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ヨーロッパの日本人・・今週は、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一、そして中田英寿をレポート・・また講演のお知らせも・・(2003年9月29日、月曜日)

今週は、まず中村俊輔から入りますが、とにかくこの試合(レッジーナ対ユーヴェントス)を観ていて、ユーヴェのクレバーな勝負強さに舌を巻いていましたよ。

 試合後に表示される様々な数字比較表。ポゼッションでは、「28%対24%」でレッジーナ、コーナーキックでも「9対0」でレッジーナ。これだけ見れば、いかにレッジーナが押し込んでいたかというゲームの流れは一目瞭然ですよネ。でも、シュート数とゴール数はというと、とたんに逆転して「5対6」と「0対2」でユーヴェに軍配があがってしまう。イタリアのツボの権化?! まあそういうことなのでしょうが、それにしても徹底度が違うと感じます。言葉を換えれば、ゲームの(アウェーの?!)ゲーム運びに関する感覚的な合意事項が、心の奥底まで染み込んでいる・・そのイメージを実行しつづける集中力が、最後の最後まで途切れることがない・・なんて表現できますかネ。それは、それは凄い迫力ですよ。基本中の基本を、あれだけの能力の連中が、100パーセント遂行しつづけるのですからね。

 ゲーム立ち上がりから押し上げていくホームのレッジーナ。そのエネルギーの中心は、言わずと知れたバイオッコ。とにかく攻守にわたって完璧な中心選手として目立ちつづけます。その彼を、後方からサポートするのがモザルト。中村俊輔は、この試合でも先発でしたが、最初の15分間は、まったく流れに乗れずに右往左往するばかり。ボールが集まるバイオッコやモザルトにしても、動かず、足許パスばかりを要求する中村を無視して、どんどんと前線へパスを送り込むのです。

 そんな積極攻撃を展開するレッジーナですが、やはりユーヴェの守備は堅い。まったくといっていいほどチャンス演出することができないレッジーナなのですよ。逆に、たまにユーヴェが繰り出すカウンターの鋭く、危険なこと。まあ彼らの場合、前線には、ネドビェド、ディ・ヴァイオ、アッピア等のレベルを超えた才能を揃えていますから、局面での仕掛けの内容が(人数をかけていないとはいいながら)レベルの高いものになるのも道理といったところです。あっと・・ここはディフェンスはのハナシでしたよネ。私が言いたかったことは、やはり最後にモノを言うのは、最終勝負の瞬間におけるディフェンスの質だということです。その視点で、やはりユーヴェに一日の(以上の?!)長がある・・。

 前半にユーヴェが挙げた先制ゴール場面。右サイドのネドビェドから送り込まれたグラウンダークロスに、レッジーナGKとディフェンダーが交錯してしまい、こぼれたボールを、ディ・ヴァイオが「ゴッツァン・ゴール」を決めたというゴールでした。ここでは、ディ・ヴァイオをマークすべきだった別のレッジーナディフェンダーが、GKを中心とした「ゴチャ・ゴチャ・シーン」に視線が引きつけられて「意識の空白」状態に陥ってしまったことが責められます。

 また後半の追加ゴールのシーンでは、ゴールを決めたネドビェドに対するマークがいい加減でした。そのレッジーナディフェンダーは、パスが通った後も、副審を振り返ったりして(オフサイドじゃないの?!)。まあ、何をか言わんや・・です。

 またその数分後には、一発ロングパスカウンターが、決定的スペースへ走り抜けるスピアヘッド(矛先)ディ・ヴァイオに、ピタリのタイミングで合いましたよ。もちろんレッジーナのディフェンダーは完全に置き去り。そんなところが、直接的にゲームの結果(0-2でユーヴェの完勝!)に結びついたということです。まあとにかく、巧みなアウェーの戦い方も含めて、久しぶりにイタリアのツボを堪能させてもらいました。

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 さて中村俊輔。フラストレーションがたまる立ち上がりの15分間でしたが、それ以降は、徐々にプレーの実効レベルも上がっていきました。その背景には、「こんな」内的な変化(=自分自身を見つめ直し、行動をセルフモティベートするような変化)があったのかもしれない?!

 「あっ、パスをもらえない・・パスが回ってこない・・たぶんそれには、オレの動きが足りないこともあるに違いない・・もっとボールなしのところで動かなければ・・もっと守備にも積極的に絡んでいかなければ・・」

 そして、徐々に彼にもボールが集まりはじめたことで(ボールタッチ頻度が高まったことで)良いプレーができるようになっていきました。彼の場合は(まあ小野もそうですが・・)とにかく、なるべく多く「良いカタチ」でボールに触ることが絶対的なテーマなのですよ。

 とにかく中村にとっては、自分のプレー内容が好転するまで、バイオッコに(モザルトとともに)ゲームメイカーとチャンスメイカーを兼任されていたことは反省材料です。そんな状態が、時間の経過とともに少しずつ変化していき、徐々に中村が仕掛けプロセスでイニシアチブを握れるようになっていったのです。もしかしたらベンチから指示が飛んだのかもしれません。明確な背景は分かりませんが、とにかく、徐々に彼ら(バイオッコとモザルト)が、意識して中村へボールをつなぐようになったことは確かです。

 まあ、仕掛けという意味では、やはり中村の方がより実効レベルが高いと再認識しはじめたという背景もあるのでしょう。何といっても、それまでは、全ての仕掛けがユーヴェ守備ブロックにはね返されていましたからね。

 全体的には、まあまあの出来だった中村俊輔。それでもこの試合では(相手が、守備が上手いユーヴェということもあって?!)、中村のチャンスメイクプレーに「広がりがない」という印象を持ってしまいました。

 たしかに良いカタチでボールに触れるようになってからは、決定的シュートを放ったり(ディ・ミケーレからのラストパスを素早く叩いた!)、中央ゾーンへ切れ込んでいく鋭い突破ドリブルを魅せたり、実効ある仕掛けパスも飛ぶようになりました。やはり中村の才能レベルは高い・・、でもどうも変化の幅が足りないと感じるのですよ。

 もっと、パス&ムーブを基調にしたシンプルなコンビネーションプレーを自ら仕掛けていったり、もっと積極的にドリブル突破にチャレンジしたり(突っかけていく素振りをするだけでも大きな効果がある!)等々、一発勝負パスでの崩しをイメージするだけではなく、シンプルな組織プレーと個の勝負をうまくミックスするなど、様々な仕掛けプレーをイメージしていかなければなりません。また、攻守にわたって、ボールがないところでの全力ダッシュシーンも、まだまだ少ないし・・。「凝り固まった」というイメージも感じられるこの試合での中村のプレーを観ながら、そんなことを考えていたのです。そこでの評価基準は、もちろんフランス戦と、前節のブレシア戦でのプレー内容ですよ。

 またこの試合の中村は、(バイオッコがあまりにもダイナミックなプレーを展開していたから?!)ディフェンスがおざなりに過ぎるという印象を受けました。ボール絡みでも、ボールのないところでも。「行ける」のに、仕掛けていかない・・。無為な様子見状態が多すぎる・・。

 まあ、試合によって(相手によって)パフォーマンスにバラツキが出てくるのは当然ですが、その「振幅」を、なるべく高みで安定させるというのが今の彼のテーマでしょうネ。そのためにも、豊富な運動量をベースに(走ることを忘れたら、確実に心理的な悪魔のサイクルに捕まってしまう!)、攻守にわたって自ら仕事を探しつづけるというプレー姿勢(強い意志)を、常にブラッシュアップしつづけなければなりません(効果的イメージトレーニングのことですよ!)。

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 さて、中村の項でもちょっと触れた小野伸二。どこで触れたかって? この二人にとっては、良いカタチでボールに触ることがテーマだ・・という部分です。

 まさにその視点で、(このゲームでも)小野が明確な課題を抱えていると再認識した次第。たしかに彼が挙げた2ゴールは素晴らしかったですよ。二つとも、最後の瞬間に、相手ゴール前の決定的スペースへ入り込んだダイレクトシュート。まさに目の覚めるようなスーパーゴールでした。それでも、攻守にわたる全体的な出来については、不満がつのっていました。何故もっと動きまわってボールに絡まないんだ・・。

 彼の場合、中盤でボールが動いている段階で、決定的スペースへ上がっていってしまう等、どうも一発のパスをイメージしたフリーランニングが多すぎる。だから、ボールを動かさなければならない段階のコンビネーションに絡むというシーンが少ない。もちろん決定的スペースでのパスレシーブプレーも「あり」だけれど、そればかりではネ・・。

 小野伸二は、もっと、ボール絡みのフリーランニングも意識しなければいけません。要は、味方ボールホルダーへ「寄る」ような動きもミックスするのです。そしてシンプルにボールを動かすことで、コンビネーションの起点になりましょう。そんなリズムのプレーがつづけば、確実に、彼を中心に「仕掛けのボールの動きの輪」ができるに違いありません。それこそ小野が得意とする「プレーリズム」じゃありませんか。この試合でも、立ち上がりの10分間くらいは、良いリズムで、小野を中心にしたボールの動き(仕掛け)が演出されていたのに・・。

 まあ、良くなっていることは確かですから、その流れを加速させるために、より極端に「ボール絡みのプレー」を意識してもいいということです。もちろんそのためには、もっと守備にも積極的に絡んでいかなければいけません。ボール奪取ポイントこそが、次の仕掛けの起点であり、その起点の「移動の軌跡」が、仕掛けのメインコースになるケースが多いですからネ。

 まあ、これまで守備的ハーフとして活躍した小野ですから、前気味ハーフのタスクを存分にこなせるようになるまでには(自分主体で仕事をさがし、実効プレーにつなげられるようになるまでには)もう少し時間が必要ということなんでしょう。

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 最後に、稲本潤一と中田英寿を短く、短くまとめましょう。

 稲本潤一については、基本的に前節と同じ内容になります。攻守にわたって、どんどんとプレーが活性化し、自信レベルを深めつづける稲本潤一・・。

 この試合でも、彼のプレーに、セキュリティー(安全第一)プレーとリスクチャレンジプレーのハイレベルなバランス感覚が目に見えていた・・これから発展が楽しみで仕方ない・・。とにかく、近頃の彼のプレーには、威厳さえも感じられるようになっていると思っているのは私だけではないはずです。日本の若者が、外国の強者たちに混ざって存在感を発揮している・・。そんな現象ほど、我々のアイデンティティー(ここでは、誇りに思える何かを持っていること・・なんて定義しておきます)を高揚させてくれる現象はありませんよね。稲本潤一のこれからの発展が楽しみで仕方ありません。

 さて、今節のシエラ戦ではベンチスタートということになった中田英寿。

 後半25分頃に彼が入ってから、明確に、パルマのゲーム内容がダイナミックに変身していったと感じます。それまで、シエラが展開する忠実で迫力ある中盤ディフェンスに押され、自分たちのゲームができていなかったパルマ。それが、マルキオンニと交代した中田英寿が展開する積極ディフェンスという刺激に触発されるように、チーム全体の守備意識がどんどんと高揚していったと感じるのです。それに応じて、次の攻めでの勢い(ボール絡み、またボールなしの状況で相手守備へチャレンジしていく姿勢)が段違いに活性化していった・・。そしてパルマは、アドリアーノ同点ゴールだけではなく、その後も決定的チャンスを作りつづけた・・。

 やはり守備がすべてのスタートラインだ・・。中田が入った後のグラウンド上の現象を観ながら、またまた、そんな普遍的コンセプト(概念)を反芻していた湯浅だったのです。それにしてもパルマは、惜しい勝ち点「2」を失った・・。ゲーム終盤の流れからすれば、確実にパルマが逆転勝利をおさめていてもおかしくなかったですからネ。あっと・・またまた「タラレバ」のハナシになってしまって・・。

 日本代表ミッドフィールドにおける「前後のコア」でもある中田英寿と稲本潤一。彼らの高みで安定したパフォーマンスは、心強いことこの上ありません。

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 高原直泰については、今週アップされるスポナビで書く予定です。そちらも参照してください。では今日は、このあたりで・・。

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 ところで、10月15日に、またまたボランティア講演をすることになりました。

 それは、「川崎サッカー市民の会」という市民団体が企画・運営するサッカーイベントです。10月1日から、毎週水曜日の1900〜2030時まで行われるとのこと。その一環として、10月15日に、私も講演することになったという次第。「欧州サッカー事情」という私の講演の後には、浅野哲也さん(サッカー解説者、元日本代表)、植田朝日さん(日本代表サポーター)、大杉さん(俳優)等が参加するパネルディスカッションもあるそうです(私は最初の45分間の基調講演だけ)。

 場所や、時間などについては「こちら」を参照してください。また、会場となる幸市民館のホームページもありますので・・。




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