そんな感じでしたかネ。小野伸二が、後半42分に、左サイドから決定的勝負を仕掛けていったシーンです。
左サイドでボールを持った小野伸二。前半にも一度同じような単独勝負チャレンジを魅せたのですが(結局は抜けきれなかったけれど・・)、そのときも、すぐに味方へパスをつないでしまうのではなく、自ら単独勝負へ向かっていったのですよ。オレが行ったる! そんな強烈な意志をほとばしらせる小野。視線と意識がテレビ画面に吸い寄せられてしまいました。それだ!!
ドリブルで突っかけていく小野伸二。見事に相手ディフェンダーのアクションの逆をとって二人を置き去りにし、中央のボンバルダと最終勝負のワンツーを決めたのです(誰もが完璧に決まったと思ったに違いない!)。
それでも、目標意識の強いフィテッセのディフェンダーは最後まで諦めませんでした。小野の最初の切り返しで置き去りにされた(と思っていた・・)ディフェンダーが、すぐに立ち直って小野を追いかけたのです。そして最後の瞬間(そのままダイレクトシュートが放てるツーのパスが通りそうになった瞬間・・)小野に追いついちゃったんですよ。いや、ものすごく残念なシーンではありました。
このディフェンダーの「粘り腰」ですが、それは、この試合でのフィテッセのプレーを象徴していました。降格圏内のフィテッセ。彼らはギリギリのところで二部落ちを争っているわけですが、フェイエノールトのホームということもあって、とにかくゴールを割らせないという守備強化ゲーム戦術で臨んできたのです。その首尾一貫したディフェンスブロックは、それはそれで見所豊富でした。
人数をかけたフィテッセの強化守備。フェイエノールトの攻撃をことごとくはね返していました。フェイエがチャンスの芽を演出できたのは、そのほとんどが、エマートン、ボスフェルト等の押し上げがタイミング良くハマったときだけでした。それほど、前線の四人、ファン・ホーイドンク、ファン・ペルジー、カルー、パルド(後半からルアリンク)が、ガチガチにマークされていたのです。
そんな状況ですから、私は、例によって安定したプレーを展開する小野伸二にも、タイミングのよい飛び出し(リスクチャレンジ)を期待しつづけていたんですよ。でも結局は、例によっての確実なつなぎパスばかり(もちろん、それはそれでチームにとって価値はありますが)・・前線スペースへの飛び出しも、ちょっと唐突だからパスが回ってくることもほとんどない(事前のアイコンタクト&イメージシンクロ作業が甘い?!)・・また、ドリブルで突っかけていくシーンがないから、自分が主体になったコンビネーションを演出できるわけでもない・・フ〜〜・・なんてネ。
守備では、スペースの穴埋め作業や、ボールがないところでのマークでも安定しているけれど、どうもボール奪取がうまくいかない。私が言っているのは、そのポイントから必殺のカウンターを仕掛けていけるようなボール奪取のことです。守備でも、「次を狙いつづける猛禽類の眼」が大事なのに・・。
まあそれも監督の指示なんでしょうがネ。「とにかくシンジは、中盤の底で互いのポジショニングのバランスを取れ・・ボールをもったら確実に展開パスを回せ・・上がっていくのは・・回に一度というイメージでプレーしろ・・」ってなものでしょう。それでも、こんな内容の試合だから、もっともっと行ってもいい。目立つのは、エマートンとボスフェルトばかりじゃネ・・。
前述しましたが、スペースでボールを持ったら、展開パスを回すばかりではなく、ドリブルで突っかけていくなど、もっと積極的に相手へ向かって仕掛けてもいい頃でしょう。小野のパスは素早く正確につながるけれど、そんな「展開パス」をキッカケに前方スペースへ走っても、自分がコアになった仕掛コンビネーションを演出するのは難しい。突っかけドリブルからの(相手を置き去りにしてしまうようなタイミングの)ワンツーとか、相手マークをスクリーニングで背負った状態からの仕掛けパスなど、そんなリスキープレーこそが、自分が主体になったコンビネーションを演出するための(彼を起点としたコンビネーションをスタートさせるための)キーポイントなのです。
そんなフラストレーションがたまっていたからこそ、ドリブルで突っかけ、スピードではなく、相手アクションの逆を取るカットで相手を置き去りにした後半42分のリスクチャレンジ(ワンツーでの抜け出しコンビネーション)に、思わず「それだ!!」と声が出てしまったんですよ。もちろん、何としても勝たなければならない相手だし、ホームで「1-1」ですからネ。全員がしゃにむに仕掛けていく状況(時間帯)だったこともあるのでしょうが・・。
とにかくこのシーンが、小野のマインド(感覚)を刺激したことを願って止まない湯浅なのです。「あっ、そうだ・・これだった」ってね。もっとリスクチャレンジを・・もっと自己主張を・・。そうすれば、ボスフェルトだけではなく、彼の側にいるサイドハーフにしても、しっかりと戻ってバランスを取るに違いないし、実際、彼が上がった状況での、ボスフェルトや同サイドにいるハーフのカバーリングはうまく機能しているじゃありませんか。
ファン・マール・ヴァイク監督は、小野のことを、主に「セキュリティー・タスク(バランシング)要員」だと考えている?! まあそうなんだろうな・・。だからこそなおさら、そのタスクを十分にこなしながらの仕掛けプレーは、小野にとってやり甲斐のあるチャレンジじゃありませんか。とにかく、自分で限界を設定するのではなく、常にそれを「ブレイク・スルー」していくというチャレンジマインドを活性化して欲しいと思っている湯浅なのです。
それにしてもフェイエノールトは、よく勝ちましたね。完璧に、ドツボにはまったと思ったのですが・・。とにかく(最近は、同じような劇的な勝利が目立つ・・)彼らは、完全に、ツキも自分たちのものにしている・・。このままいったら、本当にアヤックスを逆転してしまうかもしれませんよね。そこで、小野のプレーも、よりダイナミックに変身していく・・。楽しみです。
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さて次は中村俊輔。
彼については、先週のエンポリ戦のレポートとまったく同様のコメントになってしまいそうです。違うのは、彼の基本ポジション。今節のアタランタ戦での中村は、前気味ハーフ(二列目)でプレーしたのです。
基本的に、攻守にわたって自由にプレーできるポジション。それでも結局は、ほとんど良いカタチでボールを持つことができず、レッジーナが同点に追いついたところで、(守備に不安がある)中村は交代させられてしまいました。
たしかに、チームメイトたちが中村にボールを集めようとしていなかったことも(しっかりとボールを動かして組み立てようとするイメージを持っていなかったことも)確かな事実。ボールに触らなければ、チーム内の誰もが認める彼の才能を活用できないのだから、チームにとっても大きなマイナスなのに・・。ということは、監督の「意識付け」がうまく機能していなかったということか・・。
しかし、中村のボールがないところでの動きが、例によって緩慢だっただけではなく、守備でも効果的なプレーがまったく出来ていなかったことも誰の目にも明らかだったに違いありません。ほとんど、強い意志の現出としての全力ダッシュも見られませんでしたしね。これではパスを出しにくい。またボールをもっても、素早いタイミングで前へ送り出す「仕掛けのパス」はほとんどなく、シンプルに「安全パス」をつなぐか(その後のパス&ムーブもなし!)、キープすることで(こねくり回しに近い?!)、仕掛けリズムを送らせてしまうばかり。
昨年のサッカーコーチ国際会議で、知り合ったスペイン人コーチとこんな話をしたことがあります。その内容を簡単にまとめたら、こんな風になりますかネ・・。
「テクニックに優れた選手ってさ、ドリブルで何人も抜けるとか、レベルを超えたボールコントロール力で、何人もに取り囲まれてもキープしてスルーパスを出してしまうとか、よほどすごいプレーができる選手じゃなければ、自由にやらせられないよな・・いくら上手くても効果レベルが追いつかない技術系のプレーヤーが、あまり動かないで横パスばかりを要求したり、守備ができなかったり、自分からやらないようだったら、まずチームメイトに認められないよ・・そんな選手をチームとして活かすためには、汗かきタイプを一人増やさなければならないしな・・だからレアル(マドリー)はすごいんだよ・・あれだけの才能たちが、しっかりと動いてシンプルなプレーに徹するし、守備にも確実に絡んでいるからな・・オレは、レアルに参加したロナウドやバルセロナに加入したリケルメは難しいと思っているんだ(この話をしたのは昨年7月のこと)・・結局ヤツらは、マラドーナじゃないということさ・・」。
まあ深いテーマではあります。
今の中村は、チームメイトたちの「組み立て無視」のプレーにフラストレーションがたまっているのかも・・。もしそうだとしたら、いまの彼のプレー姿勢は、プロとしては認められません。そんなときにこそ、自分自身が動きまわり、オレがゲームのペースを作り出してやるゾ・・という姿勢でプレーしなければならないと思うのですよ。そんな自己主張がなければ、決して、自らが中心になって攻撃リズムを演出するコンダクター(リーダー)になれるはずがないし、彼にボールが集まることもない。少なくとも、それにトライする意志くらいは、プレー内容に明確に見えるようにならなければ・・。
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例によって、アクセス数が多すぎてサーバーが一杯になってしまったから、アップは月曜日の朝ということになりました。ご容赦アレ・・。