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W杯レポート(17)・・三人のレギュラーが欠けたからこそ、ドイツの勝負強さを再認識できたりして・・ドイツ対パラグアイ(1-0)・・(2002年6月15日、土曜日)

今日も「導入部」はなしです。

 実をいうと、まだ「大阪」なんですよ。プライベートなことも含め、所用が重なったため、どうしても新潟(デンマーク対イングランド)や韓国チェジュ(ドイツ対パラグアイ)まで足を伸ばすことができなくなってしまった湯浅なのです。本当に残念・・というか悔しいのですが、まあ仕方ない・・。

 プレミアコンビ(ハーマンとツィーゲ)と最終ラインの統率者(ラメロー)を欠いたドイツが、パラグアイに対してどのようなサッカーを展開するのか・・、また、堅守速攻のデンマークに対して、イングランドが、どのような「ペースアップ」を魅せるか(ナイジェリア戦でのゲーム内容が、心理的にどのような影響を与えたのか!)等々、ものすごく興味を惹かれるコンテンツはあったのですが・・。

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 ということで、いま大阪スタジアムに隣接されたメディアセンターで、ドイツ対パラグアイの試合を見はじめたところです。

 今日ここで仕事をしているジャーナリストは、数人。久しぶりの静かで快適な環境で、仕事がはかどること・・。また、連載している東京中日新聞(夕刊での連載と、朝刊でのスポット記事など)のご好意で、彼らが設置している電話を使わせてもらっていますから、インターネット接続にも苦労せずに済みます。

 さて試合です。ここでも、時間を追ってレポートすることにします。

 この試合では、ラメローの代わりに、マルコ・レーマーが入ります。最終ラインでは、リンケが中央で、左にメッツェルダー、右にマルコ・レーマーでしょう。またハーマンの代わりにはイェレミース、そしてツィーゲの代わりに登場したのが、カメルーン戦での先制ゴールを決めたマルコ・ボーデ。彼は、フォワードだけではなく、左サイドハーフも得意ですからネ。

 それでもこの試合での本当の「先発メンバーチェンジ」は、ヤンカーに代えて、ノイヴィルをトップに入れたこと。これまでのヤンカーの出来は、決して誉められたものではありませんでしたからネ。さて・・。

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 立ち上がり。

 やはり・・というか、ドイツがゲーム全体の流れを掌握します。例によっての、攻守にわたるロジカルな組織プレー。

 特に守備が印象的。ボールへ行く者、次を狙う者、協力プレスを狙う者など、なかなかのハーモニーを魅せていますよ。そんなドイツが、決定的なチャンスを作り出します。二つのコーナーキック。最初は、上がってきたリンケにピタリと合い(相手との交錯がこぼれ球)、二つ目は、ニアポストサイドに詰めたバラックが、アタマで「すらし」、そのボールが、チラベルト(言わずと知れたパラグアイのスーパーGK)の眼前を横切っていきます(誰も詰めていなかった!)。また、その直後には、スッとドリブルで押し上げたマルコ・ボーデから、完璧に「イメージがシンクロ」した、ファウンデーションのバックパスがバラックへ戻されます。もちろんそこからのロングシュート!

 ドイツは、これまで培ってきた「確信」をベースに、勝負強いサッカーに徹します。そうです、全員の組織で堅牢に守り、素早いボール回しから、クロス攻撃と中距離シュートを狙う。とにかく、「スケベ心」さえアタマをもたげなければ、このサッカーに徹するドイツは、本当に強い。さて・・。

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 その後は、キープ率では「互角」といった展開になります。それでも、決定的チャンスという意味では(相手守備ブロックに対する崩しという意味では)、やはりドイツに一日の長がある感じます。美しくはありませんが、とにかくロジックで力強いパスを回すことで、最終の仕掛けまで(たまにはシュートチャンスまで)いってしまうんですよ。

 ここいら辺りで、ちょっとドイツの攻めで感じはじめたことがありました。それは、クロスと中距離シュートだけではなく、中央ゾーンを直線的に攻め込んでいくという傾向も出てきたことです。まあこれも、選手のタイプの組み合わせということなのでしょう。要は、ノイヴィルとマルコ・ボーデが、攻めに変化をもたらしているということです。とはいっても、それが「偏向」し過ぎると、これまたチームの「攻撃イメージ」が彷徨をはじめてしまうぞ。さて・・

 そんなことを考えていたら、パラグアイが、大きなチャンスを迎えてしまいます。フリーキックから、ドイツGKのカーンが、ドカーンと「パンチ」したボールが、直接パラグアイ選手にわたってしまったことで、ドイツゴール前に残っていたパラグアイのアジャラが、エアーポケットのように「完璧フリー」になり、そこへタイミング良くボールが飛んできたという決定的チャンス。でもアジャラのシュートはミスになってしまって・・。あれだけフリーだったから、「ビックリ!」ってなことだったんでしょう。

 このシュートあたりから、「本当の展開(ボールポゼッションではなく、実質的な流れ!)」でも、膠着してきたと感じます。パラグアイが、ドイツのサッカーに慣れてきたことで自信をもてるようになった・・逆にドイツは、ちょっとエネルギーが停滞気味に・・ということでしょうか。

 まあ後半勝負だな・・なんて思っていたときに、前半タイムアップのホイッスル。まあ、あまり面白い試合じゃありませんが、決勝トーナメントですから、ここからですよ、ここから・・!

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 後半、私がもっとも期待する若手、セバスチャン・ケールが、マルコ・レーマーに代わって登場です。レーマーの守備では、何度か不安定なシーンがありましたからネ。さて・・。

 そして開始1分、右サイドのタテスペースへ飛び出したノイヴィルに、素晴らしいタテパスが出ます。それを、中央の決定的スペースへ素早く入り込んだベルント・シュナイダーへ。ドカン! でもそのシュートは、チラベルトの正面に飛んでしまって・・。そのとき、チャンスをしっかりと生かしていかなければ、神様のドラマになってしまうゾ・・なんて思っていました。

 直後の3分、一瞬のカウンターから、左サイドでフリーになっていたカンポスへ、サイドチェンジ気味のラストパスが回されます。カンポスは、迷わずダイレクトシュート! 素晴らしいシュート! でも、ドイツの守護神、カーンにとってはノープロブレム。正確に、まさに確実に処理してしまいます。とにかく、やっと動きのある面白い展開になっていった時間帯でした。

 その後はどんどんと攻め込むドイツ。それ対し、一瞬のカウンターを狙うパラグアイ。フムフム・・。

 でもちょっと、前半に心配した傾向が、ドイツのサッカーに出てきたような・・。要は、少し「中」へ行きすぎ(中央ゾーンから攻めすぎ)だと感じるようになってきたんですよ。もっとクロスを強調しなければ。そうすることで、「中」が活きるんだから・・なんて思っていた湯浅です。

 それにしても、ドイツ選手たちの守備意識は高い。クローゼが下がってくる。逆にバラックが最前線へ上がっていく。そしてクローゼが、ボールを奪い返してタテへドリブルを開始する。数十メートル行ったところで、ボールを奪い返されてしまう。その状況ではすでに、バラックが、(クローゼのドリブルが潰されることを予測したかのように)最前線から戻り、スッと空いたスペースをケアーしてしまうんですよ。

 この縦横無尽のポジションチェンジが素晴らしい。それを可能にする基盤が、一人の例外もない全員の、自ら「仕事を探し続ける」という高い「守備意識」だということです。

 ここでドイツチームにアクシデントが起きます。最終ラインのメッツェルダーが怪我で退場してしまったのです。代わりに登場したのはバウマン。これでドイツの最終ラインは、「先発メンバー」から二人も代わってしまった・・。危険因子・・。

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 後半18分。またまたドイツの「カタチ」がツボにはまりそうになります。左サイドのコーナーキックから(キッカーはノイヴィル)、バラックが、チョンと触って「すらし」、それを・・というカタチです。今度は、その「すらした」ボールが、チラベルトの正面に飛んでしまったことで何も起きませんでしたが、これは、何度やっても同じようなチャンスになるだろうな・・何といっても、バラックの「瞬間的な前へのダッシュ」を抑えられるディフェンダーはいないだろうから・・。

 試合の流れですが、どんどん構図が先鋭化してきます。ドイツが押し込み、パラグアイがカウンターを狙う・・。これは、ドイツにとって厳しい(逆に危険な!)展開になってきたな・・なんて感じていました。

 22分。ドイツのシュナイダーが、中央ゾーンを軽快なドリブルで進み、パラグアイ守備ブロックの視線と意識を集中させます。そしてそこから、右サイドで完全にフリーになったフリングスへ向けてラストパスを送り込みます。まったくフリーのフリングス。当たりにきたパラグアイディフェンダーを軽くかわしてシュート! ファーポストの上隅を狙ったロビングシュート。でも、ちょっと浮かせ過ぎてしまって・・。

 対するパラグアイも、決定的チャンスを作り出します。フリーキックから、決定的なヘディングシュートチャンスを得たのです。パラグアイにとっては本当に惜しいチャンスだったのですが、それに対してドイツも、負けじと、早いボールの動きからパラグアイのゴール前まで迫ってしまう。いや、やっと試合がエキサイティングになってきたではありませんか。さて・・。

 最後の15分間は、もう完全にドイツが押し込んでいくという展開。対するパラグアイは、完全に防戦一方。カウンターにしても、人数をかけられないから、ドイツゴール前まで進入することさえできない・・。

 ただドイツは、押し込み「過ぎる」ことはありません。押し込みはしますが、最後のプロセスでは、一度「引いて」からのクロス攻撃を仕掛けるのです。やっとドイツも、中央からの仕掛けという「誘惑」から吹っ切れたようで・・。そして、素晴らしいクロスをヘディングで競り勝つというシーンが連続します。それにしてもミロスラフ(クローゼ)のジャンプ力はすごい。それはダッシュ力ということなんですがネ。

 そして後半43分。やっとドイツがゴールを挙げます。中盤右サイドでのヘディングバトルにケール(だと思ったのですが・・)が競り勝ち、完璧な「カタチ」に誘われるように(そのヘディングの競り合いと同時に!)タテへ走り抜けたベルント・シュナイダーへパスが通ります。

 右サイドで、まったくフリーでボールをコントロールし、すぐにゴール前へ視線をはしらせるシュナイダー。その瞬間でした(いや、直前だったかも)、パラグアイ最終ラインの数メートル後方にいたノイヴィルが爆発します。こうなっては、ディフェンダーはまったく何もできません。何といっても彼らは、フリーでボールを持つシュナイダーに視線と意識を引きつけられていましたからネ。その瞬間、彼らにとって、ノイヴィルが「消えて」しまったというわけです。

 私は、ゴールが決まったとき、「ウオ〜ッ!」と、蛮声へはり上げてしまいました。たまにはいいでしょ、気合いを入れたって・・(パラグアイファンの方々には申し訳ありませんが・・)。とにかく、楽しまなければやってられませんよ、こんな忙しい日々なんて・・。

 メディアセンターには、前述したように数人しかいません。もちろん全員が振り返ります。そして彼らも、呼応するように「ヤ〜〜ッ!!!」。なんだドイツ人だったんだ。まあその後は、「まあ、内容は別にして、良かったな・・」なんて歓談しました。

 それでも、中には日本人の方々もいたはずです。申し訳ありませんでした・・。

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 さて総括。

 この試合では、何といってもイェレミース。素晴らしい出来でした。「実効ある黒子」に徹していましたよ。それにしても、至る所に見られる「背番号16」の実効プレーは、まさに感動モノでした。それにノイヴィル。ヤンカーを代替して余りある活躍。ミロスラフ・クローゼとのコンビもいいですよ。クローゼという、ヘディングが強いセンターの周りを「衛星のように」かき回すノイヴィル・・ってな具合。このコンビは、なかなか良いですよ、ホント・・。

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 さて、次のイングランド対デンマークですが、基本的にはサッカーマガジンで書こうと思っていますので・・。でももし、ものすごく面白かったら、後でポイントだけは書き足そうと思います。それでご容赦アレ。

 さて明日は、大分へ移動し、セネガル対スウェーデンの観戦です。ガンバレよ! ブルーノ&セネガルイレブン!!




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