私が乗る「予定」だった大韓航空の「札幌行き」。その出発時間は「1000時」。原稿でも書こうかな・・と、1時間半ほど前に到着しコンピュータを開いたまでは良かったのですが、あまり寝ていないことや、出発ゲートまで余裕で到着した安心もあって、急に睡魔が襲ってきます。ちょうどよいことに、そのベンチは、横になれる。よっこいしょっ・・と横になり、目を閉じたのです。そして瞬間的に夢の中へ・・。
横になったベンチの位置は、出発ゲートのカウンターから、ほんの数メートルのところ。でも、ベンチの背もたれがあるから、カウンターからは直接は見えない。とはいっても、周りには、札幌へ向かう日本人の方々も多くいるし・・と、油断してしまったのが敗因だったのかも。カウンターの係官に、一言「寝てしまうかも・・出発時間になったら起こして・・」と声をかけておけばよかったのでしょうが・・。
そうなんです。起きたとき、周りには人っこ一人いない。出発ゲートは閉まっている。カウンターに人影なし。そして窓の外にいるはずの飛行機も消えている。ガバッと飛び起き、すぐに時計に目をはしらせます。「1010時」・・ということは、もう出発時刻を「10分」経過してしまっている。そのときはまだ現実を把握できていませんでした。そりゃ、そうですよ。出発ゲートのすぐ近く・・、それも周りには札幌へ行く日本人の方々もいた・・、またチェックインをしているから、コンピュータで、私が搭乗していないことは一目瞭然でしょうから、大声で呼んだり、アナウンスをしたりで、確実に起こされるに違いない・・と思うのは当たり前ですよね。
前にも同じようなことがありました。でも、いつも確実に起こされたものだったのですが・・。
まあ基本的には(要は、飛行機の運行ルール上は)、私のミスということになるんでしょうネ。よく分かりませんが・・(チケットに書いてある細かな規定なんて読む気になれませんからネ)。
まあ釈然とはしません。イヤな気分で、早速「大韓航空」のカウンターへ・・。そうしたら、札幌へ直接飛ぶのは、その一便だけ・・、また成田経由でも、どこでも予約はするが、日本のどこかへ飛ぶ便も含め、発生するかもしれない「差額」は払ってもらう・・という、完全に事務的な対応。ちょっとカチンときましたよ・・。「あなた方は、チェックインしてコンピュータに登録されている乗客が、まだ搭乗していないのに飛んでしまった。もちろんそれは分かる。でも、その乗客が、出発ゲートカウンターの近くで寝入ってしまった場合はどうなのですか。場内アナウンスだけで、出発ゲートの周りを見回すことはしないんですか・・何といってもユアサケンジが、その飛行機に乗っていないことは明確に把握できているんだし、その出発ゲートのベンチには、横になっている私しかいなかったんですから・・」。これって、理不尽な主張なんですかネ・・。まあそうなんだろうな・・。
まあ、その後、上級マネージャーを呼んでもらって話しをするなど、小一時間ほど交渉し、やっと「日本の成田までは大韓航空が責任を持ち(差額の発生はなかったでしょう・・ソウル-札幌間と、マネージしてもらったソウル-成田間では、成田へ飛ぶ方が距離が短いですからネ)」、そこから「札幌」までは私が自費で飛ぶということで「ディール」が成立しました。
結局、「ソウル・・成田・・羽田(電車移動)・・札幌」というルートで、キックオフの直前に札幌ドームに到着した湯浅だったのです。フ〜〜〜ッ!
そんなこんなで、楽しみにしていた「スウェーデン対ナイジェリア」は、結局観られず仕舞い。それだけではなく、この「無駄な移動」によって、6時間も、原稿執筆の時間を失ってしまいました。もちろん飛行機や電車の中で少しは書きましたが、でもそんな環境では・・ネ。そして無駄な移動だという意識が強いことで、ものすごいフラストレーションがたまり、心理・精神的に疲労困憊してしまう・・。いやはや・・。
でも、そこでハタと考えました。何故もっと、現状を素直に受け容れ、ポジティブに、前向きに現状を捉えられなかったのだろうってねに。そうすれば、少なくとも心理的なフラストレーションだけは極小になったのに・・。いつまでも、下らないことで腹を立てていた自分に「腹が立った」湯浅だったのです。やはり人間は、表面的な「ネガティブ現象」からしか学べないということか・・。
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拮抗した立ち上がりは予想されたとおり。そのなかで、7分にまずアルゼンチンが決定的チャンスを作り出します。もちろん、素早いボールの動きをベースにしてネ・・。
ポンポンとボールをつないで(素晴らしい動きのなかでのコンビネーション!)抜け出したソリンが、バックヒールで、後方にいたキリ・ゴンザレスへ、フィーリングあふれるラストセットパスを出した(置いた!?)のです。ほとんどフリーで、決定的なシュートを放つ、キリ。シュートは、わずかに右へ外れてしまいましたが、イングランド守備ブロックを完全に振り回して作り出したチャンスに、「やはり、アルゼンチンの方が、戦術的な質で一日の長がある・・なんて思っていました。組織と個が、ハイレベルにバランスしたアルゼンチン・・というわけです。
とはいってもイングランドの守備ブロックは堅い、堅い。だから、そう簡単にはこのようなピンチに陥ることはないでしょうし、攻撃では、ベッカムが演出するセットプレーが彼らのセットプレーや、イメージがシンクロした一発ロングパス攻撃など、十分に怖さも備えています。
イングランドのセットプレーでは、ベッカムのキックに合わせ、最初に競り合う選手の「次」、「またその次」と、どんどんとアクションが連鎖します。ベッカムのキックに対する深い信頼。また流れのなかからの一発ロングパスのシーンでも、同様の「イメージ・シンクロ」を感じます。やはり彼らには、最終勝負のカタチをもっている・・。
いや・・イングランドのカタチといえば、もう一人、オーウェン。前半23分に、そのことを強烈に再認識させましたよ。中盤の高い位置で味方がボールを奪い返した瞬間に(または、そのボール奪取の直前タイミングに)動き出すオーウェン。その動きを完璧にイメージしている味方からの、間髪を入れない正確なタテパス。そしてオーウェンは、ドリブル勝負を仕掛けてシュートまでいってしまうのです(このシーンでは、シュートは左ポストを直撃!)。やはりオーウェンは超一流のフォワードです。
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でもその直後には、これまた素早いボールの動きをベースに、左サイドのキリ・ゴンザレスが、アルゼンチンの仲間にしか分からない(!?)タイミングで、ピンッと、ゴール前へ「鋭いクロス」を上げます(本当にシュート性のクロス!)。そしてそこには、バティーが・・。彼のヘディングシュートがゴールに入らなかったのは、先ほどのオーウェンのポストシュートとの「相殺」だって神様が考えたのかも・・。
30分・・右からの崩しでアルゼンチンがチャンスを迎えます。そこからのクロスボールを競り合い、後方へこぼれたところを、逆サイドでフリーになっていたキリが、ドカン!とボレーシュートを放ったのです。惜しくも外れたとはいえ、決定的なチャンスの数では、やはり、アルゼンチンに軍配が上がる・・。
その背景はもう言うまでもありませんよね。攻撃における「変化の質」ということです。イングランドもしっかりとボールを動かして攻め上がりはしすまが、それでも最終勝負に入っていくのが、いつも「ヨッコラショ!」という単純なタイミングなんですよ。たしかにボールは動くものの、その「よっこらしょ」の前段階というのがミエミエですからネ。これではアルゼンチンは守り易いでしょう。何といっても、イングランド攻撃の「次」に対するイメージを明確に描けてしまうんですから。とはいっても、イメージがシンクロした「カタチ」をもっているというイングランドの強みも健在です。
「ロジック」からすれば当然アルゼンチンの方が上質のサッカーを展開しているし、チャンスの数でも上回っています。でも、そこは、それ・・サッカーですからネ。イングランドが先制ゴールを挙げてしまうんですよ。PKで・・。
オーウェンが、ペナルティーエリア内でボールを持ち、オーウェンのクロスと同様、イングランドの自信の象徴とまで言えそうなドリブル勝負を仕掛けます。それで外されたポシェッティーノが、チョンと出した足に、オーウェンが引っかかったというわけです。天才レフェリー、イタリアのコッリーナさんが、すぐさま「PKだぞ!」という意志が込められた力強い笛を吹きます。もちろんクレームをつけにいく者は誰もいない。何せ、相手はコッリーナさんですからネ。早く日本にも、彼クラスのレフェリーが育ってきて欲しいモノです。
そのPKを、これまた例によってのベッカムが、地を這う、強烈なグラウンダーシュートを、ゴール中央へ決めました。GKは、勘を頼りにどちらかのサイドへ飛ぶものですからネ。
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後半、ヴェーロンに代わってアイマールが入ります。ヴェーロンに何かあったのか、ビエルサ監督が、彼のパフォーマンスに不満だったのか・・。私には、ヴェーロンが、彼らしさを出した、優れた実効プレーを展開していたと見えたんですが・・。
そのアイマールが、開始早々に、ズバッというシュートを放ちます。フムフム・・なんて思っていたら、その2分後、今度はイングランドが決定的チャンスを作り出してしまいます。オーウェン。例によって、「一発ロングパス」を受けたオーウェンがスーパーなボールコントロールから、背後からマークする相手を「うまいスクリーニング」で振りきり、決定的シュートを放ったのです(わずかにゴール左へ外れていく・・)。
本当に、両チームともに特徴を出し切った素晴らしいゲームになっている・・。私も、「ソウルでのアクシデント」にもめげすに札幌まで来てよかった・・なんて思ったものです。
それにしても、イングランドが繰り出す「一発ロング攻撃」は効きますね。もちろんそれは、オーウェン、ヘスキーという強力なツートップがいるからに他ならないわけですが、それがいるからこそのロングパス・・。まあそれも、イングランドチームのイメージが、しっかりとシンクロしていることの証ではあります。
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それに対してアルゼンチン。早い段階から、オルテガが、ドリブルやキープで仕掛けていくというのはチーム内に合意があるんでしょう(=チーム戦術の一つとして、選手たちのイメージに組み込まれている!)。彼が仕掛けはじめたら、周りは、彼が「起点」になるのを待つという雰囲気です。もちろんタイミングを見計らった勝負フリーランニングを狙いながらですよ・・。だから、オルテガの早い段階からの「個の仕掛け」は、有効だと思います。ただ交代出場したアイマールが・・。
ヴェーロンは、オルテガとのコンビで、「選手タイプのよいバランス」を保つ存在だったと思うんですよ。攻守にわたるヴェーロンの実効あるプレー、そしてゲームメイキングや「バランサー」としてのクレバーなプレー。それがあればこそ、オルテガの「早めの個人勝負(個人能力を駆使した崩しプレー)」も、有効なアクセントとなっていたと思うのです。でもアイマールは、オルテガとプレータイプも似ていることで、アルゼンチン攻撃の「変化の幅」が減退していったと感じたのです。
もちろんそれには、一点を守り切ろうとするイングランドが守備を強化してきたという背景もあったわけですが、それでも、後半のアルゼンチンの選手タイプのバランスが、微妙に崩れたと思った湯浅だったのです。それでもアルゼンチンは、セットプレーも含めて、何度か決定的チャンスは作り出しましたがネ。
とにかくこの試合では、イングランドの素晴らしい試合内容が光りました。それに対し、以前の「クリエイティブなゲームペース」に陰りが見えてきたアルゼンチン。さて・・
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さてこれで、フランス、アルゼンチンという絶対的な優勝候補が窮地に陥ってしまいました。最終節が、彼らにとって「決勝トーナメント」になってしまったのです。何せ、勝たなければ予選リーグ敗退ということになってしまうんですからネ。フランスの相手はデンマーク。アルゼンチンの相手はスウェーデン。両チームともに強敵です。
でもまあ「脅威と機会は表裏一体」という普遍的な考え方からすれば、決してその状況はネガティブではないと思っている湯浅です。
どちらにしても決勝トーナメントでは、毎試合が一発勝負。それが一つ「前」に繰り上がっただけだし、そんなギリギリの状況こそ、彼らの緊張感と集中力を高め、気合いも含むチームの「フォーム(=物理的・心理・精神的なチーム状態)」をトップ付近まで押し上げるに違いないと思っているということです。
その意味も含め、とにかくリーグの最終節から目が離せなくなった。まあ、「いつもの」ことではあるんですがネ。
ところでイングランドからのファンの方々。私が泊まったホテルにもたくさんいましたし、町中でも多く見かけました。ものすごく平和的な札幌の夜を過ごしているようで、私の「コングラッチュレーションズ! ユー・ガイズ・ハヴ・プレイド・ソーーー・ウェル!」なんていう私の呼びかけに、満面に笑みを浮かべて、「サンキュー!!!」なんてネ。
今宵、イングランドが展開した、あのダイナミックサッカーだったら、トーナメントになれば、もっと強みを発揮する・・。彼らにも興味が湧いてきた湯浅でした。