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W杯レポート(23)・・さて準決勝・・横綱相撲で勝ち切ったドイツ・・ドイツ対韓国(1-0)・・(2002年6月25日、火曜日)

成田へ向かうのに、またまたドジを踏んでしまいました。電車が遅れ、飛行機に乗り遅れてしまったんですよ。電車の遅れは1時間近く。ということで、約2時間遅い便にチケットを変更してもらいました。

 電車(成田エクスプレス)には新宿から乗るのですが、もっと早く遅延を告知してくれれば、別の方法(バスや京成線など)で成田へ向かったのに・・。何といっても、新宿へは、電車の出発時刻の45分前には到着していましたからね。もう・・。

 ということで、ソウルのワールドカップスタジアムに到着したのは、予定よりも2時間遅れ(試合開始の2時間前)。とはいっても、書かなければならなかった原稿は成田で仕上げましたから、まあちょうどいいタイミングだったのかも・・。

 とにかく今回のワールドカップでは、本当に色々なことが起きますよ・・というか、自分のドジさ加減に、「オマエは、人間的ないいヤツだよ・・」なんて、自分自身で慰めたりして・・。

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 さて準決勝です。はじまるまえからドラマチックなニオイがただよう韓国対ドイツ。すぐに書きはじめることにします。もちろん、時間を追ってね。

 この試合では、ラメローが復帰し、代わりにツィーゲが出場していません。理由はよく分かりませんが、代役はマルコ・ボーデ。良い仕事に期待しましょう。

 対する韓国では、アン・ジョンファン等が出場していません。代わりに、韓国サッカーの伝説、チャ・ボンクンの息子、チャ・ドゥリが出場です。さて・・。

 「テ〜〜、ハン・ミン・グ! テ〜〜、ハン・ミン・グ!」。またまたすごい、本当にスゴイ歓声・・。やっと「体感」することができました。

 まず韓国が、その声援に後押しされるように攻め上がります(抜群の中盤守備の勢い!)。でも最初のシュートはドイツ。開始1分。攻め上がったラメローが、右サイドから、そのままシュートまでいってしまったのです。彼は最終ラインの重鎮。そんな「現象」もドイツのツボといっていいでしょう。

 とはいっても全体的な落ち着いた立ち上がりではあります。そして韓国が、中盤での抜群にダイナミックなディフェンスをベースに、どんどんと押し上げていきます。抜群にダイナミック・・それでも、しっかりとバランスがとれているミッドフィールド。たしかに韓国は、大会を通じて、ものすごいブレイクを果たしたな・・。

 それでも6分には、ドイツが一瞬の攻め上がりから、「ツボ」のクロス攻撃を仕掛けます。もちろんゴール前には、クローゼとバラックの二人が詰めている。「あっ、いった!」。そのとき、記者席で声が上がりました。結局は、韓国GKに直接キャッチされてしまいましたが、やはりカタチをもっているチームには迫力がある・・なんて感じていました。でも、その直後には、今度は韓国が、低いクロスボールからの直接シュートを見舞います(オリバー・カーンが、余裕をもったセービングで防ぐ!)。まあ、ものすごくエキサイティングな展開であることは確かなことです。

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 ここまでの全体的な流れとしては、ドイツが、韓国の勢いを落ち着いて受け止め、狙いすました「一刺し」を見舞うというイメージでゲームを運んでいると感じます。

 とにかくドイツは、しっかりと守備ブロックを構成し、そして最高の集中力と忠実さでディフェンスをしていると感じるのです。彼らは虎視眈々と狙っているのです。「高い位置でボールを奪い返したら確実にチャンスを作り出すことができる・・。でも、その前段階では、まずしっかりと守備ブロックを形成して、韓国の重心を前へ向けさせることだ・・」。

 それでも15分を過ぎたあたりから、韓国の前へのダイナミズムもまた「落ち着いて」きてしまいます。それまで三回ほど、決定的なドイツのツボ攻撃を体感させられた彼らが、自分たち主体で「冷静」になったということか・・。だとしたら、大したものだ・・。

 そして全体的なゲームの流れが落ち着いてきます。前半20分を過ぎたあたりです。フムフム・・。

 展開としては、ドイツが、一度の「攻撃ユニット」で、常に、何かが起きそうな雰囲気をかもし出してしまうのに対し、韓国の攻め上がりは、やはり単調。攻撃の「危険度」では格段の差があるということです。ドイツでは、前にスペースがあるときの中盤や後方選手たちのオーバーラップがスゴイ。もちろんそれでも、前後のバランスが崩れることはない・・。

 たしかにドイツの攻めでは、最後はクロスか、中距離シュートをイメージしているのでしょうが、そこに至るまでのプロセスは、かなり変幻自在だと感じます。スペースをつなぐドリブルで、最後尾の選手が(主にラメロー!)中央から仕掛けていったり(相手守備を中央に集中させたり)、一方のサイドでボールで回しながら逆サイドを狙ったり・・。また、シンプルで活発なボールの動きから、最後は、中盤スペースへ誰かが入り込み、そこへパスが出されることで「起点」を作り出して最終勝負を仕掛けていったり等々・・。

 まあ全体的な展開では、確実に両国の「差」が出ているということです。とはいっても、そこはホームの韓国。とにかく、オレがフィニッシュしてやるという意志のチカラは抜群ですからネ。まあ、スゴイですよ、本当に・・。「テ〜〜、ハン・ミン・グ!」

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 37分。またまたドイツが、韓国選手たちのイメージを「超越」する攻めを魅せます。コーナーキック。一度もどし、そこから、ファーポストの決定的スペースへ飛び出したマルコ・ボーデへ向け、正確な、本当に正確なロビングボール(タテパス)が飛びます。それをボーデが、これまた正確に、ヘディングで折り返すんですよ。こんなふうに、最終守備ブロックが前後左右に振り回されたら、たまったものじゃない。韓国選手たちは、目をパチクリといった雰囲気でした。そのチャンスもゴールへ結びつけることはできませんでしたがネ。

 これなんですよ。最終勝負の「イメージの広がり」。要は、いかに多くの「最終勝負イメージの隠しダマ」を持っているか・・ということです。最後尾からの「追い越しオーバーラップドリブル」なども含め、それも、世界との「最後の僅差」の一つのファクターだということです。

 「そうなんだよ・・小さなことかもしれないけれど、いかに最終勝負に対するイメージを広く持つか・・そして、いかにそれを仲間と深く共有できるか・・。それが勝負の分かれ目だということだな。確かにオレたちは上手くはないけれど、ツボにはまったら・・」。よく、仲間のドイツ人コーチ連中とそんなハナシをしたものです。これで、来月にザールブリュッケンで開催される、ドイツプロサッカーコーチ連盟主催のサッカーコーチ国際会議が楽しみになってきました。そこでの、友人たちとの「行間のディベート」。それほど、自分のイメージを広げられる学習機会はありませんからね。そこには、今回のワールドカップで大活躍したトルコの友人たちも来るでしょう。彼らの自慢話を聞きながら、こちらも大切な情報を仕入れることにしましょう。あっと、ハナシが逸れてしまって・・。

 さて韓国対ドイツ。徐々に「本来のチカラの差」が明確になってきました。全体的な「ポゼッション率」にはあまり差はないのでしょうが、そこで繰り広げられる「コンテンツ」には、まさに「世界トップとの最後の僅差」が見え隠れします。

 という展開で、前半は「0-0」で終了です。私は、ドイツ代表の選手たちが、全力で、良いサッカーを展開しようといている姿勢に、ものすごく共感していましたよ。まあ確かに、結果は神のみぞ知る・・ですがネ・・。

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 さて後半。最初からドイツが、何度も「ツボ」を成就しかけます。それに対し、まったく攻め上がることができない韓国。さて・・

 「ツボ」ですが、どんどんとドイツが「バリエーション」を広げつづけていると感じます。

 今度は、中盤の右サイド、かなり低い位置からの、ものすごくアーリーなクロスを韓国ゴール前へ送り込みます。それは、それは「すごくアーリー」。でも魔法のように曲がり、それが、後方からの超速ダッシュで上がってきたマルコ・ボーデにピタリと合いそうになります。このクロスを送り込んだのは、確か、ドリブルで突っかけていったハーマン。マルコが全力ダッシュした距離は、30メートル以上はあったでしょうか。数センチのところで合わずに、必死でマークについていた韓国選手が、「幸運」にも、ヘディングで、コーナーへ逃れたわけですが、まさにバリエーションの広がりを象徴するシーンでした。ドイツのツボにはまったら、どんなチームでも防ぎきれない・・。このシーンでは、マルコと、クリアした韓国選手の「高さの差」は確実に20センチはありましたからネ。

 それでもゴールを奪うことができないドイツ。神様は、一体どんなスクリプトを用意しているのだろう・・。そんなことばかりが気になってきました。とはいっても、この日のドイツ選手たちの忠実な守備マインドだったら、まあ崩されることはないだろう・・、でも韓国の「畳みかけ」がはじまったら分からないけれど・・なんて、プラスとマイナスの発想が、同時に脳裏を交錯します。あっと・・もちろん私は、ドイツをサポートしているんですよ、念のため・・。

 20分を過ぎたあたりで、ドイツベンチが、クローゼに代えて、オリバー・ビアホフをピッチへ送り込みます。そして直後の、ドイツの波状攻撃。それがあまりにも凄すぎたのか、結局、韓国の怒濤のカウンターを食らってしまいます。そして最後は、バラックが、アン・ジョンファンを倒してしまって・・。これでバラックは、勝ち進んだとしても、決勝には出場停止になってしまいました。

 その3分後の74分。怒濤のカウンターから(右サイドをノイヴィルが駆け上がっていく)、ノイヴィルが、ホン・ミョンボを外し、ゴール前へクロスを返します。そこでちょっと「ボールのストラグル」があり(一度シュートしたボールを韓国GKが弾く!)、最後は、詰めていたミヒャエル・バラックが決勝ゴールを奪ったという次第。

 それにしても皮肉。「あそこでのエマージェンシータックル」は、ミヒャエル・バラックのではなく、そばにいたハーマンも仕掛けられたのに・・(ハーマンは、まだイエローカードは一枚も受けていませんからネ)なんて、要らぬコトを考えていた湯浅でした。

 さて、最後の時間帯での韓国の「スピリチュアルパワー攻撃」。でもそれも、受けわたしながらも、最後は忠実なタイトマークをつづけるというドイツの堅実な組織守備によって、韓国は、イタリア戦のようにパワーを「増幅」することがままなりません。まあ、それこそがドイツの強さの源泉だというなのですがネ。そして韓国の攻撃が、中盤に一人もいなくなるような(最前線に5人が入っていくような)パワープレーに入っていきます。それでも、ドイツ守備ブロックに不安が広がる気配はまったくない。まあ、基本的なチカラが違いますから・・。

 ということで、最後まで「安定」した内容を魅せたドイツが、世界の勝負強さを発揮して順当に勝ち切ったというゲームでした。

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 それにしても韓国は頑張った。今回の大会での彼らは、これ以上ないという程の「価値」を手に入れました。それは、決してグラウンド上の選手たちだけのものじゃありませんし、フース・ヒディンクだけのものでもありません。それは、韓国サッカー全体にとってのかけがえのない価値。そのことを実感できる(実効ある現象として現れてくる)のは、これから数年後になるかもしれませんけれどネ・・。

 その意味でも、もう一度彼らに対し、心から「おめでとうございます」と言いたい湯浅です。

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 さて明日は、またまた日本へ移動して埼玉スタジアム(ブラジル対トルコ)。この試合も、スタンドの記者席でレポートを書き上げる予定です。では・・




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