彼がフェイエノールトでプレーをはじめた頃、「オランダサッカーは、トップスリーの実力が突出していることで、どうもリーグ戦の緊張感に欠けるきらいがある・・、才能ある小野にとって、オランダリーグでプレーすることは良いことなんだろうか・・」なんて、何度か書きました。いまの私は、その考え方が、少しずつ変わってきていると感じています。
小野のプレーに、攻守にわたって「自ら仕事を探す」という姿勢、また、互いに使い、使われるという「メカニズム」に対する理解が「徐々に」深まっていると感じるのです。
それでも、まだまだ不満。守備的ハーフで戦った数試合ですが、どうも、攻守にわたる勝負所で「主役」になることがままならないと思うんですよ。守備では、たしかにボールホルダーに対するチェックは忠実ですが、自らがボールを奪い返すというシーンは希。自分がボールを奪い返せれば、そこから「自らが主体」になって次の攻撃をドライブできるのに・・。またボールがないところでの決定的な守備(相手の決定的フリーランニングに対する忠実マーク)にも、まだ不安を感じます。
また攻撃でも、まだまだ「パサー」を意識し過ぎだと感じます。それには、自分が守備的ハーフだという意識も、微妙に絡んでいたのでしょう。「使われた」後は、今度は味方を「使う(自分が最終勝負シーンへ絡んでいった後のカバーリングを任せる!)」という姿勢を前面に押し出さなければ・・。
フェイエノールトの中盤選手たち、特に彼のパートナーであるボスフェルトの戦術的な理解は深く、小野が最後まで上がり切るようなシーンでは、味方に対し「小野の代わりにオマエは戻っていろ!」といった的確な指示など、クレバーに前後左右のバランスを取るに違いないと思うんですよ。だから小野は、もっと、もっと、攻撃の最終勝負にまで絡んで行くべきだ・・。何といっても、パサーとして「だけ」のイメージが固定してしまったら、相手にとっては怖くも何ともなくなってしまいますからネ(彼のパスは十分危険ではありますが・・それでも・・)。
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そしてウインターブレイク明けの「ユトレヒト戦」。小野は、本来の「上がり気味の左サイド」で先発し、そして立ち上がり数分で、トマソンへの「ラスト・スルーパス」を決めてしまいます。スルーパスを送り込むまでの、軽快で、エレガントなボールコントロール。いや、美しい・・。こんな才能は、めったにいませんヨ。だからこそ私は、彼に対し、「もっと! もっと!」と要求したいのです。日本サッカーの歴史だけではなく、世界サッカーの歴史にまでも刻み込まれるくらいまで、存在感を高めて欲しいと思うんですよ。そう、中田英寿の、本当の意味でのライバルとしてネ。
でも、先制ゴールの後がいけない。小野のプレーが、攻守にわたって「中途半端」なものに終始してしまうんですよ。攻撃では「中継点」として機能するだけ。また守備でも、相手の前へのエネルギーを「抑える」ポジショニングプレーばかりで、自分が主体になってボールを奪い返すというシーンは皆無。
攻撃では、もっともっと動き回り、頻繁にボールに触ることをベースに、勝負所では、パスを狙うばかりではなく、ドリブル突破や「タメ」にも積極的にチャレンジするとか、とにかく、プレーの「テンポ(内容)」に変化をつけなければ・・なんて思っていました。
最初の「スーパーシーン」の後、小野が「一つの攻撃フローで主役を務めたシーン」は、本当に皆無。彼が「中継要員」だけに成り下がっているゲームなんて見たくありません。
左サイドや、逆に右サイドのタッチラインゾーンで「パスを待つ」ばかり。そんな姿勢では、自分の「プレーイメージ」に変化を演出できっこありません。たまには、タッチラインから、中へ入り込み、シンプルにボールを動かしてから「再び」タッチライン際へ爆発ダッシュする等、変化をつければ、必ず、単独ドリブル勝負や「タメ」を演出するチャンスが訪れるものなんですよ。たまには、エマートンのような「泥臭いドリブル勝負」を仕掛けていってもいい・・。また、もっともっと、最終勝負のフリーランニングを仕掛けていってもいい・・。何度、「どうしてそこで止まっちゃうんだヨ!」なんて叫びそうになったことか。結局彼は、「最終勝負の起点(ラストパスの演出家)」になるというイメージが強すぎるんでしょうネ。それとも彼は、「泥臭い、身体を張ったプレー(相手との接触プレー)」が嫌いなんですかネ・・。フムフム。
私は、そんな小野のプレーが、監督からの指示によるものだとは思いません。細かなポジショニング指示などは別にして、「基本的には左右のタッチライン際から、そのサイドでの守備をベースに、トマソンや、ファン・ホーイドンクへのラストパスを狙おう・・」なんていう指示はあるんでしょうが、それは、あくまでも「基本ルール」。サッカーは、自由と規制のバランスが大前提です。レベルを超えた「天賦の才」に恵まれた小野伸二。彼に対し、もっと、もっと、クリエイティブな「ルール破り」を望んでている湯浅なんですよ。
理不尽なサッカーでは、凝り固まった「プレーイメージ」ほど、選手の「可能性」を潰してしまう悪玉はいません。「自由と規制の優れたバランス」というのが、サッカーにおける普遍的なコンセプト。監督の「チャレンジャブルなバランス感覚」に期待しますよ、本当に・・。
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自信あふれるプレーを展開する天才、小野伸二。彼には、このままで「落ち着いてしまっては」いけない・・と言いたい湯浅です。
できれば、フェイエノールトを橋頭堡に、早く、リーグブランドネーションのクラブへと、チャレンジの領域を広げていって欲しい・・。ヨーロッパでのオランダリーグのポジショニングは、選手供給リーグという性格が強いですからネ。優秀な選手たちも、有名クラブからのスカウトを意識してプレーしているというわけです。さて・・