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ヨーロッパの日本人・・ちょいとハンブルクが、シーズン立ち上がりの段階で厳しい状況に追い込まれてしまった・・ブンデスリーガ第三節、ヴォルフスブルク対ハンブルク(5-1)・・(2003年8月18日、月曜日)

ありゃりゃ・・。まあサッカーでは、内容と結果が一致しないことはよくある現象だから仕方ないけれど、それにしても5点は取られ過ぎだな・・。

 高原直泰のハンブルガーSVが、アウェーでのヴォルフスブルク戦で「5-1」という大敗を喫してしまったのです。これで、開幕から1分け2敗の勝ち点1という体たらく(ハノーファー戦0-3、ボーフム戦1-1、そしてこの試合)。次は、ホームとはいえ、相手はバイエルン・ミュンヘンですし、その次は、復活著しい強豪のレーバークーゼンとのアウェー戦ですからね。とにかく、ここからの強豪との二試合がシーズン最初の正念場ということになってしまいました。

 「開幕してからの5試合が大きな山場なんだよ。とにかくそこを何とか良い星で抜けることが出来れば・・。そのためにも、開幕からの三戦で結果を出しておかなければならないんだよ。なんといってもそれにつづくのがバイエルンとレーバークーゼンだからな・・」。開幕前に話したハンブルガーSVのコーチ、アルミン・ロイタースハーンがそう言っていました。それが、ここまでは最悪の「数字的な結果」になってしまって・・。

 「数字的な結果」という表現を用いたのは、決して、ハンブルクのゲーム内容自体が悪いわけではないからです。安定した守備ブロックはそのままに、攻撃でも、しっかりとボールを動かす組織プレーを基調に、ダイナミックな仕掛けをつづけている・・。とはいっても、ゴール前へ送り込まれるパスの割りには(その回数と質の割りには)、それがシュートにつながらないという統計結果が出ているとか・・。ナルホド、良いクロスやラストパスが出る割りには、シュートシーンにつながらない・・シュートが決まらない・・というわけか。そんなネガティブ現象の要因を担うのが、ロメオというわけです。開幕からの2戦で、何度彼が決定的なカタチを決め切れなかったか・・。

 ということでクルト・ヤーラ監督は、この試合では、もう一つの可能性を探るための決断を下すことになります。前節のボーフム戦では、カルドーソを先発から外し、バルバレスに二列目を任せました(好調の高原は先発フル出場・・内容も良かったし、今期初ゴールも決めた!)。そしてこの試合では、「決め切れない症候群」に陥った感のあるロメオまで外したのです。

 高原直泰、バルバレス、マハダビキアのスリートップ。その後ろに、守備意識が高く、ゲームメイクセンスにも長けたバインリッヒを置くという布陣。もちろんバルバレスは前後左右に動きまわりますから、実際には、高原とマハダビキアのツートップの間隙をぬって、バルバレスとバインリッヒ、はたまた後方からの「三人目」が、相手の虚を突いて抜け出してくる変幻自在の「組織的な仕掛け」とも言えそうです。

 その基本布陣が、うまく機能します。試合開始早々から、内容的にヴォルフスブルクを凌駕する雰囲気をかもし出すのですよ。特に、バルバレスとバインリッヒのコンビがいい。この二人ともに、素晴らしく高質な守備意識を備えていますからネ(元々バインリッヒは中盤の底を任されるタイプ)。そして15分には、バルバレスから、中央を抜け出した高原直泰へ、ベストタイミングとコースのラストスルーパスが決まります。完璧にフリーでダイレクトシュートを放つ高原。でも、飛び出した相手GKを外したシュートは、無情にも、ヴォルフスブルクゴールの右ポストを僅かに外れてしまう・・。これがケチの付きはじめだったのかも・・。

 その後も、素早く広いボールの動きをベースにした組織的な攻めが冴えるハンブルク。そんなスムーズな攻撃の流れのなかで、守備的ハーフのヴィッキーやマルトリッツ、はたまた最終ラインのウイファルジなど、後方からのタイミング良い飛び出しも冴えます(タテのポジションチェンジ・・守備意識の高いバインリッヒとバルバレスがいるからこその、後ろ髪を引かれない飛び出し!)。

 それでも、ヴォルフスブルクの最終ラインを崩し切るところまでいけないハンブルク・・。逆に、今期、ヴォルフスブルクが買い入れた何人かの「個の才能」をベースにしたカウンターを決められそうになってしまう・・。そんな展開を見ていて、「あっ、ハンブルクにとって厳しいゲームになる・・」なんて感じていましたよ。何せ、ヴォルフスブルク新戦力の「個の能力」は、本当にレベルを超えていますからネ。アルゼンチンコンビ、クリモヴィッツ(190センチのストライカー)とダレッサンドロ(才能あふれるチャンスメイカー)。そこに、ブルガリア代表の超特急、ペトロフも効果的に絡んでいく・・。

 ヴォルフスブルクの守備ブロックは、この三人による個の才能ベースのカウンターに賭けていたのかも・・。だから自分たちは、ガチガチに守るというイメージを主体にしている・・。そしてそんなヴォルフスブルクのゲーム戦術が、まさにツボにはまってしまうのです。

 それでも先制ゴールはハンブルクでした。後半開始早々の3分。右サイドでボールをもったヴィッキーからの素早いクロスにバルバレスが鋭く反応し、ニアポストスペースで、走り込みながらヘディング一閃という素晴らしいゴール。その直前にも、バルバレスとバインリッヒのクレバーなパス交換から、最後はマハダビキアがフリーでシュートするという、相手守備ブロックを完全に振り回した決定的チャンスもありました。

 そんなクリエイティブなシーンや先制ゴールを見ながら、よしよし・・なんて思ったものです。高原も、良いプレーをつづけていましたしネ。彼が本格的にブレイクするためには、何といってもチームの出来が基盤です。言い換えれば、チームがうまく機能しなければ、高原のブレイクもあり得ない・・。やはり高原は、優れた組織プレーがあってはじめて花開くタイプのストライカーということです。

 でもその後は、ヴォルフスブルクによる「個の才能ベースの仕掛け」の嵐・・ってな展開になってしまいます。ハンブルク先制の2分後には、ペトロフのドリブル突破からのクロスを、ニアサイドへ爆発フリーランニングで詰めたクリモヴィッツがダイレクトで決めて同点ゴール。その10分後には、右サイドを抜け出したペトロフの「超特急ドリブル&シュート」で二点目(完璧なカウンター!)。またその10分後には、ダレッサンドロからのスーパースルーパスに抜け出したミュラーが三点目。その5分後には、カウンターから抜け出したダレッサンドロが、「これぞ才能!」というドリブルシュートを決め、最後はCKからのペトロフの中距離キャノンシュートからのこぼれ球を、これまたクリモヴィッツがヘディングで決めてしまう・・。

 どうですか・・、ここでヴォルフスブルクの五点に絡んだ選手の名前を見直してみてください。いかに彼らの補強が成功しているか・・いかに彼らの仕掛けが「個の才能ベース」かというのがよく分かります。だから、ツボにはまれば爆発するけれど、長いスパンでは相手に抑えられてしまうというシーズン展開が見えてくる・・それでも観る方にとっては、それはそれは魅力的サッカーだけれど・・。それにしても、そんな「才能のツボ爆発」による爆風をもろに食らってしまった(それまで効いていた「才能を抑制するディフェンス」が、ちょっとルーズになった)ハンブルクは、ツキにも見放されてしまった・・。

 全体的な内容は良かったから、なおさら、ちょっとした「才能抑制ディフェンスの乱れ」が悔やまれる。それでもハンブルクが、「個の才能レベル」では、強豪クラブ(または強力なスポンサーをバックに持つクラブ=ヴォルフスブルクのバックは、あのフォルクスワーゲン!!)のなかでは見劣りするという事実を再認識させられてしまったことも事実です。まあ、攻守にわたって「組織(戦術的インテリジェンス)で闘うハンブルク」だからこそのシンパシーはあるわけですが・・。

 この試合での高原は、結局「組織プレーに埋没」してしまったという印象になってしまいました。局面では、自信あふれる良いプレーはするし、シュートシーンにも何度か絡んではいましたが、どうも決定的アクションという(最終勝負の)仕掛けでは・・。

 とはいっても、彼が「良いブレイク方向」にあることだけは確かな事実。そのベクトルが、より加速できるように、チームの更なるペースアップが望まれるわけですが・・。とにかくハンブルクにとっては、次のバイエルン戦がキモです。

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 ちょいと、タイミング的にうまく噛み合わなかったので、活躍したらしい稲本潤一のレポートが遅れ気味。今日中には、レッズの短評も含めてアップする予定ですので・・。




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