トピックス


「ヤツらがいない」日本代表でも、立派なゲームを展開しましたよ・・日本vsコスタリカ(1-1)・・(2002年4月17日、水曜日)

いま東京中日新聞の原稿を送ったところです。テーマは「小笠原」。ショッキングな交代劇でしたからネ。とはいっても、私にとっては、至極当然の交代でした。なんといっても、彼のプレー姿勢が・・。

 その原稿での書き出しは、ポーランド戦での中田英寿のプレー。相手のスローインの場面で、手を振りながら「行け!」と、戸田に指示を出します。もちろん、スローインポイントの近くにいるフリーの相手にプレッシャーをかけろ!ということなんですが、その指示に呼応した戸田の、ズバッという勢いに、たまらず相手はダイレクトでパスを回します。ところが、そのコースを読んでいた中田が全力で戻り、二つ目のポイントでボールを奪い返してしまったのです。

 味方に「汗かきプレー」の指示を出したからには、自分の「意図」を完遂させなければみっともない・・。そのときの中田の「寄せ」には、ものすごい勢いがありました。

 それなんですよ、「中盤での自己主張」っていうのは。それこそ、リーダーであることの証明というわけです。何といっても彼は、もっとも「自由に仕事を探していい」ポジションを与えられているのですからネ。

 積極的に仕事を探す姿勢≒リスクチャレンジ姿勢≒自己主張・・ってな具合ですかネ。

--------------

 さて、小笠原。

 ウクライナ戦の後半から登場し、何度か「才能の片鱗」を魅せてくれた彼は、この試合では、スターティングラインアップに名を連ねました。期待が高まったものです。中田ヒデの、本物のライバルが現れるかも・・。ただ結局は・・。

 中途半端に動き、それにメリハリがないから、味方からのパスも集まらない。もっと「オレによこせ!!」という強烈な意志を放散するような激しい動き方をすれば(もちろんお大きな声でパスを呼んでもいい!)、自然とボールが集まってくるものなのです。そんなメリハリのある「ボールのないところでの動き」がないだけではなく、たまにボールをもっても、安全パス(プレー)ばかり。彼からの「勝負パス」は、18分に飛び出した、アレックスへのスルーパスくらいでしたかネ(素晴らしいパスでしたよ!)。

 あれ程の才能がありながら、自己主張ができない。もったいないじゃありませんか。そして前半の24分に、機能していないということで森島と交代させられたというわけです。そのキッカケになったと思われるのが「この」シーンです。

 最前線の左サイドで「ある程度フリー」でパスを受けた小笠原。相手のマークからはまだ間合いがあったから完全に「振り向け」たのに、結局は、そのままライン際にいるアレックスへパスを出してしまいます。そんな「安全タイミング」のパスでは、アレックスが、相手守備に余裕をもって対処されるのも道理。もし小笠原が、そのまま振り向いて突っかけていったり、タメを演出したりなど、「仕掛ける姿勢」をみせたならば状況はガラッと変わったに違いありません。でも結局出てきたのは「典型的な無難プレー」。これでは、「チャレンジの演出家」になんてなれっこない・・。

-----------------

 とはいっても、交代した森島にしても、中盤でのリーダーにはなりきれない。そんななか、結局、実質的なゲームメイカーとして機能していたのが戸田でした。小笠原がいたときもそうだったのですが、とにかくチームメイトたちは、彼にボールを集めるんですよ。そしてそこから、ズバッという、メリハリのあるタテパスが、正確に飛ぶ。もちろん、いつもではありませんが、チャンスがあれば、本当に素早いタイミングで、リスキーなタテパスにトライします。最前線の鈴木や柳沢も、そんな戸田の「吹っ切れたタテパス」に抜群の信頼を寄せているようで、戸田にパスが回りそうになった瞬間から、動き出すんですよ。もちろん戸田も、パスを受ける前から、そんな最前線の「意図ある動き」に視線をはしらせます。いや、素晴らしいリーダーぶりではありました。

 そんな戸田ですが、ポーランド戦では、中田のカゲで、完全に「汗かき」に徹していた。本当に貴重な戦力です。

---------------

 この試合で、私が改めて感心させられたプレーヤーに、鈴木隆行がいます。最前線の仕掛け人。パスを受けた後のプレーでは、抜群の「機能性(実効性)」を魅せつづけます。しっかりとキープすることで、後方から押し上げる時間を稼いだり、自らが犠牲になって周りの味方を活かしたり、はたまた「エイヤ!」というドリブル勝負を仕掛けたり(何度も相手を抜き去りましたよ!)。そのメリハリある効果的プレーに、拍手しきりでした。

 彼の場合、「才能」という視点では、たしかに限界があります。でも、持てるチカラを、常に「100パーセント以上」発揮しようとするそのプレー姿勢に、思わず「レスペクト!!(尊敬!)」なんですよ。小笠原は、鈴木の「姿勢」を見習わなければなりません。同じチームメイトじゃありませんか。もちろん、「ナ〜ナ〜」だったら何も生み出すことはできませんがネ・・

--------------

 あっと、コメントが、ちょっと「個人」に集中し過ぎてしまって・・。

 試合全体としては、日本代表の出来は良かったと思います(ちょっと平滑な表現でスミマセン)。相手は、決してあなどれないチカラを持つコスタリカ。それでも、日本代表のサッカーは、攻守にわたってコスタリカの上をいっていました。

 明神の、ラッキーな先制ゴール(69分)の後、ギアを二つ以上シフトアップさせたコスタリカでしたが、日本代表のダイナミックなミッドフィールドに、徐々に勢いを殺がれていってしまいます。それは、日本代表が、先制ゴールのあとに「地力」で作り出した「拮抗状態」。日本代表が、本当の意味でチカラをつけていることを如実に証明する事実です。大したものだ・・。

 そんなことを思っていた76分、右サイドを攻め上がろうとする日本代表が、途中でボールを奪われ、見事なタテパスを通されてしまいます。ボールをもったのは、セリエ(ウディネーゼ)で注目されているストライカー、パークス。マークする(併走する)のは宮本。「あっ! 先に宮本が追いつく・・」と思った瞬間、パークスの長い足が伸び、チョン!と、宮本の逆モーションサイドにボールを運んでしまったんですよ。これで宮本は置き去り。そのままに持ち込むパークス。カバーリングにいく中田浩二も遅れ気味で、結局は、見事なシュートを決められしまったというわけです。

---------------

 この引き分けは、日本代表にとっては「残念な・・」という形容詞をつけなければなりません。何といっても、楢崎がPKを止めてから(53分)の10分間というもの、アレックス(森島も)を基点に、何度も、何度も、素晴らしいセンタリング攻撃が成就しそうになりましたからネ。

 もちろん「全体的なゲーム内容」にしても、あれほどの個人技と身体能力のある相手と対峙しても、一歩も押し込められることなく、対等以上にわたりあっていたんですからね。

 それにしてもアレックス。自分自身も、大満足だったに違いありません(交代してベンチに戻ってくるときの態度に、満足感がアリアリ・・もちろんベンチの連中ともハイタッチです)。

 コスタリカの守備陣は、けっして弱くはありません。むしろ、個人的な能力では、かなりのレベルにあると言った方が妥当。そんな彼らに対し、一対一で、本当に何度も抜き去り、絶妙のセンタリングまで上げてしまったんですから・・。また守備も、全体としては堅実で及第点でした。

--------------

 最後に、GKの楢崎。私は、彼を本当に高く評価しています。そして、この試合でも、そのキャパの高さを存分に魅せてくれました。ハイボールの確実な処理や、的確な「前進タイミング」、確実で正確なフィールディングにキャッチング等々。

 彼が後方にいることで、最終ラインの「心理的な安定度」はかなり高まったに違いありません。

 フィリップ・トルシエのコンセプトは、すべてのポジションにライバルを・・日本代表を「テンションという剣が峰を突き進むグループ」にする・・というもの。まったくの大正解。そしてほぼ、その目標を達成した感があります。中田英寿と名波浩という、中盤センターの「タテのコンビ」を除いて・・。

 だからこそ、小笠原や中村俊輔たちに頑張ってもらわなければならないんですよ。まだまだ時間はある。彼らは、もっともっと自分を解放し、自己主張しなければいけません。彼らには、それができるだけの才能が備わっているのです。

 ちょっと、風邪上がりで疲れ気味なので、今日はここまでにします。まあ、ビデオを確認し、別なポイントが見つかったら、またレポートすることにします・・ってなこと言っていて、結局はやらない・・なんていう、いつものパターンだったりして・・。乱文でスミマセン。では・・




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]