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CL・・あ〜あ、バイエルン・ミュンヘンが、実質的に一次リーグでアウト!・・ACミラン対バイエルン(2-1)・・(2002年10月24日、木曜日)

よし、行った! そのとき、思わず声が出てしまいました。私のコラムでは、こんな書き出しが多いのですが、まあそれも、サッカーが大好きな湯浅が「気」を入れて観戦しているからと、ご理解いただければ・・。

 さて「声」のシーン。それは前半6分。バイエルンが、カウンターから最初のチャンスを作り出したのです。それも、最後のシューターは、左サイドバックのタルナート。この「よし!」という感嘆詞には、シュートチャンスだけではなく、タルナートが魅せた、「後ろ髪を引かれない」オーバーラップという意味合いも含まれていました。そんな「タテのポジションチェンジ」に、ドイツ的な発想と、バイエルンの大きなチャンスを見ていた湯浅だったのです。

 ここでのタルナートは、中盤で味方がボールを奪い返した瞬間から、思い切り、最終勝負スポットまで上がりつづけました。「最後はオレがシュートしてやる!」という気迫を前面に押し出して・・。そして実際にタルナートは、最後のシュートを放ったのです。左サイドを切り裂いたエウベルからのラストパスを、背後からの相手アタックを抑えながらのスライディングシュート。それは、この試合に賭けるバイエルンの意気込みが、そのままグラウンド上に現出したシーンだったのです。そして思っていました。これは行けるかも・・。

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 その後は、押しつ押されつの展開になりましたが、最後のシュートチャンスメイクでは、明らかにバイエルンの方が優っています。とはいっても、そんな展開のなかで先制ゴールを奪ったのはミランでした。スコアラーは、セルジーニョ。

 このシーンでは、自陣内で完璧にボールを支配下に置きながらも、滑って転んでしまったバラックが全てでした。その転倒で、バイエルンペナルティーエリア前のゾーンで完璧にフリーでボールを持ったセードルフ。最終ラインの、ロベルト・コバチは「前」へチェックに行かざるを得ない。そしてコバチが前へ上がったことで出来たスペースへ、左サイドからセルジーニョが斜めに走り込み、そこへセードルフからスルーパスが通されたというわけです。クフォー、コバチのアタックも間に合いませんでした。ワンチャンスをモノにしたミラン。まあ仕方ない。

 その後は、(もちろん試合展開からすれば当然なのですが)バイエルンの攻勢がつづき、そして前半23分、完璧なカウンターから、タルナートが左足一閃の同点ゴールを叩き込みます。これまた、タルナートの思い切りのよいオーバーラップが光った同点ゴールではありました。

 それにしても、タルナートの左足はすごい! 思わず、1998年フランスワールドカップ一次リーグ、ドイツ対ユーゴスラビアでの「フリーキックゴール」を思い起こしていましたよ。私も現場にいたのですが、内容的に凌駕され、0-2というリードを奪われたドイツ。そんな状況で、タルナートがキャノンシュートを決めたのです(まあ、相手に当たってコースが変わったこともあったのですがネ・・)。それがあったからこそ、ビアホフの同点ヘディングゴールも生まれた。だから、このミラン戦での爆発的な同点ゴールに、思わずそのシーンが回想されてしまったというわけです。

 バイエルンでは、右サイドはサニョールとサリハミジッチ、左サイドはゼ・ロベルトとタルナートが、完璧なコンビを組んでいます。それも、彼らのチーム戦術の一つ。両サイドの「完全なタテのポジションチェンジ」が、選手たちの発想に明確に組み込まれているというわけです。まあ、攻撃における資質の関係で、右サイドのサニョールの押し上げは、そんなに「深く」まではいきませんがネ。

 前半でのシュート数は、バイエルンの7本(うち、枠内シュート3本)に対し、ミランは2本(枠内1本)。ボールポゼッションも、バイエルンが圧倒していました。またまた私の確信が深まったことは言うまでもありません。行けるぞ!

 それでも・・。

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 後半19分に、ミランのインザーギが勝ち越しゴール(決勝ゴール)を挙げるのですが、これは完全にオフサイド。とはいっても、その数分前に、バイエルンの右サイドバック、サニョールがセルジーニョを倒したシーンは完璧なPKでしたから、まあ「相殺」・・ですかね。

 それにしても、インザーギのシュートは見事でしたよ。ワントラップから、GKの飛び出しアクションを正確にイメージしての、右足アウトサイドでの「ゴールへのパス」。彼の、ゴールゲッターとしての高い資質を証明するゴールでした。そんな、ワンチャンスをモノにする決定力こそが、イタリアサッカーの象徴・・!?

 その後、ミュンヘンの攻勢がつづいたことは言うまでもありません。ピサーロのフリーシュート、バラックがアタマで流したボールに飛びついたクフォーの完璧なゴールチャンス、エウベルのヘディングシュート(クロスバーを直撃)、サニョールが放った、左ポストぎりぎりのシュート等。ツキにも見放されたバイエルンではありました。

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 両チームの攻撃ですが、全体的には、流動的な攻撃を魅せるバイエルンに対し、キチッと戦術イメージ(基本的なポジショニングバランス)通りに攻めるミランという構図が見えていました。

 サイドからのクロスでは、明確に「ニアポストゾーン」を狙うミラン。もちろん、インザーギの走り込みをイメージして。また、中央からの攻めでは、ルイ・コスタからのスルーパス狙い(ミランの二点目シーンのように)。もちろん、カウンター状況からの一発ロングラストパスも健在です(最前線のインザーギ、セルジーニョも、そのロングラストパスを明確にイメージして動き出している!)。それでも、セードルフやアンブロジーニといったミッドフィールダー、また両サイドが、最終勝負スポットに顔を出すというシーンはほとんどありません。攻守にわたって「基本的ポジション」に沿ったバランスを取りつづけるミラン・・ということです。

 そんなミランに対し、バイエルンの攻めは、より「変化」に富んでいます。どんどんとポジションをチェンジする選手たちの動きをベースにした活発なボールの動き。前述した両サイドだけではなく(両サイドのオーバーラップに合わせ、サリハミジッチ、ゼ・ロベルトの両人が完全なサイドバックに入る!)、バラックも、どんどんと最前線を「追い越す」チャレンジを魅せるのです。もちろん守備的ハーフのイェレミースは、完全なバックアッププレイヤー(守備のバランサー)として後方に残りますがね。

 選手たちの「国籍(文化背景)」は、両チームともにバリエーションに富んでいます。それでも、両チームともに、その国の「サッカー文化背景」を明確に背負ったプレーを展開している・・。そんな視点でも、面白いゲームではありました。

 とにかく、ミランが魅せた「イタリア的な勝負強さ」に拍手を送りましょう。

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 ・・なんて、冷静に語っているようですが、内心は、もちろん穏やかではありません。その思いは、デポルティーボ・ラ・コルーニャが、ランスに「3-1」で負けたことを知ったときには、もう100倍にふくれ上がってしてしまって・・。勝てるチャンスがあったのに・・もし勝っていれば「地力突破の目」も復活したのに・・なんてネ。

 とはいっても、まだバイエルンにも「理論的なチャンス」は残されています。次節で、もしバイエルンがラ・コルーニャに勝てば(これで勝ち点4)、ミラン対ランスの試合結果にかかわらず、最終戦で、ランスに大勝すればいいのです。もちろんそこでは、最終節で、ラ・コルーニャが、ミランに負けるという「但し書き」がつきますがネ(他力本願は、もうここまできたら仕方ない!)。そうすれば、ギリギリで「グループ二位」に滑り込める・・。でもまあ、それは奇跡にちかいことです。

 とはいっても、そこはサッカーだから・・なんてネ。

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 これでバイエルンが一次リーグ敗退になってしまったら、ドイツ国内ブンデスリーガの優勝争いは、もう彼らの独り舞台になってしまうでしょう。そしてリーグからドラマツルギー要素が消え去ってしまう・・。そんなこともあって、「サッカーの神様に願い事を・・」ってな心境になっている湯浅なのですよ。お粗末・・。




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