東京中日新聞でのテーマは、ズバリ「最前線での単独勝負」。それが少なすぎるから・・それにトライする明確な姿勢が見えてこないから、スウェーデンの守備ブロックが(ノルウェーの守備ブロックも!)、余裕をもって対応することができる(余裕を持って次を予想できる)・・。最前線までいったら、もっと単独ドリブル勝負、ワンツー勝負、はたまた「タメ」などを駆使した、限りなく「個人主体」の勝負にもチャレンジしていかなければ・・攻撃の基本は「変化」なのだから・・そんな単独勝負を仕掛けていけば、相手にも警戒心が生まれる・・だからこそ、日本が得意の「組織的な崩し」にも、より実効がともなってくる・・なんていうのが、内容の骨子でした。
とにかく、前半では、攻撃の変化を演出できていた(変化の演出に対する強い意志があった)のは、中田英寿くらいでしたからね。明確なシュートシーンも、彼が放った二本のロングシュートくらいでした。
それが後半になって、ちょっと雰囲気が変わってきます。交代出場したのは、右サイドに入った明神(服部と交代=小野が左へまわる)、宮本(松田と交代=森岡が右へ、宮本が中央へ入る)、そしてトップの鈴木隆行(森島と交代=ツートップになる)。そして前半の、柳沢のワントップから、ツートップへ「選手たちの基本的なポジション」を変更します。それが、うまく機能しはじめたのです。
前半の森島ですが、たしかに二本、二列目からの飛び出しを魅せました(小野からのスルーパス等が決まる!)。また守備でも、動きまわって効果的なプレーを魅せていました(左サイドでのタックルは素晴らしかった!)。それでも、全体的には、ちょっと機能不全だったとせざるをえませんでした。もちろん、彼だけの責任ではありません。何といっても、チーム全体がうまく機能していなかったのですから。
後半のゲームの流れですが、日本が良くなったこと、逆にスウェーデンがペースを落としたこと、この二つが相乗した結果だったと思います。それでも湯浅は、日本のペースアップの方が、後半でのゲームの流れに「より」大きな影響を与えたと思っています。
最前線から戻り、中盤でタテパスを受けた鈴木隆行が、当たりにくる相手を、バンッと突き放してボールをキープし、そしてシンプルにパスを回し、次の「大きな動き」に入っていきます。やはり、全員の、そんな「自分主体の積極プレー」の連鎖が、攻撃の流れを決める決定的な要素だということです。柳沢のプレーも活性化してきましたからネ。
三都主も、まあまあの存在感を示しました。彼が入ったことで、全員の「勝負への意識」が、明確に左サイドへ傾いていったと感じます。
後半17分に魅せた三都主のタメは秀逸でした。それがあったからこそ、中田英寿との明確なイメージシンクロが可能になったのです。この同点ゴールですが、たしかに相手の自殺点だったとはいえ、その瞬間の流れからすれば、明らかに日本代表が奪い取ったゴールだとすることができます。見事!
それにしても柳沢。もっと、もっと単独勝負にチャレンジしていかなければ。あれ程の才能なんですから。もちろん中盤の高い位置での「シンプルなパス回し」はオーケーですが、たまには「強引」にドリブル勝負へいったり、ワンツーにトライしたり、はたまた勇気をもった「タメ」を演出したりなど、攻撃変化の急先鋒にならなければいけません。何といっても彼は、ハイレベルな才能もさることながら、何をやっても許される「エゴイストに徹さなければならないポジション」を与えられているのですから・・。
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前半19分に、一瞬のスキを突かれた失点ですが、それは、余裕を持って「タメ」を演出したラーションと、一瞬の中田浩二のスキ(視線を読まれた!?)を突いた決定的フリーランニングを魅せたアルベックによって奪われました。まあ現象面だけからすれば、中田浩二のマークミスということになるのですが、これについては、後でビデオを見てみることにしましょう。とにかくこの失点が、中田浩二にとって、これ以上ない「刺激(学習機会)」になったことを願って止みません。何といっても彼は、日本代表にとって、代替のきかない選手なのですから。
前半40分。徐々にペースが落ちてきたスウェーデンでしたが、やはりカタチになったときの攻めには鋭さがある。右サイドへのサイドチェンジパスを起点に、最終のクロス攻撃を仕掛けようとしているシーンです。
この状況で、中央ゾーンにはアルベックが突っ込んでいきます。ただ同時に、その後方から、押し上げたスベンソンが、ファーサイドに出来た決定的スペースへ突っ込んでいったのです。マークできるのは、もう小野伸二しかいない。そのスベンソンの決定的な動きに気付いた小野が、全力でマークへダッシュします。それでも、「身体半分」リードされている・・。最後は、身体を「うまく寄せた」ことによって(ファールを取られる危険性が・・)、スベンソンのヘディングミスを誘いましたが、このシーンにしても、小野は、ちょっとのスタートの遅れが致命傷につながるという事実を体感したに違いありません。
この二つに代表される「ほんのちょっとしたところ」。それが、肉を切らせて骨を断つという本番では致命傷になってしまう・・。だからこそ彼らは、ビデオを見直すことで、決定的な瞬間に対する「感覚」を、限界まで研ぎ澄ましておかなければならないのです。
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いま私は、先日パリで行われたフランス対ベルギーの試合内容を、ビデオを詳細に分析しています。もちろん結果には興味はありませんが、彼らがそこで魅せつづけた、「歴史的な背景のある確信」は、本当にインプレッシブ(印象的)でした。
簡単なメモをしましたので・・
●長身選手を揃えた、バランスのとれたチーム
●何といっても、次のカウンターの成功に対する確信をベースにした「粘り強いディフェンス」・・それがレベルを超えている・・何度抜かれても、外されても、決して足を止めてしまうことはない・・それは、もう「伝統」とまで言えるレベル・・彼らは歴史的にも、そのサッカーで何度も存在感を示してきた・・だからこそ、選手たちのイメージにも深く刻み込まれている・・それが「確信」となり、またイメージシンクロのレベルを限りなく高める・・
●ボールを奪い返した瞬間、明確なイメージに誘われるかのように、少なくとも2-3人は「直線的」な全力ダッシュで上がっていく・・そしてそこへ、ロングパスやサイドチェンジパスを決めてしまう・・また「縦方向への」素早いコンビネーションで決定的スペースへ突いていく・・
●ただし、攻撃には「メリハリ」がある・・「組み立て」になったら、そんなに無理はせず、次の「守りからの素早い展開」のチャンスを待つ・・無理をしない・・無理に「人数をかけて」攻め上がるようなことはしない・・
●それも、彼らは、シンプルな一発で勝負を決めてしまうような明確な「カタチ」を持っているから・・クロスが上がる状況になったら、なかで待つ選手達が、例外なく「斜め」に走り込んでくるなど、シュートを放つ者が、動きの中で勝負を仕掛けてくる(特に、左サイドのバート・ゴール、右サイドのベルヘイエン!・・中央のソンクは、限りなくオトリ!?)・・もちろん「事前」のタイミングに、ここしかない! という勝負スポットを明確にイメージしている・・たしかに彼らの攻撃に変化は乏しい・・でも、こんな明確な「カタチ」を持っていることは強力な武器・・
●とにかく、ゲーム全体の「流れ」について、全員の「イメージ」が明確にシンクロしていることを感じる・・それが彼らの「確信レベル」をより引き上げる・・強いチームだ・・
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私は、スウェーデンを、ベルギーに「投影」していました。足許はそんなに「うまく」はない・・それでも、攻めに入れば、シンプルな展開から(変に、こねくり回すようなシーンがまったくない!)、何らかのフィニッシュシーンを作り出してしまう・・(全体的な流れでは互角でも、チャンス作りでは、明らかにスウェーデンに軍配が上がる!)。もちろん単純に比べられませんがね・・。
とにかくベルギーは、本当に危険な相手です。彼らに比べれば、総体的な実力では明らかに上のロシアの方が、チーム戦術的には、日本代表にとって組みし易しかも・・なんて思っている湯浅なのです。