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天皇杯準決勝・・決勝は、(見方によっては?!)めっちゃ面白い一発勝負マッチになりまっせ・・(2002年12月28日、土曜日)

さて、天皇杯決勝のカードが決まりました。アントラーズ対パープルサンガ。今回は、両チームの見所をさぐりましょう・・もちろん湯浅の独断と偏見でネ。

 まずアントラーズから。ジェフとの準決勝を、「2-0」と、危なげなく勝ち切りました。ジェフも頑張りましたし、戦術的な意図という見所もあったのですが、やはり総合的なチカラの差(個人能力の総体としてのチーム力の差!)はいかんともし難たかった。これで、優れた仕事を為したベンゲローシュ監督がヨーロッパへ帰ることに・・。

 あまり話題にはのぼりませんが、彼は、ヨーロッパ・コーチシーンの中心的存在の一人なのです。UEFAサッカーコーチ連盟の重鎮でもありますしね。ジェフに対しては、彼が残したものを発展させていくことを願って止みません。

 さてアントラーズ。徐々に調子が上がっています。例によっての堅牢な守備ブロックを基盤に、オーソドックスではあるけれども、それで選手全員のイメージが統一されているからこその危険な香りをふりまく攻撃を展開するのです。やはり実力チーム。

 彼らのチーム戦術については、もう皆さんご存じでしょうから、ここでは、私の注目ポイント(個人)だけを列挙します。

 まず中田浩二。準々決勝のレポートでは、彼のパフォーマンスに対して「もっと、もっと・・」と書きました。もちろん、彼が持っている潜在的なキャパシティーに対する期待からですよ。この試合でも、そのニュアンスは変わりません。とはいっても、中盤の底での素晴らしい「読み」ディフェンスだけではなく、効果的なゲームメイキングなど、プレーのコンテンツは高まりをみせていると感じます。

 特に、ボールがないところでのクレバーなポジショニングからの「次のパス狙い」。何度彼が、アブナイ場面で、どこからともなく顔を出し、インターセプトや、トラップの瞬間を狙ったフェアなアタックでボールを奪い返してしまったことか。それこそクリエイティブ守備。

 攻撃でも、組み立ての中心になるばかりではなく、何度も決定的パスを繰り出したりもしました。また、ここぞ!の状況では、鋭い決定的フリーランニングで最終勝負シーンに顔を出したりします。クレバーな消えるプレー・・。

 素晴らしい潜在能力を秘めた中田浩二。だからこそ、「もっと・・もっと・・」と思うわけです。代表チームでも中心的存在の彼には、欧州組の「本物のライバル」になってもらわなければいけませんからね。

 とにかく決勝では、中田浩二が魅せつづける、攻守にわたるクリエイティブな発想だけに注目するのも一興ですよ。彼のプレーには、それくらい価値あるコンテンツが内包されています。スパイクも「白」だから、すぐに彼を見つけられるでしょうしネ。そして「もっと・・もっと・・」と声援を送る。それこそ、選手にとって、何ものにも代えがたいモティベーションなのですよ。

 さて次のアントラーズ選手は、柳沢。決められませんネ〜〜、シュートを。準々決勝でも、この試合でも。

 シュート決定力には、多分に心理的なファクター(要素)が影響するのですが、あれ程、ギリギリの体感を積み重ねててきている柳沢だから、ちょっと不思議。強いて言えば、彼には「絶対にオレが決めるんだ!」という強い意志(エゴイスティックなマインド・・強引さ)が足りないのかも知れません。

 とにかく今は、スマートに(カッコ良く)決めようとするのではなく、身体で押し込んでやる!・・なんていう、ちょっと「泥臭い」心理になることが大事かも。そうすれば、彼の前に立ちはだかっている何らかの「壁」を超越できるに違いないと思うのです。来年1月3日には、世界選抜の一員としてプレーするわけですからね。もっと泥臭くシュートにチャレンジしたり、個で勝負できる場面では、いくら周りにフリーな味方がいたとしても、強い意志で「エゴイスト」に徹するという意識が大事だと思う湯浅なのです。

 一度彼は、ドイツのサッカー史に残る最高のストライカー、ボンバー(爆撃機)こと、ゲルト・ミュラーのビデオを観ることを進めますよ。その泥臭さといったら、まさに「芸術!」なのです。とにかく、何がなんでも・・という意識ばかりではなく、イメージトレーニングも大事だよ・・柳沢!!

 決定力に不満が残る柳沢ですが、ボールがないところで展開する、縦横無尽の(ワイドにスピードの変化をつける)ロジックなフリーランニングは、一流ですよ。最前線へのマークは厳しいもの。そんなハードマークをかいくぐって、一試合のうちに何度も、まったくフリーで相手ゴール前に顔を出してくるのです。もちろん、そこにボールがこなくても、その動きを何度も、何度も繰り返す柳沢。まさに「クリエイティブなムダ走り」そのものじゃありませんか。そんな彼のボールがないところでの動きにも注目しましょう。確実に、入場料にオツリがきますよ。

 その他でも、小笠原が「より強い自己主張」が出来るかどうか・・名良橋の爆発的な「上下動」・・アウグストの、(終わりに近づいた)自分の存在を誇示するかのような、吹っ切れた攻撃的プレー姿勢・・等々、見所てんこ盛りのアントラーズ。もちろん、彼らのチーム戦術と「組織的なバランシングプレー」も、注目価値は大ですがネ。

 見方によって、サッカーの楽しみ方は千差万別なのです。とにかく、試合前に明確なイメージをもっていれば、感動や、怒りのブーイングにも、特別なリキが込められるというものじゃありませんか(喜びと落胆、必然と偶然が交錯する究極のドラマへの参加意識の高揚!)。

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 さて次はパープルサンガ。

 サンフレッチェと対峙した準決勝では、内容で凌駕し、「2-1」という順当な勝利をおさめました。この試合、私はスタジアム観戦したのですが、そこで感じたものです。本当にヤツらは、良くトレーニングされたチームだ・・。

 「とにかく積極的に・・積極的にプレーすることを選手に言った・・」。パープルサンガ監督の、ゲルト・エンゲルスが良く口にする表現です(それにしても、ヤツも本当に日本語がうまくなった!)。

 攻守にわたって積極的にプレーする・・。そこには、チーム戦術を守りながらも、常にリスクチャレンジのチャンスを狙いつづける姿勢・・等々、深いコノテーションが含まれています。要は、選手たちが、常に最高の集中力(≒考えつづける姿勢)でプレーをつづけているということです。まさにその姿勢は、トレーニング(選手に対する意識付け)の賜。ゲルトは本当に良い仕事をしていると感じます。同じドイツサッカー協会公認コーチとして、彼のことを誇りに思います。

 この試合のパープルサンガは、サンフレッチェがスリートップ(久保、大木、エルツェグ)ということで、鈴木和裕、手嶋、角田で組むスリーバックに、下がり目の中盤、石丸が、ほとんど「組み込まれる」という状態でプレーしていました。

 もちろん石丸は、攻めでは上がっていきますが、この試合では、限りなく「前気味のストッパー」という役割に徹していたと表現するのが妥当だったのです。そしてその前に、前後をつなぐリンクプレーヤーとして斉藤大介がポジショニングする。

 その布陣が、殊の外うまく機能していたのです。まあそれには、サンフレッチェの攻めに、後方から最前線を追い越していくというタテの変化が乏しかったこともあるのですがネ・・。

 サンガの場合、両サイドの「コンビ」が、攻撃のポイントになっていました。右サイドでは、パク・チソンと富田、左サイドでは、鈴木慎吾と、サンガの若大将、松井大輔。それに、中央ゾーンの斉藤大介が、つなぎ役として、効果的に絡んでいくというわけです。

 特に、左サイドからの攻撃には目を見張らされましたよ。松井と鈴木慎吾のコンビネーション。二人とも、素晴らしい攻撃力を有していますからネ。ドリブル突破しかり、コンビネーションしかり、はたまたボールがないところでの爆発フリーランニングしかり・・。

 ただ、そんな左サイドに比べ、この試合でのパク・チソンの出来は今ひとつでした。追加ゴール(2点目)のシーンを演出した、右からの崩しドリブルは「0.5点」に匹敵するほど実効あるものではあったのですが・・。彼の思いは、既に「PSV」へ飛んでいる・・?! とはいっても、次は決勝ですからネ。「置きみやげ」としての、彼のベストプレーが観られるに違いありません。

 さて両サイドの積極的な押し上げですが、そのことで時として空いてしまうサイドスペースのカバーリングは・・?! いや、ご心配なく。両サイドの四人ともに、素晴らしい「守備意識」とディフェンス能力を備えていますからネ。タテのポジションチェンジで、効果的にカバーリングし合っていましたよ。もちろんそれには、(繰り返しになりますが)サンフレッチェの、後方からの押し上げが緩慢だったこともあるのですが・・。

 とにかく決勝では、サンガのサイド「ペア攻撃」に注目しましょう。それは、それはエキサイティングですよ。

 あっと・・もちろん、サンガの最前線に張るダイナミズムの権化、黒部光昭を忘れてはいけません。この試合でも、例によっての大きく鋭いフリーランニングをくり返すことでサンフレッチェ守備ブロックを攪乱するだけではなく、何度も、自らが決定的スペースへ飛び込んでいきました。また、彼の放つシュートも危険そのもの(シュート決定力だけは、確実に「今の」柳沢を上回る?!)。とにかく素晴らしい選手です。

 サンガが展開するサッカーには、確固たる「イメージ」を基盤にした落ち着きがある感じます。それは、オレたちは良いサッカーをやっているんだ・・という自信をベースにしていることは言うまでもありません。もちろん、良いサッカーをやっているということを実感できることは、彼らが、常に考えながら(成功と失敗を、頭脳の深層に染み込むくらいに体感しながら!)サッカーをやっていることの証でもあるというわけです。

 これまで何度も、サンガのサッカーを(いや・・サンガ選手たちの考えつづける姿勢に対してと言った方が正確かな?!)高く評価してきた湯浅ですが、この試合で、その思いを再度強くしたというわけです。だからこそ決勝は、ものすごく面白くなる!!と断言できるのです。

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 とにかく元旦は、国立競技場へ足を運びましょう。絶対にソンはしません。

 もちろん、AM放送も聞けるラジオを携えてね・・。準々決勝でも告知しましたが、決勝は、ラジオ文化放送で湯浅が解説するんですよ(しつこくてスミマセン!)。ラジオですから、ちょっとウルサイかも・・。そのときはご容赦あれ。

 それでは皆さん、また元旦に・・。




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