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ヨーロッパの日本人・・今週の締めは小野と中田・・ともにポジティブでした・・(2003年3月17日、月曜日)

ドドドッ!! そんな音が聞こえてきそうでした。小野伸二が、自らのダイレクトパスが相手に当たり、そのまま相手のカウンターチャンスになってしまった瞬間に全力ダッシュで戻ったのです。そしてその選手を、味方と協力して潰してしまう。まあ、あまりスマートな潰し方ではありませんでしたが、全身のパワーを相手に預けたストップ。いや、頼もしい限りです。

 いいね・・本当に・・小野伸二は・・そんなことを思っていました。私は、前節のフェイエノールトの試合を思い起こしながら、アクーニャのプレーと比べていましたよ。やはり大きな差がある。考えつづけながら、常に自分が主体になって、攻守にわたってボールに絡んでいく・・いや、読みベースだからうまく絡んでいける。それこそ、自らの意志が満載された本物の実効プレーじゃありませんか。

 また、相手からボールを奪い返すテクニックや、競り合いでの気概などにも大きな発展の後を感じます。冒頭のシーンもそうですが、身体のあずけ方がうまくなったし、タメる瞬間とアタックする瞬間のメリハリがよくなったと感じます。だから、そう簡単には「置き去り」になることはない。置いていかれそうになったら、「行かさない」という泥臭いプレーまでやってしまう。

 もちろんボールがないところでの守備にも、考えつづけているからこその(読みベースの)実効プレーがてんこ盛り。足が遅いから、スタートが遅れたら追いつけなくなってしまう。だから一瞬の判断にも、最高の集中力輪基盤にした鋭さが明確に見えるようになっていると感じます。体感の積み重ねっていうことでしょうね。でも、いくら体感しても、同じミスをくり返す選手も多いですからね。やはり彼のインテリジェンスは、期待したとおりのレベルにあるということです。ちょいと褒めすぎですかね。まあ、久しぶりに彼の優れたプレーを見せてもらったから・・ということもあるんでしょう。

 あっと・・攻撃ですが、そこでも、シンプルプレーを積み重ねながら、最後のところでのリスクチャレンジを常に狙っていると感じます。爆発的なパス&ムーブ。ボールがないところでの、ここぞ!のフリーランニング。それも後方から何10メートルも全力で走り上がる。パスが来なくても、何事もなかったように、忠実に基本ポジションへ戻る。まあもちろん、足が速くないこともあって、ドリブルで何人も抜いてしまうというタイプ、タイミングで相手モーションの逆を取るのは上手いですからね。もちろんドリブルをしながらも、常に勝負パスを狙っている。そんな小野の能力の高さに対しては、チームメイトたちも絶対的な信頼を寄せていると感じます。

 相手の「NEC」は、中盤から、忠実でダイナミックな守備を展開します。へ〜〜と、感心して見ていたところに、急に画面に映し出された監督さんの顔。「なるほど・・」と、納得していた湯浅です。その監督さん、「あの」ヨハン・ネースケンスじゃありませんか。伝説の「1974年オランダ代表」のなかでも異才を放った、中核の「汗かき」選手。彼の骨身を惜しまないサポートプレーがいなければ、ヨハン・クライフもあれほど活躍できなかったに違いない・・。NECの選手たちが、そんなネースケンス監督のスピリットが乗り移ったようなダイナミックな闘いをするのも当然と思えてきたものです。総合力では確実にフェイエノールトの方が上なのですが、そんなチーム力の差をあまり感じさせないのですよ。その秘密が、フェイエノールトの攻撃を、早い段階で抑制してしまう中盤ディフェンスにあるというわけです。

 ゲームは、PKを決められて(前半10分)一点リードされたフェイエが、前半のうちに、ファン・ホーイドンクのゴールで同点(前半37分)。そして拮抗状態がつづいていた後半42分に、同じファン・ホーイドンクがフリーキックを決めて(相手に当たってコースが変わるラッキーゴール)決勝点を挙げたという次第。

 その数分前でしたかね、押し上げた小野伸二が、左サイドでマーク相手の逆を取って余裕を持ち、正確なラストクロスを、ピタリとボンバルダのアタマに合わせたんですよ。まさに決定的チャンス。でもボンバルダのヘディングは、わずかに右に逸れてしまう。それが決まっていれば、この試合での小野伸二のプレー内容正当に反映したアシストになったのに・・。小野は、その数分前にも、左サイドを駆け上がり、これまた素早く正確なパスを中央ゾーンへ送り込んで、数少ないチャンスを演出しました。

 小野伸二は、バランス感覚あふれる効果的なディフェンスをベースに、流れるような組織プレーを中心に、たまに味方とのコンビネーションで個のチカラを発揮するなど、メリハリの効いた攻撃プレーをつづけています。まあ彼に「個の突破」はあまり期待しないのが正解のようです。

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 さて中田英寿。皆さんはもう中田英寿のHPをご覧になりましたか? プロサッカー選手としての真摯な姿勢が伝わってくる文章ですよ。まあ、監督と「アンダー・フォー・アイズ(二人だけ)」で話し合った内容を「公表」してしまったことの是非は・・という視点は残りますが・・。

 その文章の骨子は、今の右サイドのポジションでは、自分の持ち味は活かされない・・(チームのためにも?!)是非とも中盤のセンターをやりたい・・もし叶わないならば、サブでもいい・・とにかく、そのポジションにこだわりたい・・。

 まあ、私の書き換えですし、他の内容もはしょっていますから、是非ともオリジナルをお読みください。

 この文章については、現地でも報道されていたみたいですね。それについて、ラムーシがこんなことを言っていたそうな・・。「中田も、監督も、アタマがいい人たちだから、最後はうまくいくよ・・このことが何らかのシコリとして残ることはないね・・」。ラムーシもまた、インテリジェンスあふれる個人事業主じゃありませんか。

 そういうことなんですよ。互いに、相手を理解しようとする姿勢がベースになっていることは明確でしょうからね。そのような態度のプロ同士である監督と主力選手が意見交換をする(決して議論ではない!・・そこがミソ!!)ことは、決して悪いことではありません。もちろん最終決定は監督が行うわけですが、そこでの判断基準は、多面的であればあるほどポジティブな方向へつながっていくはずですからね。

 そしてこの試合での中田は、中央ゾーンでスタートします。・・というか、基本は右サイドなんでしょうが、より自由にポジションを取っていいということでプランデッリ監督と合意したんでしょう。期待が高まったモノです。それでも・・。

 相手のキエーボは、本当にいいチームですよ。イタリアのなかでは、数少ない、自ら仕掛けていくチーム。言い換えれば、攻撃に入ったら、自らバランスを崩していける(積極的にリスクにチャレンジしていける)チームだということです。それも、チームメイト同士の、次のバランシング(守備の組織作り)に対する深い信頼があるからに他ならない。

 仕掛けっぱなしではなく、それぞれの状況で戻らなければならない選手は、確実に、全力でバックしながら守備参加するのです。それこそ本物の守備意識。それこそ本物の「バランス感覚」。そんなクリエイティブな守備イメージが徹底しているからこそ、攻撃でも、後ろ髪を引かれない活発な押し上げをベースに、縦横のポジションチェンジを繰り返せるし、攻撃の変化も演出できるというわけです。

 ということで、キエーボのディフェンスががあまりにも忠実でダイナミックだから、パルマは、ほとんどといっていいほど攻めを構築することができない。別な見方をすれば、常に人数をかけてくるキエーボの攻撃に迫力があるから、押し込まれた状態にあるパルマが次の攻撃に人数をかけられない・・とも言えそうです。

 それでも、そんな劣勢にあったパルマが先制ゴールを奪ってしまうのですからサッカーは分からない。ムトゥーの素晴らしいフリーキックでした。とはいっても、それ以外でのパルマは、ほとんどといっていいほど攻撃を組み立てることができない。全力でもどってくるキエーボ選手たちに、攻撃の芽をどんどんと潰されてしまうのです。それは中田英寿も例外ではありませんでした。

 あっと・・。前半の中田には、一本だけ、素晴らしいシュートがありました。ペナルティーエリア角の右サイドでボールを持ち、流れるように右足を一閃。蹴られたボールは、正確にキエーボゴールの右上角へ飛んでいきました。でもGKのスーパーセーブに、はじき出されてしまって・・。

 後半の中田は、ハーフタイムにプランデッリ監督と話し合ったのでしょう、いつものように、より右サイドに張りつくようになります。それは、前半でのプレーを見た結果なんでしょうが、私は、もう少し「自由」をつづけてもよかったかなと思っています。何といっても、高い守備意識を備えている中田ですからね。どこにいても、次の守備では、危ないゾーンを「自ら」探して急行しますよ。でもまあ仕方ない・・。

 より自由にプレーした前半ですが、中央ゾーンで仕掛けのコンビネーションをイメージしようにも、アドリアーノとムトゥーは相変わらず「個の勝負」へ奔りがちですから・・。それも、前半での中田のプレーがうまく機能しなかった背景にあったと思っています。プランデッリ監督は、二人の「個の突破能力」を攻めのプライオリティーに置いているのでしょうが、あまりにも・・と思うのは私だけではないはず。

 右サイドを中心にプレーした後半の中田は、前半よりは攻守にわたって安定したプレーが展開できるようになったと感じました。キエーボも中田をケアーしていたようで、中央ゾーンでは、よりマークが厳しかったということでしょう。何といってもそこでは、四方八方からプレスが掛かってきますからね。まあプランデッリ監督も中田を信頼しているでしょうから、これからもある程度「自由」を与えるに違いないと思っている湯浅なのです。

 後半も、一点を追うキエーボの勢いは衰えません。何本か決定機も作り出しました。でもパルマにはまだツキがある・・なんて思っていたのですが、そのツキが倍増してしまって・・。押し込まれる展開がつづいていた状況で、キエーボの中盤選手が、中田への後方タックルで一発レッドをくらってしまったのです。そしてその直後には、カウンターから、中田の追加ゴールまで決まってしまう・・。まさに、サッカードラマ的な展開ではありました。

 このゴールシーンでの中田は、本当に落ち着いていました。一度キックフェイントをかけた後、冷静に相手の動きを見極め、ゴール左隅へキッチリとシュートを決めたのです。素晴らしい。

 10人になったとはいえ、その後もキエーボは、攻守にわたるリスクチャレンジ姿勢を劣化させることなくパルマを押しつづけます。それはそれで感動モノでした。ちょっとキエーボのファンになりそうな湯浅だったのです。

 それでも、激しく上下動をくり返すキエーボですから、やはり一人足りない状況は厳しすぎた。そしてパルマに、カウンターから次々とゴールを決められ、終わってみれば「0-4」の完敗ということになってしまいました。あっと・・、もちろんパルマにとっては、嬉しい勝利ですがね。

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 とにかく、中田英寿にとって、今回の監督との「意見交換」は、様々な「心理要素」がリリースされる方向へ動きはじめたという意味も含め、この上なくポジティブな心理プロセスだったに違いないと確信している湯浅なのです。

 もちろんそれも、この試合におけるグラウンド上の現象を基盤にした評価ですから、人の深層心理まで含む「本当のところ」までは分かりませんがネ。




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