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ガンバレ、セネガル!!・・その(1)・・そしてワールドカップ期間中での湯浅の活動予定など・・(2002年5月20日、月曜日)

見てきましたよ、藤枝まで。トレーニングマッチの「セネガル対レイソル」。帰国した翌日の、日曜日(5月19日)のことです。

 試合前に、バスで到着したセネガル監督のブルーノ・メツと、ちょっとだけ話しをしました。「まあ、徐々に調子は上がっているよ・・」なんていう、ほんのちょっとした会話を交わしただけなのですが、実をいうと、彼は、英語は苦手なんですよ。こちらもフランス語は、からっきし。ということで、本当に「簡単な」会話くらい。先日おこなわれた彼との対談では、フランス語のコーディネーターの方に通訳をしていただきましたからね。

 でもやっぱり、通訳を介した会話は、何か微妙に違う。内容のニュアンスを伝える「媒介」としての(話す瞬間における!)表情の変化や言葉の抑揚、はたまたジェスチャーなんかも、もの凄く大事ですからネ。通訳をやってくれた、日本に住むセネガル人のマンスールさんは優秀な方だったんですが・・。まあ私は、通訳を介して会話することに慣れていませんので・・。でもその対談では、内容的には、かなりのレベルまで深掘りした内容になったと自負はしています。

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 この「対談」は、サッカーマガジンや週間プレーボーイ、また東京中日新聞に掲載されたのですが、それぞれに抽出されたテーマが微妙に違っていました。まあ、雑誌や新聞の性格、また編集者の意向などによって抽出内が変わるのは当たり前ですからネ。

 さて湯浅自身ですが、私が、彼との対談においてもっとも注目したポイントは、アフリカでははじめて、組織としてよくまとまったサッカーをやるチームが出現してきたということです。このことについては、ドイツのコーチたちも異口同音にアグリーなのです。

 「ヤツらは、本当によいサッカーをやるよな。アフリカ人は、個人だけだと思っていたんだけれど、ヤツらのサッカーを観て、これは大変なことになった・・なんて思ったよ」。

 友人のドイツ人コーチが、セネガルについての印象をそう語っていました。彼は、今年の2月に、アフリカ選手権で準優勝をしたときのセネガルチームが魅せた「プレー内容」のことをいっていました。彼の最後の「大変なことになった・・」という言葉の意味合いですが、それは、ヨーロッパ人が、アフリカ選手たちが持つ「個」のキャパシティーの高さを心底認めているからです。「あれで、組織プレーでもレベルアップしてきたら、本当にヨーロッパの時代じゃなくなってしまうかも・・」っていうわけです。

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 「たぶんオレたちが、アフリカの中では、もっともハイレベルなサッカーをやっていると思うよ。それについては自信がある」。ブルーノ・メツが、胸を張って言っていました。

 「でも、そのことは、セネガルの生活文化と、かなりリンクしているんだ。ナイジェリアやカメルーンとは、まったく違う文化背景をもっているんだよ。セネガルでは、これまでに内戦やクーデターが一度も起きたことがないという事実を知っているかい・・?」。ブルーノが、目を輝かせてつづけます。

 「オレも、彼らの生活文化が本当に気に入っているんだ。だから、仕事もやりやすい。彼らは、ものすごく対話を大事にするからな。要は、人の話をしっかりと聞こうとする姿勢があるということなんだ。そんなコミュニケーション背景が、彼らの日常にある。オレも、選手との対話を大事にするタイプだから、本当にモティベートされるよな。そんな生活文化的な背景があるから、選手たちのインテリジェンスレベルが高いのも、推して知るべし・・っちゅうわけだな」。

 「前の、セネガルの代表監督はドイツ人だったんだけれど、知っているかい・・?」。そんなブルーノの言葉に、「オ〜〜、オレも知っているよ、シュニットガーだろ!?」と私。

 「そうそう。彼は、とにかく守備を重視したんだ。ディフェンスのシステムをガチガチに実行させたのさ。そんなだったから、選手たちにフラストレーションがたまるのも当たり前だったよな。それを、オレが解放したということかな。彼らは、もっと自由にやっても、しっかとりバランスを取れるだけのインテリジェンスを持ち合わせているんだ。そのことは、セネガル代表で仕事をはじめる前から確信していたことさ」。

 「彼らは、他の人たちの主張にもしっかりと耳を傾けられる。そのことは、攻撃で一人が行っても、必ず誰かは、自分自身の判断で、そのバックアップに回れるっていう「協調性」に現れてくるというわけさ。もちろん、オレもしっかりと意識付けするわけだけれど、選手たちの自主性にも大いに助けられているよ」。

 「仕事をしていて楽しいだろう・・?」。「もちろんさ、ゲームを重ねるたびに、彼らが発展をつづけていることを実感できるんだからナ」。

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 アフリカ諸国のなかで、やっと組織に長けたチームが出現してきた。それがセネガルなのです。そのことを話題にしたときは、本当に盛り上がったものです。まあ、雑誌や新聞では、スペースの関係で、このテーマについては、そんなに深くは扱われていませんでしたがね・・。

 「オレは、たぶんタイプとしては、放任かもしれないな・・」。

 「ブルーノは、自分のことをどんなタイプのコーチだと思っている? 専制タイプ? 民主的タイプ? それとも放任タイプ?」。私がそんなことを聞いたとき、ブルーノが、そう答えたモノです。

 ここがポイントなんですよ。たしかに、しっかりとコミュニケーションをとることが、チームとしてまとまるための一番近道ではあるんでしょうが、それでも、そこはサッカー。絶対に、理不尽なエゴや、チームの和を乱す行為、はたまた試合中での独善プレーなんかが出てくるものです。そのときブルーノは、どんな対応をするのか・・。

 「そんなことは聞くなよ。オマエもコーチだから分かるだろう。もちろん、そんな厳しい瞬間はあるし、ケースバイケースで、それなりに対処しなければならないよな。それでも、具体的な対応や、そこでの心理的なプロセスは、確実にヨーロッパ諸国や、他のアフリカ諸国とは一線を画していることだけは確かだとは思う。だから、適度な緊張感を保ちながらも、余裕があるっていうかさ・・。まあ、そういうことだ・・」なんて、最後は、ちょっと言葉を濁らされてしまって・・。そこが、「外部」には絶対に分からない、人間的な「真実の瞬間」というわけです。

 ブルーノとの会話については、「ガンバレ!セネガル!!」キャンペーンの一環として、また書きますので・・。

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 さて試合・・。でも結局は、書くポイントはほとんどありませんでした。最後の20分間だけ登場したデュフやファティガ等が展開した、美しく力強いチャンスメイク以外はね。両チームともに、ウォームアップ程度のサッカーに終始したんですよ。こちらは、せっかく藤枝まで出かけたのに・・なんて、ちょっと憤っていたのですが、後から聞いた話として、セネガルチームは(ブルーノが!)、この試合のことを「事前」にまったく知らされていなかったとのこと。

 そのことを、試合後の記者会見で、ブルーノ・メツが「公表」してしまったらしいのですよ(あるラジオ局の方からの情報でした)。私は、タイムアップの後、すぐに東京へとって返さなければならず、記者会見には出席できなかったというわけです。まあ、何をかいわんや・・。

 実のことをいうと、ここまで書いてきて、急に寝てしまったんですよ。そして「今(=月曜日の早朝)」、書き足しているといった体たらく。

 今日はこれからビジネスミーティングや、ワールドカップへ向けてのメディアミーティングなどが山積み。昨日の「フランス対ベルギー」、「ドイツ対オーストリア」などの試合レポートは、今夜にでも・・なんて思っています。それでは本日はこのあたりで・・

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 あっと・・。湯浅のプレス申請が承認され、プレスの「AD」を取得したことは、以前、おはなししました。それに加え、私が申請した「プレスシート」も、今のところ(予選リーグ)すべてが承認されました。ということで、予選リーグは「11試合」を観戦しレポートする予定です。

 私がレポートする「媒体」は、私のHPはもちろんのこと、ワールドカップ期間中では「週に二回」刊行されるサッカーマガジンで毎回(1/4コラム以外に!)、毎週連載している週刊プレーボーイ、東京中日新聞、朝日新聞の「日曜版」、日経クリックでの連載、その他スポットで、いくつかの雑誌やインターネットマガジン、それにラジオの文化放送(いろいろな番組で)、そしてテレビのスカパー(スポット)といったところです。さて、どうなることやら・・




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