何か「周り」では、この紅白マッチが、代表メンバーの「エリミネーション(当確を決める場)」になるという雰囲気が、作り上げられてしまったような・・。もちろんそんな、代表メンバーの「最終エリミネーションゲーム」なんてこと、あるはずがない。まあ、代表合宿の「一環」としてのトレーニングマッチだということです。
代表メンバーを最終的に決めるのは、全権を任されているフィリップ・トルシエ。彼が、長い時間をかけて、自分のイメージに合う選手たちを選抜し、チカラを確かめ、(イメージ)トレーニングを施し、最終的に、ワールドカップという肉を切らせて骨を断つ闘いに抗していけるかを判断しているということです。
監督が100人いれば、100種類の代表チームができるのは道理なわけで、私は、戦術、選手、その他諸々のファクターに関する彼の決定に対し、代表チームが素晴らしく機能している(大きく発展した)からこそ、同業者として、心からの敬意を表します。とにかく、唯一の正解がないサッカーですし、ここまできたら、チーム内の決まり事を、「クリエイティブなルール破り」という意味でのリスクチャレンジも含めて、どのくらい選手たちが首尾一貫して(自分主体の積極性をベースに!)実行できるかが問われるというわけです。
でも、16000人の観客に後悔された試合の「意味づけ」がどのようなものなのかは、どうも判然としない・・。もちろん、本当に意図されたことなど、部外者に分かるハズもありませんがネ。
でもメンバーを見たときに、アレッ・・と思ってしまいました。誰が見ても、ほぼ当確のメンバー対、ボーダーラインメンバー。さてどうなるのか・・。最初わたしは、このメンバーを見て、ボーダーラインチームの方が、モティベーションで圧倒すると思っていたんですが・・。
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ここで、両チームのメンバーを列挙しておきます。
青チーム・・。DFは、中田浩二、宮本、大岩。MFは、中村俊輔、アレックス、福西、戸田、森島、奥、波戸、酒井。そしてFWは、鈴木隆行、西沢、柳沢、高原。
白チーム・・。DFは、秋田、鈴木秀人、中澤。MFは、藤本、本山、小笠原、藤田、遠藤、山口、市川。そしてFWが、山下、久保、ゴン、前田。
そのなかから先発に選ばれたのが、青チームでは、宮本、大岩、中田浩二、波戸、福西、戸田、中村俊輔、森島、高原、西沢。白チームは、秋田、鈴木秀人、山口、本山、小笠原、藤田、遠藤、市川、久保、ゴン(スミマセン・・GKを除くです!)。
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さてゲームがはじまりました。
そして数分後、その意味づけを確信しました。「フィリップは、ボーダーラインチームの選手たちが、どのくらい自分自身と闘い、自分自身をモティベートできるのかを確かめようとしている・・」。世界とのギリギリの勝負では、最後の最後に出てくるのは、何といっても「個の意志のチカラ」。白チーム選手たちの、「自分たちが置かれた立場からはい上がろうとする主体的な姿勢」を見ようとしたのだと、確信したのです。でも・・
試合の内容は、まさに「チームとしてまとまっている」青チームに対し、イメージがシンクロせず、全員が「与えられた仕事(ポジション)」だけに縮こまっている白チームという展開。白チームの選手たちは、最初から、「青」との差を意識していたんでしょうか(コンプレックスを持っていた!?)。どうしても、攻守にわたる動き、ボールがないところでのプレー姿勢などにダイナミズムを感じません。「どうせオレたちは・・」っていう心境なんでしょうか。そんな状況だからこそチャンスなのに・・。
前線のゴンと久保は、まさに孤立状態。中盤で、唯一、ダイナミズムを演出しようと奮闘する藤田でしたが、それも「一人」だけでは・・。最初の時間帯、市川が右サイドでチャレンジを仕掛けますが、それも単発。
特に本山と小笠原の消極姿勢には、落胆しきりでした(彼らには天賦の才があります・・だからこそ「特に」という表現になってしまう!)。まあ彼らにしたら、「欲しいタイミングでボールが出てこないし、その後の中盤守備が不安だから、バランスをとっていよう・・」なんていう心境で、様子見の姿勢だったんでしょう。そんな(ある意味ではアンフェアな!?)チームの組み合わせでプレーさせることは、フィリップによる「心理テスト」という意味も含めて、彼らにとって「一大チャンス」だったのに・・。
理不尽なサッカーでは、「逆境」を生き延びるためには、絶対に「アナタ任せ」ではダメなのです。味方を叱り飛ばすくらいの「攻撃性・積極性」。それがあって初めて「闘う姿勢」に火がつく。そしてそれだけが、白チームのダイナミズムを増幅する。
そんな「ダイナミック・マインド」のみが、何が起きるか分からないワールドカップ本戦において、どんなに厳しい状況と対峙しても、少なくとも全力を出し切るようなギリギリの闘いをつづけられる「心の強さ」のベースになるのです。
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後半の青チームは、波戸に代わり、右サイドに酒井が登場します。また中田浩二に代わって中澤、戸田に代えて奥、森島に代えてアレックス、そして高原に代わって鈴木隆行が登場です(また途中から、西沢に代わって柳沢も登場)。この交代で、前半は左サイドだった中村が「中」へ入り、アレックスが左サイドをつとめます。
中盤トリオは、奥、福西、中村。そして、青チーム中盤での、攻守にわたるダイナミズムが徐々に失われていってしまいます。とにかく前半は、戸田が素晴らし過ぎました。泥臭く、そして激しくボールを奪い返すだけではなく、忠実に「穴埋め作業」をこなすだけではなく、攻撃でも、確実な展開パスをつなぎつづけます。周りの味方も、絶対的な信頼を寄せている様子。とにかく彼にボールが集まりつづけるんですよ。でも後半は、その「中盤ジェネレーター(発電器)」がいなくなったことで、ミッドフィールドの光量がどんどんと減退してしまって・・。
後半では、アレックスが、「らしさの一端」を何度か披露しましたし、右サイドの酒井も、思い切りのよい積極プレーを展開しました。そんな彼らにしても、中盤でのダイナミズムの減退にともなって・・。
逆に、ゴンの代わりに山下が入っただけの白チームは、青チームのエネルギー減退にともなって勢いを増幅していきます。でも、青チームの守備ラインを崩すまでにはいけない・・。
後半41分に飛び出した、青チームの「PK」はご愛敬(攻撃参加した福西へのファールがPKに取られたと思います)。
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ここまで書いてきて、単なるトレーニングマッチを、このようなストレート評価の対象にしていいのかどうかに迷いが出はじめました。なんといっても「状況設定」が・・。でも次の瞬間には、いやいや、サッカーのスタートラインは「発想」であり、それをベースにした「プレー姿勢」だ・・、たしかにギリギリの競り合い場面では、互いに(微妙に)遠慮してはいたけれど、それでも、このような「状況設定」だからこそ、選手たちのプレー姿勢に「自分主体レベル」が見えてくるのダ!・・と思い直した次第。
この試合の「意味」を、フィリップ・トルシエによる(特にボーダーライン選手たちに対する)「心理テスト」だと考えた湯浅でした。もちろん、メディアノイズを上げたり、清水市、静岡県に対する「政治的・経済的な目的」などもあったには違いないんでしょうがネ。
さて、いよいよ「J」の開幕。第一節は「二試合」をレポートする予定。ご期待アレ・・