それについて、アメリカ在住の方々から複数のメールをいただきました。ちょっとご紹介します。それは、『湯浅さんのアメリカ事情の把握内容に、ちょっと誤解があるようなので・・』という、親切なニュアンスのメールですよ。
『さて、米国でのW杯の報道振りですが、ポルトガルに勝ったせいで、にわかにニュースに出る機会も増えてまいりました。NYタイムズもワシントンポストも勝利を1面で報じるなど、サッカー記事としては異例の扱いぶり。やはり1番好きというか、愛国心をくすぐる話題は大好きな国民性なのでしょう。ちなみに米国では数試合しか放映がないと書かれておられましたが、米国の名誉(この国が好きなわけではありませんが、フェアにという意味で)のために一言。スポーツ専門局 ESPNあるいはESPN2のどちらかで全試合をみることができます。小生も日本vsベルギーをみることができました。また放映権を持つ地上波のABCも、ナン試合か放映する予定です。ESPNはケーブルではないかといわれそうですが、日本よりもケーブルははるかに普及しているので、見る気になれば困りません。またスペイン語のチャンネルもW杯を熱狂的に中継しております。一サッカーファンとして米国代表が勝ち進み、この国でもサッカーが市民権を得ることを期待します。ただ、そうなると共催国韓国の1次リーグ突破が難しくなるのは悩ましい点です・・』。
また別の方からも、『ワールドカップですが、アメリカではESPNというスポーツ番組で全試合、生放送で見られます。これはケーブルですが、アメリカの家庭でケーブルを引いていない所は少ないと思います。普及率が日本と違うと思いますし、悲惨な状況というより、日本より恵まれてるかなと思いました。オリンピックが録画放送だったのに比べると生放送のワールドカップは随分力の入れ方が違うなぁという感じです・・』。
同様なご指摘で、『アメリカではフランスのときもそうですが、今回もABC・ESPNで全試合が生中継されます。確かに、ESPNはケーブルを引いていないとみることができないのですが、ケーブルの一番安いサービスに含まれており、この国におけるケーブルの普及率を考えれば、日本よりもむしろテレビ観戦環境はよいといえると思います・・』という内容のものもありました。
新聞報道の内容は、アメリカでは、地上波は数試合だけ・・、あとはケーブルを引いていなければワールドカップは、まったく観られない・・という、かなりネガティブなニュアンスだったと覚えているのですが、実状は違ったようで・・。ナルホド・・と、新聞のニュアンスを鵜呑みにしてしまったことを悔やんでいる湯浅です。こういうことは、しっかりと自分自身で確かめなければならないわけですからネ。いや、穴があったら・・という心境なのです。情報を下さった方々に対し、心から感謝している湯浅なのです。本当に有り難うございました。
またご指摘のなかに、『ワールドカップ熱も徐々に高まりを見せてきています。6月6日の朝刊では、あのニューヨーク・タイムズが一面で、「競馬もタイソンの試合もアイスホッケーもバスケットも野球もどうでもいい! 月曜日は韓国対アメリカ戦だぜベイビー!」なんてかなりテンションの高い記事を載せていました。(この「韓国対アメリカ戦だぜベイビー」っていう言葉は記事の最後にも繰り返されていました)』、なんてネ。
アメリカでも盛り上がってきている様子が、手に取るように伝わってきます。正直、嬉しいですよね。アメリカでも、徐々にサッカーが社会的ポジションを獲得していく・・。
ルールがシンプルだからこそ、不確実性要素が満載だからこそ、そして最終的には「自由」に決断し、自分主体でプレーしていかなければならないからこそ、サッカーは、より人間の「感性」にうったえるボールゲームだと思います。そんな、「より自由度の高いスポーツ」だからこそ、世界中で人々が熱狂するということでしょう。これは自分自身が何十年とプレーした経験を通した実感でもあります。
組織目的、ゲームルール、チーム内の(戦術的な)規律等々をベースに、自分主体で、限りなく自由にプレーせざるを得ないボールゲーム・・。まさにそれは、21世紀社会の縮図ではありませんか・・なんて、もうちょっと風呂敷を広げたい湯浅なのです。
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さて今日は、フランスとアルゼンチンに関するショートコメントからはじめたいと思います。
両チームともに、中盤の重心に問題が生じています。もちろんジダンとヴェーロン。
昨日のヴェーロンの交代ですが、怪我が完全に癒えていないということで、自分から交代を申し出たと聞きました。ナルホド・・。私には、そんなに内容が悪いとは思えなかったのですが・・、でも実際は、かなり無理をしていたということなんでしょう。
彼らが十分に機能するかどうかが、「勝負の最終戦」の行方を左右するに違いありません。それでも湯浅は、「既に決勝トーナメントに入ってしまった」彼らが、少なくとも、その時点でのベストパフォーマンスを出し切った圧倒的なゲームを展開すると確信しているのです。
ものすごく興味深い展開になった「A組」と「F組」のリーグ最終節(もちろん他のグループでも事情は同じですが、この二チームが、世界のエキスパートの誰もが認める優勝候補ですからネ・・)。目が離せません。
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今日はテレビ観戦。
そして二試合目で、イタリアが、クロアチアに逆転負けを喫してしまいました。ロスタイムでの、イタリアの「幻の同点ゴール」のシーン。あれはイタリアのゴールでしたネ。互いの「引っ張り合い」は日常茶飯事。あのシーンでは、イタリア選手の「引っ張り」が目立ちすぎたということか・・。まあ、レフェリーのミスジャッジもドラマのうち・・ということです。
それにしてもクロアチア。若手に切り替えてペースアップしましたネ。その試合内容は、これからのブレイクに期待がもてるものでした。彼らを見ていて、「やっぱり世代交代って難しいものなんだよな・・。それでも、彼らの場合は、幸運なことに、それが間に合いそうだな・・」なんて思っていました。
もちろんクロアチアの「内容」がアップした背景は、中盤でのダイナミック守備。またそれには、イタリアが、自分たちでゲームペースを作らなければならないという展開が苦手だから・・という側面もありそうです。しっかりと守り、全員のイメージがシンクロしたカウンターという展開ならば、得意のイタリアのリアリズムを見せつけることができる。でも、自らペースを握らなければならないときの彼らは・・。
ボールの動きが活発ではないから、相手に「次のパス」を明確に読まれてしまう。ボールホルダーがこねくり回すシーンが多かったことで、逆にクロアチアの忠実でパワフルな中盤守備が、殊の外うまく機能したということです。何度、イタリアの組み立てが、途中で分断されてしまったことか・・。
とはいっても、クロアチアもチャンスを作り出すことがままならない。そんななか、前半20分前後に、イタリア最終ラインの重鎮、ネスタが怪我で退場してしまいます。そのことで、イタリア守備ブロックが不安定になり、逆にクロアチアの攻撃に、俄然、勢いがでてきます。
何度か決定的チャンスを作り出すクロアチア。一度などは、ゴールの中央ゾーンでまったくフリーになったクロアチア選手にパスが通ってしまったりして・・。ネスタがいれば、危険な匂いを嗅ぎ取り、すぐに、その選手をチェックしてしまうんでしょうが・・。逆に言えば、イタリアの守備陣が、彼の「読み能力」に頼りすぎていたという見方もできそうです。
とはいっても、そこはイタリア、短時間で、その不安要素を「ある程度」は解消してしまいます。選手たちが話し合いながら、調整したということでしょう。そんなことも、イタリアの一流の証というわけです。
そして膠着状態に・・。ともに決定的なチャンスを作り出せないままに時間が過ぎていく・・。でも、そんなセットアップされた雰囲気のなか、例によって唐突に、イタリアが先制ゴールを決めます(後半10分)。ヴェエリのヘディングシュート。素晴らしい迫力でした。組み立てがままならないイタリアにとっては、ヴィエリのヘディングや、タテへの突破力は、明確な武器。選手たちも、組み立てに停滞したらヴィエリへ・・ということで意識が統一されていると感じます。
それでも、もちろんクロアチアも、そんな彼らの「ピクチャー」は先刻ご承知。だから、あの優秀なヴィエリでも、どんどんと影が薄くなっていってしまったというわけです。だからこそ、そんななかで飛び出した「あの」抜群のヘディングシュートに、「唐突」という印象をもったのです。あっと・・唐突な一発勝負ゴールは、イタリアの真骨頂。だから、「そうか、イタリアは、これだったんよな・・」なんてネ・・。
それでも後半28分に、クロアチアが同点ゴールを叩き込みます。得点者は、若手のオリッチ。左サイド、ヤルニからの、例によっての「トラバース・クロス(GKと最終ラインの間スペースを通すラストパス)」に、ファーポストゾーンへ瞬間ダッシュで、後方から飛び込んだオリッチ。そんなところにも、イタリアのネスタの「穴」を感じたものです。
彼らは、オリッチの決定的な最終ダッシュを感じるのが、ほんのちょっと、本当に100分の1秒単位で遅れたのです。そしてその3分後の、ラパイッチの勝ち越しゴールが飛び出します。
クロアチアは、この一勝で生き返っただけではなく、それを通り越してブレイクしそうな勢いまでも感じさせてくれました。これでG組の最終節も楽しみになってきたじゃありませんか。
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ブラジルについては、一言だけ。彼らは完全に生き返った・・。
最初のトルコ戦では、まだカッタるい部分も多々見えました。それがこの試合では、相手の中国が攻守にわたって仕掛けつづけたこともあって、自分たちのサッカーを取り戻したと思うんですよ。
中盤から、ガンガンとプレッシャーをかけてくる中国。立派な闘いを披露しましたが、それによって、ブラジル中盤でのボールの動きが、格段に改善されたと思うのです。
また、中盤の底コンビを組んだ、ジルベルト・シウバと、ジュニーニョ・パウリスタの「改善」も見逃せません。シウバが前へ押し上げていかない「汗かき」。ジュニーニョが、中盤のバランサーと、「ボールのディバイダー(ボールの動きの起点)」。そのコンビネーションは、殊の外うまく機能していましたよ。
それまでは、前線にパスが回ったら、前へ突っかけていくしかなかったブラジルの前線選手たちが、チョン、チョンと、後方(=ジュニーニョ)をうまく使って「タテ方向」にもボールを動かしはじめたのです。つまり、ボールの動きに「深さと素早さ」が出てきたということです。
完璧なチームになりつつあるブラジル。これからの大会の展開が、俄然、楽しみになってきたではありませんか。そのためにも、アルゼンチン、フランスには、是が非でも決勝トーナメントに進出してもらわなければ・・。
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実をいうと、いま、スカパーの深夜番組に出演して帰ってきたところ。そのなかで今日の試合を振り返ったわけですが、そこでも、ブラジルが、「バラバラの才能集団」から、「一つのユニット」へと変身しつつあることを確信した湯浅だったのです。
ちょっと疲れ気味。他の原稿も仕上げなければならず。ということで、本日は、ここまでにします。では明日、日本代表対ロシア戦で・・。