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CL・・「本物の発展」をつづける小野伸二・・(2002年10月3日、木曜日)

チャンピオンズリーグでのディナモ・キエフとの一戦。前半33分。最終守備ブロックまで戻って展開した、小野のディフェンスプレーを再現してみましょう。

 ペナルティーエリア際で、一人のディナモの選手を「イメージ・マーク」した小野が、ボールのアクションを注視しながらも、しっかりと、その選手の「動き」に合わせてポジショニングを修正しつづけます。ときには「インターセプトポジション」へ、次のタイミングでは「(ゴールと相手を結んだ線上の)基本的なマンマークポジション」へ。そして最後は、その選手の前のスペースへ出されたタテパスに合わせて最終勝負に入り、その選手が上げようとした決定的クロスを阻止したのです。

 このシーンで小野は、ちょっと足を痛めてしまったようですが、エキスパートたちに強烈にアピールする「忠実(汗かき)ディフェンス」を展開したのですから、物理的な痛みは、心理・精神的な「満足」によって相殺されたに違いない!? 彼自身も、そんな、「強烈な意志」をベースに成果を挙げた守備プレーに納得したに違いありません。

 それ以外でも、この日の小野は、何回かインターセプトや「相手がトラップする瞬間のアタック」などで、自分自身がボールを奪い返しました。

 また、後方に控える味方の人数やポジショニング(状況)をベースにした(それを明確にイメージした)守備のポジショニングプレー。後方の組織がしっかりしているときは、タテに走り抜ける相手を「追い過ぎず」次の攻撃に備えたポジションを取る・・、ただ「足りないケース(穴があるケース)」では、最後まで(ボールのないところでの)マンマークをつづける・・。とにかく、その判断のレベルは、「傍観者」になっていることの方が多かった以前と比べれば、かなり進歩したといえるでしょう。

 彼が、守備でも発展していることを明確に感じます。まあ、実際にボールを奪い返すディフェンステクニックでは、まだ課題は見えますがネ。とにかく、いま彼が展開している「考えつづける」ディフェンスに、もっと「実効」が伴ってきたら、本当に「本物のボランチ」にまでに成長できるかもしれない・・なんて思っている湯浅なのです。

 現代サッカーにおける「理想のプレイヤー」とは、まさに「本物のボランチ」のことなんですよ。素晴らしいテクニックと深い戦術理解、そして高い守備意識を併せもつ「二列目・三列目」の選手・・それです。まあ、このテーマについては、次の機会に・・。

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 次に攻撃。

 ボール絡みでは、例によっての「才能ベースの確実展開プレー」が目立ちますが、この試合では、チャレンジ・タテパスや、積極的な「仕掛けドリブル」も目立ちましたよ。「仕掛けドリブル」ですが、もちろん「最後まで」というイメージではなく、あくまでも「最終勝負シーンを演出するためのファウンデーション・ドリブル」です。それでも、とにかくタイミングがいいから、眼前の相手を「置き去り」にすることで、相手ディフェンス組織のバランスに乱れを生じさせるんですよ。中盤でドリブルを仕掛けるときのもっとも重要ファクターは、相手を「置き去り」にすること・・なのです。そんな小野のドリブルを見ていた誰もが「オッ!」と思ったに違いない・・。

 まあこの試合では、最前線の決定的スペースまで絡んでいくシーンは目立ちませんでしたし、ソン・ジョングのように「身体を張る競り合いプレー」もありませんでした(それをスマートと表現するのか、泥臭さのない、つまり相手にとって怖くないアッサリプレーだと表現するのかは議論の分かれるところ!)それでも、二列目、三列目からの「実効あるプレー」にも、彼の発展プロセスが継続していることを感じています。

 とにかく、いまの小野伸二は、サッカーを本当の意味で「楽しみはじめて」いるに違いない・・。

 来週発売のサッカーマガジンで、特にミッドフィールダーについて、本物の良い選手と、単に上手いだけの選手の「決定的な差」が、攻守にわたる、ボールがないところでの「全力ダッシュの頻度と質」なんていうことを書きました。要は、その全力ダッシュに、選手の、自分主体の「積極的な意志」が如実に現れるということです。そこでのモデルは中田英寿でしたが、今度は、守備での小野のプレーを取り上げてみましょうか。もちろん「本物の良い選手」としてネ。

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 それにしてもフェイエノールトは、惜しい「勝ち点2」を失いましたネ。

 とはいっても、ソン・ジョング(エマートンとのタテのポジションチェンジは秀逸)、パルド、ブッフェルといったニューフェースと、エマートン、ファン・ホーイドンク、小野伸二、ボスフェルト等の「シンクロレベル」がどんどんと発展をつづけているから、二次リーグ進出への可能性は限りなく高まっていると思っている湯浅でした。




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