トピックス


レッジーナのサバイバル勝負マッチ(プレーオフ)・・まず今シーズンの中田英寿と中村俊輔について・・そして、オメデトウ、レッジーナ!(アタランタ対レッジーナ・・1-2)・・(2003年6月3日、火曜日)

いや、ビックリしましたよ。何せ、あんなに大きな「ヒョウ」がグラウンド上に積もったんですからネ。選手を先導してキャビンから出ようとしていた天才レフェリー、コッリーナさんの表情も、驚きを通り越してした・・。そして、キックオフを心待ちにしていた私には疲労感ばかりが残ってしまう・・。

 ホームでの第一戦。何度か決定的チャンスを作り出したレッジーナでしたが、結局は引き分けてしまいます。それも、相手が一人退場になったにもかかわらず・・。また途中交代した中村俊輔も、セットプレー以外で守備的ハーフの位置から上がることなく、例によってパッシブな(受け身で消極的・・そこにいるだけの)「バランサー」に終始してしまって・・。

 そんな、ちょいと落胆させられた第一戦でしたから、全ての勝負ファクターが集約される本物の勝負になるに違いない第二戦に対する期待が高まっていたのですよ。ところが・・ってなことになってしまったというわけです。もちろん翌日に延期された第二戦は、最後までしっかりとライブで観戦しましたけれどね・・。

 でもまずは、今シーズンの中田英寿と中村俊輔へのショートコメントから・・。

------------------

 数日前に、週刊プレイボーイからインタビューを受けました。テーマは、今シーズンの中田英寿と中村俊輔。質問は、「今シーズンの彼らは、イタリアの戦術サッカーに合わなかったというか・・その犠牲になったのでは・・」という切り出しです。まあ・・突き詰めれば、そういうことになるのかもしれません。

 それでも、二人の「内容」は大きく違う。たしかに中田英寿は、チーム戦術の犠牲になったと言えそうですが、中村俊輔は、比較的大きな自由度を与えられていたわけですから・・。

 パルマのプランデッリ監督は、攻撃では、ムトゥーとアドリアーノの「個の才能」に賭けた。両サイドの中田英寿とフィリッピーニは、与えられた基本ポジションをベースに(その基本プレーゾーンをできる限り離れずに!)、ツートップが「個の勝負」を仕掛けやすいようにサポートするというイメージというわけです。もちろん両サイドの二人は、タッチライン際ゾーンでのディフェンスの役割も与えられています。プランデッリは、ボールを動かす組織的な仕掛け(コンビネーションベースの仕掛け)をあまりイメージしていなかったということです。そこにこそ、中田英寿の才能が活かされるのに・・。

 もうこれは、何度も書いたことですが、私は(もちろん中田英寿自身も?!)、ムトゥーとアドリアーノで組むツートップの後方(二列目)センターに中田英寿を据え、彼に、攻守にわたって限りない自由度を与えることがチームにとって最良の選択だと思っていました。中田英寿の「実効ある守備意識」は一流ですからね。だからこそ、そのポジションでプレーすることで、確実に、攻守にわたってより以上のダイナミズムをチームに注入できるだけのチカラ(戦術的発想)を備えていると思うのですよ。それでも、プランデッリの考え方は違った。もちろん結果が出ていたし、ムトゥーとアドリアーノの才能はレベルを超えていますからね・・。だから、今シーズンの中田英寿は、チーム戦術の犠牲になった(彼の才能が、存分に発揮できなかった・・)。まあ、仕方ない。

 それに対し中村俊輔。彼は、より以上の自由度を与えられていたのに・・。もちろん、守備的ハーフとしてバランスをとれ・・とか、ツータッチ以上ボールを持ちすぎるな・・といった指示はあったようですが、あくまでもそれは「指針」に過ぎませんからね。彼が「その指示を超えるプレー」をやりさえすれば、監督は何も言えない。それなのに・・というわけです。

 中田英寿は、限定されたチーム戦術のなかでも、攻守にわたる全力プレー(リスクチャレンジプレー)をくり返しながら、「戦術を超えたプレー」を志向しつづけていた。ラストパスやシュートをイメージした単独ドリブル勝負だけではなく、アドリアーノがパスを出さないと分かっていながらも、ボールがないところでしっかりと決定的なフリーランニングを仕掛けるし、ムトゥーやアドリアーノを「壁」にしたパス&ムーブを仕掛けていったりする(たぶん、ツーのパスは戻されてこないと分かっていながら・・)。そう、より良いプレーを目指して・・。そんな自分主体の積極プレー姿勢があるからこそ、チームメイトたちも彼のプレーを高く評価し、信頼する・・。まあ、シーズン最後の頃は、ちょっとペースは落ちましたがね。

 それに対し中村俊輔は、結局は「前提でしかない」チーム戦術に呑み込まれてしまった・・。彼に与えられた指示を、自分主体で超えていこうとするプレー姿勢がほとんど見られなかったということです。そして運動量が落ち、チーム戦術通りのポジションに張り付くばかりでボールタッチの回数も目立って落ちていく・・。これでは、彼の才能を発揮できないのも道理。

 彼ほどの才能の持ち主なのだから、もっと走り回ってボールに触りさえすれば、格段のプレーパフォーマンスを発揮できたはずなのに・・。それが、以前のような「止まってパスを待つ」姿勢ばかりが目立ってしまって・・。

 また守備でも、ボール絡みのゾーンに引き寄せられ過ぎで、ボールのないところでの守備が甘い、甘い。それに、ボール絡みの守備でも、安易なアタックを仕掛けてしまうことで簡単にかわされて置き去りにされるシーンが目立つ。偶発的なシーンではなく、意図したアタックで彼がボールを奪い返したシーンは、本当に希だったのです。また、ボールがないところでのディフェンス(これこそが実効ある守備意識を証明するプレー!)に忠実さが欠けていることで、仲間の信頼を失ったことも大きい。そんなことも、(止まってパスを待つ)彼にボールが集まらなくなったことの大きな要因だったと思う湯浅なのです。

 第二戦での中村俊輔は、結局最後まで、ウォームアップをすることさえありませんでした。まあ、仕方ない・・。とにかく早く、以前の良いプレーイメージを思い出して欲しいものです。

----------------

 あっと・・試合ですが、(見方によっては)とても興味深い内容になりましたよ。

 ハードな潰し合い(ファールも辞さないタックルの応酬)になるかと思っていたら、互いに、極力ファールを犯さず、慎重にという注意深いディフェンスから(まず守備組織をカチッと固め、それを極力維持することをベースに)、タテへの勝負ロングパスや、局面でのドリブル勝負を主体にして、人数をかけずに仕掛けていくという、「落ち着いた」展開になったのです。

 そんなフェアなゲーム展開の背景には、主審がコッリーナさんだということもあったに違いない・・。こんなギリギリの勝負だから、不用意なファールを犯した方が負ける(イエローを受けたら肝心なところで思い切り守備ができない・・また心理・精神的にも追い込まれてしまう)・・何といっても主審はコッリーナだから、毅然とイエローを出すに違いないだろうから・・とにかく慎重に、守備組織を崩さずに相手攻撃に対処しよう・・ってな具合だったと思うのです。コッリーナさんの「にらみ」が効いていること・・。

 両チームの攻撃イメージはこんな具合だったでしょうかネ。

 組織的な「ボールの動き」は、あくまでも後方での組み立て段階だけ・・そして、何らかのタテパスを合図に、ドリブル勝負からのシュートやラストパス、クロスボールで勝負を仕掛けていく・・前後の「人数&ポジショニングバランス」を強く意識し、決して人数をかけ過ぎることなく、タテパスからの「個の勝負」を中心に攻める両チーム・・人数をかけた攻撃を仕掛けるのは、相手チームが全体的に戻った場合だけ・・もちろん、セットプレーでは全神経を集中した勝負を仕掛けていく・・等々。

 こんな展開ですから、カウンターシーンはほどんど出てきません。何せ、両チームともに常に守備ブロックの組織が整っているんですからね。それでも、選手たちが不必要なファールをしないようにと心がけているから、普段だったら「力ずく」で潰されてしまう(?!)個の仕掛けが、殊の外チャンスの芽になるんですよ。もちろん「偶発的なチャンス」がほとんどですがネ。だから、全体的な印象は「動きのある展開」と感じられる?! とにかく、「コッリーナ主審」という存在の大きさを再認識していた湯浅だったのです。

 さて、ゲーム展開です。

 まず前半18分、セットプレーからアタランタが先制(この時点ではアタランタが残留!)・・その後、前半33分に、レッジーナのコッツァが、強引なドリブルから、飛び出してきたGKの身体に当てながらもゴールマウスへ押し込むという粘りの同点シュートを決める(このままだったら、アウェゴール二倍のルールがあるからレッジーナが残留!)・・後半に入り、「落ち着いた攻め」からアタランタが二点目を奪いにいく・・もちろん、できる限り守備組織を崩さないような慎重な仕掛け・・そして中央突破からの偶発的なシュート(ゴール前5メートルからの決定的シュート!)や、クロスからの(集中が途切れてきたレッジーナ守備の、球だしポイントへのプレスが甘くなっている!)決定的なヘディングシュートを浴びたりする・・一点さえ奪えば残留というアタランタの攻勢が激しくなり、レッジーナベンチの震えの振幅が大きくなっていった時間帯・・ただ後半40分、守備ブロックを「開いて」攻め上がるアタランタの逆を突いたレッジーナが見事なカウンターを仕掛け(数少なかったカウンターシーンの一つ)、最後はボナッツォーリが、左足一閃(ペナルティーエリア外の中央からシュートされたボールは、見事にアタランタゴールの右隅へ飛び込んでいく)・・これで勝負あり・・オメデトウ、レッジーナ・・ってな具合。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]