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稲本潤一!!・・もっと、攻守にわたる勝負シーンへの吹っ切れた絡みを・・フラムvsトットナム(3-2)・・(2002年9月13日、金曜日)

さて、稲本潤一。久しぶりの観戦です。

 前回のテレビ観戦では途中出場でしたが、この試合の稲本はフル。全体的には、発展を感じさせる内容でした。また局面プレーでも、そこそこ「堅実」なプレーができていました。とはいっても・・。

 前回でもそうだったのですが、どうもアクティブシーンへの「絡み方」が中途半端(≒状況を見すぎ≒考えすぎ!?)。攻守にわたって、行くところは、最後まで、吹っ切れて行く・・。そんな、積極的に「絡もう」とする姿勢が明確に見えてきません。だから、パスも、うまく「呼び込めない」。

 これは、「二列目」という彼の基本ポジションの関係でしょう。彼自身は、「オレは、あくまでもボランチだと思っている・・」という発言をしたということですが、それならば、もっと・・と思うのですよ。

 このことは、昨シーズン前半での中田英寿にも感じられたことです。要は、二列目としての「基本的な」ポジショニングバランスやチャンスメイク等のプレーを意識し過ぎるために(自分の基本ポジションとタスクを意識し過ぎるために)、攻守にわたって中途半端な結果に終始してしまうということです。そして、徐々に疑心暗鬼に取り憑かれてしまうことで、「必要以上に」基本的なポジションと役割に固執するようになってしまう・・!?

 ゲームの流れには「ポイント」があります。例えば攻撃。組み立ての段階では、まず「基本的なこと」を意識してバランスプレーに徹することがベースです。それでも、最終勝負の仕掛けがスタートしたら(スタートしそうになったら)、状況はまったく違ったものになります。そこへ「絡んでいくプレー」には定型はないし、その瞬間に、基本的なポジションや役割「以上」に重要な仕事が発生するということなんですよ。

 前半に、こんなシーンがありました。後方から、ボールを奪い返した味方ミッドフィールダーがドリブルで押し上げてくる・・どんどんとドリブルで前進していく・・そんな最終勝負シーンでも、稲本は、そのドリブルを観察するように(次の展開を予測しようと!?)基本ポジションを維持するようにゆっくりと上がっていくだけ。そして結局、そのミッドフィールダーは、右サイドスペースへ入り込んだ別の味方へラストパスを出してしまいます(シュートミス)。

 そのとき私は、「どうして、味方フォワードを追い越してまでも決定的スペースへ飛び出して行かないんだ!」って声を荒げていましたよ。絡んで行くのに絶好の最終勝負シーンではありませんか。

 そこでは、基本ポジションやタスクなんてクソ食らえ!なんですよ。それこそが、「クリエイティブなルール破り(基本的な戦術イメージの超越)」。それこそが、最終的には自由にプレーせざるを得ないサッカーの醍醐味ではありませんか。「そのシーン」での稲本は、確実に、「創造的な超越プレー」ができる状況にあったのです。

 あの状態だったら、その後、何らかのカタチで一度プレーが「止まる確率」は高いし、そこで戻ればいいんですよ。また途中のミスでボールを奪われたとしても、チームメイトがカバーするでしょう。タテの「機能チェンジ」は、彼らのイメージにも組み込まれているでしょうからね。要は、決定的場面では、「仕掛けの流れ」に先に乗った者が「勝ち」ということです。それでも稲本は、結局は「様子見」になってしまって・・。

 サッカーは、ロジック状況と「アンロジック状況」が常に繰りかえされています。選手たちは、ロジック状況では、基本的なポジショニングバランスとタスクを守るわけですが、それでも「意識」は、次の「アンロジックな最終勝負の流れ」を狙いつづけていなければならないのです。そんな「隠された猛禽類のマインド」こそが、本物の自己主張だということです。その意味では、稲本のチームメイトたちは、全員が猛禽類だと思いますよ。

 後半は、彼のプレーも好転します。ベストシーンは、右サイドでタックルを仕掛けてボールを奪い返し、そのままドリブルで突進したシーン。それなんですよ、彼がもっと強くイメージしなければならないプレーは。自分でボールを奪い返したときが、次の攻撃ユニットの「コア」になれる最高のチャンスが訪れる・・。それはサッカーの原則の一つなのです。

 このシーンでは、相手のボールの動きが緩慢だったこともあって、うまく「高い位置」でのボール奪取に成功したわけですが、もっと守備参加を活性化させれば、中盤のどこからでも「自分がコアになった攻撃ユニット」を仕掛けられるということです。この試合で、稲本自身のボール奪取シーンが希だったことは確かな事実でしたからね。

 (二列目なんていう意識から解放されて!)もっと積極的な守備参加を・・もっと思い切ったドリブル突破へのチャレンジを・・もっと決定的スペースへの飛び出しを・・もっと自分が中心になったコンビネーションへのトライを・・もっと、もっと・・。

 発展している稲本だからこそ、また「場」を勝ち取っている今だからこそ、チャンスを逃さず、攻守にわたる勝負シーンへの吹っ切れた絡みをイメージすることが大事だと思う湯浅です。それには、編集ビデオを駆使した「イメージトレーニング」がもっとも効果的・・。ガンバレ、稲本。




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