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帰国後のドイツ報告・・その(4)・・今回は、ドイツ代表コーチ、エアリッヒ・ルーテメラーとの対談をまとめましょう・・(2002年8月15日、木曜日)

帰国してから、日本の夏を「満喫」している湯浅です。もちろんオートバイに乗りながら、外気へ吐き出されてくる様々な熱気を一人で吸収しているという錯覚に陥りながらですよ。フ〜〜ッ!

 あれ・・!? このフレーズって、スポナビでの導入部と同じだったっけ・・。まあ、ご容赦。

 さて今回と次回は、プリントメディアで発表した「対談記事」を紹介します。相手は、現ドイツ代表コーチの二人。一人は、代表コーチだけではなく、ドイツでのプロコーチ養成コース(S級コーチ養成コース)の責任者も兼任するエアリッヒ・ルーテメラー。もう一人は、代表チームの戦術参謀との呼び声高いミヒャエル・スキッベ。

 まずは、今年3月にエアリッヒ(ルーテメラー)と話した内容をまとめたプレーボーイの記事(今年3月に発売された号)からはじめましょう。以前にも紹介した写真も貼付します。

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(3月25日に書き上げ、ドイツから日本へ送った週刊プレイボーイ用の原稿です)

 「日本代表はウクライナに勝ったんだろ。いや、大したもんだよ。ウクライナはいいチームだぜ。オレたちも苦労させられたよ。それにしても日本代表は強くなっているな。どの試合だったかは覚えてないけれど、最近のビデオを見たんだよ。技術的にもレベルは高いし、本当にスマートなサッカーをやっている・・」。

 大阪、長居でのウクライナ戦を観た次の日に、関西空港から一路ヨーロッパへ。私のビジネス関連でアメリカにちょっと立ち寄らなければならず、結局、地球を「2/3周」してドイツに到着したという次第。いつものとおり、フランクフルト空港でレンタカーをピックアップし、その足でブンデスリーガ(ドイツプロ一部リーグ)のシャルケ04対カイザースラウテルン戦を観るために250キロの道程をブッ飛ばし、そして試合後の夜に、私が宿泊しているケルンのホテルまで尋ねてきてくれた、現ドイツ代表コーチのエアリッヒ・ルーテメラーと旧交を温めたというわけです。フ〜〜ッ!

 冒頭で紹介したのは、会った早々に、エアリッヒの口をついて出た言葉。W杯予選のプレーオフで闘った相手ですからね。実感がこもっていること。

 「それで、どうなんだい、今回のドイツチームは・・」。そんな私の問いかけに、「オレたちは、あまり注目されていないだろ。それがいいんだよ。落ち着いてチーム作りができるからな。選手たちは、常に全力で闘わなければ勝てないという現実を心底理解したから、組織として忠実にプレーしようという姿勢で取り組んでいるよ。ドイツ代表にとっては、プレーオフまで戦うなんていうのは初めてのことだし、屈辱的な経験だったけれど、逆にそれがよかったということさ・・」。

 予選リーグでイングランドに喫した、スキャンダラスな「1-5」という大敗。また最終節での、格下のフィンランドに対する「0-0」という引き分け。それらが、自らの現状に対して素直に目を見開かせるという、この上なくポジティブな心理プロセスのキッカケになったのです。

 フィンランドとの無様なゲーム内容など、ウクライナとの決戦に臨むドイツ代表には、容赦のない批判が渦巻きました。ドイツ大衆紙のビルド新聞などは、「ドイツ代表よ、オマエたちは、ワールドカップにいくには愚かすぎる!」なんていう大見出しを、一面にデカデカと踊らせたりして・・。その見出しが、一般生活者の心情に同調したようで、その日のビルド新聞はバカ売れだったとか。そんな厳しい雰囲気が、チームにとって大きなプレッシャーになったことはいうまでもありませんが、監督のルディー・フェラーは、プレー内容が悪いことを痛感しているのは選手たち自身だ・・と、まずメディアノイズを遠ざけることから心理トリートメントをはじめます。そして、選手たち一人ひとりと深く話しあうことで「現実」と向き合わせ、心理的なバランスを整えていったのです。

 「ルディー(フェラー)は優秀な心理マネージャーだよ。ローマやマルセイユでも活躍したドイツを代表するストライカーだったから、国際経験も豊富だろ。それに、多くの優れた監督と深く接したことも大きかったよな。ギリギリの状態まで落ち込んだ選手たちの心情をよく理解できるだけじゃなく、いま何をすべきかについて明確な方向性も見えていたということさ」。

 「でも、そんなルディーのウデの本領が発揮されたのは、プレーオフなんていう、鼻っ柱をへし折られる状況に陥ったからなんだよ。それまでは、結果的にはある程度うまく回っていたし、もしフィンランドに勝って一位通過になっていようものなら、あのまま、プレー内容の悪さに目を背けた状態で本大会へ行くことになっていたかもしれないからな。オレたちは、何とか改善しなければって思っていたんだよ。だからこそ逆に、現実を直視させるいい機会が訪れたと思ったんだ。ルディーは、ここぞとばかりに、いまの現実的なチカラや戦術について、選手たちととことん話し合ったというわけさ。もちろんオレやミヒャエル(スキッベ=もう一人の代表コーチ)も動きまわったけれど、とにかくルディーのリーダーシップは素晴らしかったぜ・・」。

 脅威を、実効ある機会として見事に活用したフェラー、スキッベ、ルーテメラーの首脳トリオ。確かなウデの証明でした。

 そして、現実と向き合うことでソリッドにまとまったドイツ代表は、ウクライナとの決戦を、一勝一分けで乗り切ることになります。それも、ショル、ダイスラーといった、創造性リーダーを欠いた状態で・・。

 現実を直視したときのドイツは強いゾ!・・なんて、反面教師としても私を発展させてくれたドイツに対してだけは、どうしてもナイーブになってしまう湯浅なのです。(了)

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 この原稿を発表した後、ドイツ代表は、創造性リーダーともいえる、メーメット・ショル、セバスチャン・ダイスラー、はたまた最終守備ラインの重鎮イェンス・ノヴォトニーやヴェルンスと、次々と主力選手たちを怪我で失っていきます。

 それだけではなく、W杯へ向けたトレーニングマッチで低調なゲームがつづいたことで、メディアからも厳しいコメントが相次ぐようになっていきます。「いまのドイツ代表では、グループリーグを突破するのがやっとだろう・・」なんてニュアンスの報道が相次ぐことになります。国民の期待もどんどんと冷え込み、W杯パッケージ旅行も、売れたのは「300人分」くらいだったとか・・。

 それでもW杯本大会でのドイツ代表は、吹っ切れたことで一つにまとまり、限界まで闘い抜きました。「とにかく、リンケとかハーマン、またノイヴィルやベルント・シュナイダー等が、これまでで最高のプレーを魅せつづけたんだよ。彼らの意識が、最高潮にまで高まったということだよな。サッカーでは心理的な要因がものすごく大きいということを再認識させられたよ」。エアリッヒが語っていたものです。

 そしてワールドカップ後に、彼と再会し、そこのところを語ってもらいました。

 二週間にわたり、週刊プレイボーイの誌面で、彼との対談内容を連載しました。

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(7月22日に書き上げ、ドイツから日本へ送った週刊プレイボーイ用の原稿です)

 「たしかに少しは落ち込んだよ。でも最後は、オレたちが戦線離脱した選手たちを補って、しっかりと勝てるチームを作り上げられることを証明できたよな。何といっても、準優勝という結果を残したんだから。別な見方をすれば、今回の大会は、若いタレントが羽ばたくための最高の機会になったとも言えるな。バラックだけじゃなく、メッツェルダーやクローゼ、またセバスチャン・ケールにしても、大会を通じて大きく成長したからな・・」。

 今年の3月に対談した、現ドイツ代表コーチ、エアリッヒ・ルーテメラーと再会し、ワールドカップを振り返りました。3月の時点では、「まあ、いろいろなことがあったけれど、今回の大会ではかなり行けるという感じがするな・・」ということで意見が一致したものです。

 でもその後、最終ラインの重鎮ノヴォトニーやヴェルンス、若手プレーヤーの筆頭であるダイスラーが怪我で戦列を離脱し、攻撃の創造性リーダーとして期待されたメーメット・ショルまでも、コンディション不良で辞退してしまうという状況に陥ってしまいます。

 チームの主力と期待された選手たちを、次々と失っていったドイツ代表。「前回オレたちが会ったときは、そんなコトになるなんて思いもよらなかったよな・・」。そんな私の問いかけに対して、エアリッヒが、冒頭のように答えたというわけです。

 「でも、状況が厳しくなればなるほど、ルディー(フェラー監督)の態度は、毅然としたものになっていったんだよ。とにかく、ドイツ中のメディアが、もう代表チームはオシマイだなんて書き立てていたからな。もしそこで、たしかに大変だけれど、いまいる選手で頑張るしかない・・なんていうニュアンスの発言をしようものなら、選手たちがどう思うか分かり切っている。どうせオレたちはセカンドチョイスさ・・ってな具合だよ」。

 実際にエアリッヒも、そんなメディア攻撃の渦なかにいたから、言葉の端はしに実感がこもっています。チームの精神状態を高揚させる作業は、難しいものなのです。何せメディアは、あることないことスキャンダラスに書きますからネ。選手たちがそれに動揺してしまっては、チームのモラルが地に落ちてしまうというわけです。

 「ルディーは、ドイツは、世界でも屈指のフットボールネーションだし、我々には、十分なチカラを持った選手たちが揃っているから、まったく心配していない・・って言いつづけたんだよ。そして、選手たちとの個人的なミーティングを重ねながら互いの信頼関係を築き上げていったのさ」。

 「要は、周囲のノイズを共通の敵にして、チームをまとめる方向にうまく活用したということだろ??」。そんな私の問いかけに、ニヤッと笑いながら、「まあ・・、そういうところかな」と、エアリッヒ。そんな厳しいプロセスを経て、「よし、やったる!」という気合いがチーム内に充満していったということです。

 「そんな雰囲気があったからこそ、出場停止で選手を欠いても、次の選手たちが十二分にチカラを発揮できたんだよ。誰もが、最高のプレーをしてやるっていう気概をもっていたし、レギュラー選手を失うという状況に慣れていたからな」と、エアリッヒ。

 そんな彼らがもっとも重視していたのは、グループリーグ第一戦のサウジアラビアでした。「最高のスタートを切りたかったんだ。オレたちが優勝した、1990年イタリアワールドカップのようにね。そしてオレたちは、サウジ戦をステップにどんどんと調子を上げていったのさ」。1990年イタリアワールドカップ第一戦の相手は、ユーゴスラビアでしたが、当時の西ドイツは、これでもかと攻め立て、結局「4-1」で圧勝しました。そのときのエースストライカーが、現代表監督のルディー・フェラーだというわけです。なるほど、あのときのイメージで完璧な準備を重ねたということか。

 「サウジにつていは、ビデオだけじゃなく、ミヒャエル(スキッベ=もう一人の代表コーチ)が、実際に何試合かスカウティングに出掛けたしな。まあ、サウジが、オレたちに名前負けしたこともあったから、最高のカタチで終えることができたわけだけれど(8-0でドイツが圧勝!)、本当のサウジはあんなものじゃない。実際、次のカメルーンやアイルランド戦では、本来の実力を発揮して立派な内容のサッカーを展開したじゃないか。だからオレたちは、ヤツらを戦術的にも研究し尽くしたんだよ。同時に、厳しいシーズンを終えた選手たちを十分に休養させながら、選び抜いた情報を注入していったんだよ。とにかくサウジ戦は、それらすべてが最高のツボにはまったということだな」。(了)

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(7月28日に書き上げ、ドイツから日本へ送った週刊プレイボーイ用の原稿です)

 「ワールドカップでは、準決勝の韓国戦と決勝のブラジル戦が最高の内容だったな」。

 先週に引き続き、現ドイツ代表コーチ、エアリッヒ・ルーテメラーとの対談を基に、決勝までの道程を追っていくことにします。

 最高の準備で臨んだグループリーグ初戦の対サウジアラビア。それに「8-0」と完勝したドイツでしたが、つづくアイルランド戦では、内容的に凌駕していたにもかかわらず、終了間際のロスタイムに同点ゴールを決められてしまいます。「ヤツらが後半あれほどペースアップするとは予想していなかった。油断していたから、いいクスリになった。まあ、その反省が、次のカメルーン戦につながったということだな」。

 エアリッヒが、そう振り返ったグループリーグ最後のカメルーン戦。「前半40分にラメローが退場になったことで、後半から左サイド専門のマルコ・ボーデを入れたんだけれど、それが功を奏した。カメルーンは、左サイドから攻撃を仕掛けられなくなったし、そのボーデが、先制ゴールまで叩き出したんだからな」。試合の展開を読み、一人足りない状況を十分考慮したポジショニングバランスの調整。たしかに見事な采配でした。

 決勝トーナメント一回戦のパラグアイ戦では、ツィーゲ、ラメロー、ハーマンという主力が出場停止でした。「そんな状況はもう何度も経験していたからチームが不安になることはなかったね。代わりの選手たちが存分に働いてくれたよ」。先週号でも書いたように、ルディー・フェラー監督は、大会前から何人もの主力を失ったことに対し、「他にも能力のある選手が揃っているからまったく心配していない・・」と、自信あふれる態度を貫き通しました。そのことで、選手たち全員の自覚が格段に高まっていたのです。そして、危なげない内容でパラグアイを退けたドイツは、つづくアメリカにも競り勝ちます。「でも、アメリカ戦の出来は最悪だったな。大会前の親善試合で楽勝したから、甘く見ていたのかもしれない。でも、それもまた良いクスリになったんだよ。だからこそ次の準決勝(対韓国戦)では、相手につけ入るスキを与えない徹底したサッカーが展開できたんだ」。

 韓国戦は、まさにドイツの横綱相撲でした。全員の高い守備意識によって、サイド攻撃など、韓国の仕掛けをことごとく抑え込み、余裕で勝ち切ったのです。「まったく負ける気はしなかったね。それに韓国は、やはり少し疲れていたようだったしな」。ドイツのベンチは終始落ち着いていたというエアリッヒ。そしてブラジルとの決戦へ向けた準備がはじまりました。

 「選手たちには、いつものように相手チームのエッセンスを編集したビデオを何度も見せたんだよ。このビデオは、ドイツのスポーツアナリュティック社の、マルコス・シュールツという人物がまとめているんだけれど、相手の守備のやり方、攻撃での組み立てや仕掛けのツボだけじゃなく、ロナウド、ロナウジーニョ、リバウドたちのプレーのクセまでもしっかりと分析している優れモノだぜ。イメージトレーニングとして最高の素材さ」。

 そんな徹底した準備の甲斐あって、決勝でのドイツは、素晴らしい闘いを展開します。選手一人ひとりが、攻守にわたって、スムーズに「次」のプレーに移行できていたし、ブラジルの才能をしっかりと抑え込んでいましたからね。才能レベルではブラジルに及ばないドイツは、流れるような組織プレーで互角に渡り合ったのです。

 「前半は何度かピンチを迎えたけれど、後半立ち上がり20分間のゲーム内容を見て確信したよ。絶対にブラジルを丸め込めるってね。でも、オリバー(カーン)が信じられないミスをしてしまって・・。まあそれもサッカーさ。それにしても、ブラジルも、オレたちの攻撃のツボについて、本当に詳細にスタディーしていたよな。コーナーキックの数では、オレたちの13本に対し、ブラジルはたったの3本だったんだぜ。ドイツが攻め込んでいたことの証明だけれど、ヤツらは、勝負所を効果的に抑えることで、ことごとくはね返してしまった。決勝でのブラジルの守備は、それまでとは見違えるほど素晴らしい出来だったよ」。そんなことを語るエアリッヒの表情には、やるだけやったという満足感が漂っていたものです。

 最後に、エアリッヒが日本代表について語ったコメントの中核部分をご紹介します。

 「日本のゲームもテレビで観戦したけれど、オレたちの発想にも通じる本当に素晴らしい組織プレーを展開していた。それでも、個人勝負のクオリティーが足りないことも確かだよな。それはオレたちの課題でもあるわけだけれど、とにかく、もっと個人の部分を発展させなければならないということだな」。(了)

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 かなり長くなってしまいましたが、最後に、別なテーマでサッカーマガジンに紹介した短い記事を・・。

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(7月24日に書き上げ、ドイツから日本へ送ったサッカーマガジン用の原稿です)

 「ワールドカップの決勝では、たぶん8割方がブラジルを応援していたのかもしれない。まあオリバー・カーンは別かもしれないけれど、とにかくドイツのサッカーに共感するファンが少なかったことはたしかだね。それについてどう思う?」

 「まあそうだろうな。ブラジルは、スター揃いで、サッカーの魅力を満載したチームだからな。それでも、サッカーの本質的な内容では、決してオレたちが劣っていたわけではないぜ。たしかに、個人的な才能レベルでの面白さには欠けていただろうけれど・・」

 先日再会した、現ドイツ代表コーチで、プロコーチ養成コースの責任者でもあるエアリッヒ・ルーテメラーと、ワールドカップについて話し合ったときのことだ。ボクの挑発的な質問に、落ち着いた声で、エアリッヒがそう答えていた。バラックを欠いたとはいえ、ゲーム戦術的な準備を積み重ねたドイツ代表は、自信をもって決勝に臨んだ。そして実際に、ブラジルを瀬戸際まで追いつめる時間帯もあった。ドイツの13本に対し、ブラジルが得たコーナーキックが僅か3本だったことも、その事実を裏付けていた。とはいっても、ファンタジーという視点では、たしかにブラジルに一日以上の長があった。

 「そこなんだよ。とにかく、若手の創造性をもっと解放しなければ・・」。エアリッヒの言葉には、コーチ養成コースの責任者としての高い意識が感じられた。「でも、ネッツァーやベッケンバウアーの時代と違って、ストリートサッカーが姿を消してしまったからな・・」。そんな彼の言葉に対し、「だから普段のトレーニングに、ストリートサッカーの要素を取り入れるアイデアが重要になってくるんだよ。日本でも、型にはまり過ぎたトレーニングの弊害が目に付くしな・・」と、ボク。それに対し、間髪を入れず、「その通り。だからこそ、優れたコーチが必要なんだ」と、エアリッヒの声に力がこもった。

 だからこそ優れたコーチが必要だ・・。含蓄がある。トレーニングにストリートサッカーの優れたファクターを取り入れるには、コーチの忍耐が欠かせない。楽しむことを目的にしたストリートサッカーでは選手が主体。だからこそ創造性も伸びる。もちろん勝負ファクターも不可欠だから、仲間のサボリには、彼ら自身が対処するようにもなるだろう。立ち会うコーチは、彼らの主体性を殺いではならないし、その「トレーニング」が、動きのない単なる遊びになってもいけない。だからこそコーチには、注意深く介入できるだけのハイレベルな「指先のフィーリング」が求められるのである。

 長くドイツでは「オーバーコーチング」と呼ばれる、教え過ぎの傾向が問題になっていた。それは、チーム戦術という組織プレー(ロジック)ばかりに目が向いていたからに他ならない。そこへ、いかに「個のエスプリ」をうまくミックスしていくのか。いま、コーチの「バランス感覚」が問われている。

 次回W杯ホスト国であるドイツ。組織と個が高質のバランスを魅せるサッカーで「輝き」を取り戻せるか。期待がふくらむ。(了)

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 次回は、もう一人の代表コーチ、ミヒャエル・スキッベとの対談、ザールブリュッケン(ドイツ)で行われたサッカーコーチ国際会議において、スカウティングについて講演したエアリッヒ・ルーテメラーについてサッカーマガジンで発表した文章を、発表された記事以外の内容も含めて紹介しますので・・。




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