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ヨーロッパの日本人・・今週は、素晴らしいプレーを展開した高原から・・(2003年4月6日、日曜日)

それだ!! またまた、思わず声が出てしまった。やっぱり、サッカーは入れ込んで観なければ詰まらないですからネ。

 キックオフ早々に、忠実に守備参加した高原が、ビーレフェルト右サイドバックのオーバーラップに付いてもどり、そこからの仕掛けを確実に抑えたのです。ゲームには、まず守備から入る。そのマインドこそが、次の攻撃でのイメージを増幅させるのです。高原は、どんどんと発展をつづけている。

 ビーレフェルト戦。高原は久々に先発で出場しました。ラインアップはこうです。例によってのフォーバックの前に、前気味リベロ的な役割のマルトリッツ。その前にカルドーソとバルバレス。両サイドのゾーンを攻守にわたって担当するマハダビキア(右)と高原(左)。そしてトップセンターのロメオ。もちろんそれは、イメージ的なスターティングポジション(基本的な役割のピクチャー)です。試合がはじまったら、トップのロメオを除いた前の全員が、攻守にわたって、縦横にポジションチェンジをくり返すのです。特にバルバレスの攻守にわたる貢献度は特筆ものでした。

 ハンブルク選手たちが展開したのは、まさに「ポジションなしのサッカー」という理想型へ向かうプレー。前後左右にポジションチェンジをくり返しながら、攻守の本当の目的を強烈に意識しながら「自ら」仕事を探しつづける選手たち。そのイメージリーダーがバルバレスだったというわけです。

 この試合では、ベンジャミンはベンチ(ちょいと疑問・・)。まあ、ホームということもあって、攻撃的な布陣でゲームに臨んだということなのでしょう。そして立ち上がりから、中盤でのダイナミックなディフェンスを基盤にビーレフェルトを押し込みつづけます。そこで目立ちに目立っていたのがバルバレスというわけです。そんなに上手い選手ではありませんが、攻守にわたる「実効レベル」という視点では、本当に特筆なのです。

 それに対し、天才肌のカルドーソ。やはり・・というか、ボール絡みでは優れたプレーをみせる反面、攻守にわたるボールがないところでの貢献度では、どちらかといえばブレーキというイメージの方が強い(押し込まれていた後半の17分に、守備的ハーフのヴィッキーと交代)。これだったら、ベンジャミンを先発させた方が・・なんていう印象を持っていたのですが、そこについては、チームの「本当の内情」がどうなっているのか知る由もありませんから・・。

 さて高原。冒頭で述べたように、まず守備からゲームに入っていくという姿勢がいい。もちろん「実効あるディフェンス」のことですよ。前線の選手が戻る・・でも実際のプレーはお座なり(特にボールがないところ!)・・というのでは、味方にとっては邪魔なだけの存在ですからね(次の守備イメージの描写にとってマイナス要因そのもの!)。

 高原は違います。常に、ボールを奪い返すという具体的なイメージをもって守備に参加するのです。もちろんボールがないところでのディフェンスも忠実だし、そこでのポジショニングにしても、味方が「次」を狙えるような実効プレーなのですよ。もちろん何度も、タイミングのよいスライディングで、彼自身がボールを奪い返す(相手の攻撃を断ち切る)という爽快なシーンを目撃しました。

 だからこそ攻撃でも、自信をもったリスクチャレンジが出来る。味方も、どんどんと高原にボールを回します。彼に対する味方の信頼感の高揚を感じるじゃありませんか。やはりチームメイトの信頼を勝ち取るための近道は、実効あるディフェンスしかないのです(それこそが本当の意味での自己主張!)。

 シンプルプレーとリスクチャレンジプレーが高みでバランスしはじめた高原。やっている自分が、一番楽しいに違いありません。何といっても、ボールを展開しても、走ればパスが戻されてくるのですからネ。だからこそ、次の「個の勝負所」をイメージしてコンビネーションを仕掛けていける。そんな彼のプレー姿勢が、この試合での唯一のゴールにつながります。高原は、カルドーソからバルバレスへ横パスが回った瞬間に、「よし、次にここにくる!」と確信したに違いありません。アイコンタクト。バルバレスと高原の勝負イメージがシンクロした瞬間です。そして相手を身体で抑えながら回り込み、素早いモーションから右足を振り抜きます。最後は、相手ディフェンダー、そしてGKに当たってゴールインしたのですが(記録は、相手GKのオウンゴール!)、それは、高原のゴールといっても過言ではないものでした。

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 先制ゴールの後も、バルバレスが決定的なシュートを放ったり(完璧なダイレクトシュート・・でも高原の身体に当たってしまって・・)、左サイドから持ち込んだ高原がペナルティーエリア際から決定的なシュートを見舞ったり(惜しくもGKの正面)などゲームを支配しつづけるハンブルク。ペースが良いうちに何とかもう一点取っておかなければ・・そんなことを思っていました。

 そして後半。もちろんビーレフェルトのダイナミズムが増幅したことは言うまでもありません。後期に入ってからハンブルクが喫した2敗は、いずれも降格圏内チーム(カイザースラウテルンとメンヘングラッドバッハ)。このビーレフェルトも、「降格リーグ」を闘うクラブですからネ。彼らが、しゃにむに前へ出てくるのも当然というわけです。だからこそ、ペースがよかった前半での追加ゴールが・・(コラ! タラレバは禁句だぞ!!)。

 結局、リードを守りきったハンブルク。相手に押し込まれた時間帯での前線からのチェックの遅れは、選手たちに「体感」を与えたことでしょう。「やっぱり前線からのチェックが守備のスタートラインだ・・その抑制が効かないと、次、その次と、ディフェンス組織での悪影響が増幅していってしまう・・」。

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 素晴らしい内容のプレーを展開していた高原でしたが、後半では、攻守にわたって「悔やまれる」シーンがありました。

 まず守備。後半10分のことです。カルドーソからのタテパスをイメージし、(ハンブルク側からみた)左サイドに空いたスペースへ飛び出した高原。でもそのパスが途中でカットされ、相手にわたってしまいます。この状況で、高原をマークしていたビーレフェルト右サイドバックのレンゼが、まったくフリーで上がっていく。高原との距離は、およそ10メートル。レンゼは様子見の押し上げだったから、もちろん高原は追いつく。でも高原は・・。そして中央ゾーンでの展開から、まったくフリーになっていたレンゼへバックパスが回り、そこからダイレクトで、ハンブルクゴール前のスペースへ決定的なラストクロスが送り込まれたというわけです(ビチニアレクの素晴らしいダイビングヘッド・・でもハンブルクGKピーケンハーゲンの正面へ・・ラッキー!!)。

 たしかに高原は、(直前の攻撃プレーで)マークするレンゼを「追い抜いて」決定的スペースへ飛び出そうとしていたこともありますし、相手にボールを奪い返された状況では、味方の守備ブロックも整っていました。だから、レンゼがフリーで決定的ラストクロスを送り込んだピンチを高原の責任とするのは微妙ですがネ・・。

 このシーンは、本当に興味深かったですよ。何せ、一瞬で攻守ところを変えてしまったし、高原が仕掛けた素晴らしい仕掛けのフリーランニングが、逆に「アダ」になってしまったのですからネ。最初は、高原がレンゼを振り切ってスペースへ押し上げた・・でもそのパスがカットされ相手にわたってしまったことで、最初の高原の爆発フリーランニングが、逆に、高原にとっての「アダ」になってしまった・・。

 サッカーの「錯綜したメカニズム」をかいま見た思いがしたものです。だからこそ、仕掛けのリスクチャレンジに対する「バランスのとれた意識付け」が必要なんですよ。何といっても、攻守にわたるリスクチャレンジがなければ、サッカーを発展させることなど望むべくもありませんからね。リスクチャレンジに対する意識が徹底されていなければ、結局選手たちは、常に「その次の守備」ばかりを意識し、後ろ向きのマインド(逃げのマインド)で消極的にプレーするようになってしまうということです。

 あっと・・高原のもう一つの「悔やまれるプレー」は、言うまでもなく、後半44分の追加ゴールチャンス。高原が魅せた、素晴らしい「回り込むフリーランニング」。そしてマルトリッツからの素晴らしいタイミングのタテパス。まったくフリーでボールをコントロールし(素晴らしいコントロール!)、飛び出してきた相手GKまでも抜き去って、まったくフリーでゴールへ迫る高原。誰もが「よし、2点目だ!!」と思ったその瞬間、信じられない光景が・・。左足のインサイドで「流し込んだ」はずが、10センチ、ビーレフェルトゴールを左に外れてしまったんですよ。これで(その後に)ビーレフェルトに同点ゴールを入れられようものなら、まさに「極悪人」にされてしまうところでした。いやホント、プロの世界はキビしいのですよ。

 要は、ボールのバウンドに対する意識が、最後の瞬間に希薄になっていたということです。「よし、もらった!」と安心し切っていたのでしょう。バウンドを読み違えたから(決して大きくイレギュラーしたわけではない!)、ボールに当てたところは、左足の「スネ」だったというわけです。まあこれも、素晴らしい学習機会だったと考えましょう。

 とにかく、どんどとん発展をつづける高原に、期待が高まりつづける湯浅でした。それにしても「スネ・シュート」はネ・・いただけない・・。




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