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フェイエノールト&パルマの国際親善マッチ・・それはそれで、思いついたポイントはありましたよ・・レッズ対フェイエノールト(2-2)、セレッソ対パルマ(2-2)・・(2003年6月4日、水曜日)

そうだ、いけいけ!! 例によって、思わず声が出てしまって・・。開始早々に、フェイエの左サイドバック、ジョンサへ、エメルソンが強烈なタックルを見舞ったのです。その直後には、山瀬がドリブルで持ち込んで、フェイエノールトゴールの左ポストを直撃する惜しいシュートを放ったりします。「そうだ、何としても先制ゴールをたたき込んでやれ!」。またまた声です。

 とにかく、相手を「本気」にさせなければ、レッズのトレーニングにだってなりゃしない。何せ、ファン・ホーイドンク、ボスフェルト、エマートン、ブッフェル、カルー等、主力抜きのフェイエノールトですから、怒らせることで本気サッカーをやってもらわなければ・・。

 そんなことを思っているうちに、フェイエが先制ゴールを決めてしまいます。前半18分、ボンバルダが仕掛けたベストタイミングでの抜け出しフリーランニングに、うまく持ち込んだパルドからのスルーパスがピタリと合ったのです。そして、ボンバルダの落ち着いた左足シュート。ボールは、見事にレッズゴールの右隅に吸いこまれていきました。まあここら辺りはサスガとしか言いようがない。

 ゲームですが、最初の5分以降は、完全にフェイエノールトがペースを握るという展開になっていきます。とにかくボールの動きがレベルを超えている。やはり本場サッカー。選手たちに共通する組み立てと仕掛けイメージ(リズム)があると感じます。もちろん選手たち一人ひとりの確かなテクニックが背景なのですが、それにも増して、「このリズムでボールを動かす・・ここで仕掛けに入る・・」という共通した戦術イメージがサスガなのですよ。もちろんその基盤は、ボールのないところでの選手たちの動き。ボールと選手たちの動きが、本当にハイレベルの「有機連鎖」を魅せるのです。またその動きに、組み立て段階と仕掛け段階で、しっかりとしたメリハリがあるとも感じます。

 ピタッ・トン、ピタッ・トン、ピタッ・トン、という素早いリズムでのパス回し。そして最後には、ダイレクトでのピシッという正確なタテパスやスルーパスが繰り出される。爽快なことこの上ありません。

 仕掛け段階にはいったときの、フェイエ選手たちのボールがないところでの決定的フリーランニング。その速さ、走る距離、そして相手守備が描くイメージのウラを突く「質」が素晴らしい。レッズ守備ブロックは、ボールの動きに視線と意識を吸い付けられていますから、その動きに付いていけない。

 先制ゴールシーンでのボンバルダの動きにしても、ゴールラインに平行に走りながら、最後のタイミングで瞬間的に加速し、決定的スペースへ抜け出していくというハイレベルなものでした。とにかくフェイエノールトが繰り出す、タテ、ヨコ、ナナメの決定的なフリーランニングの質は、確実にレッズ選手たちのイメージの範疇を超越していました。そして、そんな選手の動きと、決定的なボールの動きが、どんどんと「連鎖」する。

 レッズは、例によってマンマーク傾向が強いですから、一度でも「視線のウラ」を突かれて置き去りにされたら、カバーリングがうまく機能しなくなります。そして、素早く、広くボールを動かされることで、足が止まり気味になってしまう。こんなところにも、戦術的な発送の差を感じます。選手たちが描くイメージを超越したプレーをされると、途端に思考が停止してしまう・・。

 また攻撃でも、例によって「個の勝負」が中心ですから、どんどんと局面で潰されてしまう(組織的にボールを動かすには、上がってくる人数が絶対的に少ない=それがチーム戦術だから仕方ない!)。フェイエ選手たちには、レッズの次の展開が明確に「見えて」いたことでしょう。まあ、「個の単発プレー」のツギハギサッカーだから、それも道理。そして、どんどんと(意図的に)局面勝負に追い込まれてボールを奪われてしまうレッズなのです。一対一の勝負じゃ、まだまだ差がありますからね。

 そんな心理的にも押され気味のレッズでしたが、後半は良いリズムで立ち上がり、積極的に攻め上がっていきます。正確なクロスから、後半に交代出場した田中達也が決定的なヘディングシュートを放ちましたしね。それでも、これは・・なんて思っていた後半12分には、右サイドを突破したレオナルドのセンタリングを、レッズGKがキャッチミスし、そのこぼれ球を再びボンバルダに決められてしまう・・。「あ〜〜あ、これで、フェイエに余裕を持ってゲームをコントロールされてしまうんだろうな・・」なんて思ったものです。ところが・・。

 その後のレッズの攻勢が、まさに「チーム戦術」を完全に超越するものに変容したのです。何といっても「2-0」ですからね、ここで「戦術から吹っ切れ」なければプロじゃない。全員が押し上げる厚い攻撃を展開しますから、ボールの動きにも勢いが乗っていくのも道理。スパッ、スパッと鋭いパスが通るのですよ。そして、両サイドばかりではなく、山瀬の代わりに二列目に入った長谷部や、守備的ハーフの鈴木啓太たちもどんどんと「前を追い越して」仕掛けていく。

 もちろんそれには、フェイエノールトが全体的に下がり気味(守備が受け身で消極的)になったこともあるのですが、それにしても・・。その勢いには本格感があったのです。中断前のマリノス戦を見ているような・・。田中達也のヘディングシュートや、エメルソンの「これぞエメ!」というドリブルシュートも見事でした。

 このゲームは、レッズにとって、「凝り固まったイメージを解放する」という意味でも良い刺激になったに違いない・・。彼らの場合は、とにかく「戦術という呪縛」から解放される機会の増えることが(解放された積極サッカーの体感を積み重ねることが)重要な意味を持ちますからね。その視点では、フェイエノールトに、ミスからの二点目を決められたのは「怪我の功名」だった?!

 チーム全体がしっかりと押し上げれば高質な組織プレーも展開できるし、それが出てくれば、「個の才能」もより効果的に活かされる・・そんなふうにチーム全体が押し上げていけば、相手だって下がらざるを得ないし、「その時点で前後のバランスを司る大人」として中盤に一人が残っていさえすれば、そう簡単にカウンターを仕掛けられることもない・・もちろん、全体的に押し上げていても、何らかのアウトオブプレーで終わりさえすれば、戻る時間は十分にある・・っちゅうことです。

 そんなサッカーのメカニズム(リスクと確実性が微妙に絡み合うメカニズム!)を「再び」体感できただけでも、レッズにとって価値のあるトレーニングマッチだったとすることができそうです。

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 さて、中田英寿のパルマと、(Jリーグで)攻守にわたって「吹っ切れた」爽快サッカーを展開しているセレッソとの対戦。

 いや、ホント、面白かった〜〜っ! 結局こちらも「2-2」で引き分けてしまったのですが、実際には「8-4」くらいでパルマの勝利という内容でした。まさに攻め合いのエキサイティングマッチ。もちろんそれには、フレンドリーマッチということで、また怪我も怖いパルマの当たり(マーク&プレス)が緩かったこと、また例によってのセレッソの「肝心なところでの軽い」ディフェンスが背景にありました。要は、両チームともに守備が甘かったことで、両チームともに「戦術から解放された爽快な攻撃サッカー」が全面に押し出されたということです。もちろんそれは、このゲームのミッションが「勝利すること」ではなかったからに他なりませんがね。

 前半はカッタるかった中田英寿も、後半には、戦術から解放されたダイナミックプレーを展開しましたし(久しぶりにトップ下でプレーし、例によって攻守にわたってクリエイティブな実効プレーを展開!)、セレッソの徳重や西澤、後半から登場した大久保たちも、存分に持ち味を発揮しました。特に大久保が素晴らしかった・・というか、このような「解放されたサッカー」だからこそ、彼の能力が最大限に発揮されたということなんでしょうね・・。

 そんなエキサイティングサッカーを観ていて思ったものです。やはり、サッカーを進歩・発展させるための唯一の源泉である「美しさ、楽しさ」の本質は「戦術からの解放」というベクトル上にある・・それでも、試合のミッションが「勝利だけ」に置かれる傾向の強い今のプロサッカーでは、当然「規制ファクター」が大きく先行する・・。

 まあ、いつも書いている「規制と解放の優れたバランス」というテーマなのですが、それにしても、こんな楽しいエキサイティングサッカーをみせられたら、(勝負至上の?!)戦術なんてクソ食らえ・・なんて思っちゃいますよ・・ホント。とにかく、このテーマが、「経済ファクターが強力に主導する今のプロサッカー」という事実とも深くリンクしていることは言うまでもありませんよね。

 まあ、そのことにつながる「理想型は(GKを除き)ポジション無しのサッカー」というテーマも含め、機会を改めて、ジックリと論を展開するつもりですので(これまでに、機会を改めて・・という宿題が増えすぎてしまった?!・・ご容赦アレ)。




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