良かったですよ。攻守にわたって、強烈な意志が込められた全力ダッシュ(=その多くがクリエイティブなムダ走り!)のオンパレードということも含め、「積極性」が前面に押し出されるカタチで、高みで安定していると感じます。相手が弱いにもかかわらず、自身の意識が低落することもない。そこが大事なところなのです。後期開幕ゲームとは、そこが大きく違うところでした。前にも後ろにも、常にプレーに絡んでいこうとする姿勢(積極的に仕事を探しつづける姿勢≒リスクチャレンジ姿勢)がいいですよね。それこそが発展のための唯一のベースだといっても過言ではないのです。
行動半径が広くなっているのも特筆。「バランス」というマジックワードの本質的な意味を、体感ベースで、彼自身が「消化」しているのでしょう。もちろん、攻守にわたるクリエイティブなムダ走りこそが良いプレーの本質である・・という事実も含めてネ。
取らなくても、取り過ぎても問題になる「バランス」。その理解(≒選手たちに対する説明のやり方)は難しいのですよ。ここで取り扱うのは、攻撃と守備での人数&ポジショニングに関する「バランス」です。
味方が攻撃しているときに、相手が残っているからと、自分も残る(押し上げていかない・・味方を追い越すオーバーラップをしかけていかない)。それは、堅実プレーでもあり、消極プレーでもあります。一つだけ確かなことは、それが過ぎると(複数の選手たちがそんな受け身の姿勢でプレーすると)、必ず、心理的な消極性がチーム内に蔓延するキッカケになってしまうということです。
それに対して、「見かけのバランス」を崩してでもリスクにチャレンジして攻め上がっていけば、次のディフェンスでの(仮説レベルの!)危険性は増すにしても、攻撃での自チームの可能性は格段に高まるはず。もちろん、人数的に度を超した攻め上がりは愚の骨頂だし(だからホンモノのバランサーが重要なタスクを担う!)、相手のチカラが明確に上の場合も同様です。それでも、そんなリスクチャレンジ(≒バランスの崩れ!)がなければ、結局選手たちは発展しないということも、歴史が証明している事実なのです。もちろんあくまでも、相手のチカラ等の「状況」に応じたリスクチャレンジではありますが・・。いやホント、このテーマを言葉で表現するのは難しい・・。
いつも書いているように、石橋を叩いて渡るような姿勢では、決してサッカーの本質的な喜びをシェアできるはずがないし、発展だって望むべくもありません。もちろん状況によっては、石橋を「チョ、チョン」と叩いて渡らなければならないということもあるわけですがネ(これもバランス感覚!)。全員が、そのメカニズムを理解していれば、おのずと「本当の意味での守備意識」が高まってくるものなのです。あ〜、難しい・・。
ちょいとハナシが横道に逸れてしまいました。さて小野。この試合では、相手が下がり気味だったこともあって、ボールのないところで積極的に攻め上がりましたし、守備でも、必要とあらば、最終ラインにまで下がってカバーリングに徹しました。
ただ、そんな爽快な積極プレー姿勢も、前半25分ころまで。右足の二頭筋(腿のウラの筋肉)を肉離れしてしまったようなのです。ということで前半35分に、「例の」アクーニャと交代です。肉離れは、通常では、完治までに二週間以上かかる・・。フム。
チリ代表でもあるアクーニャは、守備的ハーフが基本ポジション。小野とボスフェルトのライバルということで新加入した選手です。ファン・マールヴァイク監督が気に入ったとのこと。さて・・。
ミスをしないように、安全にとプレーするアクーニャ。かなり安定した能力の高さを感じます。それでもマインド的には、どんどんとサポートに上がっていったり、守備では、狙いを定めたスライディングをドカン!と仕掛けていったりなど、そんなダイナミックな積極姿勢は「まだ」感じない?!
チリの代表チームでも、そんなにリスクにチャレンジしていかない、専業の「バランサー」としてプレーしていることを伺わせるアクーニャ。
ここで、ちょっとブレイク! 私が考える「ホンモノのバランサー」の定義は・・。要は、守備での「穴埋め作業」は言うに及ばず、攻撃では、積極的にリスクチャレンジを仕掛けながらも、変なカタチで相手にボールを奪われてカウンターを仕掛けられるなど、もしやのときは、まず真っ先に全力で守備(バランス)ラインまで戻ることができるような強い意志をもつ選手・・なんていう表現はどうですかネ。
その意味では、例えばジュビロのように、中盤の全員が「ホンモノのバランサー意識」を備えているチームもあります。まあ、バランサー意識そのものが、ホンモノの高い守備意識とほぼ同義だとすることができそう。それこそが、チーム力の源泉というわけです。
ちょいと、「バランス」、「専業バランサー」、「ホンモノのバランサー」等々、錯綜した議論に入ってしまって失礼しました。また機会を見て、このテーマを整理しますので・・。
さてアクーニャ。前後の役割分担が明確なサッカーからやってきたことを伺わせる彼が、これからどこまで存在感を発展させていくのか。小野やボスフェルトにとって、良い刺激になることでしょう。
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さて中田英寿。ホームゲームですが、相手はユーヴェントスです。
前半のパルマは、やられっぱなしでした。たしかに攻め上がりはするのですが、ほとんどシュートまでいけません。それほどユーヴェの守備ブロックが堅牢だということです。
ユーヴェントスの攻撃は、相変わらず、基本ポジションを忠実に維持するような、変化のない仕掛けが目立ちます。それでも十分に危険。そこには、二列目の影武者とも表現できるネドビェドがいますし、ダーヴィッツや、両サイドのチュラム、ザンプロッタ等も、前線を追い越すのは希にせよ、それなりの押し上げ(まあどちらかといえばサポート)を見せますからね。
選手たちのポジショニングバランスを「常に」しっかりとキープすることを基本に、早いタイミングでの勝負パスと「個の勝負」を前面に押し出す攻撃を仕掛けてきます。ここぞ!のロング勝負パス。ドリブル勝負やクロス。魅力ある変化という視点では、あまりに徹底し過ぎかなとは思うのですが、とにかく彼らの「戦術サッカー」が抜群に安定していることだけは確かな事実です。
前半にユーヴェが挙げた二つのゴールはセットプレーから。フリーキックからのヘディングシュートです。この二つのシーンでは、パルマGK、フレイのアクションは中途半端でしたね。二度とも、飛び出したのにまったくボールに触れない。彼がフラン代表に呼ばれないのは、こんなところ(クロスに対する判断の甘さ)原因があったりして・・。
2点リードする後半のユーヴェは、パルマの攻撃を余裕をもって受け止めていましたよ。また攻撃でも、頻度ではパルマに劣るものの、危険度では大幅に上回るという仕掛けも魅せつづけていました。まあ、ユーヴェの貫禄勝ちということです。
中田英寿ですが、攻守にわたるダイナミックプレーは、例によって安定していました。彼が中心になったクリエイティブな仕掛けも随所に魅せました。それでも、ユーヴェの守備ブロックが相手ですし、周りの味方との組織的な噛み合いもうまくいっていませんでしたからね・・。まあ仕方ない。
こんな状況では、彼一人がスーパープレーをできるはずがないということです。それにしても、攻守にわたる、高みで安定した貢献度は素晴らしいの一言に尽きます。
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さて中村俊輔。
彼の場合は、ボランチというのではなく、スタートポジションを「下げた」という表現にしましょう。スリーバック(ファイブバック)にして最終ラインを安定させ、守備的ハーフのバレデスを「専業」にし、両サイドハーフのコッツァとディ・ミケーレに対しては、両サイドバックであるディアーナとファルジーニとのタテのポジションチェンジも含めた守備意識を徹底させるというデカーニオ監督のアイデアが功を奏したということです。前節のインテル戦では実力の差を見せつけられてしまいましたが、今節のコモ戦では、そんなチーム戦術(全員のプレーイメージ)が素晴らしく機能しました。
前半の立ち上がりは、ボールがうまく回ってこないなど(中村の動きも鈍かった!)、ちょっと中村が「浮き気味」になっていました。それでも、前半の半ばを過ぎたあたりから、俊輔を中心にした後方からのクリエイティブな展開という基本アイデアがうまく機能しはじめます。
中村は、下がったことで守備にも積極的に参加しなければならなくなりました。それがいいんですよ。そのことで、自動的に「次のボール奪取」をしっかりとイメージせざるをえなくなる・・。そして、だからこそ「その次」の攻撃も明確にイメージできるようになるから、ボールに多く触るための「動き」も活性化するというわけです。もちろんチームメイトにしても、後方からの効果的な展開がいかに大事かを理解しているから、中村にボールを預けようとする。フムフム・・。
それにしても、やはりボールを持った時の中村は魅力的なプレーを展開します。ボールタッチ瞬間の「エスプリプレー」や、素晴らしいコースとタイミングのスルーパスなどは言うに及ばず、この試合では、何度か、ドリブルで相手を抜き去ったりもしました。もちろんスピードではなく、タイミング勝負。まあPKを外したのはいただけませんが、逆転ゴールをお膳立てしたことで帳消しでしょう(素晴らしいラストクロス!)。
シンプルな展開パスプレーと勝負プレーの「バランス」、はたまた攻守にわたる広い動きがうまく噛み合いはじめた中村俊輔。いまのレッジーナの快進撃の明確なコアプレーヤーの一人です。
まあディフェンス貢献度では、最終勝負シーンでのポジショニングやアタックなど、まだまだ大きな課題を抱えてはいますが(特にボールのないところ)、それでも全体的には、高みで安定する運動量とボールタッチ回数(もちろんそこからの実効プレーも含めて!)が、彼の発展を如実に証明しています。これからが楽しみじゃありませんか。