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ヨーロッパの日本人・・今週の次は、どうも不満がつのる小野伸二と中村俊輔・・(2003年4月7日、月曜日)

結局、昨夜(日曜日の深夜)はサーバーのキャパが一杯になってしまいアップできませんでした。ということで、まず小野伸二から・・。

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 どうも不満。小野伸二ですが、もっともっとできると思うのですよ。守備においても、攻撃においても・・。

 この試合は、二人退場になったフェイエノールトが、残り10分で「再逆転」したというドラマチックな展開になりました。二人足りないですからね。もう全ての局面で、個人の仕掛けのオンパレード。パスは、詰まった状況でフリーな味方へつなぐという「仕方ないから」の展開(逃げ)目的だけ。少しでもフリーでボールをもったら、どんな状況でも、とにかくドリブルやワンツーなどで仕掛けていくのです。その勢いは尋常ではありません。この試合の相手、デフラーフスハップの選手たちはその勢いに完全に呑み込まれ、足が止まり気味になるなど、心理的な悪魔のサイクルに陥っている。

 そんな状況ですからね。もう仕掛けの波に乗るしかない。小野伸二も、右サイドに開いてチャンスを狙っています。もちろん臨機応変に守備へも戻りますが、相手の押し上げの勢いがまったくないから、事前に味方のボール奪取が明確に見える。だから小野も、戻りすぎることなく、すぐに前線へ取って返すというわけです。それでも、どうもうまく決定的シーンに絡んでいけない・・というか、自ら仕掛けていく場面が出てこない。こんな状況だから、もっともっと「行け」ばいいのに・・。

 それでも、コンビネーションの中継ポイントとしては優れた感覚を披露していましたよ。二度、三度と、冷静なコントロールから決定的なパスを供給する小野伸二。まあ全員が、目の色を変えて「行こう」としていますから、そんな落ち着いたプレーが良いアクセントになっていたことは確かなのですが・・。

 とはいっても、怒濤の逆転を達成した後には見せ場を演出します。右サイドのタッチライン際で、高いテクニックに裏打ちされた時間かせぎのボールキープ。あまりにも細かく正確なボールタッチだから、マークする相手も簡単にはアタックできない。見所満載でしたよ。カメラマンも、小野がボールをもったら迷わず「寄って(ズームして)」いきましたしネ。

 さて、小野伸二に対するゲーム全体を通した評価ですが、それは、例によって、攻守にわたる安定プレーを展開していた・・ということですかね。相手ボールホルダーへの(次のパスレシーバーへの)忠実で素早いチェックだけではなく、ボールのないところで走り抜けようとする相手へのマークをつづけ、味方最終ラインを追い越したりもします。もちろん、常に後方の人数をしっかりと確認しながらね。マークのスタートも確実な予測をベースにしていますから、置いていかれるシーンも少ない。そしてボールをもったら、いつもの安定したコントロールから正確な展開パスを回す。

 それでも、ここでボールを奪い返したら決定的なカウンターを仕掛けられるという場面でボールを奪い返すシーンが少ない。ここぞ!の場面での爆発スライディングや身体を張った競り合いも見られない。アタックにチャレンジするときの「寄せ」のタイミングがまだ甘いということか・・。

 また攻撃でも、パスのディストリビューター(分配役)としては特筆のプレーを魅せるのですが、どうも決定的な仕掛けの流れに絡めないし、ドリブルやワンツーなどで自らが勝負所へ突っかけていくという場面もほとんどない。

 攻守にわたり、休むことなく積極的に仕事を探し、それをソツなくこなしてはいるのだけれど、攻撃でも守備でも、決定的なシーンでの成果(実効)が少ない・・なんていう不満が残るのです。そう、先日のウルグアイ戦のようにネ・・。

 監督からの基本ポジション(基本的な役割)に対する指示がある?! もちろんそれは分かっています。それでも、実際に攻め上がっていけるチャンスは多いのだから、自らが起点になったワンツーとかドリブル突破、はたまた相手の意識と視線をフリーズさせてしまうようなタメからのスルーバスとか、もっともっと決定的な仕事にチャレンジして欲しいと思うのですよ。

 高みで安定したプレーをつづけている小野伸二。後はもう、彼の意志が問われるのみ。これからの「もう一段のブレイク」に期待しましょう。

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 さて中村俊輔。彼については、すごく不満です。このゲームでのプレーは、まさに日本代表対ウルグアイ戦そのまま。中村は、自分が描く「綺麗なサッカーに対するイメージ」に囚われすぎている?!

 レッジーナの相手は、「降格リーグ」の直接ライバルであるエンポリ・・・リードされているレッジーナとの勝ち点差は「2」・・・それもレッジーナのホーム・・・それに、キエーボやパルマ、ローマなど、これからまだ強敵との対戦が控えている・・・だからこの試合は絶対に勝たなければならない・・・。

 そんな状況でのエンポリ戦だから、レッジーナが、立ち上がりから、まるで「二人足りないだけではなく、リードまでされていたフェイエノールト」のような勢いで攻め込んでいくのも当然です。もちろん中盤での迫力ディフェンスをベースにして・・。

 攻撃陣は、ボールをもったらとにかく仕掛けていく。ドリブルで突っかけていく。チャンスがあればどんどんシュートを打っていく。猪突猛進?! まあ彼らが置かれた状況を考えれば仕方ないでしょう。これでスマートにボールを動かしながら守備ブロックのウラを突く・・なんてことをイメージしながらプレーしたら、逆に勢いを殺がれてしまうに違いない・・。

 そんなプレーテンポですから、自己主張プレーがまだまだ甘い中村俊輔が、流れから「置いてきぼり」にされてしまうのも無理はない?! 動いてはいるのですが、意志を込めた爆発ダッシュはほとんどなく、例によっての「ジョギング」をつづけるばかりなのです。そんな動きのリズムだったら、前を向いてボールを持ったり、自らが「仕掛けの流れのコア」になれるはずがない。

 まあ、チームメイトが仕掛けつづけているなかで、次の守備と、後方からのボール供給をイメージしているということなのでしょうが、それでは取り残されてしまうばかり。何といっても相手は守りに入っているのですからネ。どんどん上がって仕掛けに参加し、ボールを奪われたら全力で戻ればいいんですよ。それこそが本物の「運動量」なのです。

 もちろんボールを持ったら、ほれぼれするプレーも魅せる中村。それでも、パスを出した後の爆発ダッシュがないから、次の仕掛けシーンに絡んでいけない・・、自分がコアになったコンビネーションを仕掛けるのもままならない。何度かは、ドリブルで突っかけていったり、勝負ゾーンでのキープから勝負パス(クロス)を送り込んだりはしましたが・・。

 結局、決定的な仕事ができたのはセットプレーばかり・・ということで途中交代になってしまいます。まあ、中村のPKが決まり、これから相手の怒濤の勢いを受け止めなければならないという展開ですから仕方ない。何せ、彼がミッドフィールドにいたら、中盤ディフェンスのダイナミズム(パフォーマンス)は確実に低下してしまいますからね。

 まあ、自分の出来については、中村自身が一番よく感じていることでしょう。よい体勢で(よいポジションで)ボールを持つことがままならなかった・・決定的な仕掛けの演出もうまくいかなかった・・はたまた、うまくボールを奪い返せなかったし、「次」で仲間がボールを奪えるような効果的なプレスもかけられなかった・・等々?!

 とにかく中村は、足許パスを受けるポジショニングばかりではなく、メリハリをつけた爆発ダッシュもミックスしていくことで(勝負ゾーンのスペースへ飛び出していくことで)、もっともっと仕掛けの流れに絡んでいけるようにならなければ(自ら勝負の仕掛けを演出できるようにならなければ)いけません。

 中村俊輔の「本物のブレイクスルー」は、いつのことになるのだろう・・。




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