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ブンデスリーガ開幕・・ハンブルガーSV対ハノーファー96(0-3)&シャルケ04対ボルシア・ドルトムント(2-2)・・(2003年8月4日、月曜日)

さて、ブンデスリーガの2003-2004年シーズンが開幕しました。初戦については、「WOWOW」で放送された、ハンブルガーSV対ハノーファー96、そしてルールダービー(ルール工業地帯の永遠のライバル戦)シャルケ04対ボルシア・ドルトムント戦を簡単にレポートすることにします(対戦ペアで最初のクラブが常にホームチーム!)。では、「数字的」には完敗ということになってしまった高原直泰のハンブルグ対ハノーファーのゲームから。

 全体的なゲームの流れは、こんな感じでしたかね・・。

 立ち上がり、ビックリするほどの勢いでハンブルクを押し込んでいくハノーファー・・ボールを奪い返してからの素早く広いボールの動き(ハイレベルな組織プレーイメージ)だけではなく、ハンブルクにボールを奪い返されてからのディフェンスの正確な組織作りは、まさにトレーニングの賜といったところ・・そして、レーバークーゼンから出戻ったシマックの素晴らしいボールコントロール&シュートから、ハンブルクGKピーケンハーゲンがこぼしたところを、抜群の勢いでゴール前へ詰めたシュタイネルがピシャリと決め、ハノーファーが先制ゴールを挙げる(ハノーファーでは、シマック、シュタイネルというチェコ代表コンビの活躍が目立ちに目立つ!)・・その後は、ハンブルクも押し返すけれど、どうも勢いが乗らない・・逆に、左サイドのカメルーン代表イドリッソーを中心にした鋭いカウンターを浴びてしまう・・前半は、まったくいいところのないハンブルク・・ただ、カルドーソと代わって高原直泰が登場した後半は(高原は後半の立ち上がりから登場!)、ガラッとペースがハンブルクに傾いていく・・たしかに前半も、先制ゴールを奪われた後のハンブルクはゲームを支配していたが、ハノーファーのクレバーに組織された守備ブロックをまったく崩せていなかった・・それに対し高原の入った後半は、決定的スペースをうまく活用した決定的チャンスを何度も作り出す・・フィニッシャーは、ロメオ・・それでも、少なくとも3回はあった決定的チャンスも(そのうちの二度は高原が起点!)結局は決めきれず(高原にも、決定的チャンスや、明らかにPKというファールを受けたシーンもあった!)、逆に、ハノーファーの鋭いカウンターをつづけざまに2発も決められて(76分にララのラストパスからブルダリッチ、79分には、シュタイネルのラストパスをイドリッソー!)万事休す・・結局ハンブルクの開幕戦は、ホームであるにもかかわらずの「0-3」というスキャンダラスな大敗に終わってしまった・・という次第。全体的な出来は悪くはなかったのですがネ・・まあ仕方ない。

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 この試合では、例によって、ハノーファーの「ハイレベルなチーム戦術」が光に光っていました。全員の戦術イメージが、攻守にわたって、見事な「有機連鎖」を魅せていたということです。

 一つひとつの現象を表現したらキリがないわけですが、例えばディフェンスでは、互いのバランスが崩れない「組織ポジショニング」からの集散をくり返すことで、タイミングのよいプレッシャーをかける・・最終ラインと中盤ラインは、あくまでも「ラインコントロール」を基調としながらも、勝負所となったら素早く「ライン・ブレイク」を魅せる(それが効果的な集散!)・・組織からブレイク勝負(勝負のマンマークへ!)、そしてまたライン組織の構築・・その繰り返しが、まさに流れるように実行される・・というわけです。観ていて、本当にほれぼれさせられる。特に前半のディフェンスが秀逸でした。

 もちろんその組織ディフェンスは、「次の蜂の一刺し」の準備でもあります。ハノーファーが繰り出す、ボールを奪い返してからの「一刺しカウンター」の効果的なこと。もちろんそれは、ここぞ!の(ボールがないところでの)全力ダッシュ・フリーランニングが上手く連動するからに他なりません。

 ところで、ハノーファー監督の「ラルフ・ラングニック」。ここでも、昨シーズンにスポナビでアップした文章に再びリンクしておきます。ここで何故ラルフを採り上げるかというと、つい先週(2003年7月27日から4日間)、ドイツのフライブルクで行われた2003年度サッカーコーチ国際会議において、ラルフが、非常にインプレッシブな実践的トレーニングのデモンストレーションをやったからです。シーズン開幕直前の忙しい時間をぬってフライブルクまで馳せ参じ、猛暑のなか、1時間半のトレーニングデモンストレーションをこなしたラルフ。そんな彼の「熱い姿勢」に、800人を越える参加者から万雷の拍手がおくられたことは言うまでもありません。

 彼のデモンストレーションのテーマは、「シンプルプレーを基調にしたボールポゼッション」。まあ直訳ですが、とにかく簡単にボールを動かすことでしっかりとボールをキープし、相手守備の薄い部分を突いていくというイメージを植え付けるためのトレーニングとでも表現しましょうかネ。攻撃側を数的に有利にしたり、両サイドに「壁になるフリーマン」を置いたり、はたまた40メートル間隔で二つのゴールを向かい合わせて置いたシュートゲームをやったりと、なかなかのアイデアマンぶりです。

 私は、そのトレーニングのなかに、まったく別な視点のキーワードを見出していました。それは、自チームが攻撃している状況での、次のディフェンスイメージの構築。

 まったく同じ形式のトレーニングにおいて、まったく違ったテーマを設定することもできるということです。シンプルにボールを動かしながら、素早く相手の「穴」を突いていく仕掛け・・でも、その仕掛けの流れに乗れなかった者は、確実に「次のディフェンス」に備えたポジショニングを意識する・・。それがあるからこそ、相手にボールを奪われた後の、素早いディフェンス組織作り(優れたバランス感覚!)が可能になるというわけです。そう・・ハンブルク戦で、90分を通して魅せつづけたようにネ。

 ハノーファーは、素晴らしく「まとまった」サッカーを魅せてくれました。攻守にわたる選手たちのイメージが、一糸乱れない「まとまり」。たしかに、選手たちの基本的な能力には限界がある・・それでも今シーズンのハノーファーかなりやるかも・・。期待しましょう。

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 ハノーファーの「ツボ」にはまってしまっただけではなく、ツキにも見放されたハンブルク。彼らにとっては不運な開幕戦ということになってしまったわけですが、高原直泰に限ってみれば、攻守にわたって出来は良かったですよ・・本当に。

 パスを受けてからの自信みなぎるキープ・・ドリブル勝負も明らかに危険度を増している・・また臨機応変に繰り出すシンプルパス&爆発ムーブ!も健在・・ボールがないところでの鋭くクレバーな勝負の動き(ガムシャラに動くのではなく、クレバーなタメのアクションにも磨きがかかっている!)等々。

 とはいっても、この試合では、ロメオとのコンビでしたから、どうしても(常に中央ゾーンに居座る)彼にシュートチャンスが多く巡ってきてしまう・・。まあ、仕方ないですが、(この試合のように)これからも「ストライカーとしてのエゴ」を前面に押し出すことを強く意識しつづければ、基本的な能力は十分の高原のことだから、着実に発展していくことでしょう。それに対する期待は、ベンチだけではなく、チームメイトたちからも強く感じます。とにかく今の高原からは、「輝く明日」だけを見ている湯浅なのです。

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 さてエキサイティングだった「ルール・ダービー」。場所は、もちろんアレーナ・アウフ・シャルケ(シャルケの地に立つアリーナドーム)。そしてもちろん満員御礼(61,014人)。私も数ヶ月前にこのスタジアムで観たばかりですが、その雰囲気は、まさに次元を超えているとしか言いようがない・・。

 ゲームは、そんなスタジアムの熱い雰囲気が乗り移ったように緊迫したものになります。立ち上がりから積極的に攻め合う両チーム。それでも、徐々にペースを握っていくホームのシャルケ。それに対し、しっかりと守備ブロックを整えながら必殺のカウンターを狙うドルトムント。緊迫の度を深めていくゲーム・・。

 それでも、シャルケは、ドルトムントの強力な守備ブロックを崩せない・・逆にドルトムントは、アモローゾやロシツキー、はたまたコレルを中心に危険なカウンターを繰り出していく・・これは、ドルトムントのペースだな・・そんなことを思っていた前半39分、やってくれました、シャルケの新星ハミート・アルティントップ(トルコ国籍)・・ドカン!と25メートルのロングシュートを決めたのです・・それは、それは凄いシュートでしたよ・・それまで守備ラインを崩せないシャルケで唯一、希望の星だったのはアルティントップのロングシュートだったのですが、それが見事にツボにはまった・・そして後半13分にも、またまたアルティントップが、ドリブルからのロングシュートを決めてしまう・・これは、守備ブロックが強固にまとまった現代サッカーでは、本当の意味での武器になる選手だ・・何といっても、アルティントップがある程度フリーで(二列目で)ボールをもったら、確実に最終ラインに穴が空くのですからネ(もちろん前へマークへ上がらなければならないから!)・・そして攻撃側の仕掛けオプションが格段に広がる・・。

 このハミート・アルティントップは、今シーズン、ヴァッテンシャイト09というクラブから移籍してきたミッドフィールダーです。ヴァッテンシャイト09は、三部リーグ(北部・レギオナルリーガ)所属。昨シーズンは4位で終わったことで二部ブンデスリーガへの昇格を逃したのですが、そこでの絶対的な得点源が、アルティントップだったというわけです(昨シーズンの北部レギオナルリーガでの得点ランクは2位・・それでも中盤という基本ポジションを考えれば特筆の得点能力!)。とにかく、ヤツの積極ロングシュートは一見の価値ありです。

 さて試合。「2-0」のシャルケのリードとなりました。ここで、レアルからドルトムントへ移籍してきたフラビオ・コンセイソンが登場してきます。ドルトムントのペースが上がってくる。そしてフラビオが魅せます。交代した5分後に、正面からの25メートルのFKを決めてしまったのです。これで「2-1」。それでも、シャルケの守備ブロックもうまく組織されていますから(ドルトムントがイニシアチブを握って攻め上がってくるから逆にうまく機能している?!)、ドルトムントも攻めあぐんでしまう。もちろん彼らには、コレルのアタマという絶対的な武器があるのですが、そこへのクロスの起点を抑えられていますからネ・・。シャルケ新任のユップ・ハインケス監督も、しっかりとスタディーしていたということです。

 ユップは、私のドイツ留学中は(1976年-)ボルシア・メンヘングラッドバッハの選手でした(ドイツ代表でも39試合を闘うなど、世界的にも高い名声を誇る優秀な選手でした)。当時の彼はケガ気味で、私の母校である国立ケルン体育大学(ドイツでは唯一の体育大学)の施設を使ってリハビリをしていました。指導していたのは、大学の教授でもあり、メンヘングラッドバッハのコンディションコーチも務めていたドリガルスキーさん。私は、リハビリの勉強のために、よく彼らを観察していたものです。それにしても、ユップの強靱な精神には恐れ入ったものでした(パワー強化トレーニングが尋常ではない・・)。

 また監督しても、メンヘングラッドバッハやバイエルン・ミュンヘンだけではなく、アスレチック・ビルバオやレアル・マドリーなど、スペインでも活躍しました(一時期は、ポルトガルのベンフィカ・リスボンでも監督を務めた)。シャルケは、良い監督を獲得したと思います。

 あっと試合ですが、「まあ、このままシャルケが守りきるだろうな・・」と思いはじめた試合終了間際のロスタイム、ドルトムントがラッキーな同点ゴールを挙げました(ロングシュートが相手の足に当たり、ゴールを決めたアモローゾの足許にこぼれてきた!)。あ〜、面白かった。

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 時差ボケで眠れず、結局ゲームを見終わった後、ハンブルクの試合も含めてレポートを書き上げてしまった湯浅でした。いまは朝の6時ですが、ヨーロッパは夜中の2300時。ということで、やっと眠くなってきました・・。




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