たしかに私も、(特に前半は)やはり難しい試合になった・・なんて(皆さんと同様に!?)感じていました。前半はロングボール主体で確実にプレーし、後半にベルギーが疲れたところで勝負をかけていく・・というゲーム戦術的な発想があったとは聞きましたがネ。
とにかく、基本的なスタートラインは、ベルギーは「世界レベル」のチームだ・・そのチームと、ワールドカップという肉を切らせて骨を断つ「本物の勝負の場」で相対している・・そのステージは、フレンドリーマッチとはまったく異次元の世界だ・・ということです。
いまの日本代表は、決して、「世界レベル」にまで到達できているわけではありません。それをベースにすれば、「1-1」になり、試合が「動いた(=刺激)」ことで、日本代表も吹っ切れ、そしてギリギリのリスクチャレンジをくり返すようになったのは特筆の現象でした。そして本物の勝負での「成功体感」を勝ち取ることができた。彼らは、本物の勝負の場であるからこそ、そこで積極的な勝負を仕掛けていったからこそ、大いなる成長を遂げることができたのです。それは、日本サッカーにとって素晴らしい出来事でした。
いまの日本代表を、「世界トップ」と比べて批評するのは簡単。それに対し、彼らの総合的な現状キャパに対する分析から、物理・心理・精神という全方位にわたる「理想へ近づくための実効ある課題」を発見するのは、そう簡単な作業ではありません。そのためには、何といっても「本物の勝負の場」が必要になるというわけです。
世界との「僅差」も確認できた。その内容も見えてきた。よかった・・(これについては、落ち着いてからゆっくりと分析していくことにしますので・・)
ところで、柳沢、鈴木、中田ヒデ。昨日のコラムでは触れませんでしたが、よかったですよ、本当に。それぞれが、しっかりと役割を果たしていました。特に、ボールのないところでの攻守にわたる全力プレーや、ボールをもったときの吹っ切れた単独ドリブル勝負など、気合いのはいったプレーを展開した柳沢。彼も、「自分自身の本物ブレイク」を体感し自覚できたかも・・。もちろん鈴木、中田も、「その時々のチーム全体のパフォーマンス状態」のなかで、例によっての(彼らに対する期待レベルに応じた)ハイレベルな安定プレーを展開していました。
そして最終ライン、中盤の底コンビ、両サイド、はたまた交代出場した森島など、全員が「それなり」に、「考えつづける積極プレー」を展開していました。だからこそ、自信を深めただけではなく、僅差を縮めていくための「深い課題」も発見(体感)できた・・。
とにかく彼らは、次のロシア戦でも、立派なゲームを魅せてくれるに違いありません。
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さて、3-4時間「爆睡」した後、本日の早朝、ラジオ文化放送の番組に出演し、またまた原稿を書きはじめた湯浅は、ロシア対チュニジアをテレビ観戦するために、カシマスタジアムへ向かいました。まあ一時間くらいですかネ、「ドア・ツー・ドア」の移動時間は。
まずは、ロシア対チュニジアについて簡単に。
私が注目していたのは、厳しい気候条件における、ロシアのパフォーマンスダウンの「幅」。たしかに大きかったですよ。前半の中ごろから、かなり足が止まる傾向が見られました。だから、暑さに強い(!?)チュニジアが、かなり攻め上がることができた・・。ロシアの中盤守備ダイナミズムが、暑さのためにかなり減退したと感じたのです。次の日本戦の気候は・・?
ロシアでは、スメルチン、モストボイという主力が、ケガのため出場していません。それも、彼らのゲームが沈滞気味になってしまった一因だったのは確かなことです。日本戦では、彼らは出てくるんでしょうかネ。まあ出てくるでしょう。さて・・
ここで、以前に、週刊プレイボーイ、週刊サッカーマガジン等で発表した、ロシアについてのコラムを、短くまとめましょう。
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ロシアについては、フランスとのフレンドリーマッチをベースにしました・・。
『ロシアも、ベルギー同様に、どんなにフランスに押し込まれても、守備の集中が途切れることがない。一人の例外もない高質な守備意識。全員が、次に何をすべきかを考えつづけ、素早く決断して実行する。アブナイ!と感じたら、ボール絡み、またボールのないところを問わず、前線のチトフや、トップのベスチャツニフでさえも、自ゴール前まで戻って忠実なディフェンスを展開する。勝負所を敏感に感じとるインテレクチュアルな積極ディフェンス姿勢。彼らの「戦術的な発想レベル」の高さが如実に見えてくる。
そしてボールを奪い返せば、モストボイ、スメルチン、カルピン、イズマイロフ、チトフ、そしてトップのベスチャツニフ等が、ポジションチェンジをくり返しながら、有機的に連鎖する攻撃を繰り広げる。たしかにフランス戦でのチャンスは、フリーキックも含め、ほんの数回。ただそこには、確信に満ちあふれた「意図」が込められていた。だからこそ、「あの」フランスでさえタジタジとなる場面も作り出せたのだ。
「次の守備」では、選手たちのポジションや数がしっかりとバランスしてしまうことだ。一人の例外もない高い守備意識。全員が「次の守備で何をすべきか」を考えつづけ、素早く決断して実行する。クリエイティブで忠実な守備意識に支えられた「バランスのとれた流動性」。フットボールネーションのエキスパートたちが高く評価するはずだ。
攻守の中心は、何といってもモストボイ。まさに、流動サッカーの演出家(バランサー)である。守備的なポジションをベースに、クレバーな「読みディフェンス」を忠実にこなしながらも、ここぞ!の瞬間には、最前線を追い越してまでも最終勝負シーンへ飛び出していく。頻度は高くない。ただそれは、まさに一発必中。相手にとって、これほど怖い選手はいない。
こんなシーンがあった。フランス戦の後半13分。センターサークル付近で、モストボイがビエラのパスをカットする。そこから、トン、ト〜ンと、軽快なパスが回り、チトフが、センターサークル付近でボールを持って「タメ」る。モストボイもフリーランニングを「タメ」ている。同時に、イズマイロフとベスチャツニフが左サイド最前線へ攻め上がり、そこへフランス守備が寄せていく。フランス最終ラインの中央にスペースが空きはじめた。それが勝負の瞬間だった。
そのとき、モストボイが爆発した。空きはじめた最前線スペースへ向け、全力ダッシュをスタートしたのだ。そこへ、チトフから最高の勝負パスが糸を引いたことは言うまでもない。フランス最終ラインの重鎮、デサイーは、既に置き去り。最後は、決定的ピンチを嗅ぎつけたリザラズにギリギリのところで防がれたとはいえ、ロシアが魅せた、「蜂の一刺し」というワンチャンスの演出に、ため息が出た。「タメにタメた三列目から、ここしかないというタイミングで飛び出していく・・やはりモストボイだな・・」。
以前は「ステレオタイプ」と揶揄されたこともある。それが、ロシアを代表するクラブ、スパルターク・モスクワの監督をも兼任するロマンツェフの就任とともに、クリエイティブな流動サッカーへとイメチェンを果たした。そのサッカーを見ていて、凝り固まった共産主義の崩壊が選手たちの発想をも「解放」し、それが、やっとグラウンド上に体現されるようになった・・なんて思っていた。』
さて、いかがでしたか・・。
攻守にわたる「良いサッカー」のイメージを共有する強者たち。相手にとって不足なし・・じゃありませんか。
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さて、ドイツ対アイルランド。ドイツの先発は、サウジ戦とまったく変わりません。「ウィニングチーム・ネバーチェンジ」。ルディー・フェラー監督も、その原則をしっかりと守っているようで。さて、この試合で、ドイツ代表が「本物のユニット」になれるのかどうか・・。
試合の流れは、ドイツが、例によっての「ロジック」なパスサッカーを展開するのに対し、「一丸」となったアイルランドが、スタンドの大声援を受け(まるでアイルランドのホームゲーム!)、中盤からの積極守備によって「高い位置」でボールを奪い返し、一発ドリブル勝負や、一発の勝負ロングパスで仕掛けていこうという展開になります。
まあ、ドイツが、組織的な守備をベースに、試合全体のペースを握っているのに対し、ときたまアイルランドが、鋭い「蜂の一刺し」を決めようと狙いつづける・・っちゅう展開ですかネ。
まあ、落ち着いた良いゲームを展開しているな、ドイツは・・なんて思っていた18分。またまたやってくれましたよ、「ドイツの若武者」が。クロスラフ・クローゼ。
左サイドに出来たスペースを、素早いボールの動きをベースにパスを受け、スパッと、ドリブルで上がったバラック。そこから、例によっての「足首のスナップ」が効いたラストクロスが飛びます。それも、もちろん「アイルランドゴール前の決定的スペース」へ向けて。そして、これまた「もちろん」、そこにミロスラフが走り込んでいたというわけです。それにしても「ドカン!」という彼のヘディングシュートは、もう見慣れてしまった感があります。これで、今大会の4点目。いやはや・・。
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ミロスラフは、ボール扱いもうまいし、とにかく足が速い(=ジャンプ力がある!)。そのドリブル突破は脅威だし、とにかく忠実に、「ゴール前の勝負所に走り込む!」。この、決定的な動きが、周りの「パサー」に浸透しているのと、逆に、ミロスラフも、どこにボールが飛んでくるのか、明確にイメージできているということです。
ミロスラフについては、レポートの(3)を参照してください。
この「両者」のイメージシンクロこそ、地域予選ラウンドでの、ウクライナとの決定戦における「本物の勝負での体感」に基づいたものなのです。その意味では、彼らの「チーム戦術」が、そのゲームで確立したといっても過言ではありません。
とにかく忠実に、クリエイティブに、そして誰一人としてサボらずに守備をする・・それをベースに、「明確なカタチ」をもった攻めを展開する・・。攻めでは、前述した「イメージシンクロ・クロス最終攻撃」と、「意図的な中距離シュート攻撃」しかありません。それでも、そのレベルが超えていれば、それほど相手にとって怖い武器もない・・。フムフム・・。
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ドイツは「フラットスリー気味」の最終ライン。それでも、やはり伝統か、「ブレイク・タイミング」は、日本代表の比ではなく「早い」。まあ、ノヴォトニーがいないから仕方ないか・・。それでも、「守備ブロック全体」に、どのタイミング(状況)でブレイクするのかに関して、明確な共通ピクチャーがあると感じます。まあそれも、ワールドカップ地域予選で培った「共通理解」ということです。
その後は、アイルランドが攻勢に出ます。それでも、ドイツ守備ブロックを崩したり、ウラを突けるという雰囲気をかもし出すまでにはいけません。「ロイの穴が・・」。
もっと、二列目、三列目と前線の選手がタテのポジションチェンジをしなければ、ドイツの守備ブロックのバランスを崩すことさえできない。そう・・、ロイ・キーンが常にイメージしていたように。
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後半も同じような展開。攻め上がるけれど、どうしてもドイツ守備ブロックを崩せないアイルランド。それに対し、数は少ないけれど、攻めれば、決定的なチャンスになりそうな雰囲気をかもし出すドイツ。ちょっと一面的かな・・なんて思い、今度はアイルランドを応援している気持ちでゲームを見ることにします。
そうしたら、何回も、「そこだよ、どうしてそこでシンプルにボールを動かさないだよ・・」とか、「いまだ!」というラストパスのチャンスにも、パスが出てこなかったり・・なんて、やはりフラストレーションがたまります。
それでも10分には、流れのなかから、良いタイミングでボールが入り、そこから、タテの決定的スペースへラストパスが出ます。そこへ、走り込んだアイルランド選手が、左足一閃・・なんて思った瞬間、ドイツGK、オリバー・カーンが、ガーン!と突っ込んできて、そのシュートを身体ではじき出してしまう。やはり、ドイツの守護神は、健在です。
それが、アイルランドが作り出した、初めてといってもいい「ウラ突き」の決定的チャンスでした。私は、そのままアイルランド応援の気分でゲームを見つづけます。たまには、そんな見方をするのも面白いものです。それによって見えてくるものがある・・。
アイルランドは良いチームですよ。一人ひとりの技術はしっかりとしているし、全員守備、全員攻撃のマインドは、さすがにアイリッシュ。彼らの血の中には「サッカー」が入っていますからネ。
それでも、どうしてもボールの動きは鈍いと感じます。一人ひとりのボールのホルダーが、ボールをこねくりまわし過ぎなんですよ。だから「仕掛けのダイレクトパス」なんてほとんど見られない。とにかく最後はドリブル勝負からのクロスや一発ロングラストパスばかり・・ってな具合です。
それにしてもドイツは、本当にカッタるいサッカーに成り下がってしまっています。先制ゴールの後、「こいつ等の攻めだったら、余裕で守りきれる・・」。そう彼らが思ったのは想像に難くないんですが、それで前へのダイナミズムが減退してしまうようでは、「次」につながらない・・。素早いワンツーからの、ヤンカーのフリーシュートチャンスなどはあったものの・・。こちらもフラストレーションがたまりはじめてしまいます。
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29分。センターで満足な仕事ができないヤンカーに代え、オリバー・ビアホフが登場です。さて・・なんて思っていたら、ドイツゴール前中央ゾーンで、アイルランドがフリーキックのチャンスを迎えます。でも結局は、ミスシュート。
最後の15分間。両チームがどのようなサッカーをやるかに、まだ興味は残っている・・なんて思っていたら、今度はドイツが、素晴らしい連係プレーでチャンスを作り出します。
中央でボールをもったベルント・シュナイダーが、「背中に眼がある」とでも表現できそうなパスを、右サイドを駆け上がるフリングスへ決めたのです。そのままマークする相手を振りきり、決定的なセンタリングを上げるフリングス。狙うはファーポストゾーン。そこには、例によってミロスラフが・・。でも結局は、ミスヘディングシュート。
ここいらあたりから、再びドイツが勢いを増してきます。ビアホフの登場が、心理的な刺激になった!? それでも、オリバーのパフォーマンスは下降の一途。後方から中央ゾーンへのロングパスに競り勝てるシーンは、ほとんどありません。これでは、仕掛けのイメージもままならない・・。
後半43分。ものすごい決定的ドラマが訪れます。アイルランドの決定的チャンスです。左サイドからクロスを上げ、それをファーポストゾーンで競り勝ったことで、ボールが逆のポストサイドへ飛びます。そこに、まったくフリーのアイルランド選手が・・。シュート! 誰もが、「あっ、ゴール!」と叫んだとき、そこには、再びオリバー・カーンが身体を投げ出していたのです。身体を投げ出してシュートをはじき出してしまう。
でも、そんなオリバーでもロスタイムの、アイルランドの、ヘディング&走り込み攻撃には、結局反応できなかった・・。
後方からのクロスボールが飛び、それを味方がヘディングで流したところに、ピタリのタイミングでロビー・キーンが走り込んでいたというわけです。そして、ドカン!と、シュートを決めたのです。
このゴールについては、もうヘディングで流した選手、そしてロビー・キーンを誉めるしかない。見事な同点ゴールではありました。そのとき私は、あんなカッタるい試合をやっているからバチが当たったんだよ・・なんて思っていました。
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さてこれで、ドイツの決勝トーナメントがお預けになりました。
そんな「ラスト・セカンド」での同点劇を目撃し、ヤツは、もっと、もっと追い込まれた方がいい・・そんなことを思ったものです。何せ、先制ゴールを決めてからは、自分たちでゲームペースを作ろうとはせず、アイルランドに攻められるだけだったんですから・・。それも、明確なカウンター狙いという意図も見えてこない状態で・・。
逆にアイルランドには、フェアに、オメデトウ・・と言いたい湯浅です。あれだけ、チャンスの芽「以前」に、ドイツ守備にはね返されながら、絶対に諦めず、最後の最後までチャレンジをつづけ、最後の数分間に、決定的なカタチを二度も作り出してしまう。そしてそのうちの一本を、決めてしまう。そのマインドには、本当に感服した湯浅でした。
これで、明日のカメルーン対サウジで、カメルーンが勝てば、アイルランドが「勝ち点5」までいくことを大前提に、ドイツは、最終戦で是が非でもカメルーンに勝たなければならなくなりました(勝つという気概で試合に臨まなければならなくなった!)。もし彼らが、得失点差でリードしているから引き分けでも・・なんていうイージーな心理だったら、もう大会から姿を消した方がいい。
それにしても、バラック、ハマン、シュナイダー等は、いったい誰がペースメーカーになるべきなんだか、まったくはっきりしない。中盤のリーダー不在を、久しぶりに体感させられた湯浅だったのです。その「気力のない」無様な試合内容に、ちょっと憤っている湯浅でした。
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さて明日は、いよいよ、今大会最大のダークホース、セネガルが再び登場します。相手は、「強い」デンマーク。もちろん私は、「テグ」まで、試合を見に行きます。確実に素晴らしくエキサイティングな試合になるに違いない。いまから楽しみで仕方ありません。
それにしても、ドイツの気力ない戦いには、腹が立ちます。この怒りは、本当に、あのままドイツが勝利を収めていても同じだったに違いない・・(もちろんレベルは、少しはマイルドになるでしょうがネ・・)。彼らには、再び「現実を把握するプロセス」が必要なようですが、どちらにせよ、次のカメルーン戦がラストチャンスになりますからネ。そこで気合いが入らないようならば・・。
ということで、本日も長くなってしまいました。これも湯浅の「大会に対する思い入れ」だと捉えてください。では・・