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欧州便り(1)・・ブンデスリーガ優勝チーム決定!・・ドルトムントが、ヒヤヒヤの勝利を飾り、2001-2002年シーズンのチャンピンに決まりました・・(2002年5月4日、土曜日)

どうも皆さん。ドイツに到着はしたのですが、どうも時間が・・。本当は、フランクフルト空港でレンタカーをピックアップし、そのままレーバークーゼンまで飛ばして勝負ゲームを観戦するつもりだったのですが、飛行機が遅れ、雨が降り、通関に時間がかかりで、空港ロビーに出てきたときには、既に前半がはじまったタイミングになってしまって・・。クソッ!

 ブンデスリーガ終盤の数試合は、すべての試合が、土曜日の1530分キックオフになります。勝負の行方が「微妙」だから、ライバルの結果を見てから・・等という事態に陥らないように・・というわけです。

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 さて、空港ロビーに出てきた湯浅ですが、「クソ!」なんて悔しがっている暇なんかありません。すぐに、予約しておいた携帯電話をピックアップし、レンタカーのカウンターへ。そこで、予約しておいた車の手続きを済ませながら、カウンターの「お兄ちゃん」に、「あなたはサッカーに興味がありますか・・?」と聞きます。ドイツとはいえ、すべての人々がサッカーファンというわけではありませんからネ。

 「ものすごく興味ありますよ! いま、この瞬間にブンデスリーガの最終節がはじまったっていうのに、ボクはカウンターで仕事ですよ。ローテーションとはいっても、ついてない・・」なんて、そのお兄ちゃん。耳には、しっかりとラジオのイヤホーンがはまっています。

 しめた! と、すかさず「ボクは、日本からきたジャーナリストなんだけれど、何とか、どこかでテレビを見ることができないだろうか・・」と聞いた次第。それに対して、「それだったら、空港に隣接したホテルのバーに、大きなスクリーンが設置されていますよ。そこに行けば、たくさんの人が見ているハズです・・」なんて、打てば響くリアクション。

 このお兄ちゃんは、素晴らしいサービス精神を持っている・・。ドイツ人にしては、本当に珍しい・・。まあ、ドイツといえども、サービスセクターのビジネスに対する教育が見直されはじめたということなんでしょうネ。いつもだったら、しかめっ面のサービスパーソンしかいないのに・・。思わず、「あなたは、今まで私が会ったなかで、最高のサービスパーソンですよ!」なんていうお世辞が、口をついて出てしまって・・。

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 さて、前置きが長くなってしまいましたが、ブンデスリーガの最終節です。

 前節までの状況は、私のHPの「海外コーナー」を参照してください。

 そこにも書きましたが、バイエルン・ミュンヘンと、レーバークーゼンがホームに迎えたのは、それぞれローシュトックとベルリン。彼らは、勝っても負けても何も起きないから、闘うモティベーションが「ゼロ」のチームといっていいでしょう。ということで、前半から、ミュンヘンとレーバークーゼンが、順当にリードを奪います。

 それに対して、前節までトップのドルトムントの相手は、「UEFA」カップ出場権がかかるブレーメン(ライバルのカイザースラウテルンは、シュツットガルトと、アウェー戦)。ドルトムントにとって非常に厳しいゲームにものになるのも道理です。

 前半を終えた時点で、ミュンヘンとレーバークーゼンは「1-0」でリード。また内容的にも楽勝といった展開です。それに対して、引き分けでは優勝を逃してしまうドルトムントは、時折、鋭いカウンターを繰り出してくるブレーメンをもてあまし気味。前半を終了して「1-1」の五分です。

 そして、運命の後半がはじまりました。順調に「二点目」を奪ってリードを広げたミュンヘンとレーバークーゼンに対し、何度かの決定機を生かすことが出来ずに「1-1」の地獄から這い出すことができないドルトムント。二度も、ポストやバーに当たるシュートを放ったにもかかわらず・・。そんな展開のなか、逆に、カウンターから、ブレーメンのアイルトンに、GKと一対一の状況を作り出されてしまいます・・。その瞬間、ドルトムントスタジアムの満員の観客は、完璧なフリーズ状態だったに違いない・・。

 カメラワークも上手かったですよ。ブレーメンFWのアイルトンが、ドルトムントGKと一対一になり、フワッというシュートを放ったとき、ボールがバーに当たる「軌跡」をしっかりと捉えるだけではなく、バーに当たって跳ね返った直後には、観客席にカメラを振るんですよ。そこでの、観客や、ドルトムント首脳陣の表情・・。それはもう推して知るべし。

 試合の流れは、完全に、「ドルトムントにはツキがない・・」という展開になっていきます。

 ドルトムントとチェコ代表のエース、ロジツキーが、フリーでドリブルしてシュートを放つも、ポストを大きく外れていく・・。チェコ代表の同僚で、ドルトムントのエースストライカーのコレルが、素晴らしいポストプレーからパスを回し、右サイドのエヴェルトンがフリーでシュートを放つが、左ポストを直撃してしまう・・等々。フ〜〜! 観客の誰もが、息を呑んでグラウンドを見つめていたに違いありません。

 「これは、ドルトムントが、完全に神様のお手玉になってしまっている・・」なんて感じていました。こんな流れでは、簡単にゴールは奪えない・・。そしてこのままでは、レーバークーゼンが逆転優勝を飾ってしまう・・。

 全体的なゲームフローは、完全にドルトムント意志とは逆方向へ流れていたと感じます。後半29分のタイミングまでは・・。

 そうです。コトが起きてしまったんですよ。後半の29分に・・。左サイドのデーデからのセンタリングが、右ポスト際のスペースへ飛んでいき、そこに、エヴェルトンが飛び込んだのです。完全に身体を投げ出しながらの「サイド・スライディングシュート」。勝ち越しゴール!! とにかく、(デーデのセンタリングに、ブレーメンGKがちょっと触ったことで!)ボールはギリギリのコースに飛んでいきましたから(本当によく触った!)、エヴェルトンの「執念」としか表現しようがないゴールでした。

 この直後には、ブレーメンのクルスタイッチが二枚目のイエローで退場。そしてドラマに終止符が打たれました。

 タイムアップのホイッスルが鳴ったときの、ドルトムントベンチとスタンドの饗宴。とにかく想像してみてください。

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 私は、このシーンを、フランクフルト空港に隣接する「シェラトンホテル」のバーで見ていたのですが、最後には、ダークスーツのビジネスマン、Tシャツの若者グループ、若いカップルから、年長のご夫婦、またまた従業員の方たち等々、数百人が、設置された大スクリーンに釘付けでした。

 そして、「クソッ!」と地団駄を踏む人、クールに、悲劇のドラマを呑み込み、静かにバーを後にする人、互いに慰め合いながらその場を去っていくカップル、そしてもちろん、狂喜乱舞する人々・・等々、さまざまな「人間ドラマ」が繰り広げられていましたよ。

 その雰囲気は、結果とは関係なく、まさに「サッカーをとことん楽しんでいる」というもの。もちろん楽しみ方は、人によって、本当に千差万別ですがネ。改めて、ドイツでのサッカー文化の「深さ」を実感した次第。やはり、フットボールネーションにとっては、「国内リーグ」が、もっとも強い「アイデンティティー」だということなんでしょう。

 それに比べてチャンピオンズリーグは、やはり「非日常」ということなんでしょうね。

 さてこれで、レーバークーゼンに残されたタイトルは「チャンピオンズリーグ」と「ドイツカップ(日本の天皇杯に相当=5月11日にベルリンで、シャルケ04との決勝!)」になってしまった・・。チームの絶対的なリーダー、ノヴォトニーの「十字靭帯の損傷」はショッキングな出来事でしたが(彼の脱落は、ワールドカップを控えたドイツ代表にとっても痛い!)、この試合では、ラメローが代役として最終ラインを引き締めていました。さて、レアル・マドリーとのチャンピオンズリーグ決勝の行方は・・!? またシャルケ04との、ドイツカップの行方は・・!?




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