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2003「J2」・・私は、面白いエキサイティングマッチを存分に楽しんでいました・・また試合が進むうちに「J2の魔物」も見えてきた・・横浜FCvsモンテディオ山形(4-2)・・(2003年11月1日、土曜日)

本当に久しぶりの「J2」レポートということになりました。とはいっても、フロンターレやベルマーレ、また横浜など、ちょくちょく試合は観戦していましたよ。レポートするのは今年の3月29日に同じ三ツ沢で行われた横浜対新潟のゲーム以来ですけれどネ。

 今回は「レベルの差」というテーマをもって観戦をはじめました。何が、上のリーグとのレベル差の本質にあるのか・・。身体的な要素? 技術的な要素? 戦術的な(戦術イメージ的)要素? 心理・精神的な要素? もちろん、それらすべてに「僅差」があり、その集積が、目立つ差となってグラウンド上に現れてくることは言うまでもありませんが、部分的には上位リーグよりも優れているケースもあるわけで、一概には言えない・・。

 たしかに身体的・技術的な部分は、誰でも、明らかな「差」を認識できるでしょう。だから、ここではやはり戦術的なアイデア(プレーイメージの基盤)のコンテンツ(内容)に注目しようと思っているわけです。そこでの「あまり目立たない差」が決定的な意味をもってくると思うからです。

 この戦術的ファクターの分析には気を遣わなければいけません。攻守にわたって質の高いクリエイティブプレーを「やろう」する戦術的な意図と意志があるにもかかわらず実際には「出来ない」というケースもあるし(そんなチームは救われるし、いつかは報われる・・ただしリスクチャレンジが多いからミスも目立つ!)、逆に、はじめからイメージできていないというケースもありますからね(する気もなく、安全プレーに逃げ込んでいる・・そのプレー姿勢はプロの個人事業主として大いに問題あり!)。さて・・。

 私は、横浜FCが、一時期のどん底状態から比べれば徐々に良くなりはじめていると聞いていました。リトバルスキー監督もそのことを実感しているようです。前節の福岡戦では、シュート数(作り出したチャンスの数と質)で相手を圧倒していながら、ゴールを割ることが出来なかったことで、結局は、試合終了間際のセットプレーからの失点で「0-1」の敗戦を喫してしまう・・。横浜のゲーム内容では、そんな「内容は納得できるけれど、勝負所での集中力の維持が・・」なんていう戦評が多いということも聞きました。だからそんなポイントにも目を懲らして観戦しようと思っていたわけです。このレポートは、私の思い入れが強い横浜FC中心になります・・ご容赦・・。

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 ゲームは、攻守にわたって、しっかりとした意図と意志が感じられるサッカーを展開する横浜FCが、立ち上がりからボールを支配します。まあ支配とはいっても、単にポゼッションで上回っているという意味であり、決して山形の守備ブロックを切り崩しているわけではないから、カウンターを狙う山形が意図するゲーム展開になっていると言えないこともありませんがネ・・。

 やはり、攻撃での「コンビネーション有機連鎖」のレベルは「上のリーグ」よりはかなり落ちる・・まあそれには、ボール絡みのプレーが不安定だからということもある・・だから、味方のボールなしの動き(スペースを作る動き・・パスを呼び込む動き等々)にも勢いが乗ってこない・・だから相手守備ブロックも次を予測しやすい・・だから相手守備ブロックを崩し切るような場面は、両チームともにほとんど演出することができない・・。

 それは、上のリーグとの、チーム戦術的ファクターの「差」が、徐々に見えてきていた時間帯でした。たしかに、攻守にわたるボールがないところでの「アクション・コンテンツ」には明らかな差が見え隠れしている。有機的なプレー連鎖の集合体であるサッカーでは、ボールがないところでのプレー(=フリーランニング)の量と質が、サッカーのコンテンツを決めてしまうといっても過言ではないのだから・・。

 とにかく、素早さ、正確性、相手を欺く意図などなど、ボール絡みプレーが自由自在ではないことも相まって、ちょっと食傷気味になっていた湯浅だったのですが、そんな時間帯に、まさに唐突とも言えるカウンターから山形の中村が先制ゴールを決めてしまうのです。

 全体的に「上がりすぎ」ているだけではなく、相手の必殺カウンターの状況であるにもかかわらず、戻りが遅かった(必死の形相で戻ろうとする意志が感じられない!)横浜の守備ブロック・・。

 この失点によって(押し込んでいながらワンチャンスを決められてリードされたことで)、それまで、(人数が十分にいるにもかかわらず!)アクションが単発気味だった横浜の攻めにも勢いが乗っていきます。コンビネーション状況で、ボールなしで仕掛けていく選手たちの人数が増え、意図が増幅したということです。そしてやっと横浜の攻めの危険度が増していく・・。

 シンプルにボールを動かすというイメージでは、横浜の選手たちはよくトレーニングされています。でも最初の頃は足許パスばかり。それでは単なるボール回しにしか過ぎません。そこに、二人目、三人目の決定的フリーランニングをベースにした「タテ方向へのパス」がミックスされてはじめて実効ある仕掛けのボールの動きとということになり、それが、サイドチェンジ、タメからのスルーパス、爆発的なワンツー勝負、(相手守備の薄いゾーンにボールを動かしてからの)単独ドリブル勝負など、最終勝負へのリスクチャレンジにつながるのです。一点をリードされてからの横浜は、ボールがないところでの仕掛けや、タテへのリスキーパスへのチャレンジにも勢いが乗ってきたというわけです。

 後半も、攻め上がる横浜に対し、必殺のカウンターを狙いつづける山形という展開がつづきます。そんなゲームの流れのなかで私は感じていました。「これがJ2なんだ・・仕掛けていった方が、逆にやられる・・」。そうです。仕掛けつづける横浜に対し、頻度は少ないけれど、(カウンター気味に)シンプルに仕掛けていく山形の方が、より効果的で危険な仕掛けを演出できているのですよ。

 その仕掛けリズムは、あくまでもシンプル。横浜のように最後の仕掛けシーンででボールをこねくり回したりせず(無駄なドリブル勝負シーンが目立つ!)、早いタイミングでアーリークロスを入れたり(放り込んだり)、早いタイミングで勝負のロングパスを飛ばしたりするのです。もちろん山形の選手たちは、そんな仕掛けリズムを全員が「シェア」しているから、そんなシンプルな仕掛けが殊の外効果的だというわけです。後半12分までの点の取り合いの後(横浜が2-2に追いついた後)、より多く決定的なカタチを作り出したのは、押され気味の山形の方でした。

 ジレて、仕掛けていった方がやられる・・。私は、シーズン当初から横浜が陥った悪魔のサイクルが見えたような気がしていました。だからこそ「バランス感覚」がモノを言う。チャンスを見出した味方が、後ろ髪を引かれることなく、確信をもって最後まで攻め上がっていけるような「環境」の醸成・・。そこに監督のウデが見えてくる・・。

 でも結局この試合は、ボールポゼッションとシュート数で上回った方のチームが「順当」に勝利をおさめることになります。皮肉なことに、山形が攻め上がっている状況でカウンターを繰り出した横浜が勝ち越しゴールを挙げ(臼井・・後半43分)、その一分後には内田がだめ押しゴールまで決め、横浜FCが「4-2」の勝利をおさめたのです。

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 常に攻め上がり、山形の二倍のシュートシーンを演出した横浜でしたが、実質的な「決定機」の数では確実に山形の方が上でした(ワンチャンスを決めるというのではなく、全体的なゲームの流れとして山形がカウンターベースの決定機を作りつづけたという事実!)。そんなゲーム展開を見ていて、「J2」には、レベルが劣るからこそ、たくさんの魔物が棲んでいるんだな・・なんてことを思っていた湯浅でした。

 最後になりましたが、ゲーム自体はとても面白かったですよ。

 たしかに「サッカーの質」は十分ではないにしても、両チームともに、しっかりとしたチーム戦術的な意図を、強い意志で実行しようとトライしつづけていましたからネ。それはそれで見所豊富でした。サッカーでは、(見方によっては)どんなレベルのゲームにも豊富な見所があるものなのです。もちろん両チームの総合力に大きすぎる差がないという前提が満たされている場合ですけれどネ(もちろん、チカラが大きく劣っていても、守って守ってワンチャンスを決めるという醍醐味はありますが・・)。




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