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ヨーロッパの日本人・・発展ベースに乗っているだけではなく、ツキにも恵まれている高原・・(2003年3月16日、日曜日)

今夜は、小野伸二と、注目の中田英寿のゲームを夜中まで観なければならないということで、日本時間で昨夜おこなわれた高原のゲーム(ハンブルガーSV対シャルケ04)だけは、いまのうちにレポートしておこうとキーボードに向かいました。

 高原の全体的な印象は「漸進」。決して良い出来だったとは言えません。それでも、バルバレスの折り返しがピタリと高原のアタマに合うなど、とにかくツキがある。バイエルン・ミュンヘン戦での同点ゴールも含め、「ツキ」は大事にしなければ・・。

 この試合は、高原だけではなく、ハンブルクにとってもツキのあるゲームになりました。基本的な総合力では、シャルケの方が上というのが一般的な見方なのですが、この試合では、シャルケ最前線の二枚看板であるエミール・ムペンザ(ケガ)とアガリ(イエロー累積)だけではなく、ハイトー(イエロー累積)等、主力組の多くがいませんでしたからね。

 それだけではなく、高原が交代出場した後の72分には、イエロー二枚でポールセンが退場させられ、84分には、ハンブルク選手に肘打ちを食らわせたマテジャンも一発レッド。

 そしてハンブルクが、高原のヘディングでの勝ち越しゴール(87分)、ロメオの二点目(90分)と次々と加点し、終わってみれば「3-1」という「ツキにも恵まれた勝利」をおさめたのです。

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 試合は、シャルケの攻勢ではじまります。フリーキックや流れのなかからきわどいチャンスを作り出すシャルケ。ホームのハンブルクには硬さがある。対するシャルケは、主力がいないし(サブ組にとってはアピールチャンスだから気合い十分!)、アウェーということで、逆に伸び伸びとプレーしている。

 それでも、時間が経つにつれ、徐々にガップリ四つという展開になっていきます。そのなかでハンブルクもビッグチャンスを作り出す。特に、カウンターから3対1という状況を作り出したシーンでは、誰もが、「あっ、先制ゴールだ・・」と思ったことでしょう。それでも、マハダビキアからのラストパスを受けたバルバレスが時間をかけすぎてしまって・・。

 それでも先制ゴールを奪ったのは地元のハンブルクでした。前半29分。センターサークル付近からの長〜〜いフリーキックを(もちろん蹴ったのはカルドーソ)、バルバレスがアタマで落とし、走り込んだロメオが、角度のないギリギリのところから、ゴール逆サイドのサイドネットへボールを流し込んだのです。ロメオとバルバレスは、完璧に最終勝負シーンを脳裏に描いていた・・。ロメオの動き出しの早さ。そしてバルバレスの正確な「スリップ・ヘディング」。まさに「あうんの呼吸」ではありました。

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 この試合でのカルドーソですが、やはり長短が相半ばするという評価ですかね。動けない・・守備をしない・・だから守備的ハーフコンビのベンジャミンとマルトリッツも、次の守備が心配で積極的に押し上げることができない・・それでも正確な展開パスやロングパス、はたまた危険な仕掛けパスはサスガ・・とはいっても、以前のように、相手にプレッシャーをかけられた状態でもしっかりとボールをキープしてタメを演出するとか、ドリブルで突っかけていくようなリスクチャレンジプレーはほとんど出てこないし、クリエイティブなパスにも、完璧にフリーにならなければトライしない・・。

 そんなことで、全体からすれば、やはりマイナス面の方が目立ってしまうということです。そして後半16分に、高原と交代。

 カルドーソと高原の交代については、この試合でも、前節のシュツットガルト戦と同じコトを感じていました。その交代で、ハンブルク中盤のダイナミズムが格段に活性化された・・。選手たちの縦横の動きだけではなく(タテのポジションチェンジも頻発!)、ボールの動きも活性化したのです。

 要は、高原がしっかりとディフェンスにも参加してくることで、またバルバレスが、攻守にわたって忠実に機能するミッドフィールダーとしてプレーするようになったことで、ベンジャミンやマルトリッツ、はたまた両サイドバックによる押し上げが、より積極的になりはじめたということです。でもこの試合では、シャルケ中盤の汗かきであるポールセンが退場になってしまったこと(高原が登場した10分後のこと)も大きく作用していたとは思いますがネ・・。

 ところで高原のディフェンス参加ですが、こんなシーンがありました。後半20分のことです。これは彼にとっての反省材料として記しておくことにしました。

 実効あるダイナミックな守備参加をみせる高原が、バックパスを受けたシャルケ右サイド、クメッチュへのアタックを敢行します。それをかわすようにダイレクトのタテパスを出すクメッチュ。

 「コト」は、その直後に起きます。クメッチュからのタテパスを味方がうまくコントロールしたのです。そしてそれを確認したクメッチュが、高原がボールを見た瞬間を狙い、タテのスペースへ爆発ダッシュをスタートしたのです。

 ハッと気づき、すぐさま全力で追いかける高原。でも完全にスタートが遅れてしまっている。そして味方のボールホルダーから、クメッチュが走り込む決定的スペースへ正確なタテパスが通され、彼がフリーシュートを放ったというわけです(ギリギリのところでサイドネットへ・・ラッキー!!)。

 「どうして誰か、マークに付いてくれないんだ!」。そんなことをジェスチャーで訴える高原。さて・・。

 このシーンの評価は微妙。オーバーラップするクメッチュを誰が最後までマークすべきだったのか・・。たしかにそこには、最終ラインのホークマ、また左サイドバックのホラーバッハがいました。彼らは、クメッチュの動きを察してマークすべきだった?!

 いや私は、それが相手サイドバックのオーバーラップだったことで、敢えて高原が、その動きをケアーしていなければならなかったと考えています。タテに走り抜ける相手選手を、タテ方向でマークを受けわたすことほど難しいディフェンスプレーはありませんからネ。まあこのシーンでは、クメッチュの、意を決した爆発オーバーラップの方を褒めるべきだということなんだろうな・・。そんなシーンでは、やはりどんなチームでも高い確率でやられてしまうでしょうからネ。それでも敢えて・・。

 高原は、自らの学習機会として、このシーンを何度もビデオで見返すべきです。そんな危急状態でのトップ選手の確実な戻り(スッポン・マーキング)も、選手全員の高い守備意識をベースにしたポジションなしのサッカーというコンセプト(目指すべき目標イメージ)を標榜するドイツサッカーの真髄なのです。

 バイエルン・ミュンヘンでは、ピサーロが、何度も自軍ゴール前まで戻って(味方の最終ラインを追い越すくらいまで戻って!)ディフェンスに就くシーンを目撃しましたよ。このことについては、先週アップした「スポナビ」での連載コラムに書きましたので、そちらもご参照アレ。

 さて、攻撃での高原。例によって、ボールのないところでの忠実で迫力ある全力ダッシュをくり返すことで、何度も仕掛けの起点(最初のタテパスレシーバー)になれるポジションには入り込んでいました。それでも、まだまだ自分の得意とするカタチではパスを受けられていない。だからこの試合では、相手のプレッシャーに潰されてしまったり、ミスパスをしたり・・というネガティブプレーの方が目立ってしまって・・。

 とはいっても、いつも書いているように、私は心配していません。とにかく彼の基本的なプレー姿勢は、発展ベクトル上にガッシリと乗っかっていますからね。それが冒頭で書いた「漸進」の意味というわけです。

 天才ではない高原。それでも、いま乗っているベクトル上から外れることなく、より強い自己主張をベースに、味方とのコンビネーションイメージを醸成していけば、コアの一人として、チーム内での確固たるポジションを築けると確信している湯浅なのです。




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