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ヨーロッパの日本人・・さて次は、中田英寿と中村俊輔・・(2002年12月9日、月曜日)

キックオフ前、両チームともに調子を上げていますから面白いゲームになるに違いない・・なんて期待は高まるのですが、でもやっぱりホームのパルマが全体的なペースは握ってしまうんだろうな・・とも思っていた湯浅です。

 でもフタを開けてみたら、レッジーナの元気がいいこと。中村俊輔の調子も、高みで安定しています。たしかに、もっと実効ある守備を・・もっとシンプルにボールを回すパス&ムーブを・・なんてことも思いますが、とにかく運動量が多くなっただけではなく、攻守にわたって、アクティブゾーンに絡んでいこうという姿勢が(意志が)高みで安定していると感じるのです。もちろんそれが、彼のボールタッチ数増加のバックボーンというわけです。あっと・・それ以外でも、ダイナミックな守備を基盤にチームの全体的な調子が上がっていることと、チームメイトたちの中村俊輔に対する信頼度が高揚していることも、同様にバックボーンの大きな部分を占めていることは言うまでもありませんよね。彼にボールを集めようとする姿勢が明確に見えるようになっていますし、彼がボールを持ったとき(持ちそうになったとき)のチームメイトたちの動き出しの速いこと。

 そしてボールを持ったときの中村俊輔。ものすごく自信レベルが高まっていると感じます。相手との接触プレーにも、まったく動じなくなっていますしね。でも、シンプルプレー(組織プレー)と「個」をベースにした仕掛けプレーのバランスが・・。ちょっと、ボールをこねくり回しすぎだと感じるのです。高質なエスプリ満載のボールコントロールとキープ、そして、タテパスばかりではなく、仕掛けのサイドチェンジパスなど、クリエイティブな正確な「球出し」は秀逸なんですが・・。

 全体的なペースは握っているレッジーナ。それでも、大味ではありますが、実効という視点ではパルマの攻撃の方が明らかに危険です。ここぞ!というシーンでの、ボールがないところの動きと、ボールの動きのハーモニーが高質・・ってな表現が適当ですかね。だから、決定的シュートシーンの内容では、少しだけパルマの方が上手なのです。

 中田英寿のプレーは、もちろん高みで安定しています。例によってのアクティブな守備をベースに、最後はシュートまで・・という明確なイメージをベースに、シンプルな攻撃プレーを積み重ねています。

 彼の攻撃プレーイメージは、ムトゥーとアドリアーノの「個のチカラ」をうまく発揮させる演出家・・なんてことですかネ。この二人にしても、中田が絡んでくれば、シンプルにボールを離す。その部分も、パルマが調子を上げている背景にあります。やはりサッカーは、組織と個のバランスがもっとも重要なファクターだということです。

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 後半は、やはりパルマがペースアップしてきます。

 私は「数字の羅列」は好きではないのですが、ここでは、選手たちが描く、出発点としての「基本的なプレゾーンのバランス」という風に捉えてください。要は、パルマのポジショニングバランス(システム)のことです。フォーバックの前に、(この試合では)右からブリーギ、ボネーラ、フィリッピーニが並び、その前で、たまに左右のポジションを入れ替える中田英寿とムトゥーの「二列目コンビ」と、ワントップのアドリアーノが攻撃ブロックを形成しているのですが、数字でいえば、それは「4-3-2-1」なんて表現できます。これは、1998年フランスワールドカップで優勝したフランス代表チームの基本ポジショニングバランスと同じだと考えられる?!

 後半、このパルマのチーム戦術が、徐々にうまく機能しはじめたというわけです。もちろん、攻撃ブロックと下がり気味中盤選手たちの前後のポジションチェンジは、そんなに頻繁ではありません。それでも、相手の中盤が「下がった」状況を見計らい(そのことで自然と自分たちのポジションも上がり目になる状況をしっかりと意識しながら)、下がり目中盤の左右を構成するフィリッピーニとブリーギが、トップ選手たちとの「ワンツー」をベースに、彼らを追い越すようなオーバーラップを仕掛けていくのです。もちろん、前気味リベロであるボネーラは上がってきませんがね。

 またムトゥーが魅せる、状況を見計らった「個の勝負」にも鋭さが出てきます。そしてアドリアーノの大迫力の最終勝負。それらの機能性をコントロールしているのが中田英寿・・。そんな構図ですかね。

 ということで試合は、アドリアーノの二発によって、パルマが、2-0という順当勝利をおさめました。まあ二点目は、それを演出したムトゥーにも「0.8点」は献上しなければなりませんがネ。

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 ところで中村俊輔。後半も20分を過ぎたところで交代してしまいます。たぶんデカーニオ監督は、レッジーナの攻撃の起点が中村に集中してしまっている・・また彼が、「実効が伴わないカタチ」でボールをこねくりまわす傾向にあり、そこでボールの動きが停滞傾向になっている・・だからパルマ守備ブロックが、次の勝負所に対するイメージを明確に描けてしまう・・と判断したのでしょう。

 たしかに「その後」は、レッジーナ攻撃でのボールの動きはより活発になったとは感じました。でも結局は、攻撃での創造性レベルが明確に減退してしまっている・・だからパルマ守備のパスカットの頻度も大きく上がってしまった・・とも感じました。

 中村は、もっともっと、シンプル組織プレーと個の勝負プレーのバランスに気を遣い、それにメリハリをつけなければならないということです。全体的な運動量は格段に向上している・・それでも、彼が起点になった仕掛けでは「パス&ムーブ」のアクションが少なすぎ、どうも、タメキープからの一発パス勝負というプレーばかりが目立つ・・これでは、パルマ守備ブロックに次の仕掛けを読まれやすくなってしまうのも道理・・というわけです。

 実効あるディフェンス参加は言うまでもなく、攻撃では、ドリブル、タメ、勝負パスばかりではなく、彼がコアになった、最終的な仕掛けに入っていく前段階での「活発なボールの動きの演出」も中村のテーマなのです。もちろん、攻撃での変化を演出するためにね。

 とはいっても、レッジーナの調子高揚とともに、彼のプレーも発展をつづけていることだけは確かな事実。とにかくガンバレ、中村俊輔。




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