「ワウワウ」が、金曜日の夜中に録画放送したのです。見たかったゲームですから、嬉しかったですよ。そして欧米のメディア論調の通り、ものすごくエキサイティングなゲームでした。結果は「1-1」だったのですが、前半の早い段階で両チームともに一点ずつを入れてからが、見所満載だったのです。
守備を固めてカウンターチャンスを狙うアヤックス。それに対し、随所に「個の勝負」を入れながら、あくまでも組織的に攻め上がるアーセナル。
その攻めには、流石アーセナルと、うならせるモノがあります。クリエイティビティー(創造性)というパワーが秘められた攻撃。ビエラとジウベルト・シルバが展開する、堅実な中盤ディフェンスを基盤にしたゲームメイク。ピレスとベルカンプが展開する魅惑的なチャンスメイク。そしてアンリとヴィルトールの怒濤の最終勝負。
対するアヤックス守備ブロックも、「天才」キブーを中心に、チェックやチェイシングなどのプレスと、「次、その次」に対する鋭いディフェンス勝負が高質なバランスを魅せます。ボールがないところでの忠実なディフェンスアクションがあるからこそ、次の読み勝負が効力を発揮する。見所満載じゃありませんか。
まあ、普通のチームだったら、あれほど組織的でクリエイティブな守備ブロックを相手にしたら、徐々に前へのパワーが殺がれてしまい、結局は「足許パス」のオンパレードになってしまうもの。でもそこはアーセナル。まあ、強化ディフェンスに対するゲームに慣れているということもあるのでしょうが、やはり「仕掛け」のコンテンツが違う。要は、仕掛けプロセスに入ったところで、「最前線と後方とのタテのポジションチェンジ(二列目、三列目のタテへの飛び出し)」がタイミング良く飛び出すということです。
ピレスが、アンリの足許にタテパスを「付ける」。もちろんピレスは、次の瞬間にはダッシュをスタートしている。アンリは、横にいるベルカンプへ、ダイレクトでシンプルパスをつなぎ、そこから、これまたダイレクトで、走り上がるピレスへ勝負パスが出される・・。またこんなシーンもありました。後方からロングフィードが出された瞬間。ピレスが、左サイドから、右サイドの決定的スペース目がけて「斜め」に超速ダッシュをスタートする。イメージするのは、もちろん、ヘディングでの「落とし」。そしてイメージ通りに落とされたボールを拾い、そのまま右サイドへ持ち込んでシュート! ミスキックになってしまいましたが、前後のポジションチェンジと組織パスプレーをベースに作り出す決定的なカタチに舌鼓を打っていた湯浅だったのです。
たしかにアヤックスの闘いは素晴らしいものでした。守りに偏るばかりではなく、たまに繰り出すカウンター気味の攻撃も、ズルタン・イブラヒモビッチをコアに、危険なニオイを放ちつづけていましたからね。攻守の流れが、一方に偏りすぎていなかったという意味でも、特筆のゲーム内容でした。
この「前段リポート」で私が言いたかったことは、強化守備に穴を空けるためにもっとも効果的な手段は、何といっても「タテのポジションチェンジ」だということでした。それも、最後の仕掛けコンビネーションでの、急激なスピードアップをベースにした二列目、三列目の飛び出し。それこそが、もっとも効果的な「攻撃の変化」だということです。
それがなければ、決して相手守備ブロックを「不安定な状態」に陥れることはできない。そう、アントラーズ対城南での、城南が展開した攻撃のようにネ。
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このゲームの構図は、最初から予測されたものでした。ある程度の点差で勝たなければならない城南が攻め上がり、しっかりと守りながらカウンターチャンスを狙うアントラーズ・・。
そして試合は、まさにそんな展開になります。それでも、「あの」城南の攻めでは、アントラーズ守備ブロックは、サーシャとキム・ドフンのアタマ以外、あまり不安は感じなかったでしょう。何といっても、次の仕掛けが明確に「見える」のですからね。
キム・デイ、キム・ドフン、サーシャ、デニス。基本的にこの四人「だけ」で仕掛けていく城南。もちろん二人がトップで、その後ろに二人がポジショニングするという、2-2フォーメーションですが(入れ替わりもある)、その「間」にプレーイメージの相関関係はほとんどない。だから、激しいポジションチェンジをくり返すコンビネーションもほとんど出てこない。もちろん後方の味方が「追い越しフリーランニング」を仕掛けるなんていうシーンは皆無なのです。
単発ドリブル、放り込みに近いアーリークロス、そしてフリーキック。チャンスらしい雰囲気をかもし出せるツールがそれしかない城南。アントラーズ守備ブロックが余裕をもってプレーできるはずです。もちろん放り込みやセットプレーでは、サーシャのアタマという絶対的な武器はあるから緊張はするでしょうがネ。この試合での決定的チャンスは、まさにサーシャのアタマ。フリーキックからの一本と、流れの中でのクロスから一本くらいですかね、大きなチャンスになったのは。それ以外は、まさに「ごり押し攻撃」のオンパレードでした。
もちろんそんな単発攻撃でも失点につながることはあるわけで、その意味ではアントラーズがラッキーだったと言えないこともありません。偶然と必然が交錯するサッカーですからね。ここで私が言いたかったことは、城南が、「必然ファクター先行のシュートチャンス」を作り出すことができなかったという事実。「戦術的発想レベル」の視点では、城南の攻めは、あまりに芸がなかったということです。
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さて、「A3」で初代チャンピオンになったアントラーズ。
出来は決して褒められたものではありませんでした。皆さんがご覧になったとおりにネ。まあ彼らにとっては、ゲームプラン通りということなのでしょうが、ある程度安定していた守備に対し、あまりに攻撃が貧弱だったのです。しっかり守ってカウンターを仕掛けていくという明確なゲーム戦術があったにもかかわらず・・。私の目には、平瀬とフェルナンドの「ブレーキ」が効きすぎていたと映るのですが・・。
フェルナンドですが、前回のレポートでネガティブなコメントを書いたこともあって、この試合では、彼にかなり注目していしまた。そして、攻守にわたるプレーレベルの低さに、落胆の溜息をついていました。要は、攻守にわたって、勝負所に絡んでいくという明確な意志を感じないということです。もちろん部分的には、ダイレクトでの素晴らしいパスを出したり、競り合いでも、そこそこのボールを奪うテクニックは感じさせてくれました(フリーキックシーンがあったらもっと良かったのに・・)。それでも、全体的なパフォーマンスでは、まさにチームのブレーキだったと言わざるを得ません。単に「そこにいるだけ」の選手、要は「勘違いされたバランサー」という印象が残ったのです。不満です。
まだアントラーズのサッカーに慣れていない?! いやいや、私が言っているのは、基本的なプレー姿勢(自身のプレーに対する意志とかプレーイメージ)のことですからね・・。たしかにある程度のキャパシティーは感じますが、プレー姿勢があれでは、持てる能力を最大限に表現できるはずがない。いまこの時点では、彼が「第二のベベト」にならないことを心から願っている湯浅なのです。
それに対して中田浩二と守備的ハーフのコンビを組んだ青木。素晴らしかったですよ。もちろん中田浩二のパフォーマンスも、例によって高みで安定しています。だからこそ、アントラーズ最終ラインが安定していたというわけです。
それにしても青木。忠実なポジショニングとチェック&チェイス、読みベースのアタック&インターセプト、ボールを奪い返す技術、攻撃での実効あるシンプルプレーや、たまに魅せるドリブル&タメなどのリスクチャレンジプレー。ハイレベルです。これからの彼の発展が楽しみになってきました。
守備ブロックが強い質実剛健サッカーとはいっても、ちょいと全体的なパフォーマンスは落ち気味だと感じられるアントラーズ。リーグ開幕までに、どこまで持ち直せるのかについても注目しましょう。
最後に、「A3」の初代チャンピオン。おめでとう、アントラーズ!!
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さて、大連にも負けたことで(0-1)「A3トーナメント」の最下位になってしまったジュビロ。この試合では、名波、服部、中山が戻ってきました。それでも、何かボールの動きが小さく、またリズムが遅いと感じます。
たしかに、前線への、早いタイミングで放たれる、鋭く、正確なグラウンダータテパスという仕掛けのスタート(横ばかりではなく、タイミング良くタテへのボールの動きもミックスする=ジュビロのボールの動きがハイレベルだということの象徴!)は健在なのですが、どうもそれが、ボールがないところでの動き(三人目、四人目の動き)と連鎖しない。また、最前線選手たちの、決定的スペースに対する意志もちょっと希薄だから、どうしても、最前線に動きの変化が出てこない。
それには、大連ディフェンスの出来が良かったこともあります。たぶん彼らは、ジュビロのサッカーをしっかりとスタディーしてきたのでしょう。城南のようにネ。
ボールホルダー(次のパスレシーバー)へ「行きすぎず」、周りの選手たちが常にボールがないところでのジュビロ選手たちの動きを意識している(次のパスに対する明確なイメージ!)と感じます。そこが、ジュビロの攻撃でのキモになりますからね。そこを次々と抑えられてしまうジュビロ選手たちの動きも、徐々に緩慢になっていく・・。
まあこの時期ですから・・。3月1日のスーパーカップ(ジュビロ対パープルサンガ)に注目しましょう。短いですが、今日はこんなところで・・。