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アジア大会-決勝・・本当に悔しいだろうな・・立派なゲームを展開した日本代表・・「U21」日本代表vsイラン代表(1-2)・・(2002年10月13日、日曜日)

「U21」日本代表は、イランとの決勝戦を、素晴らしい学習機会にしました。いや・・、というよりも、そこに至るまでのプロセスが既に素晴らしい学習機会で、この決勝戦は、会得した学習コンテンツのお披露目だったといった方が正しい表現だと考え直しました。

 前回の準決勝、タイ戦レポートの最後に、『イランとの決勝戦をホンモノの学習機会にすることができるのか・・』と書いたのですが、既に彼らは、準決勝までのプロセスで存分に成長を遂げていたのです。

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 「U21」日本代表は、イランのことを正確に分析し、しっかりとイメージ準備をこなしたようです。ドリブル主体の仕掛けをベースに、「高さ」をフルに活用した最終勝負やロングシュートを仕掛けてくるイラン。それに対し日本代表は、ボールホルダーへの素早いチェックを忠実にこなしつづけながらも、絶対に安易に当たりに行かず、粘り強くマークしつづけます。イラン選手たちのスピードアップするタイミングを明確にイメージしている日本選手たち。そんな日本選手たちの対応に、イランのドリブラーたちも、前への勢いを殺がれることで突破(マーカーを外すドリブル)へのチャレンジを諦め、次に展開するようになっていきます。そうです。それこそ日本選手たちの「狙い目」なんですよ。イランのパス回しは「大きく」はありませんからね。そして、どんどんと中盤でボールを奪い返し、危険な攻めを展開していくのです。

 そこでの彼らのプレー姿勢は、自信にあふれ、あくまでもチャレンジャブルでした。身体を寄せられても、ビビることなく「押し返し」、そのままドリブル突破にチャレンジしたり、素早いコンビネーションで崩していったり。「中途半端」という雰囲気など微塵も感じません。それが素晴らしい。吹っ切れた若武者たち。

 それでも、やはりイランの守備は強かった。人数をかけているだけではなく、パワーを前面に押し出す強烈な競り合いを仕掛けてきます。またボールを奪い返すテクニックも上手い。それでも我らが若武者たちは、まったくビビらずに、攻撃の「心理的な勢い」を増幅させていったのです。

 何度も失敗したりミスをしたりする・・それでも、彼らのチャレンジマインドに陰りを感じることがない・・。そして、ミスにめげることなく、何度も、何度も積極的にトライし、そして決定的なチャンスを作り出していく。素晴らしい。

 また前述した守備にも、格段のクレバーさとダイナミズムを感じていました。猪突猛進ではありません。あくまでも組織ディフェンス。一人ひとりが、「使い、使われる状況」を明確にイメージしながら守備に入っていると感じるのです。最初は押し込んでいたイランでしたが、日本代表のクレバーで粘り強いディフェンスに、徐々に攻めの「勢い」が減退していったものです。チャレンジするのではなく、パスで「逃げるプレー」が目立ちはじめたのです。そしてゲームは、徐々に日本のペースになっていきました。それでも・・。

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 後半、鈴木啓太が、青木と交代します。青木が最終ラインに入り、前半はそこでプレーした阿部勇樹が守備的ハーフへ上がったのです。決して悪い出来ではなかった阿部。でも明らかに、ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェックなど、鈴木啓太の「ボール絡みプレー」とはタイミングが違う・・。そこでは、日本代表の中盤守備のリズムが、少し減退しはじめた・・と感じていました。

 もちろん「もう少し」時間があったら、森崎、そして前線の選手たちとも、ディフェンスの息が合ってきたとは思うのですが、何せ、不運な先制ゴールを奪われてしまったのが、後半開始早々でしたからね。自分たちのリズムを、まだ明確に掴めていないのに、ゲームの状況が急に変化してしまった・・。だから、その後の日本代表が積極的なゲームリズムを取り戻すまでに、より多くの時間を費やしたというわけです。またその間、イランに、決定的チャンスを作り出されもしましたからね。

 そして大久保に代えて田中達也を入れ、阿部に代えて石川を投入した勝負の時間帯。そこでも日本は、立派な最終勝負に挑んでいきましたよ。中途半端ではないから(思い切り勝負を仕掛けていくから)、変なカタチでボールを奪い返されることが少ない・・。一つひとつの仕掛けが、フリーキックやゴールキックなどの「アウトオブプレー」につながるのですよ。それも彼らが成長したことの証だと感じていた湯浅でした。

 自分たちのミスで奪われた二失点については、もう仕方ないとしか言いようがありません。大事なことは、そこで体感したことを、常にイメージ的に「反芻」することです。それがあれば、次の「ホンモノの勝負の場面」で、瞬間的に、そのシーンが脳裏に蘇ってくるはず。そしてそのときは、もうミスにつながらない・・。それが、ホンモノの勝負マッチこそが、最高の学習機会(進歩のベース)だといわれる所以なのです。

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 立派な、本当に立派なゲームを展開した日本の若武者たち。だからこそ、悔しさも極まっているに違いない・・。それでも彼らが、サッカーにおける普遍的なコンセプト(全体を貫く統一的な視点や考え方)を明確に意識しつづけることが如何に重要であるかを、冷や汗とともに体感しつづけたことで、ホンモノの発展のキッカケを掴んだことだけは確かな事実です。

 サッカーにおける普遍的なコンセプト。それは・・不確実ファクターてんこ盛りのサッカーだからこそ、最後は、自分主体の判断、決断をベースにした、解放された(自由な)「極限の実行力」だけが問われる・・ということです。

 また彼らは、それを体感したからこそ、本当の組織プレーの意味をも心底理解したに違いないとも思っています。組織プレーが、チームの目的を強烈に意識した積極的な(チャレンジャブルな)個のプレーこそが、「有機的に連鎖」した結果として出てくる「ハーモニーあふれる集合体」だということを・・。

 ギリシャオリンピックだけではなく、ドイツワールドカップをも視野に入れた、更なる発展に注目していきましょう。




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