京都vs大分戦での「事件」について・・というタイトルで書いたコラムのなかで、マラドーナの「神の手ゴール」を例にとって、『アイツらは、トレーニング中に、そんな汚いプレーを練習しているんだゼ・・などと、友人のプロコーチ連中(ドイツ人ばかりではなく、スペイン人やフランス人、はたまたイングランドやイタリアのコーチ等も)と、侮蔑を込めて話し合ったものです・・』ということを書きました。
それについて、何人かの方々から、ヨーロッパの選手たちは違うのか・・というクレームのメールが届きました。
すぐに読み返したのですが、やっぱり「そう解釈されても」言い訳ができない書き方でした。もちろんヨーロッパのなかにも、「そんな」マインドの選手たちはいますし、審判を欺けるようなプレーのやり方を練習をしている連中もいます。ということで、文中の「アイツら」は、何も南米の選手に限ったことではありません。上記の会話は、実際にナポリに所属していたマラドーナとその仲間たちが、レギュラートレーニングが終了した後に「そんな練習」をやっているところを目撃したコーチが中心になったランダムトークだったので・・。とはいっても、コーチ連中とのハナシの対象になったのは、あくまでも、そんな「自己実現とはほど遠いマインド」のプロ選手たちだったのです。
ということで、誤解を招くような書き方をしたこと、ご容赦アレ・・。さて、ではまず稲本から・・。
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一体どうなっちゃっているんだろう、稲本は・・。
このところ彼に対して厳しいコメントがつづいているのですが、それも仕方ない。何といっても、攻守にわたって様子見のプレー姿勢ばかりが目についてしまうんですからね。そんな受け身で消極的なプレーを見せられているこちらも気が滅入り、書く気力まで萎えてしまいます。それでも彼に対する期待値は高いですから、気をとり直してキーボードに向かった湯浅なのです。とにかく、彼はプレーイメージを再生しなければならない・・。
フルアム対サウサンプトン戦。後半開始から交代出場した稲本が、その立ち上がりに、素晴らしい読みディフェンスを披露しました。一瞬タメてからの爆発ダッシュで仕掛けたアタック。そして見事なボール奪取。よし! これはいいぞ・・なんて期待がふくらんだものです。でもそれ以降は・・。
とにかく、ボールがないところでのプレー(動き)が緩慢の極みなんですよ。突っ立っているシーンの目立つこと。そんなにふうに様子見だから、いつもゲームの流れから取り残されてしまう。守備でも、攻撃でも。あれほどの能力を備えた稲本なのに・・。何故もっと積極的にボールへ絡んでいかないのか・・。
2-3回はありましたかね、彼がボールを持ち、鋭いフェイントからの勝負ドリブル、クロスやシュートチャレンジなど、良いプレーを展開したシーンが。そんな動きの端はしに、可能性の高さを感じていました。だからこそ大いなる期待が高まりつづける。だからこそ、フラストレーションも極限まで高まってしまう。
そして、サウサンプトンに1点を返された時点で交代。後半39分のことでした。後半に入った選手が再びベンチに下げられるというのは屈辱以外の何ものでもありません。それでも、彼の消極プレーからすれば、まさに自業自得。2-1と、まだ1点リードしているフルアムのティガナ監督が、「あの稲本のプレーじゃ、チームのブレーキになるばかりだ・・」と判断するのも頷ける・・。
稲本の基本的なポジションは、右サイドハーフ。もちろん「基本的な・・」ですよ。普通だったら、グラウンド全体を見回して探さなければならないところです。でも「今の」彼は違う。捜すのは簡単なんですよ。右サイドハーフとしての基本的なポジションに目をやれば、そこに突っ立って様子見・・。守備でも、攻撃でも。イタリアじゃあるまいし、ジャン・ティガナ監督が、「そこに張り付いていろ」なんて指示を出すはずがない?!
まさか、動き方が分からないわけじゃないでしょう。彼自身にも「見えて」いるはず。次の展開をイメージできているはずなんですよ。もちろん攻守にわたってね。だから、動かないことが不思議で仕方ないのです。でも、もしかしたら・・。
とにかく彼には、一度、自分のプレーをじっくりとビデオを観ることを勧めます。もちろん同時に、チームメイトであるマールブランクのプレーを観察することもね。
とにかく彼は、「まず」ディフェンスからゲームに入っていくという意識を持たなければなりません。ボール奪取シーンに、実効あるカタチで絡むことができれば、確実に次の攻撃も活性化するはず・・。いつも書いていることですが・・。
彼のことが心配で、心配で仕方ない湯浅でした。あれほどの能力があるのに・・。
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次は中村俊輔。ホームでのACミラン戦。楽しみにしていた試合です。基本的なスタートポジションを下げた中村俊輔が、攻守にわたってどこまで出来るのか・・。
このゲームでは、立ち上がりからよく中村にボールが集まります。何度かミスはありましたが、サスガに俊輔、ボールを持ったら、ミランの並み居るスターと比べても遜色ない「ボール扱い」と質の高いバスを繰り出します。まあ、とはいっても、それも中村の「体勢」が十分なケースに限られるかな・・。要は、体勢が良くない状態だと簡単にボールを奪われてしまうということです。ミランのスター連中は、相手に身体を預けられた(プレッシャーをかけられた)状態や、バランスを崩した体勢でも確実にボールをキープしたり、次へパスをつないだりしてしまいますからね。
とにかく、ある程度フリーでパスを受けるなど、十分な体勢でボールをもったときの中村俊輔は、上手いコントロールからの仕掛けのタテパスや、素早いタイミングでのシンプルパスなどを、まさに「自在」という表現がピタリと当てはまるような美しい動作で繰り出してしまうのですよ。それには、本当にほれぼれさせられていた湯浅でした。でも時間が経過するにしたがって・・。
この試合で俊輔が機能したのは、立ち上がりだけでした。その後は、完全に泣かず飛ばず。彼の場合も、ボールへの絡み方が問題。運動量というか、ボールがないところでの積極的なランニングでは稲本よりもいいですけれどね・・。
私が言っているのは、基本的なプレーイメージのことです。中村俊輔の場合、「オレが仕掛けのパサーになる・・」というイメージを前面に押し出すポジションを取ろうとし過ぎるのです。よいカタチ(体勢)でボールを持つために・・。
よいリズムでボールが動き、後方から前進してきた味方の一人が「前を向いて」ボールを持った・・。そんな状況でも中村俊輔は、その横にポジションを取って、「オイ、オレにボールをよこせ・・」。味方の前線選手たちは、その「前を向いてボールを持つ起点プレーヤー」に合わせてアクションを起こしているのに・・。
そんな、ボールがないところでのプレー「ばかり」をつづけているから、ミランのガットゥーゾやピルロ、はたまたセードルフにしても、中村へパスが回されるタイミングを明確にイメージできるようになる・・だから、タイミングの良いアタックでボールを奪い返されてしまう・・。
中村は、もっと自分が「使われる」というイメージもミックスしていかなければいけません。要は、「タテのスペース」へ走り込んでパスを受けるというイメージ「も」持たなければならないということです。そのために、積極的にタテへのフリーランニングを敢行したり、自分が起点になって仕掛けるワンツーを駆使したり・・。
前節のトリノ戦では、「もっと自分が主体になってボールを動かせるように、リーダーシップを発揮しなければ・・」と書いたわけですが。それには、(味方にも目立つような)ボールを受ける動きをもっと活性化しなければならないという意味も含まれています。良いポジションにいたとしても、足を止めてしまうのでは、善戦選手たちのパスを受ける動きも見えている味方ボールホルダーも、中村への足許パスを出しにくい。もっと、声を出しながら、タテのスペースへも積極的に入り込んでタテパスを受けるようなシーンも作り出していかなければならないということです。
要は、後方からのゲームメイクイメージだけではなく、もっと前線ゾーンへの絡みも意識しなければならないということです。展開パスや、後方からの勝負パスを供給するばかりではなく、より相手ゴールに近いゾーンで、「タイミング主体」のドリブル突破や、タメからのスルーパスなど、勝負ゾーンでの決定的シーンも演出する。そんなイメージがあってはじめて、彼の才能が、本当の意味で活きる。それがあってはじめて、後方からのゲームメイクなど、攻撃の起点としてのリーダーシップも、より実効あるカタチで発揮できるようになる。
後半の20分ころにモザルトと交代させられた中村俊輔。デカーニオ監督の判断は正しかったと思う湯浅です。ミランに押し込まれはじめていたレッジーナでしたからね。中村俊輔のディフェンス力では、彼がいる守備ゾーンが確実に弱体化してしまうし、攻撃でも、中盤のダイナミズムを演出できない・・。まあ仕方ない。
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ちょっと、稲本と中村のプレーにフラストレーションがたまっていた湯浅でした。今日はこれから、高原、小野、中田のゲームを観る予定。
特に中田英寿には注目しています。私も、(前節のゲーム後にアップされた)彼の「公開HPダイアリー」を読みました。内容については、ご自分でご確認ください。
前節のコラムを上げた後、多くの読者の方々から情報が寄せられました。「中田英寿HPの会員専用ページに、こんなことが書いてありましたよ・・ってネ。そしてナルホドと思っていました。あくまでも、周辺情報(事前情報)に惑わされず、グラウンド上の現象だけをニュートラルに評価するというのが私の基本姿勢ですが、この、中田英寿自身の発信情報だけは、事前に知っておくべきだったかも・・。
とにかく彼の、攻守にわたる「より解放されたプレー」への渇望は、痛いほどよく分かります。でもそれって、イタリア的な発想からの解放だったりして・・?!
とにかく本日の深夜に中継されるパルマのゲームに注目しましょう。