もちろん「つなぎプレー」では、しっかりとしたボールコントロールから確実にパスをまわします。相手のプレッシャーがあっても、慌てず騒がず、落ち着いてボールをコントロールできているし、たまには、相手アタックアクションの逆を取って置き去りにするといった目立つ勝負プレーも披露します。それでも、自分が何らかのコアになって決定的なシーンを作り出したり、自らシュートシーンに絡んでいくという、リスクにチャレンジしていくプレーが少なすぎる・・。
右サイドの上がり気味ハーフ。これはヨーロッパの日本人にとって鬼門なのかも・・。フラムの稲本もそこが最後でスタメン落ちしてしまったし、中田英寿にしても・・。まあ中田の状況は、この二人とはかなり違いますけれどネ。とにかく(特にイタリアでは?!)このポジションは、攻守にわたって自分から仕事を積極的に探し、探し出したらすかさず実行に移していくというプレー姿勢が問われるという意味で、そう簡単にこなせるところではない。ちょっとでもボヤボヤしていたら、ゲームの流れから置き去りになってしまう。そう、この試合での柳沢のようにネ。
これまでの柳沢は、攻撃的サイドハーフとして交代出場し、なかなかのアピールを魅せられていました。でもそれは、あくまでも両チーム選手たちのプレーイメージが「流動的」になってくる(相手守備の集中が途切れてくる)時間帯での交代出場ですからね、先発のケースとは、かなり「心理ベース」などの状況が違います。先発では、相手も、この試合での全体的なイメージを確立しようとキチッと物理的にも心理的にも対処しているから穴が出来にくいし、自らも、プレーペースを確立し、高揚させられるように積極的にプレーしなければならなりませんからね。だからこそ、偶発的なチャンスを「待つ」のではなく、攻守にわたって、自らの意志を唯一のモティベーションとしたリスクチャレンジ姿勢が、より強く求められるというわけです。
たしかに、この試合の相手は現役のヨーロッパチャンピオンであるACミランだから、彼にとっても荷が重かったのかもしれませんが、逆に私は、だからこそ柳沢にとって願ってもないビッグチャンスだと思っていたのですよ。脅威と機会は表裏一体! 相手がミランだからこそ(チャレンジが失敗に終わっても彼のイメージにそれほど大きなメージはないだろうから)攻守にわたって吹っ切れたリスクチャレンジを仕掛けていかなければならなかったのです。でも結局は・・そして前半が終了した時点での交代・・。
柳沢のプレーを総括したら、こんな具合になりますかネ・・。
攻めでは「まあまあの安定プレー」でゲームに入っている・・でも、柳沢は「仕掛けの最前線」にいるのだから、そんな安定志向では味方に頼りにされることはない・・また守備でも冴えない・・何度も、セルジーニョやルイ・コスタに抜き去られたり置き去りにされてしまう・・またマークを外されたら、そこで足を止めてしまい「次の勝負所」へ急行する意志を見せない・・これでは、守備でも味方の信頼を失ってしまう・・ここでサンプドリア監督が、柳沢はミラン左サイドバックのセルジーニョを御し切れていないと判断し、彼を逆の左サイドへ回す(ディアーナとの左右のポジションチェンジ)・・とはいっても、そこでもシミッチ(ミラン右サイドバック)や、何故か柳沢の方へ寄ってきてプレーしたがるルイ・コスタにやられっぱなしになってしまう・・ミラン先制ゴールのシーンでの柳沢は、ラストクロスを出したシミッチへのチェックが遅れていた(味方GKの飛び込みが目に入ったからアタックがおざなりになった!)・・ってな体たらくでした。彼に対する期待が大きかったから、落胆の幅も大きかった・・。
これまでの交代出場では、何度か良いチャレンジプレーを披露していた柳沢。この試合では、先発出場ということで、全体的なゲームペースを考えて・・まず落ち着いて、安定したプレーを心がけよう・・なんていう姿勢だったのかもしれません。そしてそれが裏目に出た・・?!
彼がいま置かれている立場は、途中で足がツッて退場せざるを得なくなったとしても、とにかく最初から全力での仕掛けプレーをつづけなければならないというものなのです。試合を通したプレーペースなどに思いを馳せていたのだとしたら、その瞬間に落第・・。案の定、そんな中途半端なプレー姿勢がたたり(その姿勢だったからこその中途半端な実効レベルがたたって)この試合では、前半だけで交代ということになってしまった・・。
柳沢の「なか」には強烈な悔いが残ったことでしょう。とにかく彼は、その「後悔の念」をとことん見つめ直さなければいけません。彼ほどの才能の持ち主なのだから、「やれば・・行けば・・」、攻守にわたって必ず良いプレーができるはず。でも、やらずに・・行かずに・・(やりはじめる前に・・行く前に・・)プレー機会を奪われてしまったら・・。とにかく、チャンスを与えられたら、常に、それがラストチャンスだという気概をもって全力プレーに取り組まなければならないのです。ガンバレ、柳沢!
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ところでACミラン。イタリアのなかでは攻撃的なプレーをやっている・・という評価があるそうな。でも私の目には・・。
何せ彼らの仕掛けイメージは、最後の最後まで「スリーラインを崩さない」ということで、以前とあまり変化していませんからネ(=次の守備におけるセキュリティーがチーム戦術のメインテーマ!)。
ボールがないところでのタテのポジションチェンジ(ボールのないところでのリスクチャレンジ)がない・・仕掛けのボールの動きを縦横に展開するというプレー姿勢が希薄(パスとフリーランニングを組み合わせた組織コンビネーションを主体に仕掛けていくというプレーイメージが希薄!)・・とにかく足許への安全パスをつなぎながら、「個の勝負」を仕掛けていくのに有利な状況を探りつづけるという基本的なプレー姿勢は変わっていない・・だから、パスと、ボールのないところでの動きを主体にした組織的な仕掛けイメージが目立つことは希・・彼らのサッカーが攻撃的になっていると言われはじめた所以は、チームに攻撃の才能が増えたことで、個の勝負シーンの内容がアップし、そのことが攻撃的という印象を与えているということなのかも・・ということで、ACミランにしても、「仕掛けにおける組織プレーと個人プレーのバランス」という視点では、個の勝負ばかりが前面に押し出され、組織パスプレーには、その補助的な役割しか与えられていないという傾向が、まだまだ明確に見える・・もちろんチーム内でも、そんな仕掛けイメージで統一されている・・「イタリアのツボ」は健在・・。
あれほどの才能を世界中からかき集めているのだから、もっと運動量豊富に人数をかけながら縦横にポジションチェンジをくり返すというイメージをベースに、ボールの動きを主体にした仕掛け「も」ミックスさせられるはず。そんな戦術的な発想が出てくれば(組織プレーと個人プレーがより高質にバランスしてくれば)、イタリアサッカーは、まさに世界に冠たるイメージリーダーになれるのに・・。
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さて次は、稲本。この試合も、交代出場ということになりました。前半32分、稲本のポジション的ライバルであるペンブリッジにアクシデントがあり(ケガ?!)、稲本に出番が回ってきたのです。こちらは、さて・・と気合が入る。でも、どうもプレーが冴えない。守備でも、攻撃でも、彼のプレーイメージが後手後手に回っていると感じられるのです。だから、実効ある活躍という表現にはほど遠いパフォーマンス・・。
ペンブリッジが復帰したフラムの中盤では、レグヴァンスキーが専業の守備的ハーフになり、その前に、攻撃に交代で飛び出していくクラークとペンブリッジが高めの守備の網を張ります。また右サイドのマールブランクと左サイドのボア・モルテも積極的に守備へ参加してくるから、一人の守備的ハーフの前に四人のハーフが並ぶといったイメージでしょうか(私が嫌いな数字の羅列をつかえば、4-1-2-2-1ってな基本ポジションバランスのイメージになりますかネ・・)。だからペンブリッジと交代した稲本のポジションは、クラークと組むセンターハーフということになります。
稲本のプレーですが、ボールに絡めれば、守備でも、攻撃でも素晴らしいキャパシティーは感じさせてくれます。でもどうも、そこにいくまでに四苦八苦しているから、そんなボール絡みシーンの頻度が低すぎる。要は、攻守の目的(ボール奪取とシュートを打つこと!)を達成するための勝負所に対する「ターゲットイメージ」を鮮明に描くことができていないということです。だから、どうも以前のように「無為な様子見」になってしまうシーンが多く、勝負所への流れに乗り遅れてしまう・・。
でもそんなネガティブプレー傾向が、ある爆発ディフェンスプレーからポジティブに転じたと感じました。そのプレーは後半26分のことです。マンUが左から攻め上がったシーンで、スコールズからのタテパスを受けたギグスへ向けて、全力で長い距離を戻った稲本が、ズバッ!!というタックルを仕掛けてボールを奪い返してしまったのです。それは、それはダイナミックでフェアなスライディングタックルでした。たぶん自分自身も、内心で「ヨ〜〜シ!!」と叫んでいたに違いない。そしてそのプレーをキッカケに、攻守にわたって、ターゲットイメージがより鮮明になっていったと感じました。そして優れたボール絡みシーンが増えていった・・。
そんなイメージ好転プロセスこそが、稲本自身がたたき込んだフラムのダメ押しゴール(三点目)につながった・・。
左サイドで、マールブランクを中心にボールを動かすフラム。どんどんとマンU守備ブロックが、そのサイドへ集中していきます(逆サイドにスペースができる!)。そんな状況で、テレビ画面は、稲本の「金髪アタマ」だけを捉えていたのですが、私は、次の瞬間に「金髪のアタマ」が、ズバッ!と動くのを確認していました。
その時点で、最後にボールをもったのはマールブランク。彼は、最前線まで上がっていたクラークからのバックパスを受けたのですが、稲本は、そのパスがまだグラウンド上を転がっている最中に爆発スタートを切ったのです。それは、マールブランクとの「アイコンタクト」というよりも、「オイ! こっちを見ろ!!」という、稲本の「パスを呼び込む爆発ダッシュ」という意味合いの方が強い決定的フリーランニングでした。
もちろんマールブランクのラストパスも見事だったし、稲本のシュートも見事だったけれど、とにかく私は、(スペースが出来た状況を確認し!)意を決した稲本の「パスを呼び込むフリーランニング」に大拍手を送っていましたよ。
自分が描くイメージを明確になぞるようにシュートポジションに入り、そして確実にゴールを決めた稲本。その笑顔は、W杯でのベルギー戦、ロシア戦でゴールを決めたときのことを思い起こさせてくれました。良かった・・これが何かのキッカケになってくれれば・・。
とにかく彼の場合も、ペンブリッジやクラーク、はたまたレグヴァンスキーというライバルたちとの競争が、ステップアップのための大いなる刺激になることを願わずにはいられない湯浅でした。
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今日はここまでにしましょうかネ。小野伸二、中村俊輔、高原直泰や藤田について何か感じたことがあればレポートしますので・・。