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アジア大会準々決勝・・ヤッタ〜! 粘勝、おめでとう!!・・「U21」日本代表vs中国代表(1-0)・・そしてジーコジャパンについてもちょっとだけ・・(2002年10月8日、火曜日)

「えっ! 鈴木啓太が先発で出るのかい!?」。スターティングメンバーを見た途端、そんな頓狂な声が出てしまいましたよ。とにかく、三日前のグループリーグ最終戦、対ウズベキスタンでの「ケガで交代した」シーンは、それほどショッキングなものでした。一瞬、「あっ、脛骨(スネの太い方の骨)をやられた・・」なんて、「骨折」という文字までも脳裏に浮かびましたからね。そして「あのヤロー〜〜!」と、足の裏をみせ、全力で鈴木のスネを踏みつけたウズベキスタン選手を睨みつけてしまいました。

 あのファールは、完全に退場処分に匹敵する危険なプレー。そのウズベキスタン選手は、ボール「だけ」を足裏で押さえようという意図だったんでしょうが、鈴木啓太は、そのウズベキスタン選手のボールコントロールが一瞬大きくなったことで、「脚と足」でのスライディングを仕掛けていきました。でも「ヤツ」は、足裏を見せたタックル。ちょっとでもズレたら、確実に、鈴木の身体を傷つけるのは自明の理だということです。このウズベキスタン選手が、鈴木と同様に「脚全体」で押さえにいくスライディングを仕掛けていったなら全く問題はなかったのに・・。そんな、「脚と足のスライディングvs足裏から突っかけていくタックル」という状況がいかに危険かを体感しているフットボールネーションの選手たちだったら、確実に乱闘騒ぎになりますよ。

 「足裏でタックルされたとき、スネ当てがバラバラになっていましたよ・・」。試合後に、鈴木啓太がそんなことを言っていたといいます。そうなのです。「スネ当て」は、本当に実効ある「予防ツール」なんですよ。バラバラになった・・ということは、スネ当てが、足裏タックルのショックの大部分を「吸収した」ということですからね。本当に、スネ当ては神様なのです。

 とにかく「その」鈴木が先発。そして素晴らしいダイナミックプレーを披露します。この試合での彼は、スーパーヒーローであり、グラウンド上の真のリーダーでした。いや、頼もしい。

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 32年ぶりに準決勝へ駒を進めた「U21」日本代表。このゲームを見ていてまず感じたことは、「山本監督は、とにかく勝負至上で、徹底した戦術サッカーをプランした・・」ということです。ファイブバックの前に、森崎と鈴木で構成する守備的ハーフコンビが並びます。そしてその前の左右に、田中達也と大久保が「初期段階の網」を張るというディフェンス偏重ゲーム戦術。

 簡単に言えば、後方の7人が(基本的には)守備専業で、前の大久保、田中達也、そして中山が、ロングパスからの一発勝負や、単独ドリブル勝負を主体にしたカウンターを仕掛けていく・・という発想です。

 人数をかけた組織的な攻め(パス主体の攻撃)が特徴の「U21」日本代表ですから、このような展開には、ちょっと面食らいました。そして、前回の「中国対日本」のコラムを読み直していました。案の定そこでは、「日本は、素早く広いボールの動きなど、組織的には良い攻めを展開するが、最後のところでの個人勝負がままならない・・」なんてことを書いていました。まあ、あの試合とはメンバーも違いますし、このゲームは、勝つことだけが目的ですから・・。また、今回のアジア大会グループリーグの初戦(対パレスチナ)で、組織プレーに詰まり、最後は「個」で打開したという成功経験もありましたから・・。

 さて、「前後」が分離した戦術サッカーですが(まあ、田中隼磨や根本の機を見た攻撃参加もありましたし、決勝ゴールのアシストは、ストッパーの三田だったから、完全分離とまでは言えませんがね・・)、これって、浦和レッズの「それ」に似ている!? そんな印象を持ったのですよ。

 たしかに全体的な「構図」は似通っています。「粘勝」という結末もネ。とはいっても、「内容的」には、かなり違う。互いのポジショニングバランスを意識した(効果的なマークの受けわたし!)、「ブレイク・タイミング」を遅めにする守備のやり方は、マンマーク主体のレッズとはまったく違うし、攻撃の突破力にしても、エメルソン&トゥットのコンビとは比べものになりませんから・・。

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 さてゲーム。その構図は、中国が多くの時間ボールを保持し、日本が、組織的な粘りの守備からカウンターを仕掛けていくという内容になります。

 それにしても、やはり・・というか、中国の「個のチカラ」のレベルは高いと感じますよ。守備にしても攻撃にしても。それでも、前回も書いたとおり「組織的に崩していく」という発想は、まったく感じられない。とにかく、ロングボールで前線に「起点」をつくり、そこからドリブル突破を仕掛けていったり、ヘディングで落としてセカンド(シャドー)ストライカーがシュートまでいく・・なんてことをイメージしているんでしょうが、それだけでは、「変化の演出」なんて出来やしない。逆に、中国がイメージする「起点」のゾーンがミエミエだから、日本守備ブロックの効果的な「集中」によって、ことごとく潰されてしまう。中国がチャンスを作り出すとしたら、セットプレーからのヘディング勝負か、中距離シュートくらいでした。

 もっと、最前線と中盤が、ボールのないところでの動きから、積極的に「タテのポジションチェンジ」を繰り出していくとか、早いタイミングでのサイドチェンジを繰りかえすとかの戦術的なアイデア(チームが共有する攻めのプロセスイメージ!)がなければ、いくら個人的な能力が高かったとしても崩せませんよ。

 まあ、彼らのボールがないところでの動きにダイナミズムが感じられなかったのは(ボールをしっかりと動かせなかったのは)、日本代表の守備ブロックが、クレバーで忠実なプレーを展開視したからとも言えますがネ。

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 勝つこと「だけ」を明確に意識した「戦術的な戦い」を徹底し、そして成果を勝ち取った「U21」日本代表。心から「おめでとう!!」と言いたい湯浅でした。

 とにかく彼らも、ホンモノの勝負の場だからこその、実の詰まった発展を遂げているということです。次の準決勝の相手は「タイ」だということですが、そこでは、より「動的」なディフェンスをベースに、組織と個がハイレベルにバランスした魅惑的な攻撃も展開してもらいたい・・なんて、身勝手に期待している湯浅でした。

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 「おまけ」ですが、明日(10月9日)の「報知新聞」に載る、ジーコジャパンについての私のコラムを内緒で・・。

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(今日の昼間に仕上げた、報知新聞用のコラムです)

 本当にジーコは、中盤を「外国人」で固めるつもりらしい。中田英寿、小野伸二、稲本潤一、そして中村俊輔。私も含め、日本中の誰もが一度は見てみたいと思っている「中盤カルテット」には違いない。ジーコは、「一つのポジションにこだわらず、攻守にわたって、ある程度自由にプレーさせたい」と言うのだが・・。

 基本的にはフォーバックで臨む日本代表。スリーバック(サイドも含めたファイブバック)とは違い、特に二列目から飛び出そうとする相手選手を、ミッドフィールダーの誰かが最後までマークしつづける等、中盤でのディフェンスが生命線になる。だから、忠実マークや、押し上げた味方の穴をカバーするなど、目立たないバックアップ守備プレーに徹する「汗かきタイプ」の選手を組み込むのが普通なのだ。もちろん中盤全員の守備意識が高ければ問題ないわけだが・・。

 現代サッカーでは、才能レベルにかかわらず、高い守備意識が発展のキーワードである。例外はほとんどない。それこそが、創造性あふれる攻撃プレーのベースなのだ。

 今回のジャマイカ戦では、相手が明らかに格下だから「ほつれ」が目立つシーンは少ないだろうし、もし中盤が機能不全に陥っても、中田英寿がリーダーシップを発揮してくれるとは思う。とにかく、一人ひとりが「汗かきプレー」にも精を出さざるを得ない状況に放り込まれた彼らのディフェンスにも注目することにしよう。

 さて、見所豊富なジーコジャパンが始動する。(了)

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 私の「心配の種」が誰にあるかは、もう皆さんにはお分かりですよネ。でも、この中盤カルテットを「見てみたい」のも私の本心です。あ〜〜、来週の水曜日が待ち遠しい。




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