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チャンピオンズリーグ・・二次リーグ第4節・・ちょいとアーセナルに焦点を当てて・・(2003年2月27日、木曜日の深夜)

さて本日の早朝に「WOWOW」で放送した、アヤックス対アーセナル。

 私は、現在のヨーロッパでは、アーセナルが最高のサッカーを展開していると思っています。まあ昨日の、ヴェーロンが戻ってきたマンUも素晴らしかったですけれどね。

 とにかくアーセナル。この試合では、まず私は、両チームのボールの動きに注目していました。そして思ったものです。「やはり、アーセナルの方が、タテ方向へのパスを活かすのが上手い・・」。

 アヤックスの場合、タテ方向のパスは、ほとんどが「最終勝負のパス」になってしまっている。それに、そのタテパスを出すタイミングも「ヨッコラショ」という遅いモノ。これだったら、アーセナル守備陣にとっても、その勝負パスを「読む」のは容易だということです。

 それに対しアーセナルのタテパスは、明確に、最終勝負へ向けたファウンデーション(土台)パスというイメージだと感じるのです。要は、タテにボールを動かすことで、相手守備ブロックを「振り回し」てバランスを崩し、そこで空いたスペースを突いていくという意図が見えてくるというわけです。

 横パスばかりだと、守備ブロックは、常に自分たちが前を向いたカタチで対処できます。だから、次の勝負パスも、比較的容易に予測することができる。それに対し、タテへも活発にボールを動かされたら、「視線」が振り回されるだけではなく、前後にもポジショニングを修正しつづけなければなりません。だから、相手の仕掛けをイメージするための思考の余裕にも限界がみえてくるというわけです。

 またアーセナルが繰り出すタテパスの場合、とにかく、ボールをコントロールしてからキックするまでのタイミングが素早い。コントロールからパスまでのリズムが早いのです、だからこそ、相手マーカーが間合いを詰めるタイミングを見極めるのが難しい。だからこそ、前線のパスレシーバーも余裕をもってボールを扱うことができる。それこそ、普段のトレーニングにおける意識付けの賜です。

 ボールがないところでの活発なフリーランニングをベースに(パス&ムーブが、ものすごく忠実!)、どんどんと、素早いタイミングで「コントロール&パス」をくり返すアーセナル。横から横へ。そしてタテへ。そこから、ズバッという「タテ方向」のバックパスが戻されたり、コントロールしてタメを演出したり、当たりにくる相手の鼻先で、チョンとワンツーを決めて相手を置き去りにしてしまったり、そのままシンプルに安全パスをつないだり。美しいハーモニーを感じます。

 もちろんそれには、アーセナル選手たちの高い個人能力が背景にあることは言うまでもありません。「才能」ある強者たちが、組織プレーにも精を出す。それこそが、スーパーサッカーへの扉を開く。だからこそ、アーセナルに対する期待が高まる。

 そして最終の仕掛け。このことは前回も書きましたが、とにかくアーセナルの選手たちは、「勝負はボールのないところで決まる」という普遍的なコンセプトを心底理解していると感じます。タテのポジションチェンジをくり返しながら、二列目、三列目の選手が、決定的フリーランニングを仕掛けていく。もちろん、そんなパスを主体にした最終勝負ばかりではなく、ピレス、アンリ、ヴィルトール等が、タイミングのよいドリブル勝負もミックスしていく。強いはずだ。

 とはいっても、時間が経つにつれて、アヤックスも盛り返してきます。守備ブロックを厚くしているために、どうしても最後の仕掛けが「単発」になってしまっていたのが、後半になって、徐々に、タイミングのよい押し上げサポートが機能してきたのです。たしかに、ボールの動きは、アーセナルから比べれば遅く、横方向が多い。それでも、ここぞ!の勝負ゾーンでは、厚いサポートが見られるようになったのです。だからドリブルも、より効果的に機能するようになった。そして、そんな成功体感を積み重ねることによって(要は、自信レベルが高揚した!)、彼らのチャレンジ姿勢にも拍車がかかってきます。でも、全体的にはやっぱり「単発」という印象は拭い切れませんでしたけれどネ。

 アーセナルでは、とにかくビエラとピレスが中盤の巨星です。後方からのゲームメイカーと、仕掛けのチャンスメイカー。素晴らしいコンビです。

 結局試合は「0-0」の引き分けに終わりました。たしかに、全体的な内容は明らかにアーセナルのものでしたが、アヤックスの厚い守備ブロックに、後半はアーセナルも攻めあぐんでしまったという展開。

 才能が集まっていることで、ちょっとでもプレーリズムが噛み合わなくなると、途端にチームの全体パフォーマンスが大きく暗転してしまう。忍耐力という、勝負強さのバックボーンに課題を抱えているアーセナル・・ということでしょう。だから、チャンピオンズリーグでは、まだ結果を残せていない。あれ程ハイレベルなサッカーを出来るチカラを備えているアーセナルだからこそ、心理・精神的な部分での発展を願って止まない湯浅です。まあそれも、これからの見所の一つだということです。




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