニックは素晴らしい!)、そこから効果的な仕掛けのパスを決めたり、はたまた、ボールがないところでの忠実なマークを敢行したりと、「これは・・」と期待がふくらむプレーを魅せてくれました。でも、そんな「期待満載プレー」は、登場してからの10分くらいまで。結局、終盤では「消えて」しまいました。

 要は、ボールがないところでのプレーが(次のプレーに対するイメージ構築が)緩慢だから、結局は、攻守にわたってボール絡みの実効プレーを魅せられなかったというわけです。どうも稲本は、まだまだ吹っ切れていない・・と、またまた心配になりました。

 彼は、「ポジショニングバランス」を気にしすぎているのかな・・、まずそんなことを思っていました。攻撃でも、守備でも、クビをクルクル振りながら、周りの味方のポジションを確認しつづけるのですよ。そして、自分が正しいと判断したポジションを「埋め」る。その発想自体は間違いではありません。もちろんスタートラインとしてネ・・。

 つまり、あくまでもその発想は、次の「爆発」のためのファウンデーションに過ぎないということです。そのポジションを埋める前の段階で、次の勝負所を明確にイメージする・・。それこそ重要な発想なのです。

 様子見「だけ」の状態がつづいてしまう稲本。考えすぎ?! まあ、そういうことなんだろうな・・。でもそれでは、いまのドツボ状況から抜け出ることはできません。いまの彼は、常に「次、その次」をイメージし、とにかくアクションを起こすことが大事なのです。

 互いのポジショニングバランスが重要になってくるのは、基本的には守備です(もちろん、あくまでも次の爆発アクションを強烈にイメージしていることが大前提!)。

 逆に攻撃では、変化のある分散の方が重要な発想になってきます。もちろん、バランス良く、スペースで(フリーで)パスを待つのもいいのですが、そうではなく、いまの稲本は、攻撃に参加するとなったら、味方にパスを出させるような「動き」を基調にすべきなのです。スペースでパスを待つばかりではなく、どんどんと味方ボールホルダーへ寄っていったり、タテのスペースへ走り込んだり、はたまた自分が主体になったコンビネーションをイメージしたり(ワンツーの壁になったり、三人目の動きしたり等々)・・。

 とにかく、攻守にわたって、もっともっと動きまわらなければ・・。攻撃では、次の仕掛けシーンに入ったら、どこのスペース(ゾーン)で決定的パスを受けたいのかを強烈にイメージしながら動きまわり、その「前段階」でのボール絡みのシンプルプレーをつづける・・もちろんボールを持ったら、シンプルなパス&ムーブだけではなく、たまには、思い切ったドリブル突破にもチャレンジする・・。守備では、互いのポジショニングバランスを取りながらも、ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するチェック、インターセプト、ボールがないところで動く相手への忠実マーク、はたまた相手ボールの動きの停滞を狙った協力プレスなどの積極プレー。

 バランシングプレーと仕掛け(リスクチャレンジ)プレー。いま彼の場合は、攻守にわたって、まず積極的に仕掛けていくことを心がけるのが重要だと思います。失敗したら、すぐに「次」へのアクションを起こせばいい。そんな積極マインドさえあれば、ほとんどのケースで「間に合う」ものです。

 バラシングという発想に囚われ過ぎたときに「スランプ」がはじまるのは、サッカーの世界では定説にも近いことなんですよ。とにかくガンバレ、稲本。

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 さて中村俊輔。

 いいですね。とにかく「自分主体」の運動量が、格段に増大していると感じます。攻撃においても、守備においても。

 まあ彼の場合は、稲本とは違い、攻守にわたって、限りなく「自由」にプレーしてもいいという役割を与えられていますからね。

 ゲーム開始早々の11分、こんなプレーがありました。中村が、センターサークル付近でコッツァへのシンプルなバックパスを返し、次の瞬間、大きく回り込むように、右サイドのタテスペースへ抜け出したのです。そんな意図が満載されたフリーランニングが出たら、味方にしてもパスを出さざるを得ない(動きは目に入りやすい!)。そしてコッツァからのタテパス受けた中村が、スッ、スッという例によっての独特リズムのボールキープから(マークする相手は数10センチ単位で振り回されている!)、逆サイドスペースでフリーになっている味方へ(たぶんディ・ミケーレ)素晴らしく正確なサイドチェンジパスを出したのです。そしてそこからのフリーヘディングが、後方から押し上げた三人目(たぶんパレーデス)にとって絶好のラストパスになる。ドカン! 空気を切り裂くような強烈な中距離シュートが飛びます。惜しくも相手GKの正面に飛んでしまいましたが、中村が演出した素晴らしいチャンスメイクでした。

 ここのところ、チームメイトたちの彼に対する信頼度も格段に上がっていますから、彼に対してパスを出すだけではなく、彼がボールを持ったときの周りの動きにも、格段のダイナミズムアップを感じるのです。まあその背景には、中村の忠実な守備参加もあるでしょうし、運動量の増大もあるでしょう。サボる味方には、誰だって嫌気がさすものですからね。もちろん「それ」がマラドーナだったら、ハナシはまったく別ですが・・。とにかく中村周りでは、好循環が回りはじめていると感じます。

 またそれには、レッジーナのサッカー自体が好転しているという背景もあります。新任のデカーニオ監督。いい仕事をしています。まず守備を、よりアクティブなものへと立て直している。最終ラインの押し上げ、積極的なラインコントロール。また三人で組む守備的ハーフトリオも、実効ある積極プレーを展開しているのです。

 やはり守備がチームの基盤。ボールを奪い返さなければ攻撃をはじめられないし、攻撃に入ったとき、「次の守備」に不安を抱えていたら押し上げにもエネルギーを存分に傾注できませんからね。

 中村俊輔に対しては、ある程度フリーでボールを持つという明確な目標イメージをもって、とにかく攻守にわたって動きまわることが大事・・そんなことを書きつづけてきたわけですが、徐々にそれが、チーム全体のパフォーマンスアップとともに、活性化されてきていると感じるのです。

 さてここからです。攻撃では、中継プレーとその後の動き、仕掛けの展開パス、また決定的なパス出しやクリエイティブなタメなど、どんどんと実効レベルが高揚しつづけているのですから、今度は、もっと自分がシュートまでいくプレーへもイメージを発展させいかなければいけません。スピードではなく、(相手の大勢の逆を突くなど)タイミングで相手を抜き去るドリブル突破へのチャレンジ、ワンツーのコアになるコンビネーション、はたまた中距離シュート等々、もっと「個のチャレンジ」にもトライしなければ。そう、後半立ち上がりに魅せた、サボルディーへボールを預けてからのタテへの走り抜け・・それです(このシーンでは、コーナーキックを奪い取りましたよ!)。

 もちろん守備では課題が満載。ボールホルダーに対するパスコースを制限するチェックばかりでは十分ではありません。もっと狙いを定めた爆発インターセプトや、相手パスレシーバーがトラップする瞬間を狙ったアタック、はたまた相手との粘り強い競り合い(身体を寄せる競り合い)などもイメージしなければ。トップのサボルディーにしても、ディ・ミケーレにしても、交代で下がり、爆発的なディフェンスを魅せているではありませんか。特に、後半になって基本ポジションを下げてから、中村が「アナ」になっていたと感じます。だから、中盤でのルーズボールを奪取する頻度が低くなってしまって・・。

 とにかく、ここまでプレーが発展をつづけている中村だから、それを本物のブレイクの機会にして欲しいと心から願っている湯浅でした。




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