以前のように、自分がアクションに入っていける状況を「待ったり」するのではなく(様子見ではなく)、もちろんディフェンスを基盤に、攻守にわたって常に自分から仕事を探すという姿勢が前面に押し出されていましたからネ。この「内容」だったら、監督やチームメイトたちの信頼も勝ち取れるでしょう(もちろん、だからこその先発!)。チーム内における「グラウンド上でのパフォーマンスベースの存在感」の高揚にともなって、自信レベルもどんどんと深化しているということです。頼もしい。
また、引き気味のハーフ(限りなく守備的ハーフのイメージ)という基本ポジションが、彼のプレーイメージにポジティブに影響しているとも感じます。基本的な仕事は中盤ディフェンス・・それをベースに、常に攻撃参加のチャンスを(仕掛けチャンスを)狙いつづけなければならない・・。やはりサッカーは、ディフェンスが基本であり、そこでの実効レベルが、自信と発展の土台になるということです。
(日本代表でプレーするときのように)スタートラインから「守備が基盤」というイメージでゲームに入っていくことで、攻守にわたるポジティブなプレーが連鎖しはじめた稲本潤一。それは、基本的な役割についての勘違いも含め、昨シーズンの失敗を払拭するに十分なパフォーマンス。とにかく、昨シーズンの「心理的なネガティブ連鎖」から学習したものは本当に大きかったということです。
ところでフルアム。私は心配していました。ジャン・ティガナが監督を退いたことで、フルアムが、チームとして完全に解体してしまうのではないかと心配していたのです。それでもフタを開けてみたら、昨シーズン、最後の6試合を指揮したコールマン監督がそのまま居座っただけではなく、マールブランク、マルレ、サーア、ジェトゥー、レグヴァンスキー等のフランス勢も残留しました。それだけではなく、ボニセル(これまたフランス!)という堅実な補強も成功した・・。プレーイメージ的に統一感のあるグループに、同じタイプのプレーイメージを持つ、高い能力の選手が加わったというわけです。
そんな背景もあって、数字的な結果だけではなく、内容的にも相手を凌駕したミドルスブラとの開幕戦からは、ハイレベルに熟成したチームという雰囲気さえ感じられるようになりました。良かったですよ、本当に。そして稲本が、その優れたチームパフォーマンスの一角を「着実」に担った・・。ホッと一息じゃありませんか。
ジーコジャパンで、(守備的ハーフの役割を担うことで)プレーイメージを完全に復調させた稲本。でも当時の彼は、まだフルアムでは不遇をかこっていました。またティガナ監督もいなくなりましたし、次のシーズン、自分がどうなるかも分からない。稲本にとっては厳しい状況がつづいたわけです。でも逆に、そんな状況が彼を吹っ切らせたのかも・・。
「どうなるかは、オレ次第だ・・オレのキャパを知っているコールマン監督が残るということだし、とにかく良いプレーをしていれば絶対に認めてくれるハズだ・・そう、オレの持ち味である中盤でのクリエイティブディフェンスを基盤にした積極プレーを前面に押し出すような、本当の意味での良いプレーを積み重ねていけば・・」。
稲本は、一皮も二皮もむけた・・。以前は、「様子見で昼寝している」と言われても仕方ないような気抜けシーンも目立っていたのが、この試合では、完全にイメチェンを果たしていました。この試合での彼は、「ノン・アクション」が、イメージ構築という「実のあるコンテンツ」が満載された、次の爆発(勝負プレー)のための「タメ」だと明確に感じさせてくれるのですよ。様子を見ながらのジョギング(次の実効ポジショニングへの移動!)。それが、攻守にわたる次の勝負プレーへ向けた(爆発)エネルギーの蓄積だと明確に感じさせてくれるというわけです。
この試合におけるフルアムのチーム戦術的な「機能イメージ」は、こんな感じですかネ。両サイドバックの、ボニセルとボルツは、両サイドハーフのマールブランクとマルレとペアを組んだ「前後のポジションチェンジ」をイメージしながら積極的に攻撃参加する・・下がり気味のハーフトリオ、クラーク、稲本、レグヴァンスキーは、(まあ基本的にはレグヴァンスキーが一番の底だけれど)互いに、臨機応変に、前後左右のポジションチェンジをくり返しながら、次の中盤守備でのバランスをマネージする・・もちろん両センターバックのゴーマとジェトゥー、また最前線ワントップのサーアは、できる限り基本ポジションでプレーする・・。
そんななかで、稲本、レグヴァンスキー、そしてクラークの「イメージ・コンビネーション」は冴えわたっていましたよ。もちろんレグヴァンスキーは、基本的には守備的ハーフに徹してはいますが、それでも、たまに上がっていくときにには、稲本とクラークが後方スペースをケアーする。もちろん、その「前後左右のコンビネーション」に、マールブランクとマルレも効果的に参加する・・。
チームメイトの「高い守備意識」に対する互いの信頼関係があるからこその積極的なポジションチェンジ。そんなハイレベルな「戦術的ファンクション」に、稲本が実効ある絡みを魅せている・・。頼もしい限りじゃありませんか。
-----------------
さて、久々に復帰した山瀬功治、先発から登場の田中達也、そして新加入のロシア代表、ニキフォロフが揃ったレッズについてショートコメント。
「あの」ジュビロに、3-1で勝利をおさめました。でも、本当の内容は・・?
ゲームを見はじめて、すぐに感じたことがあります。山瀬効果・・。これについては、ファーストステージ第10節の「マリノス対レッズ戦レポート」を参照してください。それまで、どうしても「規制ファクター」ばかりが目立っていたレッズのサッカーに、「解放の雰囲気」が感じられるようになったのです。
前後分断サッカー・・仕掛けは、後方からのサポートがほとんどないから、「個のドリブル勝負」だけ・・相手守備ブロックが全体的に下がらなければ後方の味方がサポートに上がってくる(攻撃に参加してくる)ことはない・・サイドバックのオーバーラップにしても、守備的ハーフが完全にバックアップ体制に入らなければチャレンジしていかない・・まさにそれは、発展のための唯一の道ともいえる「リスクチャレンジ」のない、「規制が主体になった後ろ向きサッカー」・・等々。そんなレッズのサッカーに、山瀬が加入することで「解放の光明」が見えてきたのですよ。
特に、エメルソンの「変化」が大きい。この試合では、水を得た魚のような大活躍。それも、山瀬という「気心の知れたパートナー」を得たことで、シンプルにプレーするところと、個の勝負にチャレンジしていく状況のメリハリが効くようになったからに他なりません。これまで、どうも無理な状況でもドリブル突破にトライする傾向が強かったエメルソンが、クレバーに(シンプルに)ボールを動かすことで、次の、より効果的な「単独ドリブル勝負の状況」に入っていけるようになったのです。もちろん山瀬は、最初からその状況をターゲットイメージとして脳裏に描写しているから、タイミングを逃さない勝負パスがエメルソンへ出される・・というわけです。
それにしても、レッズのカウンターは鋭い。この試合では、田中達也が先発だったのですが、今のパフォーマンスだったら、確実に永井雄一郎よりも上だと感じます。特に、エメルソンとの組織プレーコンビネーションがいい。要は、(もちろん山瀬も関与するわけですが・・)この二人の間には、永井とエメルソンで組むコンビではあまり感じられない、互いに「使い、使われる」というメカニズムに対する相互理解があると感じるのです(この日の三点ともに、この二人の最終勝負コンビネーションから生まれた!)。もちろん、そんな「あうんの呼吸」があるからこそ、この二人の「個の勝負能力」も最大限に活かされるというわけです。
とにかくレッズには、『何か』の象徴としての「山瀬効果」がどんどんチームに浸透し、自分主体のリスクチャレンジが「規制」を超越していくプレー姿勢を期待している湯浅なのです。守備意識は確実に発展・深化しているレッズなのだから、リスクチャレンジの幅が広がれば、もう一段レベルアップできるに違いない・・。
対するジュビロ。高原が抜け、今度は藤田も抜けてしまったけれど、まだまだ全体的なサッカーの質(戦術的な発想レベル)では一日の長がある。とはいっても、これだけ主力が抜けてしまったら、共通のプレーイメージの質を高みで維持するのは並大抵のことではありません。だからこそ、名波、福西、服部で構成する、ジュビロサッカーの生命線ともいえる中盤ラインが中心になって、サッカーの内容で、他チームに対するアドバンテージを維持しているのは立派としか言いようがない・・。
とにかく、チーム総合力ではまだまだリーグトップに君臨しているジュビロのことだから、能力のある若手のプレーイメージの発展と調整によって、「藤田の穴」を効果的に埋めていくに違いない・・。そのプロセスに対しても大いに興味を惹かれている湯浅なのです。
ちょいと疲れ気味。乱筆、乱文、失礼。