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チャンピオンズリーグ準決勝(1)・・またまたイタリアのツボが存在感を発揮するなど、興味深い「ゲームフローの変化」でした・・レアル・マドリー対ユーヴェントス(2-1)・・(2003年5月7日、水曜日)

そのとき、レアル選手たちの脳裏には、数日前の「悪夢」が蘇っていたに違いない・・。ユーヴェントスを相手に完全にゲームを制圧し、先制ゴールまで奪ったレアル。ただ前半終了間際に、奪われてはならない「アウェーゴール」を陥れられてしまう・・。

 先週末(土曜日)におこなわれたリーガ・エスパニョーラのレアル対マジョルカ戦。そこでのレアルは、次々とカウンターを決められ、「1-5」という信じられない大敗を喫してしまいました。何年かぶりのホームでの敗戦。それも5ゴールもたたき込まれて・・。

 そのネガティブイメージが、この試合でトレゼゲに奪われた失点に重ならないはずがありません。また後半の立ち上がりには、格段に調子を上げているロナウドまでも怪我で失ってしまって・・。

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 チャンピオンズリーグ準決勝、レアル・マドリー対ユーヴェントスの第一戦(レアルのホーム)は、まさに予想通りの展開になります。素早いボールの動きをベースにゲームを支配するレアル。守備を固め、カウンターに懸けるユーヴェントス。

 それにしてもレアルのボールの動きは次元を超えている。ピタリ、ピタリとトラップが決まり、そこからの夢のように素早く正確なボールコントロールからどんどん鋭いパスを回してしまう。以前は「最前線のフタ」という(まあこれは私が使った表現ですがネ)身勝手で緩慢なプレーに終始していたロナウドさえも、そんなパスの流れのなかに心地よさそうに身をゆだねるのです。

 球離れが早くなり、周りとのプレイメージも高質にシンクロしはじめたロナウド。だからこそ、自身がイメージする勝負パスも受けることができるし(勝負のフリーランニングと勝負パスがうまくシンクロするようになったし)、ドリブル勝負にしても、仲間のプレーイメージを阻害するようなこともなくなった(チームメイトたちも、ロナウドがドリブル勝負に入るタイミングを明確にイメージできるようなった・・)。また、ロナウドから勝負パスが出るようになったことも特筆です。それまでは、とにかく自分が、自分が・・とチャンスを潰しつづけていましたからね。特に前半44分のチャンスメイクは秀逸。最前線で足許パスを受けたロナウドが、ユーヴェ守備ブロックの視線とアクションを釘付けにするキープ(まさに最終勝負のタメ!)から、最後の瞬間に、スパッというモリエンテスへのラストパスを決めたのです(まったくフリーのモリエンテスのシュートは、無情にも大きくゴールを外れていく)。まさに天才。鳥肌が立つようなチャンスメイクではありました。やはり「環境」こそが人を発展させるということです。

 ロナウドがまだ「最前線のフタ」だったころに発表した「トピックス・コラム」がありますので、そちらも参照してください

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 さて、対するユーヴェントス。彼らは、これまたピタリ、ピタリと「人」のチェックに入るのですが、いかんせん、相手がミスをしないし、あまりにもボールの動きが素早く、広いものだからアタックタイミングをイメージすることさえ叶わない。もちろんそこはユーヴェですから、(安易なアタックを仕掛けて)振り回されてしまうわけではなく、辛抱強く忠実マークをつづけ、最後の勝負所(ボールがないところでのフリーランニングとパスによる、決定的スペースへのウラ取りチャレンジ)だけは何とか抑えてはいるのですが、今度は、フィーゴが、ジダンが、はたまたロナウドが・・と、これまた次元を超えた「個の勝負」を挑んできたり、最前線が詰まり気味になったら、鋭いミドルシュートを放ったりするのですよ。もちろんそれは、ユーヴェ守備ブロックを「引き出す」ということもイメージした中期力シュートです。

 たしかにユーヴェの守備ブロックは世界最高峰。それでも、レアルの天才たちは、何度も、攻撃の変化をベースに自分たちの仕掛けイメージを成就させそうになる。これは、サッカーの次元が違う・・なんてことさえ感じていたものです。

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 そして前半23分、全体的なゲーム展開からすれば、まさに順当という先制ゴールが決まります。ロナウド。それも、「ワンツースリー」というスーパーコンビネーションからのドリームゴール。

 右サイドから、まずフィーゴが「個の勝負」で仕掛けていきます。どんどんとドリブルで突っかけていくフィーゴ。そして、我慢できなくなったユーヴェのディフェンダーがアタックモーションに入った瞬間に「ワンのパス」を出す・・受けたロナウドは、その直前にイメージしていた通り、そのパスをスルーしてモリエンテスへ流し、自身は勝負のフリーランニングをスタートする・・そしてモリエンテスから、倒れ込みながらの「リターン・パス」を受け、天才の落ち着きから、夢のような「ゴールへのパス」を決める・・。フ〜〜ッ、美しい・・。

 その後もペースを落とすことなくゲームを支配しつづけるレアル。これはもう試合フローが逆流することはないかもしれないな・・なんてイージーに(安易に)思いはじめた前半終了間際のことです。やってくれました、ユーヴェが。デル・ピエーロのシュートが、ミッチェル・サルガドの足に当たり、うまくトレゼゲの足許に転がったのです。難なくレアルゴールの右サイドサイドネットへ「パス」を送り込むトレゼゲ。そして、レアル選手たちの脳裏に(冒頭で言及した)悪夢が蘇った?!

 ゲームを支配されているユーヴェ選手たちの攻撃イメージは徹底していました。人数をかけず、またリスクを冒さず、とにかく中盤である程度フリーでボールを持ったら、(主に反対サイドの)決定的スペースへ向けた一発パスを狙う・・。

 実は、同点ゴールが入るまでに、ユーヴェも二度のチャンスを作り出していました。ユーヴェのシンプルな仕掛けイメージが結実しそうになったシーンです。

 最初は、左サイドから、逆サイドの最前線にポジショニングするトレゼゲへの勝負のサイドチェンジパス。そのパスが、トレゼゲをマークしていたエルゲラの頭を越えてしまう(エルゲラの目測ミス・・ヘディングが届かず)。そして正確にトラップしたトレゼゲのフリーシュート(大きく左へ外れる)。二度目のキッカケは、右サイドから、逆サイドにいるネドビェドへの一発パス(これまた、彼をマークしていたサルガドの頭を越える一発サイドチェンジパス)。それに反応したネドビェドが持ち込んでフリーシュートを放ったのです(レアルGKカシージャスの正面!)。

 また同点ゴールを陥れた場面のキッカケも、左サイドの決定的スペースを狙った一発ミドルパスでした。そのターゲットが、デル・ピエーロだったというわけです。

 我慢に我慢を重ね、ワンチャンスの勝負イメージの実現へ全力を傾注する・・。まさにイタリアのツボ。

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 そして後半。冒頭で書いたように、ロナウドが退場し、代わりにポルティージョが登場します。ただロナウドとの「危険度の差」は歴然。

 前半は、モリエンテスがうまく「オトリ役」をこなし、その周りのスペースを天才たちが突いていくというイメージがうまく機能していたのですが、ポルティージョは、そんな「周りからの仕掛けの流れ」にうまく乗れないのです。そしてレアルの攻めから鋭さが失われていく・・。もちろんそれには、ユーヴェ守備ブロックが、レアルの仕掛けリズムに慣れてきたという側面もありました。

 それでも、この仕掛けペースじゃ勝ち越しは難しいな・・なんて、またまた「イージー(安易)に」思いはじめていた後半28分。唐突に、レアルの勝ち越しゴールが決まるのですよ。ロベルト・カルロス。

 その3分前にも、ロベカルからの矢のようなボールがユーヴェゴール前3メートルを横切っていくというチャンスがありました(飛び込んだジダンとポルティージョは、わずかに触ることができず!)。基本的には、ニアスペースへ入り込んだジダンへのラストパスだったのでしょうが、たぶんロベカルは、シュートもイメージしていた?!

 「ちょっと攻めが手詰まり気味だ。ペースを変えなければ。ここは、オレがロングシュートを見舞うしかない・・」ってな具合ですかね。もちろん、このシーンでロベカルが放った「シュート性のキャノン・パス」はジダンをイメージしていたのでしょうが、ロベカルは、「もしジダンが触れなくても・・」ということまでイメージしていたと思うのです。そしてそんな積極イメージが、その3分後には、決勝ゴールとなって結実したという次第。

 凄いシュートでしたよ。コーナーキックからのこぼれ球を、ペナルティーエリアの外から、ドカン!! まさに起死回生の一発でした。

 その後も、エルゲラを上げてまで「3点目」を奪いにいったレアルでしたが(終了間際には、またまたロベカルからのシュート性のキャノン・パスから、エルゲラが決定的チャンスを迎えた!)、結局そのままタイムアップということになりました。

 二点差をつけていれば、次のトリノでのアウェーゲームが戦い易いものになる・・という意図。でも結局、もし次戦でユーヴェが「1-0」で勝った場合、アウェーゴール二倍ルールが適用されてユーヴェが、マンUのホームスタジアム、オールドトラフォードでの決勝へ進出するという結果に落ち着きました。

 様々なコンテンツが山積みだった準決勝第一試合。いまから来週の第二戦が楽しみで仕方ありません。

 さて明日の未明は「ミラン・ダービー」。これも見逃せない。




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