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ヨーロッパの日本人・・今週の次は、中村俊輔と高原直泰・・(2003年3月3日、月曜日の早朝)

本当にほれぼれしますね、ボールをもった時の中村俊輔のプレーは。

 レッジーナ今節の相手は、現在6位のウディネーゼ。レッジーナのホームとはいえ、難しい相手です。それでも調子を上げているレッジーナが、序盤からゲームの主導権を握ります。

 主導権を握るためのバックボーンは、何といっても心理・精神的な部分。「行くぞ! 行けるぞ!」という確信レベルの高揚が、攻守にわたる積極的プレーとなってグラウンド上に現出するのです。そんな心の高揚を活性化した大きなプレーの一つが、中村俊輔が連続して繰り出した素晴らしいロングパスだったことに異論をはさむ方は少ないに違いありません。

 立ち上がり早々に中盤でボールを持った中村俊輔。素早く美しいボールコントロールで、相手のアタックマインドをしぼませてしまいます。

 この、相手のアタック意志を低落させてしまうボールコントロールが素晴らしい。ディフェンダーは、相手の、ちょっとしたコントロールの乱れなど、「よし、いけるぞ!」と確信できるキッカケがなければアタックを仕掛けにくいもの。中村のコントロールには、一分のスキもないということです。

 さてボールをコントロールした中村、次の瞬間には、左サイドの決定的スペース目がけて爆発フリーランニングをスタートしたディ・ミケーレへ、素晴らしいロングタテパスを通してしまうのです。素晴らしいボールコントロールからルックアップ、そしてキックまで、本当に流れるような美しいアクション。結局、そのパスが通り、うまくコントロールしたディ・ミケーレからボナッツォーリへラストパスが通って決定的なシュートチャンスになります。

 そんなプレーが、仲間に勇気を与えないはずがありません。また中村は、その1分後の前半3分、センターサークルをちょっと越えたくらいの中盤ゾーンから決定的なラストロングタテパスを決めてしまいます。レッジーナ先制ゴールのシーンです。

 ターゲットは、ボナッツォーリ。中村が蹴ったボールが、ピタリと彼のアタマに合ったのです。こうなったら、長身で足も速い(=ジャンプ力がある)ボナッツォーリの独り舞台。ヘディングされたボールは、右ポストの内側に当たってゴールへ吸いこまれていきました。

 本当に、ほれぼれさせられていた湯浅でした。

 その直後には、バルガスが滑ってしまったためにPKを奪われて同点。その数分後には、ディ・ミケーレが爆発ロングシュートを決めて、レッジーナがふたたび「2-1」とリードを奪います。その後も、中村が素晴らしいロングシュートを放つなど、全体的な流れは明らかにレッジーナのものです。

 それでも、ウディネーゼの粘りも相当なもの。特に、忠実なポジショニングバランスからのクレバーな守備が目立ちます。それが、リーグ6位という今の彼らのポジションの背景にある。そして実際に、膠着状態から、前半終了間際には、ここ一発のクロスを決めて同点に追いついてしまうのです。大したものだ。

 後半の展開は、徐々に膠着状態が深まっていきます。もちろんホームのレッジーナが仕掛けつづけますが、うまくウディネーゼ守備を崩していけない。逆に、たまに繰り出される、強い意志をともなったウディネーゼの攻め。そして、中村の存在感は徐々に低落していく・・。

 中村俊輔ですが、もう何度も書いているように、彼のプレーのチーム戦術的な意味合いは、スタートラインを「下げた」という表現がもっともふさわしいものであり、決して守備的なハーフとか、ボランチと呼べるものではありません。だから、基本的なポジションが高めのコッツァ、そして両サイドのディアーナ、ファルジーニといったところの「前後の仕事量」がちょっと増えるということになります。

 たしかに中村も守備には絡みますが、あくまでも相手の攻撃を「一次的」に邪魔するレベル。要は、味方の守備ブロックにとっては、「計算できない存在」というわけです。ボールをもったら素晴らしいパスを繰り出す中村。もし彼が、味方が「次の勝負所」を明確にイメージできるくらい実効ある中盤ディフェンスを展開できれば、たしかにホンモノのボランチ(=ホンモノのゲームメーカー=隠れた中盤の将軍=ドゥンガやヴェーロンたちのようにネ)にまで成長できるかも・・。まあ、でも今の彼を見ていたら、それは現実的ではないでしょうがね。

 さて、後半はちょっと影が薄くなってしまった中村ですが、とにかく発展ベースだけは完全に揃っていますからね・・。

 試合は、コッツァが「粘りのPK」を決め、レッジーナが貴重な「3勝ち点」をもぎ取りました。

 中村に「オレが蹴る!」と宣言してペナルティースポットに立ったコッツァ。PKを、僅かに左に外してしまいます。でも、彼が蹴る前に相手ディフェンダーが、ペナルティーエリア内になだれ込んだとして「やり直し」。次もキッカーはコッツァ。何か、仲間たちの「アイツ・・蹴りたいんだってヨ・・」なんていう雰囲気が漂っている?! そしてシュート! 見事に、ゴール左端に決まります。いや?! ありゃ、ありゃ、またやり直しだゼ。今度は、攻撃側のルール違反(またまた早いタイミングでペナルティーエリア内へ入った!)。さて、三度目。これはもう並大抵の「心理プレッシャー」じゃありません。もちろんキッカーはコッツァ。普通の状況じゃない。彼も意地なんだろうな・・何せ、レッジーナではPKのキッカーは中村と決まっているはずだし・・それを押しのけて、オレが蹴る・・さて・・。

 でもコッツァはやってくれましたよ。またまた狙ったのは左隅。それも、GKが読んでいたにもかかわらず・・。要は、それほどシュートが低く、強烈で、正確だったということです。予測が当たったGKでしたが、まったくノーチャンスでした。

 喜びを爆発させるコッツァ。仲間に祝福されて自陣へ戻ります。そして最後に、中村へ近づいて、何やら一言。中村も、笑顔で対応していました。

 とにかく、素晴らしくエキサイティングな「PKシーン」ではありました。

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 さて高原直泰。これから出掛けなければならないから本当に短くショートインプレッションだけを・・。

 結局彼は、先発ではなくベンチスタートということになりました。要は、ロメオとバルバレスがツートップで、二列目にカルドーゾとマハダビキアが入る布陣です。

 前半の立ち上がりは、どうなることかと思いました。ハンブルクのサッカーがうまく機能しない。例によってカルドーゾも機能しないし、ロメオもまったくボールにタッチできない(試合勘が薄れている)。対するヘルタ・ベルリンは、UEFAカップのためにも、是が非でもこの試合をモノにしなければ・・という積極姿勢で攻め上がってくる(そのことはハンブルクも同じだし、何せハンブルクのホームゲームですからネ!)

 それでも、前半も半ばを過ぎるあたりからハンブルクも盛り返し、ゲームは素晴らしくエキサイティングな展開に・・。またカルドーゾやロメオのパフォーマンスもアップしてくる。そんなエキサイティングな展開は、後半もつづきます。そのなかで得たフリーキックを、ハンブルクが決勝点に結びつけたというわけです。後半10分。キッカーはカルドーゾ。素晴らしく正確で柔らかなボール。狙うは、ベルリンのゴール正面ゾーン。そこへ、後方から、キャプテンのホークマが怒濤の勢いで飛び込んでヘディングを決めたというわけです。いや、素晴らしいゴールでしたよ。

 その後は、当然というか・・ハンブルクが、しっかりと守備ブロックを固めてカウンターを狙い、ベルリンは、前後のバランスとは関係なく攻めつづけるといった展開です。「ハンブルクのゲーム内容も持ち直してきたし・・これは高原の出番はないかも・・」なんて思いはじめた後半32分。出てきました高原。ロメオと交代です。

 カルドーゾは、徐々にパフォーマンスをアップしました。そして前半の半ばを過ぎる頃には、完全に攻めのイメージリーダーに戻っていましたよ。守備はおざなりだし、スピードも遅くなっている。それでも彼にボールが集まるようになり、そしてハンブルクの攻撃に「色」が出はじめました。だから「彼を代えることはできないな・・」と感じていたというわけです。

 さて交代出場した高原。もう、素晴らしいパフォーマンスでした。とにかく休まない。攻撃でも守備でも。そして、まさに「実効」あるプレーを展開したのです。私は、彼を誇りに思っていましたよ。彼の「マインド」を・・。

 高原が展開したのは、まさに、そのゲーム展開では理想的なトップ選手のプレー。守備では、最前線からボールを追い続けます。それも「全力」のチェイシング。一度などは、彼のチェイシングのお陰で、後方の味方がボールをカットできたりして。それですよ。高原は、それを明確にイメージしていた。自分がプレッシャーをかけ、そこで味方が「高い位置」でボールを奪い返せる。それこそ、彼がイメージしていた「自分が主体になったカウンターチャンス」というわけです。

 実際に、二度、三度と、そんな状況から高原がコアになったカウンターがスタートしたものです。マハダビキアとのコンビネーションから高原から抜け出したり、タテパスを「流してコントロール」することでダイレクトでシュートを放ったり、ヴィッキーからのニアポストへのラストパスに飛び込んだり、完璧なカウンター状況で、飛び出してきた相手GKを振り切ってドリブルで突進してシュートを放ったり(これが一番決定的・・でも最後は、がら空きのゴールまで戻った相手ディフェンダーに、足先でコースを変えられて、高原の二ゴール目がおあずけになってしまう。残念!)。

 高原にとって、この最後の15分間は、仲間に対する強烈なアピールになったはず。「オレもいるんだぞ!」。限られたチャンスを、最高のカタチで生かし切った高原直泰に対し、心からの拍手を送っていた湯浅だったのです。

 あっと・・もう行かなければ! 高原の「感動的なプレー姿勢」については、また別のメディアで書きますので・・。また明日は、小野伸二についてもレポートする予定です。




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