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W杯レポート(14)・・あっ! また、絶対的な優勝候補が消えていく・・アルゼンチン対スウェーデン(1-1)・・イングランド対ナイジェリア(0-0)は「ちょっと」だけ・・そしてものすごいドラマになった予選B組について・・(2002年6月12日、水曜日)

どうも皆さん。本日は、「死のグループ」、予選F組と、予選B組の結果と内容を、簡単にレポートすることにします。なんか言って、本当は・・。いやいや、今日は、サッカーマガジンの記事も上げなければならないもので・・。とはいっても、「内容」に何か発見があれば、もちろん書きつづけはしますがネ。

 ということで、キックオフの直前にやっと長居スタジアムに到着した湯浅でした。生ではイングランド対ナイジェリア。また、スウェーデン対アルゼンチンは、記者席に備え付けのテレビで観戦することにします。

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 さてイングランド対ナイジェリア。このゲームをどのように表現しましょうか。まあ、「解放されたナイジェリア」に対して「微妙な立場にあることが、そのままゲーム内容に現出してしまっているイングランド」ってなことですかね。

 イングランドは、どうもうまくゲームが組み立てられません。それに対し、たしかに、例によっての「足許パス(周りが動かない!)」と「個人勝負」が目立ちに目立つナイジェリアですが、それでも、最終勝負の瞬間には、ものすごくフッ切れた(解放された)勝負を仕掛けていくんですよ。ドリブルあり、ワンツーあり、タメからのスルーパスあり。そこでの急激なテンポアップは、まさにドリーム・・じゃありませんか。彼らのサッカーは、本当に観ていて楽しいことこの上ありません。それに対してドイツのサッカーは・・。まあグチはなしにしましょう。ドイツにしても、2006年を見据え、若手の才能が伸びてきていますからネ。ミロスラフ・クローゼ、セバスチャン・ケール、そしてミヒャエル・バラック等々。あっと、ここではイングランドとナイジェリアをレポートするんだった・・。

 イングランドが、うまくゲームを組み立てられないことには、暑いこと、ナイジェリア中盤守備がうまくバランスしている(まあまあ忠実・・またイングランドのボールの動きが緩慢なことで「読み」もうまく機能している!)ことで、中盤でのスペースをうまく使えないこと(ボールがないところでの動きも緩慢!)、そして何といってもオーウェンがうまく抑えられていること(とはいっても、一本だけでしたが、決定的なドリブル突破を魅せましたが・・)等々、色々と要因が見えてきます。

 とはいっても、やはり、「低い」サイドの位置から上げられるクロス攻撃がうまく抑えられている(機能しない)というのが大きいでしょう。もちろんベッカムのことですよ。あっと、「後方からの飛び出し」による決定的な仕掛けが機能しないというのも大きいでしょうかネ。

 ロングボールをヘスキーのアタマに合わせ、そこからの「決定的ヘディングパス」を、脇をすり抜けて上がった味方が決めるとか、前線の選手たちがしっかりとボールをキープする脇をすり抜けてオーバーラップするようなプレーです。そんなタテのポジションチェンジも、ほとんどといっていいくらい見られませんでした。アシュレイ・コールが、二度ほど「追い越しフリーランニング」から良いクロスを入れはしましたがネ・・。

 ということで、互いに瞬間的な見せ場はあったものの、全体的には「動き」の少ない展開に終始し、結局「0-0」の引き分けに終わったというゲームでした。

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 長居スタジアムでピッチに視線をはしらせながら、チラッ、チラッと、他会場のアルゼンチン対スウェーデンの試合にも目をやっていました。何といっても、そちらの方が勝負としては面白いゲームですからネ。

 そうしたら・・。もう信じられませんでしたよ。これで、世界中のエキスパートの誰もが認める、今大会優勝候補の双璧が、予選グループで姿を消してしまったのです。

 昨日はフランス。そして今日はアルゼンチン。

 アルゼンチンは、ソリンのヘディングシュート、クラウディオ・ロペスの決定的シュート、またヴェーロンのフリーキックからのこぼれ球シュート等々、多くのチャンスを作り出しました。昨日のフランスのようにネ。対するスウェーデンは、数本のカウンター攻撃と、セットプレーだけ。

 スウェーデンの先制ゴールは、そのセットプレーから、スウェーデンのスヴェンソンが見事に叩き込んだものでした。

 その後は、もうアルゼンチンが大攻勢。ドリブル突破を図ったオルテガが引っかけられてPKまで取ります。それを決めて「1-1」にはなったのですが、そこから攻めきれずに・・。

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 数年前に私が開発した、「サッカーは、有機的なプレー連鎖の集合体」という表現。いまその表現に含まれる「コノテーション(言外に含蓄される意味合い)」を噛みしめています。

 「たしかに、重心が失われ、互いのプレーが有機的に連鎖しなくなったら、どんなに才能があってもオシマイだよな・・」。

 その「連鎖」を操っていたチームの重心は、言わずと知れた、ジダンとヴェーロン。この二人がトップフォームならば、彼らが中心になった「連鎖プレー(組織プレー)」が確実に機能したはずですし、他の仲間たちも、焦りに誘われた「個人プレー」等に奔り過ぎることもなかったことでしょう。攻めのリズムを作るのは「ヤツ」だ・・と、もっと積極的に彼らにボールを回していたに違いないと思うのです。でも、彼らの運動量が少ないこと、パスレシーブポジションに入るタイミングが遅れ気味なことで、どうしても彼ら抜きの「攻撃ユニット」になってしまうシーンが続出したということです。そして味方の「イメージ」から、徐々にこの二人の存在が希薄になっていく・・。

 サッカーは、ものすごく微妙なバランスの上に立つ「生き物」だとも表現できるかもしれません。あんなに素晴らしいサッカーを展開していた両チームだったのに・・。

 局面的には、まだまだ素晴らしい潜在力を感じさせていたフランスとアルゼンチン。ちょっとの修正で、また「美しいハーモニー」が奏でられるに違いないと確信していた湯浅でしたが、結局は・・。

 来週発売の週刊プレイボーイ記事の最後で、『・・ということで、明日からはじまるグループリーグ最終戦では、フランスやアルゼンチン、はたまたポルトガルといった「追い込まれた強国」が、本来の実力を発揮して決勝トーナメントへ進出するに違いないと確信しているのです。この号が発売される頃には、既に決勝トーナメント一回戦が終了しています。もし私の予想がハズれていたら、そのときは笑ってやってください。では・・』なんて書いた湯浅だったのです・・。(PS:その後、プレイボーイ編集部から、結果を受けて内容を変更しましたという連絡が入りました・・。まあ、仕方ありません。私としては、笑ってやって欲しかったのですが・・なんといっても私は、彼らのサバイバルを確信していましたからネ。)

 それにしても、番狂わせが多い今大会。それもこれも、世界的な情報化の進展、また、選手移籍も含む国際化によって、強豪と、日本も含む中堅国の「僅差」の規模が、徐々に縮小していることの証明なんでしょう。

 このことは前に書きましたっけ?? あまりに多くの原稿を、様々なメディアで発表しているもので、どこで何を書いたか把握できていません。もし以前にも書いていたとしたら、そのときはご容赦・・。

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 さて予選B組。スペイン対南アフリカ、そしてパラグアイ対スロベニア。この試合での勝敗だけではなく、決勝トーナメントへ進出する争いも含め、両方とも、すごいゲームになりました。いや、エキサイティング!!

 一人足りない状況で(試合開始早々に、イエロー二枚で、パラグアイのディフェンダーが退場処分!)、それもスロベニアに先制ゴールまで決められてしまったパラグアイが、その後、「二つ」の大逆転劇を演じてしまいます。スロベニアに大逆転勝利をおさめただけではなく、グループ順位でも、南アフリカを大逆転してしまった・・。

 もう一つの試合では、二度も同点に追いついた南アフリカでしたが、結局は「2-3」でスペインに惜敗してしまいます。それでも、この大会で彼らが展開した素晴らしいサッカーは、これから世界中で高く評価されるに違いありません。セネガルにつづき、アフリカから出現した「組織と個」がハイレベルにバランスしたサッカー。彼らの今後にも注目です。

 「あの」スペインをタジタジとさせた、ハイレベルな爽快サッカー。そこでは、ノムベテとかマッカーシー、はたまたフォーチュンなど、シドニーオリンピックで日本と対戦したメンバーが主力で活躍していましたよ。ちょっと、気が入ってしまった湯浅でした。

 いや、両ゲームの最後の10分間は、大阪のメディアセンター内に設置されたテレビの前は(たくさんのテレビが並べられ、互い違いに、この二つのゲームを映している!)、人だかりになってしまって・・。

 それにしても、すごい「ダブル勝負」を見せつけられ、一気に疲れがフッ飛んだ湯浅でした。

 これでB組のトップはスペイン。そして二位に、最後の10分間で大逆転劇を完遂したパラグアイが入りました。決勝トーナメント一回戦では、スペインがアイルランドと、またパラグアイはドイツと対戦することになります。フ〜〜〜。

 ではまた明日・・。




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