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ヨーロッパの日本人・・UEFAカップ一回戦のショートレポート・・ハンブルク対ドニエプル(2-1)、フェイエノールト対ケルンテン(2-1)・・(2003年9月26日、金曜日)

さて、高原直泰も先発したハンブルク対ドニエプル戦ですが、とにかく試合の構図が明確でした。アウェーのドニエプル(ウクライナの強豪クラブ)は、しっかりと守って数少ないカウンターチャンスに賭ける・・ホームのハンブルクは、相手の強化守備ブロックを何とか突き崩していこうとするけれど・・。

 それでも立ち上がりの数分間は、まだゲームの構図が明確ではなかったことで、ハンブルクが何度も決定的チャンスを作り出します。要は、ゲーム立ち上がりの「危険な時間帯」ということです。選手たちのプレーイメージがまだ浮ついているために、特にディフェンスで穴が空き気味になってしまうということです。バルバレスからの決定的なタテパスがロメオへ飛ぶ・・マハダビキアからの決定的クロスがバルバレスのヘッドに合う・・。決めなければいけない決定的だったのですが、そんなチャンスを逃したハンブルクが、ドニエプルが繰り出した一瞬のカウンターにやられてしまいます。まさにワンチャンスのカウンター。前半9分のことです。それも、最後は一人の選手にハンブルク守備陣が翻弄されて決められた失点。まあ、ショッキングな先制ゴールではありました。

 ドニエプルは、ウクライナのチームらしく、しっかりとしたテクニックを基盤にした組織パスプレーを基調に、本当にクレバーなカウンターを繰り出していきます。ホームのハンブルクが常に「前で勝負」を仕掛けてくることを念頭に置いた、カウンターをイメージした素早い組み立てを魅せるのです。そして「前に重心がかかった」ハンブルク守備ブロックのウラを突くような素晴らしいタイミングとコースのタテパスを飛ばす・・。それは、それは危険で効果的なカウンター攻撃なのですよ。そんなクレバーなプレーが先制ゴールにつながったというわけです。ハンブルク守備ブロックの視線と意識を引きつける中盤での「タメ・ドリブル」・・そしてそこからの一発のタテパス・・最後は、ドニエプルのエース、ヴェンツリンスキーの魔法のドリブルシュート・・。フ〜〜。

 先制ゴールの後は、ゲームの構図がより明確になってきます。完璧に守備ブロックを固めるドニエプルに対し、とにかくパワープレーで、その壁を突き崩そうとするハンブルク。それでも、何せドイツ的なパワープレーですからね。強引に相手をはね飛ばしたらファールだぜ・・ってな雰囲気なのですよ。とにかく直線的に相手ゴールへ迫ろうとし過ぎるハンブルク。もっとドリブルとパスをメリハリ良くミックスするだけではなく、サイドゾーンを活用したクロスを明確にイメージしたり、相手守備ブロックの後方からのロングシュートを飛ばしたり等々、攻撃に変化をつけなければいけません。それがあってはじめて、ドニエプルの守備ブロックを大きく動かす(ある程度振り回す)ことで、相手ディフェンスに「薄い部分」を演出することができるというわけです。

 それはそうです。サイドを突いていけば(そこに相手守備が集まるから)勝負のサイドチェンジのチャンスが増えるし(そこから、余裕をもったラストクロスやセンターへの攻め込みができる!)、ロングシュートを打てば、相手守備ブロックは上がらざるを得なくなるから、決定的ゾーンにスペースができる・・ってな具合です。

 「ゲームの構図」が崩れてきたのは、(後半早々に)ハンブルクがPKで同点にしてからでしょうか、ドニエプルが、強豪チームであることを徐々に示しはじめたのです。高いテクニックと、落ち着いたパス回し。彼らは、世界に勇名を馳せるディナモ・キエフとウクライナリーグを競り合うチームなのですよ。

 後半の中盤の時間帯では、ハンブルクもタジタジという高質なサッカーで攻め上がってくるドニエプル。もちろんそれは、逆にハンブルクのチャンス・・になるはずだったのですが、どうもうまく攻め上がれない。ハンブルク選手たちの「仕掛けイメージ」が完全にブレていると感じます。パスの周りが遅いし、仕掛けプロセスにも確固たるモノが感じられない。だから、イメージが連鎖するという雰囲気にならない・・。

 これは、このままかな・・なんて思いはじめた後半35分。やってくれました。バルバレスとロメオのコンビ。まず、交代したラインハルトからのタテパスと、バルバレスのタテへの抜け出しがピタリと一致します。そのタテパスを、まさにイメージ通りのタイミングで、ダイレクトでクロスボールを上げるバルバレス。ボールは、ロメオがイメージした通りの軌跡を描き、彼が入り込んだファーポストサイドのスペースへ正確に飛んでいったという次第。

 そこからは、ドニエプルがガンガンと攻め上がっていった分、逆にハンブルクの追加ゴールチャンスが増えていきました。

 中盤で攻守にわたって活躍していたヤロリームとカルドーソの交代ですが、まあ最後はうまくいったから良かったものの、ドニエプルが実力を発揮して攻め上がってきたことで、ヒヤヒヤものでしたよ。何せカルドーソが中盤にいる場合、そこが守備の穴になってしまうケースが多いですからネ。たぶんハンブルクのベンチは、「ドニエプルの攻めだったら、カルドーソでも大丈夫・・」とふんだのでしょうが、実際は・・。

 まあそれでも、カルドーソが起点になった組み立ても出はじめたから、結果オーライってことでしょう。それにしてもこのゲームは、数日前のローシュトックとのリーグ戦と、まったく同じ展開になりましたね。しっかり守ってカウンターを仕掛けてくる相手に先制ゴールをたたき込まれたハンブルクが、粘りに粘って逆転勝利をモノにした・・。そこでは選手交代がツボにはまったという類似点もあります。ローシュトック戦では、ロメオとラインハルトの交代出場がツボにはまり(この二人がゴール!)、この試合でも、カルドーソとラインハルトの交代が効いていた・・。

 薄氷の勝利。まあ、そんな厳しいゲームは、歯車のかみ合わせがちょっと狂っているハンブルクにとっては確実にポジティブな復調機会になるでしょう。彼らは、そんなハードな勝負を通して調子を取り戻していくはずです。

 この試合での高原直泰は、二度、三度と、相手を振りきるようなドリブル突破や惜しいパスを魅せるなど(シュートチャンスは一度くらいでしたかネ)、何度か良いシーンはあったものの、全体的な出来については、チームの状態に準ずるという評価が妥当でしょう。要は、そんなに効果的にプレーできたわけではないということです。まあそれは、マハダビキア、ロメオ、バルバレスにも言えますけれど・・。

 膠着状態のなかでうまく攻撃の変化を演出することができずに攻めあぐみつづけたハンブルク。そんな停滞した雰囲気のなかで、高原も含む前線の誰もが沈滞プレーに終始したということです。まあたまには、ウイファルジなどの「後方から上がってくる驚き」が相手守備をパニックに陥れるというシーンもありましたが・・。

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 さて、ホームのフェイエノールトが、オーストリアのケルンテンを迎えた一戦。小野伸二は先発です。基本タスクは、二列目でのチャンスメイク。ケルンテンについては、昨シーズン、友人のクリストフ・ダウムがオーストリア・ウィーンの監督をしていた関係で、そこそこ良いサッカーをやる・・といった程度の情報は聞いていました。

 フタを開けてみたら、この試合も、ハンブルク対ドニエプル戦とまったく同じ展開になりました。アウェーのケルンテンは、人数をかけて守りながら必殺のカウンターやセットプレーでの得点を狙う・・対するフェイエノールトは、(相手が下がっているから)人数をかけて攻め上がり、何とかケルンテン守備ブロックに風穴を明けようとするけれど、結局は、攻めあぐみつづけてしまう・・。

 そんな「内容的なプロセス」ばかりではなく、ゴール経過についても、ハンブルク対ドニエプル戦と酷似していたんですよ。守るアウェーチーム(ケルンテン)がワンチャンスをモノにしてリードしていたけれど、最後はホームチームが追いつき、追い越すことに成功する・・。まあ得点の時間や内容は、ハンブルク対ドニエプル戦とはちょっと違いましたがね。試合経過を一気にまとめましょう。

 攻めあぐむフェイエノールト・・それに対し、たまに危険なカウンターを仕掛けていくケルンテン・・二度、三度と、粘りのシュートチャンスを作り出す・・見はじめてすぐに、彼らが、特にセットプレーがうまいと気付く・・本当に、良くトレーニングされている(イメージがシンクロしている!)・・ケルンテン選手たちもそれを意識してカウンターを仕掛けているとも感じる・・セットプレー獲得するようにファウルを誘ったり、コーナーキックに逃げざるを得ない状況に持ち込んだりするケルンテン・・それに対しフェイエノールトの攻めは、まさに単調・・ケルンテンの守備ブロックが虚を突かれるという雰囲気を演出することがままならない・・変化の演出を期待された小野伸二も、ドリブル突破にトライする姿勢(リスクチャレンジ姿勢)が目立たないだけではなく、タメの演出や決定的パスを繰り出すこともままならず、つなぎパスを回すだけの、その他大勢のプレーヤーになり下がっている・・そんな雰囲気のなか、後半10分にケルンテンがCKから先制ゴールを挙げる・・してやったりのケルンテン、その後の彼らが守備ブロックを厚くするというイメージでプレーしたことは言うまでもない・・これは難しいな、なんて思いはじめた後半13分、ファン・マールヴァイク監督が、小野を引っ込めラゾヴィッチを投入する・・まあプレー内容的には(小野に決定的な仕事を期待できないという事実があるから)仕方のない交代だとせざるを得ない・・ただこの交代をキッカケに(いや実際には、先制ゴールを奪われ、フェイエがホームで0-1という劣勢に立たされたことで!)、フェイエノールトの攻めの勢いが大きく増幅していった・・そして後半18分、(後半から入った)ファン・ペルジーの魔法のように曲がるCKから、中央ゾーンで相手にピタリとマークされていたカイトが、これまた曲芸のような身のこなしで(一瞬で相手マークの背後に回り込む!)、最後は右足のアウトサイドのボレーキックで同点ゴールを決めてしまう・・また後半31分には、ダイナミックになったフェイエ攻撃のイメージそのままに、ブッフェルとラゾヴィッチの「大きなダイレクト・ワンツー」による決勝ゴールが入る・・その経緯はこうだ・・後方からのタテパスを、弾くようなダイレクトでタテパスを出したブッフェルが、そのまま決定的スペースへスタートしていく・・弾かれたボールは、ラゾヴィッチが狙うタテのスペースへ・・ラゾヴィッチは、そのまま(最初に描いたイメージそのままに・・もちろんブッフェルが走り込んでくるという明確なイメージをなぞるように!)、これまたダイレクトでゴール前へのラストクロスを返す・・そこへピタリのタイミングでブッフェルが入り込んでいたという次第・・スーパーゴール!!・・そしてその後は、フェイエが危なげなく守りきった・・。

 どうも「試合経過が主体」で申し訳ありませんが、この試合については、そんなところでしょう・・。

 主力を放出し、一度どん底へ落ち込んだフェイエノールト。これから若手&新規加入選手たちを中心に、再び「イメージ・シンクロ状態」を高揚させていく作業が待っています。ファン・マールヴァイク監督の手腕が問われるわけですが、小野伸二には、是が非でも、仕掛けのリーダーシップなどの主力を張ってもらいたいと願っているのは私だけではないでしょう。さて・・。




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