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ヨーロッパの日本人・・今週の次は、中村俊輔・・(2003年2月23日、日曜日の深夜)

よし!! そのとき、思わず声が出た。前半の終了間際、中村のボールがないところでの爆発アクションがシュートチャンスを作り出したのです。

 左サイドでディ・ミケーレがボールをキープした状況で、中村が、後方から中央スペースへダッシュして横パスを受けたのです。そのまま持ち込んでシュートへ・・。でも結局、最後のシュートは、相手ディフェンダーの壁に阻まれてしまいます。惜しい。それは、やっと中村が、この試合でのレッジーナのゲーム戦術から解放されはじめたことを感じさせてくれるプレーだったのです。

 この試合でのレッジーナは、明確なゲーム戦術で試合に臨んでいました。守備ブロックを厚くし、一発カウンターを狙う。それも、ボールを奪い返した地点から、中盤をカットして一気に最前線へ・・。だから中村も、後方からのゲームメイクを意識するよりはむしろ、もっと前線へのサポート(二列目の飛び出し)へタイミング良く上がっていくことでボールに触らなければならない・・。

 後方からの一発ロングパス。その「次」へのサポート。その方が、より多くボールに触れるはずだし、チャンスメイクにも絡んでいける。それが、前半の中村は、後方の基本ポジションにとどまって様子見になってしまうシーンが続出していました。それでは、高い頻度でボールに絡んでいけるはずがない。何せ、チームメイトたちは、すぐにタテへ!と意識しているのですからね。横にポジションを取ってパスを「待つ」中村を探すという意識は、普段よりも希薄だったということです。

 中村俊輔の基本ポジション(彼に与えられている戦術タスク)は、例によって「下がり気味」のハーフ。何度も書いているとおり、それは、守備的ハーフとは基本的に性格が異なります。中村がチーム内で要求されているディフェンス機能は(プレーイメージ)は、守備的ハーフとは明確に違いますからね。要は、中盤での守備ポジションからスタートするゲームメイカー・・ってな表現ですかね。

 前節のコモ戦では、ホームであることと、相手のチカラが少し劣るということで、彼のプレーもうまく機能していました。ボールを奪い返したチームメイトたちも、より意識して中村を捜していましたからね。でもこの試合では・・。

 たしかに、ボールを持ったらクリエイティブ。でもボールに触れなかったら、単なる「中盤でのジョギングランナー」。ちょっと言い過ぎですかね。まあ、監督から言われたゲームプランを意識し過ぎているということですよ。それじゃ、ダメなのです。ゲーム展開的に、どのようにすれば、もっと効果的にボールに触れるかを自分自身で工夫しなければ・・。例えば、どこでボールを奪い返せるかを「予測」し、常にその周辺へ寄せていくとか、ボールを奪い返した後でボールをキープする味方へ全力ダッシュで寄っていくとか・・。

 ボールがないところでの忠実マークまでは厳しく要求させれているわけではなく、基本的には相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)への最初のチェック(自由にプレーさせない最初の妨害アクション)やチェイシングを期待されているに違いない中村。だから、「中盤の底」を基本ポジションにしながら、次の攻撃は、全部オレからはじめてやる!・・くらいの強い意識をもたなければならないというわけです。とにかく、攻守にわたって中途半端なプレーに終始した前半でした。

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 後半も同じような展開ではじまりましたが、17分ころでしたかね、右サイドでシュートポジションに入ったロベルト・バッジョを、レッジーナの最終ラインの順賃、バルガスが倒してPKを取られてしまいます。あれはファールじゃなかった・・。バルガスの足は、明確に、最初にボールに触っていましたからね。ロベルト・バッジョの心理パワーがレフェリーを動かした・・?! まあ、仕方ない。そして、バッジョがそのまま先制ゴールを決める。でも私は、さてこれで、面白くなった・・と思ったものです。戦術から解放されたレッジーナが、どのくらいブレシアに食い下がれるのか・・。

 そして、レッジーナが積極的に攻めはじめます。対するブレシアは、トップのトーニを下げてカウンター狙いに入る。中村も、ポジションを上げはじめる。さて・・。

 そんな展開のなか、左サイドボールを持った中村が、ファンタスティックな切り返で相手ディフェンダーを振り回しファールを誘発します。そんな派手なプレーがいい。それで味方も中村のことをより強く意識するでしょうし、勇気を与えられたに違いない。やはり、クリエイティブプレーは「心の糧」なんですよ。

 そして25分に飛び出した、レッジーナの突貫小僧、ディ・ミケーレの見事な同点ゴール。この時間帯での中村のプレーラディウス(プレー半径=基本的な運動量)は倍増した感がありました。まあ、自分主体というよりは、ゲームの流れに乗ったカタチでのダイナミズムの高揚ではありましたが・・。

 それにしても、中村のボール絡みのプレーの実効レベルは、どんどんと発展をつづけていると感じます。シンプルなダイレクトプレーもいいし、ものすごく正確なロングパス、素晴らしいボールコントロール(タメ)からの仕掛けパスもいい。もちろん、シンプルプレーの後の「パス&ムーブ」では課題が明確でしたが・・。「おい! ここだ!!」なんていうかけ声とともに、全力のパス&ムーブをつづける。そんな自己主張があってはじめて、中村俊輔は、日本的な体質も含めた、自分の「殻」を破ることができる?!

 それにしても、彼に対するチームメイトの信頼度(イメージシンクロレベル)は高まっていると感じます。彼が良いカタチでボールをもったとき、例外なく、ボナッツォーリやディ・ミケーレ等が、爆発的な勝負フリーランニングをスタートするのですよ。そこへ、ピタリと合う勝負パスが飛ぶ。また勝負パスと見せかけたアクションから、逆サイドへの勝負のサイドチェンジパスもピタリと決めてしまう。

 このサイドチェンジパスは、2-3本あったわけですが、ものすごく効果的。ブレシアの守備ブロックがゴール前へのクロスを意識している状況で、逆サイドでまったくフリーになっているレッジーナの選手へ向けて、正確で鋭いサイドチェンジパスが飛ぶんですからね。相手が、ポジションの修正に必死になることで、最終ブロックのバランスが急に崩れ、ゴール前にスペースが空く。そこへ、中村の素晴らしいパスによって余裕を演出された「逆サイドのパスレシーバー」が、ダイレクトで勝負パスを送り込むんですよ。右から、大きなサイドチェンジパスが、逆の左サイドへ飛ぶ、そしてそこからダイレクトで、ボールが折り返されてくる。ブレシアのディフェンダーたちの顔が、あっちへ向いたり、こっちへ向いたり。

 逆サイドで待つ味方選手は、その瞬間こんなことを考えた?! 「ナカムラだったら、オレのことを見ている・・よし、やっぱりパスがきた・・相手ディフェンダーも寄ってきた・・ここが勝負だ」。そして中で待つ選手たちも、こんなことを考えている?! 「よし! 相手守備が振り回された・・次には、空いたスペースへパスがくるぞ!」。

 それこそ、トレーニングでのイメージシンクロ作業の賜といったところです。

 結局この試合は、終了間際に、CKから勝ち越しゴールを奪ったホームのブレシアが「2-1」の勝利をおさめました。それでも、レッジーナがチームとして発展していることだけではなく(先制された後の押し返すパワーアップにはホンモノの勢いがあった!)、このゲームの展開によって、中村の「光と陰」をより明確に認識できたことも(考察のソースを得ることができたことも)収穫でした。ということで、ちょっと満足気味の湯浅だったのです。

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 小野の試合は、レッジーナの試合と時間がダブっていたことで、明日(月曜日)の録画を見ようと思っています。あっ、そうそう。明日の深夜(火曜日の早朝)には、稲本が出場するかもしれないゲームもありますからネ。ちょっと楽しみです。内容があればレポートしますので・・。




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