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ヨーロッパの日本人・・今週の稲本と高原・・二人とも「個のパフォーマンス」はポジティブ傾向にあるのだけれど・・(2003年8月25日、月曜日)

両チーム(フルアムとハンブルガーSV)ともに敗れてしまったということで(エバートン対フルアム=3-1、ハンブルク対バイエルン・ミュンヘン=0-2)、ちょいとコメントに勢いが欠けてしまうかもしれませんが、そこはご容赦。それにしても稲本、高原は、数日のうちに2万キロ近くを移動して勝負の試合をこなした(先週末のリーグ戦(欧州)→日本代表のゲーム(日本)→そして今週のリーグ戦(欧州))。彼らにも「本格的な雰囲気」が漂ってきているじゃありませんか。

 ではまず稲本から・・。

 全体的な彼のパフォーマンスに対する印象は、フムフム・・といったところ。えっ?! ワケが分からない? そうなんですよ。私も、ちょいと評価に苦しんでいる・・といったところなのです。

 全体的なプレーのバランスはよかったし、実効レベルもそこそこ。守備では、例によっての「意志が満載されたタメ」からの爆発ダッシュで何度もボール奪取を魅せたし、攻撃でも、シンプルなつなぎ、リスクチャレンジのタテパス、そして勝負所への抜け出し(二度、三度とシュートまで打った!)など、とにかく実効シーンでは、そこそこの存在感を魅せていたのです。でも、ちょっと、攻守にわたる「ボールがないところでのアクションの量と質」にテーマが残った・・といったところなのです。

 この試合では、後半15分ころに途中交代ということになってしまった稲本。そしてその後、フルアムの勢いが目に見えて高揚していきました。そのバックボーンは、中盤ディフェンスと、攻撃における後方からのサポートの活性化。両方ともに、稲本がコアになるべき「プレー要素」です。その視点で、課題が残った(稲本の後の方がよくなった!)。とはいっても、全体的なパフォーマンスは「まあまあ」。だから、フムフム・・。

 とにかく稲本は、攻守にわたって「もっと、もっと・・」と自分自身を追い込まなければならないということです。ここまできたら、後はもう、自分自身の「自覚」の問題ですからネ。

 例えば、相手のボールの動きを「読み」ながら、ボール奪取の勝負所を探るイメージ作り。それがまだまだ甘い。だから、吹っ切れた勝負ダッシュの頻度(実効シーンの頻度)も低くなってしまう。吹っ切れた勝負ダッシュとは、「そこでボールを奪い返す(返せる)!」という確信そのもの。その「確信を固める頻度」が、まだまだだと感じるのです。

 もちろん、「瞬間的」に確信を固めるためには、意識のバックボーン(自分なりの判断基準)が必要。そこにも、まだ甘さがあるということでしょう。だから、「勝負のタメ」と呼べるところまで高揚している「様子見状態」のうちのいくつかが、まだ「意識の低い本当の様子見」になってしまい、その瞬間では、ゲームの流れから取り残されてしまっているということです。まあ、そんな微妙な視点では、この試合での稲本は調子が悪かった・・ということになります。

 とはいっても、プレーイメージの内容自体が(彼の意識自体が)発展傾向にあることは確かな事実。それに対する私の確信は変わりません。(厳しいインターナショナルマッチウイークということも含め)まあ、こんな日もあるさ・・ってなことです。

 それにしてもエバートン。一人として「空虚な様子見」になることなくクリエイティブで実効あるディフェンスを展開したり、少ないチャンスには、吹っ切れた押し上げを魅せたりと、本当によくトレーニングされたチームだと感じます。監督のウデが見えてくる。昨年の好調がフロックではなかったことを如実に証明して魅せたということです。

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 さて高原直泰。

 この試合でのハンブルクは、まさに、試合巧者のバイエルン・ミュンヘンに美味しいところをもっていかれ、完敗を喫してしまった・・ということになってしまいました。

 ホームのハンブルクは、ゲーム立ち上がりから、全力で(もちろん厳しく忠実な中盤ディフェンスを基盤に!)バイエルンを押し込んでいきます。その勢いには、これぞホームゲームといった心理・精神的なバックボーンを感じたものです(フットボールネーションでの、ホームゲームが放つ特別な心理パワーを体感!)。

 それでも、バイエルンの、レベルを超えた守備ブロックの強さに、ペナルティーエリア付近からの最終勝負がままならないハンブルク(まったくバイエルン守備陣のウラを突いていけないハンブルク!)といった展開がつづきます。それに対し、たまに攻め上がってくるバイエルンの繰り出す仕掛けの危険なこと・・。最終勝負のイメージのシンクロレベルが、ハンブルクよりも一回りも二回りも高質なのです。基本的な「個の能力レベル」でバイエルンが凌駕していることは疑いのない事実なわけですが、それに、ハイレベルにシンクロした「組織的な仕掛けイメージ」も加味されている・・。強いはずだ。

 中盤での素早いコンビネーションでイェレミースがフリーになる・・最前線でタイミングを推し量っていたマッカーイがアクションを起こす・・彼をマークしていたハンブルクの協力センターバック、ウイファルジの背後スペースへ移動をスタートしたのだ・・それは、ゼ・ロベルトから、イェレミースへパスがわたる直前のタイミング・・それが全てだった・・イェレミースには、マッカーイの勝負の動きが「事前」から明確に見えていた・・そして、パスをワントラップしたイェレミースから、素早いタイミングでの決定的スルーパスが飛んだ・・最後は、ハンブルクの守護神、ピーケンハーゲンの奇跡的な飛び出しでコーナーに逃れることができたが、まさにハンブルガーSVの心臓をえぐるようなチャンスメイクだった・・(前半39分)。

 もちろんピサーロの先制ゴールの場面でも(前半14分)、一瞬の「ウラ取り」が勝負を分けました。右サイドでボールを持ったサニョールがルックアップした瞬間、ゴール中央ゾーンにいたピサーロが決定的アクションをスタートする・・同時にそれは、彼をマークしていたホークマが、一瞬、サニョールへ向けて視線を投げた瞬間でもあった・・かれは、その瞬間を逃さず、ファーサイドスペースへスタートを切ったのだ・・そしてサニョールから、ギリギリのところで一山越える(ホークマのアタマを越える)決定的クロスが飛び、ピサーロが、ヘディングで確実に決めた・・。

 この二つのシーンに象徴されるのが、バイエルン選手たちに浸透し、彼らが共有している最終勝負のイメージというわけです。彼らは、「オッ、ここが勝負所になる・・」という雰囲気を嗅ぎつけるだけのイメージトレーニングを積んでいるということです。もちろん、多くの新メンバーが加わった昨シーズンから、チームが一つのまとまってきたということもあるでしょう。

 この試合では、典型的なアウェーゲームを完璧なカタチで展開し、結果までもぎ取ったバイエルン(ハンブルクにとって、ベンジャミンの退場は確かに痛かったけれど、それがなくても、やはり内容でバイエルンに一日以上の長があった!)。

 強固なディフェンスも含め、今シーズンもやはり彼らがリーグ優勝候補の筆頭。もちろんチャンピオンズリーグでも、攻守にわたってチームとしてまとまった(世界最高峰の守備意識・・だからポジションなしのサッカーという理想型に近づいていける・・このテーマについては、以前のスポナビの記事を参照してください!)バイエルン・ミュンヘンは注目株筆頭です。

 この試合には、もう一つ別な視点からも示唆がありました。それは、組織プレーの発想(チーム戦術的なアイデア)が同じレベルにあるチーム同士の対戦では、やはり最後は「個人のチカラの差」によって勝負が決まってくる・・ということです。

 そこは、「組織ロジックが前面に押し出される国」ドイツですからネ。やはり、攻守にわたる組織プレーの徹底度は、どのチームも世界最高峰なのです。だから最後は、「個人の特異な能力とアイデアの内容」によって勝負が決まってしまう。だからこそ、「組織プレーと個人プレー」が絶妙にバランスした猛者の集団であるバイエルン・ミュンヘンが強さを発揮する・・。まあ、ロジックが前面に押し出され過ぎる(組織プレーの徹底度がレベルを超えている)ドイツサッカーは魅力に欠ける・・という視点もあるわけですがネ(このテーマについては、「個の再生」という視点で、またこれからもより深く掘り下げていきますので・・)。

 さて高原直泰。良かったですよ。発展ベクトルは、確実に、そして堅実に「太さ」を増していると感じます。とはいっても、やはり相手が相手だから(とにかくディフェンスが強いバイエルン!)、チャンスを作り出すというところまでは行けない。

 それでも後半14分には、この試合唯一といっていい、バイエルン最終ラインの「ウラ」を突いた決定的チャンスのコアになりましたよ。

 右サイドに開いていたバルバレスが、中盤からのパスを、ダイレクトで高原へ送り込んだ・・高原とバルバレスは、その直前の段階で、明確なアイコンタクト意志疎通をしていた・・だから高原は、バルバレスがパスを出す前の段階で、彼をマークしていたロベルト・コバチを振り切って、ニアポストゾーンのスペースへ走り込んでいた・・そこへ正確なパスが、バルバレスから飛んだという次第・・それをワントラップし、迫りくるコバッチの眼前スペースへコントロールしてしまう高原・・まさに、ストライカーのボールコントロール(ボールを、マーカーを身体で抑えられるところへコントロールしてしまう技術!)・・そして右足一閃!・・誰もが「アッ、同点ゴールだ!!」と思ったに違いない・・でも次の瞬間、バイエルンのスーパーGK、オリバー・カーンの右手が、ギリギリのところで高原のグラウンダーのシュートを抑えてしまう・・まさに、読みの一発セービング・・見事の一言・・とはいっても、それが、高原が作り出した決定的チャンスだったという事実は崩れない・・でもアレは決めなければ・・という不満も残るけれど・・。

 ハンブルクのクルト・ヤーラ監督は、ベンジャミンが(後半7分に)退場になったということで、ディフェンダーを一人入れなければならなくなりました。その交代要員は、高原かロメオか・・。結局ヤーラ監督は、高原をグラウンドに残すという決断をしました。まあ「プレー内容」からすれば自然な決断。攻守にわたる、ボールなしの積極&忠実プレー、ボール絡みの意を決した(自信にあふれ、実効が伴った)仕掛けプレー(何度も、正しい状況でのドリブル突破にチャレンジし、大きな可能性を感じさせた!)等々、高原の存在感は、確実にロメオよりも輝いていましたからネ。

 さて、開幕4戦で「1分け、3敗」となってしまったハンブルク。チームとしてのまとまり、ゲームの実質的な内容では合格点なのですが、どうも数字的な結果がついてこない・・。

 ハンブルクのマネージメントは、その「ファクト部分」を正確に評価するとは思いますが・・。もちろん、チーム首脳による、危機感を「バランスよく」煽る(ポジティブな緊張感の高揚!)言動は、この状況ですからものすごく大事になってきますから、どんどん「仕掛けて」いかなければなりませんが、逆にこの状況だからこそ、「バランスを欠いた」言動は、チーム状況を劇的に悪化させてしまうことも、歴史が証明している事実なのです。

 その意味でも、この厳しい状況でのハンブルクの「全体チームマネージメント」にも注目している湯浅です。




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