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CL準決勝第二戦・・トーナメントでのギリギリ勝負を重ねるなかで成長を遂げたレーバークーゼン・・レーバークーゼン対マンチェスター・ユナイテッド(1-1)・・(2002年5月1日、水曜日)

チャンピオンズリーグ準決勝の第二戦、レーバークーゼン対マンチェスター・ユナイテッド。状況は、説明するまでもありませんよネ・・!? でもまあ、一応・・。

 マンチェスターのオールドトラフォードで行われた第一戦は、素晴らしい試合を展開したレーバークーゼンが「2-2」というスコアで引き分けました。内容的に、本当に互角以上の展開でした。とはいっても、ベッカム、ロイ・キーンという主力を欠いているとはいえ、そこはマンチェスター。勝負所を押さえた戦い方で、常にリードは奪います。でも最後は、レーバークーゼンが粘りに粘った同点ゴールを奪ったというわけです。

 ということで、この第二戦でのレーバークーゼンは、「微妙」な立場に置かれました。要は「0-0」か「1-1」の引き分けでも、チャンピオンズリーグの決勝に進出できる・・。ホームゲームを戦う彼らにとって、非常に微妙な「心理」での戦いになというわけです。

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 ここまでのチャンピオンズリーグにおけるレーバークーゼンですが、それは、それは苦しい戦いを強いられてきました。一次リーグでも、二次リーグでも、はたまた、(基本的なチカラでは少し上の!)リバプールと戦った準々決勝でも・・。

 いつ「アウト・オブ・ザ・トーナメント」になってもおかしくない・・。それでも彼らは、結局、決勝までコマを進めてしまいました。良かった、本当に良かった。彼らが、「世界との勝負」に対する本物の自信を深めることができて、本当に良かった。

 それは、レーバークーゼンのメンバー構成が、まだ「ドイツ選手」がマジョリティーであり、そして彼らが、ドイツ代表の重鎮でもあるからなんですヨ。ノヴォトニー、ラメロー、ベルント・シュナイダー、バラック、ノイヴィル・・。

 これまでのレーバークーゼンは、いつも、本当にいつも、最後の最後で「負けてしまう」というネガティブな経験を重ねてきました。ブンデスリーガでも、チャンピオンズリーグでも・・。それが、ここにきて、チームとしてもまとまり、どんどんと成長していると感じます。

 あっと・・、とはいってもネ、ブンデスリーガでは、今シーズンも、最後の最後で「うっちゃられる」ということになりそうな情勢になってきてしまいましたが・・。このことについては、数日前にアップした「トピックス・コラム」を参照してください。

 ということで、彼らに残されたタイトルは、もうチャンピオンズリーグしかなくなった!? だからこそ、このホームゲームが正念場なんですよ。決勝では、確実にレアル・マドリーとの対戦になるでしょう(この時点で誰もがそう思っているに違いない!?・・先週のコラムを参照してください)。基本的なチカラは、確実に彼らの方が上。それでも、これまでのように、戦う意志を前面に押し出せば、必ず、立派なゲームを展開してくれるに違いない・・、でもそこに行き着くためには、まずここでマンUとの競り合いに勝利をおさめなければならない・・。

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 選手たちは、「オレたちは、チームとしても、また個人としても、どんどんと発展している・・」という事実を、心から実感しているに違いありません。もちろんそのことは、「それぞれ」の代表チームにとっても、この上ない「価値」なんですよ。

 ストッパーのルシオは、ブラジル代表のレギュラーですし、左サイドのプラセンテは、アルゼンチン代表。また「二列目」のバステュルクは、トルコ代表の「代替のいないチャンスメーカー」というポジションにまで発展をつづけていますからネ。

 やはり、選手、そしてチームは、「ホンモノの勝負の場」を積み重ねることで伸びていくもの。今シーズンのレーバークーゼンを継続的に観察していて、そんな、サッカーの歴史が証明している真実を再認識させられた湯浅だったのです。

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 とはいっても、決勝にコマを進めるまでには(彼らがホンモノの自信を手に入れるまでには)、マンUとの、「90分」という強烈な「心理ゲーム」をサバイバルしなければなりません・・。彼らが本当にブレイクできるかどうかの正念場・・。

 このゲームは、落ち着いた展開から、まずレーバークーゼンがペースを握ります。とはいっても、その「ペース掌握」には、微妙な、本当に微妙な「勢いの揺動」が感じられます。彼らは感じています。マンUが、ココゾ!という瞬間に繰り出してくる「蜂の一刺し」の怖さを・・。

 マンUの鋭い「カウンター」を警戒しながらの、つまり「心の揺れ」を抑えながらの攻撃。そんな「中途半端」な心理は、観ているこちらにも、痛いほど伝わってきます。思わず、「我慢するのはいいけれど、絶対に中途半端はダメだぞ!」、なんていう声が出てしまって・・。

 要は、攻め上がるにしても、全員が、微妙な「前後のバランス(マンUの次のカウンター)」を意識している(意識し過ぎている!?)ということです。バラックが、ラメローが、シュナイダーが、はたまたゼ・ロベルトが・・。だから、どうも最後の仕掛けにも、(人数が限られていることで)壁をブチ破る!という勢いが感じられない・・。シュナイダーの、ポストに当たる中距離シュートはありましたがネ・・。そして徐々に、マンUの「鋭い、蜂の一刺し攻撃」の勢いが増していきます。フムフム・・。

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 マンUは、サスガに百戦錬磨。セットプレーやカウンターという「瞬間的チャンス」を活かしきるための「統一されたマインド」が素晴らしい。これについてはもう、「雰囲気」的な表現しかできません。まあ、ロジックな現象面としては、セットプレーなどで狙いを定める「勝負所(スポット)」に対する全員の統一されたマインド(こぼれ球に対する狙い目も含めて!)、またカウンターでは、それに参加する選手たちのボールのないところでの鋭い動き・・なんていうことになるんでしょうがネ。

 そしてやってくれました。マンUが。前半28分のことです。カウンターから抜け出した(勝負のフリーランニングとスルーパスが合致した!)ロイ・キーンが、先制ゴールを決めたのです。このシーンでは、最後のスルーパスが出される瞬間にロイ・キーンをマークしていたレーバークーゼンのディフェンダーが足を滑らせてしまった・・とか、レーバークーゼンGK、ブットの飛び出しタイミングが遅れたとか、たしかにレーバークーゼン選手たちのミスはありました。それでも、この一連の仕掛けで魅せたマンUの「統一マインド」には、舌を巻かせるコンテンツが満載だったのです。

 あ〜あっ、やられてしまった・・。

 でも私は、このマンUの先制ゴールで、「よし、これでレーバークーゼンが解放される・・!」と確信したんですよ。何といっても、数日前のブンデスリーガ(対ニュールンベルク)での彼らは、攻守にわたって「中途半端」なプレーをつづけ、まさに「自滅」という内容で、痛い、本当に痛いゲームを落としてしまいましたからネ(0-1)。そして「残り一試合というタイミング」でリーグのトップから滑り落ちただけではなく、リーグ最終戦での状況が、限りなく「ライバル(ドルトムントとミュンヘン)有利」という状況になってしまったんですよ。

 そこでの彼らは、「持てる者」でした。要は、失う物を持っていたから、何とかそれを「守ろう」という心理でプレーしていたということです。そして、この試合でも・・。それが、私の一番の心配事だったのです。でもロイ・キーンの一発で、彼らは、その心理状態から解放されるに違いない・・。

 考えてみれば、チャンピオンズリーグの二次リーグでも、リバプールとの準々決勝でも、結局は「失う物がなくなった」時点から、彼らが、本来の実力を存分に発揮しはじめましたからネ。だからこそ私は、「よし!」、これでいい・・なんて思ったんですよ。

 このまま、マンUが一点リードした状態で、最後の時間帯まで試合が推移する・・。それこそ、何度も「ギリギリのところで生き返るという経験を積んだ」レーバークーゼンにとっての限りない「機会」だと感じていたということです。そしてゲームは、まさに、そんな「ポジティブな展開」になっていきます。レーバークーゼンが、それまで、ちょっと中途半端だった攻守のプレーに、吹っ切れた「ダイナミズム」が感じられるようになっていったんです。

 でも、同点ゴールは早すぎました。ノイヴィルが決めたんですが。それは、前半のロスタイム。これじゃ、まだ後半の45分も残っているじゃないか・・なんて、またまた心配になってしまって・・。

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 そして後半。私の心配は、最後は、杞憂に終わることになります。やはりレーバークーゼンは、成長したということなんでしょう。「全体的」には、守りでもバタバタせず、安定した組織プレーを魅せ続けていましたし、ノイヴィルや、交代出場したベルバトフなどが、相手のボールを奪って決定的なカタチを作り出していましたからネ。前半の早いタイミングで、最終ラインの重鎮でありキャプテンのノヴォトニーをケガで失ったにもかかわらず・・。

 もちろんマンUも、何度かチャンスを作り出してはいましたがネ。セットプレーから・・、組み立てから・・。でも私は、そこに、ゴールになる!という決定的な雰囲気が欠けていたと感じていました。

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 トーナメントでのギリギリ勝負を重ねるなかで成長を遂げたレーバークーゼン。さて、レアル・マドリーとの決勝が楽しみになってきたではありませんか。




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