じゃ、まずカメルーン対コロンビアからいきましょうか。
カメルーンは、まず守備ブロックの組織をカチッと固め、素早くシンプルで、直線的な攻めを繰り出していくという考え方でゲームに臨んでいます。まあ、監督がドイツのヴィンフリート・シェーファーですからね。そして、コロンビアのボールの動きを巧みに「遅く、狭く」し、次のパスレシーバーのところで、例によっての高い「個の能力」を最大限に活用してボールを奪い返してしまう。
まあ、ボールホルダーに対する忠実なチェイス&チェックを基盤に、周りの選手たちを抑えてボールを奪取するという基本に忠実なディフェンス発想だということです。もちろんボールホルダーへのチェックは、絶対に安易に当たらない。だからコロンビアも、ボールの動きを加速させられず、タテへも仕掛けていけない・・。それはそうです。コロンピアの攻めでは、相手のアタックを巧みに誘いながら、そこでのアタックエネルギーをうまく逆利用することで攻めのコンビネーションを加速していくという発想ですからネ。要は、相手のアタックを、素早いワンツー等の小さなコンビネーションで外し、相手を置き去りにすることで前のスペースを突いていく(前方の相手守備ブロックの数的・ポジション的バランスを崩していく)という発想だということです。
そんな意図のコロンビアに対し、カメルーン守備ブロックは、彼らに「テンポアップのキッカケ」を与えないようなクレバーな守備をつづける。だからコロンビアは、容易にはタテ方向へボールを動かしていけない。何せ、周りの味方が抑えられているだけではなく、いくら誘っても、安易に勝負を仕掛けてこないのですからね。だから、安全な横パスを回すことになってしまったり、遅れたタイミングでタテパスを送ることで、アタックされて簡単にボールを奪い返されてしまうというわけです。
カメルーンは、攻めも効果的(まさにロジックで実利的?!)ですよ。ボールを奪い返したところから、素早く、シンプルに、そして直線的にボールを動かしながらタテへ仕掛けていくのです。もちろんドリブルあり、素早いタテパスあり。そして効果的に、個の勝負を仕掛けられるシチュエーション(相手守備ブロックの薄い部分での1対1の場面)を作り出していく・・。
この試合唯一のゴールは、コロンビア守備ブロックを振り回すような素晴らしくスピーディーで大きな展開から生まれました。素早く右サイドのタッチライン際にいるジェレミーへパスがまわされる・・そこで一瞬「タメ」を演出したジェレミーから、バックアップしてきたジェンバジェンバ(?!)へのバックパス・・そこからダイレクトで、反対サイドのファーポストゾーンにいる(コロンビアのマークが甘くなっている)イドリスへ勝負のサイドチェンジパスが送られる(ものすごく素早く正確な、勝負のサイドチェンジパス!)・・イドリスが見事なヘディングで折り返したところを、逆サイドポストゾーンに詰めていたエンディエフィが左足ボレーで決めた・・というゴールでした。
ボールポゼッションでは「持たされている」コロンビアのものですが、「実効コンテンツ」という視点では、確実にカメルーンに軍配が上がります。
でも後半は、コロンビアも「来ました」よ。効果的なタテへのボールの動きと、素早いバックアップの動きが連動するようになったのです。やはり、タテへのボールの動きをミックスしない限り(相手ディフェンスの意識をタテに振り回さない限り)、決して守備ブロックに「穴」を空けることはできないということです。
それには、カメルーンの守備が、徐々に「甘く」なっていったいう背景もありました。ボールホルダーへのチェックが緩くなり、次のパスレシーバーへのマークも空き気味になったことで、コロンビアのタテへのボールの動きと(細かなコンビネーションを仕掛けるための)バックアップアクションも活発になっていったということです(自分たちがイメージする縦方向のコンビネーションがやりやすくなった)。
そんな攻めの好転には、後半から登場してきた、優れたドリブル突破能力を持つベセーラが良いアクセントになっていました。彼がボールを持つと、危険なカタチが生まれてくるのです。優れたドリブラーという「変化」によって、相手守備ブロックのポジショニングバランスに亀裂が生じてくる・・。でも結局コロンビアは、流れのなかでカメルーンの堅守を崩し切るところまではいけませんでした(後半最後の時間帯での、フリーキックからのポストシュートくらいでしたかネ、本当の意味での決定的チャンスは・・)。
それにしても、カメルーン選手たちの「個の能力」は高い。特に守備。1対1で、振り切られるシーンはほとんどありません(まあベセーラには二度ほど持ち込まれましたがネ)。また、ボールがないところでの守備意識も高い(後半はちょっとダレましたが・・)。
ドイツ的な発想のサッカーをアフリカチームがやっている・・?! とにかく、どのうよなサッカーをやるのかというイメージがチーム全体に浸透し、組織としてもまとまりが出てきたカメルーンは、勝負にも強い・・。
---------------
もう一つの準決勝カードでは、フランスが勝ちました。それにしても薄氷の勝利。試合終了間際にトルコが得たPKが決まっていたら本当にどうなっていたか分からない・・。
立ち上がりのフランスは、攻守にわたって素晴らしい内容のサッカーを披露しました。例によっての堅い組織ディフェンスをベースに、クルクルとボールを動かしてトルコ守備を振り回し、最後は薄い部分を「個の勝負」で突いていく・・。そして前半11分(アンリ)、26分(ピレス)とゴールを重ねていくのです。攻守にわたって、組織プレーでも、個の勝負でも、やはりフランスが一枚も二枚も上だし、実際にトルコ守備ブロックを振り回した決定機をどんどんと作り出してしまうのです。ゲーム内容からすれば、まさに完璧な「順当リード」であり、誰もがフランスの楽勝を予想したことでしょう。それでも・・
リードされたトルコは、もちろん必死になって攻め上がっていきます。ボールキープ率ではフランスを大きく上回っている。それでも、最後のところではフランス守備ブロックを崩していけないから、「持たされている」という印象の方が強い。
ボールポゼッションという発想があります。要は、ボールキープ率のこと。でもそれは、必ずしも「ゲームの内容的な支配」を意味しない・・。
2点目を奪ってからのフランスは、攻守にわたって足が止まってしまい、プレスがかからずに高い位置でのボール奪取がままならない(だからフランスらしい攻撃も影を潜めてしまう)・・ということで、トルコにボールをキープされつづけるフランス・・とはいっても「要所での抑え」はサスガだから、どうしてもトルコは、最終勝負を仕掛けていくというシーンを演出できない・・それでも前半42分には、流れのなかから、これぞワンチャンスというクロスから、ファーサイドでフリーになっていたカラデニズが、ヘディングでポストシュートを見舞い、はね返ったボールを確実にフランスゴールへ流し込む(これで2-1!)・・それでも、ハッと我に返ったフランスが押し返し(眠りから覚めたように高い位置でのプレスから人数をかけた攻めを展開した!)、トルコがゴールを挙げた1分後には、ヴィルトールがだめ押しの三点目を決める・・そして再びゲームは、トルコが、見かけのポゼッションゲームを展開する(余裕の受け身サッカーを展開するフランス)という流れに・・後半も同じような展開ではじまったけれど、開始早々の3分に、またまたトルコが、ワンチャンスの(フランス守備ブロックのイージーなミス=テュラムが、パスレシーバーをまったくフリーにしてしまった=から得たチャンスで素早く送り込んだ)クロスから、ニアポストゾーンへ走り込んだトゥンカイが、素晴らしいシュートを決めてしまう(ニアポストゾーンへ走り込み、鋭いクロスを右足アウトサイドで、チョンと流して、フランスGKの頭上を越えるシュートを決めた!)・・そしてまたまた、例によってのゲームペースに落ち込んでいく・・そして、前述したPK失敗シーンで(シュートがゴール左側へ外れた!)タイムアップ・・。
たしかに、グループリーグでのブラジル戦同様、トルコが魅せた粘り強く仕掛けていく積極姿勢は感動を呼び起こしましたし、見所豊富ではあったのですが、ゲーム全体として(特にフランスのプレー姿勢が・・)気の抜けた内容になってしまったことは否めない事実です。それもまた、この大会の「背景」を象徴していた?!
まあ次は決勝ですからネ。「この一試合だけ・・」となれば、選手たちの気合いレベルも高まるでしょうし、ゲーム内容もより締まったものになるはず。期待しましょう。
-------------
ところで、カメルーン、フォエ選手の急逝。心臓麻痺とのこと・・。
試合中に倒れたフォエ選手を映し出すテレビ画面からも、尋常ではない状況が痛いほど伝わってきました。だから、後に彼が亡くなったという報道を聞いたとき、やっぱりと思ってしまって・・。言葉がありません。素晴らしい選手だったフォエ。合掌・・