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ヨーロッパの日本人・・さて最後は、小野伸二と中田英寿・・(2003年2月24日、月曜日)

さて、まず小野伸二から。前節のAZ戦で、二頭筋の肉離れかも・・なんて書きましたが、結局は大事には至らなかったようで。肉離れになる可能性を感じた彼が、自分の判断で交代を要求した・・ということだったらしい。そんなところにも、チームでの存在感の高揚という「余裕」と、本場で生き残るノウハウの深化を感じる?!

 さてフェイエノールトのホームゲーム。相手は、リーグ16位のフローニンヘン。状況は、私がスタジアム観戦した後期開幕戦、トゥエンテとのゲームに似ています。

 以前、オランダリーグについて、こんなことをよく書きました。オランダのエールディビジは、PSVアイントホーフェン、アヤックス、そしてフェイエノールトの絶対三強リーグ・・だから、試合によっては緊張感を保つのが難しい・・ヨーロッパのなかでは、人材(若手や、まだ無名の外国人選手)を発展させるリーグ、そこで伸びた人材をピックアップするための展示会リーグなんて呼ばれている・・三強のチカラは欧州トップに肉薄しているし、オランダ人もそれで納得している(?!)。ということで、緊張感の低落を感じさせるリーグ戦も少なくない。そして、この試合も・・。

 私がスタジアム観たトゥエンテ戦は、小野も含め、全員の「気合い」が冬季バケーション中でした。まあ最後は、数本のゴールを決めて帳尻を合わせましたがネ。それでも内容は、「次」につながらないし、観客にとってもエキサイティング価値が少ない・・。

 とにかく、このフローニンヘン戦を見はじめて、すぐにトゥエンテ戦を思い出してしまった湯浅なのです。まあ、攻守にわたる小野伸二のプレーには、最初から「自分主体の意志」を感じましたが、フェイエ全体としては、まさにスタンディングサッカーといった体たらくなのです。もちろんフローニンヘンが守備を固めているということもあるのですが、それでも、明確なチカラの差があるのだから、自ら仕掛けていくことで、能動的に相手守備ブロックのバランスを崩すことができなければ・・。

 3点をリードしてもなお、ファン・マールヴァイク監督がグラウンドに向けて叫びつづけます。不満なんでしょう。よく分かりますよ。

 攻守にわたって仕掛けていくという姿勢がなければ、決してチームは発展しませんからね。指揮官が、サッカーの質という目標イメージを見失った瞬間に、チームは崩壊の道を一直線。彼は、そんな心理メカニズムをよく理解しているということです。どんなレベルでも、目指すのは美しく強いサッカー。選手たちの、それを志向する積極マインドを高揚させるのが監督の使命なのです。

 小野伸二の出来は、前述したように、高みで安定しています。2アシストを決めただけではなく、守備では、勝負所の(攻め上がろうとする相手の中盤での展開プロセスにおける)インターセプトも何度か決めましたし、(その時点で)自分がマークする相手選手へ向けたタテパスを強烈に意識したポジショニングを取ったり、実際に出されたタテパスへの「戻りアクション」のスタートタイミングが素早いなど、ボールがないところでのディフェンスも発展をつづけている。また、相手からボールを奪い返すテクニックにも、工夫が感じられるようにもなっています。

 攻撃でも、例によってのタイミングを見計らった飛び出しばかりではなく、正確なサイドチェンジパス、仕掛けのタテパスなど、効果的なプレーを展開していました。とはいっても、いつも書いているように、自らがコアになった勝負のコンビネーションだけではなく、勝負のドリブルやタメなどへチャレンジしていく積極姿勢ではまだまだですしが・・。

 後半も残り15分というところで、小野と交代して出場したアクーニャ。守備は安定していますし、ボールを持っても正確なプレーを心がけていました。また、決定的スペースへの、ココゾ!の飛び出しも一度決めました(最後はシュートではなく、ゴール前へのラストパス・・失敗)。

 小野伸二にとっては、このライバルの出現は大いなる「刺激」になるはず。さて、このキッカケ(モティベーション)によって、小野の、より一層の発展が見えてきた?!

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 中田英寿。

 本当にフラストレーションがたまっているだろうな・・。この試合では、決定的なシーンにはほとんど絡めませんでした。もちろん「意図」としては、しっかりと絡んでいたんですけれどね・・。

 普通だったら、その「現象的な結果」が選手評価を決めてしまうところですが、私の評価基準は一貫していますから・・。要は、攻守にわたって仕事を探しつづけるプレー姿勢が全ての評価のベースになるということです。それは、小野伸二に対しても、高原直泰に対しても、はたまた中村俊輔や稲本潤一に対しても同じです。たしかにチーム戦術という「規制ファクター」はあるにしても、それを超えていこうとする姿勢は、おのずと見えてくるものですからね。

 中田英寿のプレー姿勢は、例によって、高みで安定していました。チームのゲーム展開(チームメイトたちのプレーの発想)によっては、何倍もの「結果」につながったはず。でもこの試合では・・。

 何度ヒデが、天を仰いだことか。もちろん、決定的な、ボールがないところでのアクション(強烈な仕掛けの意図)を完遂した後です。それでも、彼のダイナミックな勝負の動きが、味方の貧困なプレー発想によって無に帰してしまうシーンが続出してしまって・・。そのほとんどが、アドリアーノ。

 最前線の軸として、能力は十分です。それでも、ちょっと自分勝手にやり過ぎ。監督は、彼の能力を過信しすぎているのかも・・。最終勝負を仕掛けていく直前のプロセスでは、タメやドリブルシュートに、シンプルなパスという発想もミックスさせていかなければ、相手守備ブロックの逆を突くような「攻撃の変化」を演出できるはずがない。そんな発想が希薄だから、アドリアーノのボール絡みのプレーでは、パスを受ける前の段階で、周りの味方の動きに注意を向けるという姿勢が感じられないというわけです。これでは、相手ディフェンスにとっても、守りやすいことこの上ないでしょう。もちろん彼の単独ドリブル突破は危険そのものですが、でも「それだけ」だったら・・。

 攻撃の普遍的なコンセプトは、何といっても変化。それを演出するために、様々なプレーオプションを、常にアタマに描けていなければならないということです。でも今のパルマの前線には、その発想が明確に感じられない。これでは、いくら中田が、二列目からシンプルにボールをつないでダッシュしても、その最終勝負の「流れ」が途切れつづけてしまうのも道理というわけです。

 そして、フラストレーションがたまりつづけたことで(?!)、中田の動きも徐々に停滞気味になり、最後はブレシアーノと交代。そして、その直後の決勝ゴール。試合は、パルマが「2-1」で勝ち切りました。まあそれもサッカーだから・・。

 たしかにムトゥーとアドリアーノの「個の突破能力&シュート能力」は大したものですし、それを最大限に活用しようというチーム戦術は当然です。とはいっても、そのワンパターンだけでは、決してレベルの向上は望めないということも確かな事実だということがいいたかった湯浅なのです。

 まあ、ギリギリの勝負がつづくセリエですから、「勝ち点の可能性」と「サッカーの質の向上」のバランスを考えながら、監督が決断しているということなのでしょう。フォーバックと、その前に位置する三人の中盤ラインで強力な守備ブロックを形成する・・そして中盤の高い位置でボールを奪い返し、人数をかけた組織的な攻めというリスクを極力避けるカタチでフィニッシュまでいく・・?!

 アドリアーノの個のチカラ(まあ主体は、彼のポストプレー能力のことでしょう)をうまく活用しようとする意図が、監督の口から指示というカタチで選手に伝えられた場合、往々にして、チームのプレーが、その方向へ「振れ過ぎて」しまうものです。もちろん監督も、「やり過ぎ」は避けたいところなのでしょうがね・・。それも「バランス感覚」というわけです。

 とにかく、このままではちょっと中田が心配。アドリアーノがボールを持つ状況(彼にパスが出されそうになる状況)で、決定的スペースへスタートを切りつづけていた中田英寿。でも結局は、そのほとんどが「ホンモノのムダ」になってしまう・・。まあ、またチーム内で(中田が中心になって?!)調整されるとは思いますが。さて・・。




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