そのアクシデントは、前半40分、彼の上半身のどこか(たぶん脇腹?!)を、ファン・ペルジーのシュートが直撃したというもの。そのとき小野は、最前線の決定的スペースまで、まさに「影」のように上がっていたというわけです。ファン・ベルジーがボールを持ったとき、私は、心のなかで「よしっ、今だ!・・小野へパスを出せ!!」なんて叫んでいました。でもファン・ペルジーは、そのままシュートしてしまった・・それも、相手ディフェンダーがいたから小野にはシュートのコースがまったく見えなかった・・。そして小野が、脇腹を(?!)押さえてうずくまる・・。本当にアンラッキーなアクシデントでした。
ここでは、そのアクシデントが起こるまでの小野のプレーについて書いた文章メモも残しておくことにします・・
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今節は、アヤックスとのアウェー戦。そして小野は、下がり気味のポジション(限りなくスフリューデルとの守備的ハーフコンビに近い基本タスク)でスタートします。その前に、ルアリンク、ファン・ペルジー、ブッフェルが二列目トリオを構成しているというわけです。
相手は強いアヤックスだし、場所もアムステルダムの巨大アリーナということで(プレッシャーは十分ということで!)、観ているこちらも、「これだけの条件がそろったのだから、小野が本当の意味で発展していることを体感できるはずだ・・」なんて気合が入ったものです。とはいっても、ゲームは開始早々に動いてしまいます。立ち上がり3分、アヤックスのファン・デル・ファールトにアクロバティックなシュートを決められてしまったのです。右サイドから、ファーサイドスペースへのサイドチェンジクロス・・それを折り返したところに飛び込んだファン・デル・ファールトが、前へダイビングしながら、後ろに振り上げた右足のカカトで、チョンッと、ボールをフェイエゴールへ流し込んでしまったというゴールでした。たぶんそれは瞬間的な判断。自分の正面でクロスボールを受けられないと感じたファン・デル・ファールトが、瞬間的に前へダイビングしたのですよ。もちろんヒールでボールに触るためにネ。やはり才能・・。それにしても素晴らしいゴールでした。
でも私は、そのゴールを見ながら、「よし・・これでフェイエも吹っ切れた積極サッカーを展開できるだろう・・」なんて、逆に、小野伸二のパフォーマンスに対する期待が高まったものです。実際、そこからの小野伸二のプレーは、攻守にわたって格段に活発になりました(活発にならざるを得なかった!)。
攻撃でのプレーも、後方でのゲームメイクと、三列目からの「影武者の飛び出し」がうまいバランスを魅せるという高質なものへと発展しました。このバランスがいい。要は、彼が「コア」になった仕掛けが、より頻繁に出てきているということです。展開パスを基盤に、パス&ムーブを重ねていく・・また、たまにはドリブルやタメキープなども織り交ぜる・・そして最後のシュートにつながるコンビネーションを主導する・・ってな具合です。
以前は、あまりにも(アイデアのない)無為な様子見シーンが目立ちすぎていた小野伸二。だから、仕掛けの流れにまったく乗れず、単に味方に「使われる選手」という存在でした。でも今は違う。「様子見状態」にしても、次の爆発勝負のための「イメージ的なタメ」だと明確に感じさせてくれますからね。
ここのところの好調のそのままのクリエイティブプレーを展開する小野伸二。そしてフェイエノールトの攻撃も活性化してくる。でも、そんなフェイエノールトにとってのポジティブな流れが、守備とGKの「お見合い」でこぼれたボールを、再びファン・デル・ファールトに決められたことで断ち切られてしまう。これで、アヤックスの「2-0」リードということになりました。前半11分あたりだったでしょうか、フ〜〜。まあ、ここまできたら吹っ切れたリスクチャレンジプレーを展開するしかないから、もっとダイナミックな小野伸二のプレーを見られるかもしれない・・・・なんて書いていたところで「例のアクシデント」が起きてしまったというわけです。
そして、「とにかくアクシデントが大事に至らないことを祈っています・・」と、締めの文章を書いていたとき、この試合のテレビ実況を担当した「カリスマ倉敷」アナウンサーが、小野伸二の状態について、「いまスタジアムの医務室で診察を受けている・・大事には至っていないようだ・・念のため試合後に病院で精密検査が行われる予定・・」という情報を流してくれました・・。小野伸二の「自覚症状」が好転したというこてなんでしょう。それでも、とにかくなるべく早く精密検査を・・。
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さて次は稲本潤一。相手は、現在絶好調のアーセナルです。数日前のチャンピオンズリーグでは、「あの」インテルを相手に、それも敵地で、「1-5」という信じられない破壊力を発揮しました。さてこの試合では・・。
稲本は、先発90分のフル出場。右の(前気味の)サイドハーフです。そして最後まで、ゲーム戦術に即した「タクティカル・プレー」に徹していた。何せアーセナルの左サイドには、アシュレイ・コール、ピレス、そしてアンリといった天才連中がいますからね。そんなに強者たちが左サイドを崩しにかかってくる・・。だからこの試合での稲本のタスクは、右サイドバックのフォルツと協力して、天才の突破を阻止することだったというわけです。
稲本は実効あるプレーを展開していました。相手のパスを読んだ必殺タックルを何度も決めたし、ボールのないところで走り込むアシュレイ・コールをピタリとマークしつづけたり、ドリブル勝負するピレスやアンリを、仲間のフォルツと止めたり・・。でも逆に、ボールのないところでのマークで置き去りにされてしまったり(アシュレイ・コールやピレスに走り込まれて決定的ピンチを演出される!)、ドリブルで抜き去られたり、カバーリングが間に合わなかったりと、何度も「やられたシーン」を目撃させられてしまいました。まあ、相手が相手だから仕方ない・・。稲本にとっても、よい学習機会になったことでしょう。
これもまた「ビデオでの学習教材」です。そこで、相手の動き(ボールとの絡みやタイミング、はたまた素振りなど)を詳細に観察するのです。もちろんそこでの自分人の視線やイメージ(読みの内容)も同時にしっかりと思い出し、そこに重ね合わせる。そんな深いイメージ作業によって、予測(読み)能力は着実にアップするはずです。
何せ、稲本にとっての守備的ハーフライバルは本当に多いですからね。レグヴァンスキーだけではなく、復帰してきたショーン・デイヴィス、ペンブリッジ等々。でも相手にとって不足なしじゃありませんか。この試合で守備的ハーフトリオを組んだレグヴァンスキー、クラーク、デイヴィスにしても、何度もアーセナルの「才能ミッドフィールド」にキリキリ舞いされられるなどのバッドシーンがありましたしね。決してノーチャンスじゃない。だからこそ稲本は、攻守にわたって、鋭い「イメージ描写能力」をベースにした積極プレーを心がけなければならないのです。だからこそ大事な「イメージトレーニング」というわけです。
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試合の全体的な印象ですが、とにかくアーセナルは強かった。あれほど守備を固められているのに、ほんとうに手を替え品を替えて攻撃の変化を演出し、フルアム最終ラインのウラスペースを突いてくるのですよ。
ベルカンプがボールをもってタメを演出した瞬間、最前線でアンリが動いて相手を引きつけ、その間隙をリュンベリが爆発ダッシュで抜け出していく・・そこへ、ベルカンプからピタリのスルーパスが合わせられる(前半の決定的チャンス・・フルアムGKに、ギリギリのところではじき出される!)。また後半には、こんなスーパーチャンスもありました。左サイドの最後方でボールを持ったアシュレイ・コールから、60メートルはあろうかという「ラスト・サイドチェンジ・ロングパス」が、右サイドの決定的スペースへ抜け出したベルカンプにピタリと合う・・天才的とラップから決定的シュートを放つベルカンプ(1998年フランスワールドカップ、アルゼンチン戦のスーパーゴールを思い出す!)・・でも、そのシュートもフラムGKに止められる・・また、そこでこぼれたボールを拾ったリュンベリが放ったシュートも、フラムGKにギリギリでセーブされる・・。それ以外にも、アンリやリュンベリが何本か決定的シュートを放ったし、交代したカヌーも何本か決定機を迎えたけれど・・。
私は、「これだ、これだ、アーセナルが負けるパターンは・・」なんて思っていましたよ。まさに、ツキに見放されたゲーム。フルアムGKのファン・デル・サールは鬼神のセービングを連続していたし、例えばマールブランクのヘディングシュートシーンなど、後半に何本か飛び出したフルアムのカウンターチャンスにしても、まさに決定的といえるシーンもありましたからネ。アレが入っていたらアーセナルは負けていた・・。サッカーでは、こんなゲームもあるということです。そして結局はドロー・・。まあ、稲本のパフォーマンスも含め、様々な視点で見所が豊富なゲームでした。